人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
?【・・・復讐のセイバーか。我が王妃の剣になる素養はあるが・・・】
「おのれ、おのれ・・・人間・・・ッ」
【・・・いっそ目の前で、大切な半身を喪うでもすれば違うだろうか。未だ様子を見るか】
カストル「・・・はっ!?」
(・・・今、誰かがいたような気がしたが・・・)
「・・・気のせいか。・・・また、寝るか・・・」
銀河警察宙域
ブリュンヒルデ「皆、迷惑をかけました・・・許していただけますか?」
スルーズ「問題ありません、お姉さま」
ヒルド「誰だってミスくらいするよぉ!これからで挽回しよ!ね?」
オルトリンデ「憎むべきは、こんな宇宙になってしまった原因です。・・・なんとしても、宇宙を元に戻しましょう」
ブリュンヒルデ「・・・ありがとう。・・・エレシュキガルさんに、私達も懸けてみましょう」
「「「はい!」」」
「成る程、事情と成すべき事は把握した。赤ちゃんプレイに精を出していた身では叶わなかった叡知の献策、ジークフリート殿と共に果たすとしよう。この、氷の叡智に誓って」
リリィにトラウマを叩き込んだ赤ちゃんプレイから脱却したシグルドの行動、そして知性からなる対応は鮮やかだった。銀河警察の折、誠実と豪胆のジークフリートと対を成す叡知と知性のシグルドの名は、決して伊達ではないことを此処に知らしめた。以下はその実例である。
「まず惑星ヴォルスンガをイアソン殿ら別動隊が抱き抱えたレジスタンスの拠点として解放しよう。後にワルキューレ達を銀河警察のシステム復旧に向かわせ、我が愛ブリュンヒルデにエレシュキガル殿と彼女が遺したシステムを再起動させる。そして掌握が叶った銀河警察のシステムを、ゴールドセイバー宙域の向こう、『コスモギルガメス宙域』に介在するギルガメス艦隊への対抗戦力とするのだ。ワルキューレ達は一人で並の職員二十人分は働く。スルーズ達もいれば間違いはあるまい」
「確かに、銀河警察のシステムを掌握してエレシュキガルさんを目覚めさせられるならこちらの戦力アップの目的は十二分に果たされたと言えるでしょう!ギルにも胸を張って報告できますね!」
「もう既にワルキューレ達は銀河警察宙域へと向かわせた。念のため、我が愛に先導を頼んだゆえ心配は無いだろう。これで戦略的戦力増強は叶ったといっていい。ヴォルスンガの設備は、スペースラグナロクに備えたもの。滅亡クラスの災厄に立ち向かう備えは用意できているはずだ」
「流石だな、シグルド殿。俺はどうにもワンマン労働になりがちだ。こういった大局を見る行動で貴殿の右に出るものはいないな」
「伊達におぎゃおぎゃしてはいなかったのだ。休息を得た脳細胞は、この眼鏡の輝きが如く煌めき、冴え渡る。そう、我が愛の行動はけして無意味ではなかった。けして(キラン)」
(妻のやらかしを休息と言ってのけて、いつもより倍冴え渡ると言ってのけたわね・・・)
(け、決してお嫁さんを責め立てない家庭の大黒柱!これが、シグルドさんの家庭の護り方!)
(やたらと渋い声でオギャオギャ言っていたのを恥と思わないとかちょっと無敵ですねこれは・・・次のシーズンで敵対するセイバーにならない事を祈るばかりです)
ジークフリートの背中に湿布を張るシグルドを見て感慨を懐く楽園メンバーズ。これで惑星クラスの活動拠点、銀河警察の遺産の掌握、最高クラスのセイバーを一気に獲得した事になる。ギルキャンディ袋詰めは硬い大戦果だ。もちろんこのままミッション完了として中途報告に帰還するのもいいが、まだ画竜点睛を欠いている。
「後はカストルさんですね、ポルクスさん!」
「兄が御迷惑を御掛けします。すみませんがもう少しのご助力を・・・」
後は絶賛ブチ切れ中のからかったら殺してくる方の兄貴、カストルである。セイバーバッチより何より、銀河を憎悪で荒らし回る危険性のある兄を放っては進軍に影響が出るし、仲間であるポルクスの心労がマジパナイ。なんとかしてあげなくてはならない。助けてあげたいのだ。宇宙の人々とポルクスの胃を。
「待ってほしい。ディオスクロイはジェミニとの語を同じくする言葉だが、貴殿の兄の名前のイントネーションは『カストロ』が正しいのでは無いだろうか」
「そうですね、カストル、カストール。或いはカストロ。それらが兄様の名称ではありますが、ある日・・・」
~
『兄様とかけまして、低品質のスシネタのトロとときます』
『ほう・・・ポルクス、その心は』
『どちらも『カス(みたいな低品質の)トロ』でしょう』
~
