人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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アルテミス神殿内

ナイア「あいたた・・・湿布を無事に貼ってもらえました・・・」

XX「何でもできるイメージだったんですが、以外な弱点がありましたねぇナイア。まさか色仕掛けができないとか!胸もお尻も大きくてくびれもあるのに勿体無い!」

ナイア「お父さんは言っていました。【完璧な存在なんていないんだな】って。・・・どうも、私には誘惑や色仕掛けをするには精神面が幼すぎるようで・・・」

ラクシュミー「そう言った任務を回さなかったのは、きっと父の斡旋の巧みさなんだろうな。素晴らしいマネジメント力だ」

XX(そういう依頼送った先を銀河ごと消すとかやってそうですね・・・あの親バカ・・・)

マンドリカルド「へぁっ、その、今、いっすか?」

ラクシュミー「む、どうした?」

マンドリカルド「・・・エレさんと話し合ったんすけど、アルテミスさんから力、借りるんすよね」

マカリオス「なら、まず誠意を見せた方がいいんじゃないか?具体的には・・・」

エレシュキガル「お掃除するしか無いのではないかしら!」



イアソン「ロマン、頼みがあるんだが」

ロマン「なんだい?・・・え、えぇ!?」

「必要なことだ、やってくれ!」

ロマン「わ、解ったよ。騎士王に相談して、オルガマリーから指示してもらうから。・・・だ、大丈夫かなぁ・・・」

「絶対成功する。オレを信じろ!」

ダ・ヴィンチちゃん「おっさん・・・おっさん・・・」

ロリンチ『傷心中だ。可哀想に・・・私は正真正銘、少女だけどね!』

「ぐぬぬ・・・!ふんだ!悔しくなんか無いぞぅ!こうなったら、この神殿を綺麗にしてやるぅ!」

イアソン「やれやれ!俺は見てるからな!肉体労働は反対なんだ!」

(・・・楽しみに待ってろよ、ヘラクレスの一番弟子。ついでにゴルドルフにもなんか用意するか・・・)


女神のしあわせ

「おい、起きろ筋肉ダルマ。いつまで眠ってるんだ。起きろオリオン!優しくチューなんて期待すんなよ!さっさと起きろって!」

 

「ん、ぁ・・・あぁ・・・?・・・はっ!?」

 

そこはアルテミス神殿の上部、最上祭壇。月がそこにあるべき場所。べしべしと頭を叩かれ、掛けられる声に反応し起き上がるオリオン。勿論、その声は月の女神等ではない。アルゴノーツ船長イアソン、AIケイローン、そして・・・

 

「お久しぶりい、オリオンくん~。無事で何よりだったわぁ~」

 

「ヘスティアさんじゃねぇの!?あいわらずやわっこそうなゲフン!貞淑清楚でよろしいかと」

 

流れるように口説きかけた自分を律し、理性的にオリオンは応対する。そして同時に確信し、理解する。どうやら本当に、野蛮な目的でやってきた者ではないということを。ヘスティア神が邪悪な者に加護を与えるなど、有り得ないからだ。

 

『勝負は些か公正に欠けましたが、私達の勝ちですね。私達は、というよりイアソンはアルテミス神の祝福・・・アルテミス・クリロノミアを所望しています。どうか、分けていただけますか?』

 

その言葉に、オリオンは力なく頷いた。簒奪や強奪ではない、何かしら理由がある正式な参拝を邪魔する理由は無い。好きに持っていってくれと手を振る。

 

「俺は負けたんだ。なら、文句を言える立場でもない。何に使うのかは解らんが・・・あんまり悪用はしないでやってくれよ」

 

アルテミス・クリロノミアは狩りに必要な身体能力全般と視力の超絶強化、五感の強化を行う。剛力、精神の平静、冷徹な程の精神力をもたらす狂気と静謐の二面性。オリオンがもたらされている祝福と同じ効果をもたらすものだ。・・・それが、人間に耐えられるかは話が別ではあるものの、だ。投与された人間は、大陸に名を轟かす狩人にすらなれるだろう。

 

「・・・一つ気掛かりなのは、なんだってアイツの力を其処まで求めるのか、だ。他の神様や、ヘスティアさまじゃだめなのか?」

 

オリオンが知る限り、敬虔な信者はアタランテくらいなものだが、アルテミスの力をそれほど欲する様な性格はしていない。勝手に分け与えられる以外は、基本的に辞退されてるとぼやいていたほどだ。ならば、誰かに使うあてがあるのかとオリオンは気にかける。

 

「ハッ、アルテミスじゃなきゃダメな理由だぁ?勿論あるぜ。聞いて驚け!アルテミス・クリロノミアを使う予定の女はな、アルテミスの友達!ダチになった人間の女だ!!」

 

『・・・なんと。今初めて聞かされました。それは本当ですか?』

 

「えぇえ~!?友達ぃ?信者や生け贄じゃなくて友達ぃ?ほんとぉ~!?」

 

「あぁ、成る程成る程ダチなら納得ってマジで!?

