ナイア「でも、楽しいです。こういう工作は、武具でしかやらなかったので。なんだか手先が器用になった気分です」
ヒロインXX「気分、というかまさしく器用なのではないでしょうか・・・」
ナイア「それより見てください。このロバさん、逞しいフォルムでありながら見事な毛並みです。あまこー様を彷彿とさせます」
ロバ『フヒン』
ヒロインXX「ずんぐりむっくりしていても、馬力は随一なロバ君。ナポレオンが雪山を登った際には本当はロバに乗ったとか。しかし何故にロバなのでしょう」
ニャル【ギリシャにおいてロバは聖獣であります。寝込みを襲われかけたヘスティア神を、一鳴きにより助け起こしたのがロバでありますが故にね】
ナイア「お父さん!」
【真心込めて作りなさい。きっとご利益がある筈だから】
ヒロインXX「言われずとも!できましたよ、これで何が・・・」
ロバ【──フフヒヒーーーン!!】
ヒロインXX「なんとぉ!?」
ナイア「か、かまどが!?光輝いて・・・!?」
?「・・・あらぁ~。呼んでくれたのね~。ありがと、あらぁ?」
「つ・・・」
((詰まった!?かまどに!))
「あらぁ・・・詰まったのねぇ。ごめんなさい~。申し訳ないけれど~・・・抜いてもらえる~・・・?」
ヒロインXX「きゅ、救助~!」
ナイア「反応・・・神霊・・・なんと!もしや・・・!?」
「なんだこれ?ナノマシンって言ったなケイローン。これがお前の遺すものなのか?そもそもなんだこれ?」
ケイローンが遺し、託したもの。それは破壊された神々の身体から採取したもの、或いは託されたもの。流体金属『オリハルコン』より製造されし神々の恩寵、血肉であり機動ナノマシンたる『クリロノミア』。各種神々より採取された、ギリシャ文明の秘術にして結晶──クリロノミアと呼ばれる物体であった。分析してもらう事を主題にしているため、流体金属の体を取っている。
『クリロノミア、それは神々が製造しそれぞれの特色、神の恩恵をもたらすもの。これを利用することにより、寿命は数百年は延び、怪我や病気にかかる事なく、サーヴァントにもたらせば単独にて宝具を使用する程の霊基強化を行う事が可能となります。それぞれの神によって特色が顕れ、戦闘力の強化に健康促進に無病息災、あらゆる恩恵をもたらすギリシャ技術の結晶なのです。皆様の力に、きっとなると思い確保致しました』
それは神の恩恵にして、民達にもたらされる祝福そのもの。神が民にもたらすナノマシンたる技術の粋。神々の数だけ存在する内、いくつかをサンプルとして一定数を確保していたのだ。ケイローンは先んじて、いくつかのクリロノミアを確保していたのである。そのあまりに都合のいい効果しか羅列されない夢の超物質ぶりに、ロマンが驚きの声を上げる。
「ちょっと待って!?良いことしか言ってないけれどリスクとか無いのかい!?反動とか、代償とか・・・」
得てしてこういった夢の物質には落とし穴や欠陥があるものだ。だが、ケイローンは断言した。『存在しない』と。
『ありません。強いて言えば神のクリロノミアの規格次第では霊基や肉体に適合しないといった程度でしょうか。副作用、そして弊害といったものはありません。神の物質たる由縁は此処にある。あらゆる不備や不理解を越えた存在をこそ神という。──恐らくですが、皆様の歴史に存在するあらゆる物質と比較して、それでも尚最先端であると断言出来るでしょう』
「そんなにっすか・・・!?」
「あぁ、決して大袈裟じゃない。現代社会においてガンや風邪、インフルエンザといった完全に治せない病というのは数多くある。もし、それを完治できて、そもそも風邪にかからない肉体なんて言うものを作れる物質が存在してしまったとしたら・・・!」
「良いことづくめなんじゃないのか?老いないし死なないって、人間が憧れる夢だって良く聞いてるぞ」
マカリオスの不思議げな問いかけに、ドクター的観点からロマンは危惧する。その万能さは、ともすれば人類の未来と可能性を閉ざすものであると告げるのだ。
「万能過ぎるんだ。これだけあれば他の薬を作る必要も、医療器具を作る必要も技術を発展、改良する必要も無いんだ。断言してしまえる。これより素晴らしいものは作れない。人の研鑽は必要ない。これこそが頂点、これこそが極点。・・・人類の発展は、完結を迎えてしまうかも知れないんだよ。これは、それくらいの夢の物質なんだ」