「本気で泣かれたので、私は暫くカストルと呼んでいたのです。紛らわしくてごめんなさい。皆様は呼びたいように呼んでいただければ・・・」
妹、辛辣な言葉遊び。兄の心がブレイクゲージしたので読み方を変えていたのである。呼んでいるとお腹が空きます兄様とも言われたり割と兄は妹の無茶ぶりを受ける側であったのだった。
「うーん、なんとかしてはみたいけど、神話に根付く復讐心って外野でなんとかなるのかしら?余程効果の強い指向性のパワーをぶつけるとかしないと無理じゃない?」
「ギルから聖杯取り寄せます?」
「気軽にデリバリーしちゃいけないんじゃないの、聖杯って・・・そりゃあ聖杯くらいだろうけど、魂の改革が叶う奇跡って・・・」
サーヴァントは全盛期の姿と力で呼び出される。トロ兄様も零落した双子の人間ではなく、光の神の片割れとしての姿を今は保っているが、それでも【貶められた】という事実そのものがトロ兄様に精神的デバフをかけているし、魂レベルの憎悪を滾らせているのだ。まさにアヴェンジャー、本来なら尽きることのない憎しみの化身である。楽園のアヴェンジャーは可愛い子しかいないけれど。
「遥か古い伝承の事だ、今を生きる者達にどうこうする事は難しいかもしれない。しかし、ポルクスの言葉だけは聞き届けていると聞く。・・・シグルド殿、これは」
「うむ、そうだな。つまるところ・・・『我等がアイデアを出し合い、そのアイデアをポルクス殿に実践してもらう』事が確実だろう。彼女の言葉なら、何よりも直接届く筈だ」
ポルクスが兄に何をしてあげるべきか。何をしてあげられるか。それを皆で考え、実践する。それで最悪、トロ兄様の無差別殺戮を抑制できる程度には鎮静化を図るのがベターとシグルドは結論を出した。
「となると、ポルクス殿がカストロ殿に何をしてあげるか、同性の諸君ならよりよい意見を出せると提案する。三人方、お願い出来るだろうか」
「あっ、それなら任せてください!私のマスター、リッカさんの十八番!十八番です!ポルクスさんはボクシングが神業クラスですし、きっと伝えることが出来るはずです!」
「なんとっ。ボクシングで、兄様に伝えられる事が・・・?」
「それなら私もありますよはい!どうせやり場のない憎しみなら、私の賞金稼ぎに付き合ってもらいましょう!説得よろしくお願いいたします!」
「賞金稼ぎ。バウンティ・ハンターですか・・・!」
「うーん・・・一緒にいるだけじゃなくて買い物やショッピングとか、或いはいっそ真正面から話して見るとか。私は宇宙を救いたい!銀河の中心で決意表明!とか!」
「成る程、成る程・・・私は兄様に頷くばかりだったので、是非是非具体的な策をご教授願いたいです!」
そのためにどうすればいいか、何をするべきか。リリィ達が華やかに、ポルクスに極意や手法を伝授する。それ自体はとても微笑ましいのだが・・・
「成る程、抉り込むように。まさか拳で想いが伝わるようになるとは・・・素晴らしいです」
「会話だけではないんですよ会話だけでは!そう!私達のマスターのやり方はポルクス向けです!」
「承知しました。一生懸命やってみます!」
「・・・少し物騒な単語が聞こえたような気がしたが・・・」
「いや、きっと最適解を伝えたのだろう。当方と我が愛の様に、言葉では足りない想いを伝えるための。・・・彼女らのマスター、極めて勇猛な勇士と見た」
シグルドの誇らしげな頷きと、一抹の不安を覚えるジークフリート。どこかの組織で、くしゃみの音が響いたとか響かないとか──
ディオスクロイ・ボクシングジム
カストル自室
「・・・寝過ごしたな・・・」
(ポルクスに起こされぬと惰眠を貪るのは悪い癖だ。しかし、寝ているときくらいしか気が休まらぬも事実・・・)
カストル「我が妹は戻ってきただろうか。ポルクス成分を補給せねば・・・」
ボクシングジム・リング
ポルクス「兄様、戻りました」
カストル「戻ったかポルクス!待ちわびたぞ!どうしたのだ、随分と長いがいしゅ」
ポルクス「こちらを、兄様」
『ボクシングセット一式』
カストル「・・・ポルクス?」
ポルクス「兄様のボクシングセットです」
「いや、見れば解るが・・・俺の?」
「リングに上がってください」
カストル「ポルクス?」
ポルクス「私は今、無性に兄様と語りたいです。そう、拳で」
カストル「ポルクス!?」
~
ラーゥン、ワーン、ファイッ!
ポルクス「デュンダリダイッッッ!!!!」
カストル「うぶわぁあぁあぁあぁぁ──!!」
ゴングと共に、ポルクス渾身の右ストレートがトロ兄様の顔面に深々と捩じ込まれた──
リリィ~拳で語りましょう!~