人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

1173 / 2536
リッカ「くしゅ、へぷち、へちっ」

マリー「なんだか随分くしゃみが多いわね。あなたの噂で持ちきりなのかしら。ふふっ」

リッカ「むずむず、いい噂ならいいなぁ・・・あ!もしかして!」

マリー「?」

リッカ「私!風邪引いたかも!なーんちゃっ」


集中治療ドック

リッカ(あれぇ~・・・?)

キリシュタリア(君が風邪だなんて珍しい。丁度いい、私と一緒に休もうじゃないか)

リッカ(キリシュタリアは風邪ってレベルじゃないよね!?)

キリシュタリア(私の身体はボドボドさっ♪)

(爽やかに言わないでぇ!?)

アスクレピオス「心配するな。必ず治してやる。お前の代わりはどこにもいない」

リッカ(医長・・・!)

アスクレピオス「絶好の・・・絶好の被験者だ・・・!!くくく、健康にしてやるとも。あらゆる手段を使って・・・!」

ナイチンゲール「えぇ。殺そうとも!あなたを!治します!人類の希望たる!!あなたを!!!」

リッカ(ひぇああぁあぁ~!?)

キリシュタリア(ファイトだ、リッカ君・・・一緒に超回復しよう!)

このあとめちゃくちゃケアされた。


憎悪は遥か過去に

【神でありながら、人間に零れ落ちた者よ!貴様には資格があるッ!】

 

叫び、黒きフルーレを振るい飛翔する黒騎士を名乗るセイバー。腕を組み静かに佇むカストロに向けて、怒濤と苛烈極まる剣技を振るう。全てが心臓や目、動脈といった急所を貫く必殺の一撃のものばかりだ。彼、或いは彼女は光の神に果敢に攻めを行い続ける。その目には、確かな決意と憎悪が宿っていたのだ。その光を、カストロは確かに垣間見た。

 

「資格だと?」

 

【そうだ!憎悪に満ち、悪逆と復讐に満ちた怨霊たるお前にはその資格が!我等が【王国】の騎士たる資格が!その為に!私はお前を導くのだ!存分に味わわせよう、我等の誇りのなんたるか!】

 

その姿は決して壮健、勇壮と言うほどの体格ではなかったが・・・そのかきむしるほどの感情をカストロは痛いほどに理解した。鉛を飲み込むような激情、吐き出さねばいられないねばついたヘドロの様な粘性の感情。他人事と決して断ち切れぬその感情。それを、間違いなくカストロは知っている。

 

「憎悪か。そんなものを資格とする王国とは・・・ギリシャより気持ちマシとしか思えん惨状と未来しか見えんがな」

 

絶対条件としての感情が、カストロにはおぞましいものと理解している。先程まで胸を満たしていた憎悪を基準、誉れとした国とはろくでもないと断ずるに何の躊躇いもない。イアソンが統治した国と同じくらいにろくでも無いと攻撃を回避しながら頷き続ける。

 

【そうかな?嬉々として人間を狩り、憎悪を光とし駆け抜けた兄たるお前には素晴らしき世界を我等が王妃は作りになられる。全てが我等のものなのだ。殺すも、破壊するも自由自在なのだ!】

 

「あまりに身近に感じる世界観だ。・・・今更、否定する資格も権利も無いのが我が身の惨状、醜態であったのだがな・・・」

 

深く恥じ入るカストロ、陶酔と共に叫ぶ黒騎士。その存在は、兄にとって決して他人事には見えない。いや、むしろもう一人の自分と言ってもいい倒錯ぶり。だが、先の妹の魂の説得を経て、落ち着き払った兄の脳裏に去来するのは別の感情と思考だった。

 

(このシルバー宙域の存在ではない。統制された世界を見据えるものは、この群雄割拠のシルバー宙域にいるような器ではない。その先にいるもの・・・イアソンには届かぬ領域!ならばこいつの後ろにいるものは・・・)

 

そう、いるものは紛れもなく自身らと同じ『ゴールドセイバー』。宇宙を左右し、星を統治する程の力を有するセイバーが、この黒きセイバーを支配している。即ち、シルバー宙域にこの黒騎士が存在している事、暗躍している事。導き出される結論はおおよそ予測できる。ギリシャの遺産をちらつかせた事による動きから、それは明白だ。

 

(ゴールド宙域を越え、ギルガメスを討伐し次回のシーズンの掌握を狙うもの。ゴールド宙域に到達した程のセイバーならば、必ずやそれを狙うだろう。ギルガメスを倒すため、覇を制する為の力を欲し飛び回っている訳か。そして、我等の力を、ギリシャの遺産を、ギルガメスに敗北した者達の力をかき集めている訳か・・・)

 

カストロの思考は冷静にして沈着そのものだった。人間への尽きぬ憎しみは、先程と今では全く違う形に変わっている。自身の胸に去来する涼やかな風がごとき想いが、双子の星の聡明さと煌めきを取り戻し、かつての自身である目の前の憎悪に満ちた存在の在り方を看破する。それほどまでに、憎しみは強固極まる劇薬であったのだ。そして、それを自身は何よりも、誰よりも貪欲に摂取していたのだと痛感する。鈍りに鈍り、淀みに澱んでいたものだと自嘲の極致だ。無様にすぎる。

 

「──フッ、フハハハハハ!ならば無様なら無様なりに、禊に専念せねばなるまい!」

 

【!?】

 

「良いだろう、ならば染めてみせろ。我が魂と霊基にくすぶる憎悪、目覚めさせてみるがいい!さすれば我が身、我等が遺産、全て貴様らのものとなるのだ!これは絶好の機会だぞ、黒騎士とやら!」