「それは良いことではないのか?人類は常に貧困や飢餓、病に苦しめられてきた。それから解放されるとなれば・・・」
『ラクシュミー殿の意見は最もです。このクリロノミアを持ち帰り、皆様がもし人類にこれらを普及したとするならば、その瞬間に人類のステージは大きく引き上げられる事になるでしょう。・・・しかしそれは『発展』の必要の無い袋小路に入ることを意味します。クリロノミアに代わる発展は産み出せず、人類の進歩は其所で止まってしまう』
そう、神の恩恵をもたらすと言うことはそういう事だ。人間の発展を無価値にし、人間の進歩を無意味とする事に他ならない。神の技術を、神の威光を人間に授けるとはそういう事なのだ。全ての魂が物質化したサーヴァントユニヴァースに生きる民に限定される治世だからこそ施すことの出来るものだ。
「つまるところ、それは人類史の剪定、行き詰まりの人類史・・・『ロストベルト』に繋がるかもしれないという事なのかな?」
『宇宙の熱量総量の維持から引き起こされる世界の選別ですね。・・・えぇ。この物質を、サーヴァントユニヴァースに対応する前の人類が使用し、人類全体に波及したシミュレーションの結果、その結論が導き出されました。クリロノミアを上回る発明を人類は産み出せず、人類の歴史は袋小路に入ると。・・・皆様にこれを託すのは、イアソンやディオスクロイが見込み、認めた存在であるという判断を信じたものです。私達の教え子の判断を尊重し、皆様が我々の力を必ず正しき用途にて振るってくださると結論付けたものです』
AIであろうとも、ケイローンは信じた。教え子が見出だした可能性を、この宇宙を変えうる存在を信じこのナノマシンを確保していたのだとされる。
『此処に保管されているのは三つ。ヘスティア・クリロノミアは生命活動の保証。ヘスティア神の慈愛を授かり、あらゆる環境での活動を保証します。ハデス・クリロノミアは生命活動の復帰。死した者を復活させ、霊基を死から保護する役割を持ち、ヒュプノス・クリロノミアは精神の平静を保ち、精神干渉や汚染を跳ね除ける。・・・比較的皆様に友好的かつ協力的なクリロノミアですらこれ程の力を持ちます。オリュンポスの主神クラスのクリロノミアは、更に強力な効果を持ちます。アデーレ、マカリオスと牡牛の力があれば、各神殿から神のクリロノミアを確保する事も可能でしょう。しかし、お気をつけください。オリュンポスの主神達のクリロノミアは強力極まると同時に、皆様に与える影響はまさに未知数です。ですから皆様、これはお節介として、歴史を見据える隣人としての忠告です』
そう、賢者として、神の領域に到達する事の懸念はただ一つ。かつて炎を与えたプロメテウスが、共に堕落を世界にもたらしてしまった様に。宇宙を救う者達が、人類史のプロメテウスにならぬように。
『どうか、神の業を災厄になさらぬように祈っております。全ては、使う者次第なのですから』
賢者は静かにもたらした。宇宙を救う希望と、その希望を絶望に変えることの危惧を。それが、AIとしてでも残さんとした賢者の忠告──。
イアソン「ハッ、散々脅かしやがって。世話焼きな所は変わってないんだな。AIの癖にこの先生は」
ケイローン『三つ子の魂百まで、と言いますからね。そうそう、それとクリロノミアの使用手順を説明しようかと思います』
アデーレ「使用手順、ですか?」
ケイローン『えぇ。クリロノミア・・・それも女神のナノマシンを使うのであればくれぐれも、誰か一柱のみを使っては──』
ナイア『キャプテン!キャプテン大変です!』
イアソン「なんだどうした!?まさか貞操の危機か!?」
ナイア『貞操?いえ違います!かまどから!かまどから神が!』
マンドリカルド「はっ!?」
ヒロインXX『かまどから神霊が出てきたんですよ!なんだかかまどに挟まって出れないみたいなんです!助けてあげましょう!』
ケイローン『・・・成る程、既に手は打たれていましたか。よろしい、イアソン。私のAIユニットを持っていってください。ナビゲート致します』
イアソン「出来るのかよ!?」
『時代は持ち運び端末ですよ。ギリシャ案内はお任せください。その神がきっと──我等の女神、ヘスティア神です』
かまどから神。珍妙な報告に顔を見合わせながら、一同はケイローンユニットを抱え船へと戻る──
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