XX「拒否権行使しますね。自業自得です!」
ナイア「マンドリカルドさんが交渉中です。様子を見ましょう」
ラクシュミー「あぁそうだ、また宇宙船が大破してな。流れでパトロールを行っていた帰りにお前たちが・・・」
マンドリカルド「そうだったんすか。なら、きっと大丈夫。信頼できるっすよ、皆さん」
ラクシュミー「・・・解った。ならば姫の下へ案内しよう。ついてき──うっ!?」
瞬間、ラクシュミーたるサーヴァントは先に開けた銃の跡に脚を取られ、盛大に頭からスッ転ぶ。ズガシャォ!と音がするような豪快なスリップだ。
イアソン「・・・大丈夫デスカ?」
ラクシュミー「す、すまない。心配ない・・・私は大丈、うっ!?」
そのまま、斬撃の跡のクレバスに挟まれ、落ちかけるラクシュミー。・・・一同、困惑にて硬直する。エレシュキガルとマンドリカルドが助けながら、彼が補足する。
「彼女、運が悪いんすよ。毎回宇宙船が大破したりトラブルが多いんで、自分とよく鉢合うんです」
イアソン「ク、クルーにしたくねぇ・・・」
ラクシュミー「ぬ、抜けない・・・!」
ラクシュミーの救助に数十分かけ、ようやく案内が行われたのは一時間後であった──
「協力者だと言うのなら歓迎しよう。此処が、我等反乱部隊の拠点となる。同志である君達をもてなすにはやや不足ぎみだが・・・これから、共に頑張ろう」
そう言って褐色のセイバーに招かれた反乱軍の拠点・・・いや、拠点と言うのはやや語弊があるかも知れない。其処に拡がっていた光景は、基地と言うにはあまりに頼りないものだ。
「誰がどう見ても、野営キャンプだよなこれ。拠点と言い張るにはちょっと簡素すぎるだろ・・・」
辺鄙な場所の安宿の方がマシだろこれ・・・なんてイアソンの失礼極まりない余計な一言の示す通り、最低限の環境と設備だけを模したテントが立ち並ぶ、まさにレジスタンスとしか言い様のない光景に船長は絶句を隠せない。最低限の薬品に隠蔽魔術、それを施しただけのキャンプ場めいた場所への忌憚ない意見に、また余計な一言を口走ったイアソンは肘打ちを食らっていた。
「まぁ、これでもラクシュミーさんが来てから大分まともになったんすけどね。前までは聞いた話だと、ただ蓙引いたりテントすら無かったって有り様でしたから。まぁそれなりに工夫して、色々やってたみたいっすけど・・・」
「あぁ。私がいつものように宇宙船が故障し漂流、遭難していた所を立ち寄った場所なのだが・・・拠点と言うにはあまりにも稚拙だったので、僭越ながら指導の下に監修させていただいた。その、此処に身を潜めていた方々は・・・」
言い淀んだラクシュミーの下に、二人組の男女が近付いてくる。ギリシャの民族衣装に身を包んだ風体の、年若い少年少女だ。
「・・・あの黄金野郎にブッ壊されたギリシャ地域の連中で、神の祝福の下にぬくぬくしていた奴等。だから神が死んだ状況を受け入れられずまともに運用すら出来ていなかった、だろ。気を遣わなくてもいいよ、別に。事実なんだから」
「こら。そんな言い方は止しなさい。・・・お帰りなさい。ラクシュミーさん。エウロペさんがとても心配していました。皆様の事も、とても気にかけられていて・・・」
「なんだ?このクソ生意気なガキと出来る女の雰囲気のメスガキは」
「ガキなのは見た目だけだ。人を見た目だけで判断するとか、だからアンタは下敷きで終わったんだろ。アルゴノーツキャプテン」
んだとゴルァこのクソガキャァ!!とキレ散らかすイアソンを鎮静する一同と、頭を下げるラクシュミーと少女。どうやら彼等は、反乱軍の一員らしい。
「紹介するっす。彼はマカリオス、こっちはアデーレ。元ギリシャ宙域から逃げ延びた、オリュンポス出身の男の子と女の子っす。サーヴァントではあるけど・・・」
「一般人とそう変わりはしないさ。兵役は何千年前にやったきりだからな。一応、ここでギリシャの生き残り数人とレジスタンスをやって生き延びてた連中だよ」
「私はアデーレ、こちらはマカリオス。・・・神々が滅び行く終末の破壊に、私達はゼウス様の導きで難を逃れたのです。大半の神々は、あのギルガメスの開闢の一撃に粉砕され、ライフラインやインフラを壊され、オリュンポスと共に命運が尽きてしまいましたが・・・」
「個人的に目をかけていた数人と、お気に入りの姫様と一緒に根絶やしだけは避けさせたんだ。俺達は何とか生き延びて宇宙に放り出された。そして、立地的に好条件だったこの隠れ家に息を潜めてたって訳だよ」
ゼウスの庇護下にいた民と、彼のいう姫様は難を逃れた、というより難を逃させたと言った方が正しいのかもしれない。神々の住む地に開闢の一撃を叩き込まれたという事実が本当ならば、それくらいしか生き延びる手段は無かっただろう。
「エヌマ・エリシュ・・・御機嫌王の最大宝具。ギリシャの山々に撃ち込まれた一撃とは、それほどに強力でしたか」
「ギルガメス容赦無さすぎませんかいやギリシャの神様の悪評を知ってか知らずかは解りませんけど。勧告無しに核爆弾とか私もたまにしかやらないですよ?」
ギルガメスはギリシャの総本山に、驚くべき事に自身の全霊を叩き込んだという。それほど評価し警戒していたのか、それとも花嫁候補に唾をつけられるのが我慢ならなかったのか、それにしても容赦ない無慈悲ぶりである。