 

カストロはあえて、自身を委ねた。武器を捨て、手を広げ、敵の策に全力で搭乗する。無様に無様を重ね、醜態としか呼べぬ憎悪を晒した自身が重ねる禊として、これは成すべき事なのだと確信する。それは、殺す事ではない。

 

【──恭順の意思と受け取ろう。ならば見るがいい!我が宝具、王妃に捧ぐ呪詛と弾劾!】

 

その言葉を以て、黒騎士は宝具を開帳する。それは重篤極まる精神汚染。精神に直接作用し、神霊すら染め上げる、民衆と大衆の愚昧さを掲げる精神作用対人宝具。

 

黒百合の呪詛成就(ブラック・サレナ・ド・カース)──!!】

 

黒百合の華が咲き乱れ、カストロを包み込む。それは具騎士が産み出し、形作る魂の形であり呪詛の極みにして、咲き誇る華の如くに重ねられた民衆と大衆の、王権と【王妃】に向けられた憎悪と弾劾。それら全てを叩き付ける精神攻撃宝具の具現。カストロはそれをただ、静かに受け入れた。

 

「ぐ、ぬっ・・・ぅう、ぐ・・・!」

 

【憎いだろう、お前を貶めた人間が!恨めしいだろう、お前を辱しめた人間が!我等の王妃もまた同じ!愛された身でありながら自らを滅ぼした民達を憎み、憎み、憎み上げた!伝わるだろう、私を通じて!【王妃】の憎しみが!恨みが!】

 

頭に溶けた鉛を叩き込まれるような目の前の明滅、吐き気を催す慟哭、怒り。カストロは晒されながらも瞠目する。人間より産まれた感情が、零落した神である自身に通ずる感情の発露にまで到達するという事実そのものに。

 

【我等の王妃は、その憎悪を愛される。お前もこちらに来るがいい、ディオスクロイ!尽きぬ憎悪こそ、世界に下ろされるギロチンとなるのだ!我が王妃、ゴールドセイバーたる王妃の──!】

 

狂い果てんとする程の憎悪の発露。黒騎士の激情に、カストロは晒され続ける。

 

やがて魂まで到達せんとする憎悪──しかし。しかしだ。彼には最早、【ソレ】とは違うものが見えている。

 

「──遠いな。実に遠い憎しみだ。そうだ、今を生きる生命はそれを知りもしないだろう。それらを把握もしてはいないだろう。あまりに遠く、あまりに理不尽な憎しみだと、我が妹は告げていたのだ。その、拳でな」

 

呆れるように自嘲し、カストロは目を開く。かきむしるような情動の中でも、彼を繋ぎ止めるものがある。

 

それは、『痛み』だ。ポルクスが叩き込み、教え込んだ痛みと苦痛。何より妹に自身を殴らせた不甲斐なさと妹自身の気を思えば、この様な憎しみになどかかずらう暇などあり得ない。

 

【何?──なっ・・・!】

 

そう、憎しみは消えない。しかし、憎しみに代わるものは生まれる。補填されるものは確かに存在するのだ。正真正銘の復讐者と比べ、諌め、止められる自身のなんと誇らしく、有り難く、幸運な事か。そう──

 

「憎しみを制するもの!それは・・・」

 

そう、それこそは熱く、激しく、昂るようで時には熱く苦しく、しかし尊く暖かいもの。その答えは、先に最愛の妹たるポルクスに存分に叩き込まれた。何より・・・

 

──ポルクスの拳に、それを宿らせたのが人間であるのだ。悔しく腹立たしいが認めざるを得ない。憎しみなど、そんなものなどに消されないもの。それは──

 

「我が半身!ディオスクロイ、ポルクスへの──愛だ!!」

 

【愛!だと・・・ッ!】

 

憎しみを超越したのは、ポルクスへの愛。──けして消えぬ、半身たる妹への愛・・・そして。

 

「妹を導いた人間への・・・僅かなりの感謝と尊敬も含まれような」

 

──その最後の独白は、誰にも聞かせる事の無い言葉であったのだろう──。




【き、貴様・・・!】

「『王妃』。そして『騎士』。貴様はそう言ったな」

【・・・!】

「民に裏切られし王妃。そしてそれに仕える騎士。・・・迷う方が難しかろう。憎悪を抱えているとは、俺と同じく零落した存在であるようだが・・・」

カストロはこれを狙っていた。自らの憎悪を餌にし、手にしたのだ。敵の在り方を。所在を、その正体を。

「貴様らはゴールドセイバー宙域に居を構える『フランス』のサーヴァント。黒騎士を名乗ろうと我が光は阻めん!貴様の真名『シュヴァリエ・デオン』!ここまで把握すれば白日の下!一目瞭然!!」

【──!!】

「貴様の主はッ!その真名はッ!『マリー・アントワネット』!煌めきの王妃たるサーヴァント!その名!確かに見破ったぞッ!!」

憎しみを越えた双子の星が、その正体を照らし抜く──!

どのキャラのイラストを見たい?

  • コンラ
  • 桃太郎(髀)
  • 温羅(異聞帯)
  • 坂上田村麻呂
  • オーディン
  • アマノザコ
  • ビリィ・ヘリント
  • ルゥ・アンセス
  • アイリーン・アドラー
  • 崇徳上皇(和御魂)
  • 平将門公
  • シモ・ヘイヘ
  • ロジェロ
  • パパポポ
  • リリス(汎人類史)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。