人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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エウロペ「アデーレ、マカリオス。侍女であり執事である二人に、こちらを託します」

牡牛『ブモモ』

「これには──、・・・が託されています。それで、皆様を導きなさいますように」

アデーレ「はい、エウロペ様」

マカリオス「傷ひとつつけさせません。どうか、イアソン達が用意した北欧の地で待っていてください」

エウロペ「ふふっ、信じておりますよ。・・・ラクシュミー」

「はっ」

「あなたも、皆様と共に。私は神々に祈りを捧げてから向かいます。力になってあげてください」

「・・・承知しました」

マカリオス「どうか待っていてください。必ず、皆で帰ります」

アデーレ「どうか、気を強くお持ちに・・・」

エウロペ「大丈夫、大丈夫ですよ。マンドリカルド君が教えてくれたカレー屋さんで、待っていますからね──」



カストロ『宇宙ならざる船長、貴様に渡すものがある』

ポルクス『転送しますね』

『蹄具』


イアソン「・・・・・・・・・」

『好きに使え。最早主はない道具だがな』

「・・・・・・ふん。気を使いすぎる馬だな、本当によ」

『地図に翳す』

「・・・あんたの事だ。きっと何か遺してるだろ。・・・本当、さっさと逃げてりゃ良かったのにな」

「・・・そうだろう、ケイローンさんよ」


エウロペは私の姫になってくれた女性だ!

「・・・で、確認させてもらうけど。本当に行き先は各種神殿跡地、でいいんだよな。このボーダーが向かってる場所は」

 

マカリオス、アデーレ、ラクシュミーを乗せたイアソン一行は辺鄙極まる野営地を早速出立し、銀色と黄金の宇宙を駆け抜ける。その行き先を確認するのは、エウロペの神牛を世話する片割れ、マカリオスだ。

 

「あぁ。俺たちはくたばった神々の遺した技術・・・『神の遺産』を回収するのが目的だ。戦力差が何倍にも離れてる今!・・・まぁカルデアからしてみれば8・2で多少敵が多いくらいなんだがな。それはともかく!どん詰まりの負け犬ムードなお前らをましにするために、なんとしても神どもを使い潰してやらなくちゃならん!ヘラクレスもオレも、さんっっっっっっざん苦労かけられたからな!其処だけは良くやったギルガメス!百点満点の花丸をくれてやる!」

 

ギルガメスは回収しなかったのか、或いは穢らわしいと捨て置いたのか。それは解らないが、神々の死骸は遺されたままだとエウロペは告げていたのだ。それは、アデーレ、マカリオス、そして・・・ゼウスがエウロペに託した『神の牡牛』が導いてくれると。

 

「なら、俺達・・・というかこの牛が役に立ってくれる筈だ。エウロペ様にゼウスが賜らせたこの牡牛には、ゼウス権限の込められたマスターキーたる術式が施されてる。非常事態用の、強制合体承認機構だってエウロペ様は言っていた。この牛なら、他の神のシステムを無理矢理使える筈だ。無理矢理な」

 

「強制合体機構!?ギリシャの神々はそんなリッカ君大好きげなロマンシステムを搭載していたんですか!?銀河警察もビックリです!」

 

「・・・ギリシャの神々は、本来この宇宙の存在では無かったようです。遥か宇宙の彼方より飛来した別文明の銀河船団・・・その遥かなる漂流の果てに、彼等は地球、太陽系に辿り着いたのだと、エウロペ様は仰有られておりました」

 

アデーレ、マカリオスの情報は機密も機密、ギリシャの覇を握り解き明かす最高クラスの情報だった。言うなれば、彼等は異文明の存在が産み出した最先端技術による船団・・・人類と文明の究極の具現である無敵の英雄神マルドゥークとコンセプトを同じくする機械神群であり、それが宇宙より先史地球に降り立ったモノが後のオリュンポスの神々だと言うのだ。

 

「いやいやいやいやいやいや待って!?ちょっとまって!?謎!謎解き明かすの早いよ!?君達は神官か何かだったのかい!?全能の神しか知ってはいけないような情報を、何故君達が!?」

 

「ゼウスはエウロペ様に毎日逢いに来てたんだよ。膝枕で骨抜きにされてた時に、エウロペ様のお付きに選ばれた俺達に口を滑らせたんだ」

 

「『今から私は口を滑らせるが、聞かなかった事にしておいてくれ。時には癒され、重荷を下ろしたくもなる』と。・・・オリュンポス宙域のライフラインを担当していたゼウス様ですから、疲労困憊なのも無理からぬ話・・・」

 

「なんだバブみとオギャりは全国共通なんじゃないか!マギ☆マリは間違っていなかったんだ!シバに伝えよう!かつてのソロモンは割といい線行ってたんだ!」

 

エアに骨抜きにされるフォウみたいなノリで最高機密をゲロッた全知全能の神ゼウス。まさかそれが失伝を防ぐ為の起死回生の策になると読んでいたか否かは意見が別れるところであるが・・・