「まず神々の真体保管区域に叩き込んだからな。大抵の神々の機能が集中していた場所を壊された訳だからそれは大混乱だったよ。指揮系統がメチャクチャになってた所をあの天の鎖だ。・・・神々がなすすべなく滅んでいく終末は、そりゃあっけないもんだった」
「私達を脱出させたのも、ゼウス様の残った力でやっとの事・・・といったもので、脱出出来たのは五十人から百人程度。ギリシャの地域は最早廃墟と化していましたから・・・恐らく・・・」
「今シーズンじゃあ、俺達が最後の生き残りだよ。・・・それも、後三人になっちゃったけどな」
「!・・・そうだ、他の者達はどうした?彼等はどうしているのだ?」
ラクシュミーの問いに、アデーレは目を伏せる。マカリオスも僅かに躊躇う様子を見せたが、意を決して口を開いた。
「・・・エウロペさんに霊子を託して消えたよ。せめて、ゼウスの忘れ形見の力になれればって、皆が決めた事だった。俺達は、最後まで残ると決めたから残ったんだ」
「・・・生け贄になったって事か」
「私達は、神の祝福の下に生きていました。神の実を食べ、老いも争いもなく、ただ平和に平穏に、神の庇護の中で。ギリシャ地域では、それが当たり前だったのです。だから・・・」
「自分達にもう、祝福は与えられない。そう言って崩壊の地に自決を選んだ連中はたくさんいたからな。俺達はゼウスのお気に入りで、姫様の世話役だったからまだマシだったけど、いよいよ堪えられなくなったんだろうな」
神が全てを与え、神が全てを管理する。その祝福が潰えたとき、民達は脆く弱かった。神々の愛・・・愛玩の寵愛を受けていた民達は、神が落ちた日に抗う選択も手段も、力も有してはいなかった。殺される瞬間までいない神に祈り、絶望して死を選ぶ際も神にすがり続けた。そして、神が死んだという現実は、二人以外の民達に自身らを神の姫に捧げる高潔な逃避を選ばせた。
「まぁそうだろうな。ギリシャの民ってのはそんなもんだ。神の機嫌で死ぬも生きるも決められる。ペットか家畜とそう違いはない。飼い主がいなくなったら立てもできないくらいには華奢な存在って訳だ。目の前で神がくたばったら得てしてそうなるのは想像に難くないさ」
「・・・そうか。反抗戦は精神を磨り減らすものだ。まさか、姫君に後を託すとは・・・」
「・・・押し付けだよ。自分たちはさっさと楽になって、後のやつらに重荷を背負わせた。神に愛されてる内は偉そうに振る舞ってた癖に、まともに人生を歩む事も出来なかったんだ。ギリシャの神と人間っていうのは、そんなものなんだよ」
「・・・今此処にいるのは、私と、マカリオスと、ラクシュミー様と・・・ゼウス様の姫、エウロペ様です。・・・でも」
「あぁ。・・・ゼウスはエウロペ様に、神々の情報を託して逝った。あんたたちに、エウロペ様は逢いたがってる。付いてこい。案内するからさ」
(・・・やっぱり神と人間の付き合いってこれが普通なんですね。世話焼きの日本神、あと邪神がレアなだけで)
(まさか戦う前から嘆くとは・・・でも、信奉していた神が死ぬというのは、それ程の絶望なのでしょう)
「・・・フン。気に病むなよお前ら。俺達が預かり知らないところで勝手に選んだ末路だ。むしろ誰かに活用された辺り無駄死によりマシもマシだ。後はオレ達次第なんだからな」
「・・・。最小単位の戦力ではあるが、案内する。もう一人、我等の希望はいるからな」
沈痛な反乱軍と神妙なイアソンチーム。挨拶を交わし、姫たるエウロペの下へと向かう──
神姫の間
エウロペ「御待ちしておりました。宇宙を担う皆さま方。私、ゼウス様の妻たるエウロペと申します。よろしくお願いいたしますね」
ヒロインXX(此処にもいたんですね、エウロペ姫。なんだかほわほわさ控えめな気がしますが)
エレシュキガル(状況が状況だし、無理も無いのだわ。目の前で生け贄になった人たちを見たなら尚更・・・)
エウロペ「まぁ、イアソン?イアソンなの?ラクシュミー、彼等は何処から?」
ラクシュミー「はっ。マンドリカルドが連れてきた増援です」
イアソン「この度は御愁傷様だな、エウロペ。ま、腑抜けの事なんか忘れちまえ。希望を担う俺達の力になれ」
ラクシュミー「貴様、もっと言いようはないのか・・・!」
「オレ達が負けたらそれこそ終わりだ。逆に言えばな、オレ達が負けなきゃどんな犠牲も負けもカウントされないんだよ。ひっくり返すんだからな!だから力を貸せ、ゼウスの姫様!」
エウロペ「・・・何を望まれるのかしら?」
イアソン「ギリシャ神殿の場所を教えろ。後は俺達がなんとかしてやる!」
イアソンの言葉は一方的で、無茶苦茶ではあったが。
マカリオス「・・・俺は、悪くないと思う。この人ら」
アデーレ「はい。私達にはない、意志を感じます」
エウロペ「・・・・・・。解りました。ゼウス様から託された、情報をお教えします」
──その言葉に、反乱軍の姫たるエウロペは『希望』を見出だした。
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