 

「エウロペ様を大変愛されていたゼウス様は、プレゼントなされた牡牛に自らの最高機密を隠していたのです。・・・それは、オリュンポスが割れてしまった際に行使する全能行使権。私達風に言えばマスターキー、或いはマスターオーダー。あらゆるものを優先し、他の神のシステムを掌握するゼウス神の最終非常セーフティー・・・」

 

「それを、姫様たるエウロペ様に・・・?ゼウス神は心からエウロペさんを愛していたのでしょうか」

 

「侍女を勤めさせていただいた視点から言わせてもらえば、大変な寵愛だったと断言できます。『エウロペは浮気のどうのこうのと言わないし、私を優しく抱きしめて慰めてくれるから大好き。ヘラは身体は最高なのに口うるさいわ癇癪持ちだわでめんどくさい。エウロペはプラトニックな姫であってほしいからこうやって側に置くもん』と言っておられました」

 

ゼウス、エウロペに癒しを求めていた。全知全能であり最強の神であるゼウス神は、ギリシャ全域の管理と維持を行っていたため疲労が半端無く、絶えず厄介事と呪いを撒き散らすヘラには辟易していた癖があったのだから。身体は最高なのに、という辺りギリシャの精神性が伺える。

 

「ヘラが癇癪と呪いを撒き散らすのは、アンタが節操なく種をばら蒔くからなんだがな、と死ぬ覚悟で何度言おうと思ったか・・・」

 

「随分と反骨気味だなマカリオス!気持ちは解るしロックで最高だ!ゼウスに其処まで言う理由はなんだ?」

 

「・・・アイツ、姉さんを見るなり『もうちょっと豊満だと更に美女っぷりに磨きがかかるぞ。アンブロシア断食する?アフロディーテ呼ぶ?』なんて口説き始めたんだよ。あの色ボケ神、弟のオレの前で!何様だ!神様だよ!」

 

「まぁまぁ・・・ゼウス様にお声をかけられるのは名誉な事だから、そう目くじらを立てないの」

 

どうやら姉にも手を付けようとした事を大変御立腹の様であるマカリオス君であった。誰だって、身内を目の前で『そう』評価されたら忌避するものである。

 

「このマスターキーだって本懐はどうなんだか。アフロディーテ、デメテル、アテナ、ヘラ。無理矢理合体できるってそういう事なんじゃないのか!たまたま役に立ったってだけで!」

 

「うーん、それをエウロペ姫に牡牛として託した辺り、本当にエウロペ姫の事は大好きだったんだね、ゼウス神・・・侍女の君やマカリオス君も一緒に解放する辺り、筋金入りだよ」

 

「・・・マカリオス、オレはお前に同情したよ。辛いよな・・・だけど、もう今シーズンは自由だぞマカリオス!」

 

「あぁ、次シーズンではヘスティア様をゼウスに次ぐNo.2に推薦するんだ。その為にも、最低限ヘスティア様とハデス様の御威光だけは取り返したい。力を貸してくれ・・・皆!」

 

『ブモモ』

 

「任せておけ!よーし!まずは向かうべき場所に一直線で行くぞ!しっかり掴まってろよ!」

 

ギリシャ宙域は極めて強固かつ堅牢で、敵性反応は未だ無い。ゼウスが残し、託した権能を使い神の力を使い倒す為、ボーダーは駆ける。

 

「私はよりによってワープホールに飲み込まれ、出た先がギリシャ宙域だったのだ。・・・要するに、完全な成り行きだ」

 

「そんな所も不幸なのだわ・・・大丈夫!私とマンドリカルドで、根暗同盟を作るのだわ!」

 

「ようこそっす・・・陰キャの世界へ・・・」

 

「い、いや運が悪いだけで別に根暗な訳では!・・・ある、のか・・・そうかな、そうかも・・・」

 

「ナイア、精神耐性の札かなんか持ってません?あと隠蔽スプレーとか」

 

「素肌対策ならぬ、女性対策ですね。たしかお父さんブランドの逸品が・・・」

 

それぞれのギリシャへの想いを込め、ボーダーは銀色の宇宙をひた走る──




イアソン「ワープアウトするぞ!まずは降りる準備だな、念のため武装は持っていけよ!」

ロマン「おや?神殿ではなかったのかい?」

ダ・ヴィンチちゃん「辺鄙、とはいかないが中心とはいい難い箇所だ。イアソン君、此処は?」

イアソン「フッフッフ、情報は等しいと言っただろうが!なら、ギリシャには一番賢い情報を操るヤツがいた!オレの知るヤツなら必ず遺している!情報をだ!」

そこまで自信満々に告げるイアソン。そう、向かった先とは。

「そうッ!一番賢いケンタウロス、即ち『ケイローン』!まずはギリシャ技術のアレコレの編纂した書物を纏めて持って帰るぞ!!」

──大賢者たるケイローンの地にして、イアソンの古巣。彼が幼少を過ごした地である、ケイローン塾の在る座標──

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