 

驚きのターン、ギリシャタイム。アルテミスは神であり、残酷と無邪気、一途と無関心な神である。オリオン以外の存在には基本的に関心が薄く、気にくわなければ疫病や害獣をさしむける気紛れな神だ。真っ当な対話すら難しい相手に、友達となった者がいるという。しかも人間がだ。その衝撃は、計り知れなかった。オリオンが熊フェイスになるほどに。

 

「嘘でもなんでもない。アルテミスと対等の友情を結び、祝福を受け世界を救った人間がいる。そいつは今もアルテミスと大層仲良くやってるよ。だが、知っての通りアルテミスは加減を知らん。祝福を力にする度に魔力や力を片っ端から費やしヘタるなんて事もあった。だからな、もっとアイツと女神の距離を近付ける要素がいる。そいつがクリロノミアって訳だ。解ったか筋肉ダルマ」

 

「・・・アルテミスが・・・同性とはいえ俺以外に懐くとは・・・ちょっと信じられん話だけど、嘘って訳でもないよな・・・」

 

誰がつくか、こんな嘘。そういってイアソンはこっそりロマンに頼んで借り受けた、リッカの弓矢をオリオンに見せる。今も愛用している、アルテミスの祝福が形になった弓だ。それを託したとはどういう意味か、理解できないオリオンではない。宇宙の何処かで、神と人は友情を結ぶことが出来ていたのだ。それが、なんとアルテミスというのだから驚きは果てしない。渡された弓を、オリオンはじっと見つめている。傷一つない、丁寧に丹念に手入れをされた月の弓。表面が鏡のように景色を映す。

 

「・・・その娘、名前はなんて言うんだ?」

 

「リッカだよ。藤丸龍華。聞いて驚け、あのヘラクレスの一番弟子だ!ナインライブスだって使えるんだぜ、まぁオレの妹分ってことでもあるうぉお!?」

 

(弓矢が独りでに撃たれましたね・・・不服だったのでしょうか)

 

「凄いわぁ~。こんな事って、本当にあるのねぇ~。人間と友達になれるなんて~。ロマンチックじゃないかしら~」

 

「あっぶねぇ・・・!言っとくがアルテミスだけじゃねぇぞ。あらゆる神様に引っ張りだこなモテモテ女だ。本人は至ってそういうの謙虚だから、ギリシャあるあるの暴言からの天罰って言うのも無い。うまくやって来てたわけだ。すげぇだろ?」

 

弓矢を見つめるオリオン。間違いなく、偽りなくアルテミスの弓矢だ。祝福と、重い親愛が詰まった正真正銘の愛の弓だ。

 

同時に、オリオンは見た。その弓矢を使い、道を切り拓く黒き龍鎧の少女の姿を。鏡面がごとき弓矢の表面に、それが確かに映っていたのだ。──愛する女が、神として一歩先に進んだ未来がそこにあった。神が人間を案じ、人間が神を信じる。そんな奇跡が、その弓に詰まっていたのだ。オリオンは、其処に映る女神の笑顔に込み上げる感情を堪えながら、イアソンに問う。

 

「・・・・・・きっかけは」

 

「あん?」

 

「きっかけは・・・なんだったんだ?アルテミスがオレ以外に懐くなんて想像もしなかった。アイツの心を落としたこの娘は、どんな奇跡を使ったんだ?」

 

なんだそんな事か、とイアソンは笑う。そのきっかけも予習、学習済みだ。彼女は、特別な事などなにもしていない。ただ、当たり前の事を告げただけだ。

 

「祈ったんだよ。信徒でも、利己的な要求でもない。ただ純粋に一人の、一つの存在としてアイツは祈ったんだ。アルテミスに、『あなたが幸せでありますように』ってな。・・・祝福と見返りありきの神付き合いに、恋愛脳のアルテミス様には効果抜群だったって訳だな」

 

「!・・・・・・そうか。それが・・・それは、確かに・・・」

 

確かに、それはアルテミスが一番喜ぶお願いだろう。オリオンは内心、やられたとすら思った。男女だけしか惚れた腫れたは無いと思っていた。人が神に祈るのは、それが当然であるからだ。祝福を、庇護を受けるためだからだ。怒りを避け、恵みを授かるためだ。神もまた、人間は自らを称えて初めて生きるに値すると認識している。祈りとは、呼吸と同じ。それ故に、神も人も意味など見出ださない。当たり前でしかないからだ。

 

だが、弓に映る少女は、アルテミスの幸せと幸福を祈ったという。自らではなく、神の事を祈ったという。それは神から人が離れ、自立していなければ出来ない選択だ。神を、自身の意思で敬わなければ出来ない誓願だ。──人は驚くべき事に、神の事すら祝える程に成長していたのだ。

 

「・・・嬉しかったんだろうなぁ。お前、自分の恋路を応援されるの、大好きだったもんなぁ」

 

それがアルテミスに、どれ程の変化をもたらしたかなど考えるまでもない。弓矢に映るのはオリオンと、アルテミスと、橙髪に金眼の少女。彼女の祝福と祈りは、自身とその少女に贈られていた。信仰に対する祝福とは違う、大きな親愛に当たる想いだ。

 

「良かったな。ホントに・・・良かったな・・・」

 

知り得ざる世界なれど、自身の愛した女であることに変わりは無い。オリオンは鏡の向こうで幸せそうに笑うアルテミスの姿を、ずっと見つめ続けた──。

 




イアソン「これで、俺達がアルテミス・クリロノミアを求める理由が解ったろ。アルテミスは本気で、その小娘を愛してる。だがお前みたいなゴリマッチョとは違って・・・いやあんま変わんないか・・・とにかく、愛が大きすぎて反動が酷いんだよ。それはアルテミスにとってもリッカにとってもよくねぇ。だから、アルテミスの祝福そのもののナノマシンでアイツを護らなきゃならん訳だ」

ケイローン『そういう事でしたか。すなわち、アルテミス女神の『巫女』の様な存在という事ですね。確かにそれならば・・・』

イアソン「ケリはついたが、俺達の名誉の為に断っておいてやる。・・・お前の女神の祝福は、とびきりの女んとこに行くんだよ。心配すんな」

オリオン「・・・そうか。あぁ、よく解ったよ。そういや、さっきの神罰もきっとそれが原因だな」

ヘスティア「そうねぇ~。この弓矢はアルテミスのものだからぁ~。皆様がリッカちゃんと一緒にいて、受けていた僅かな残り香のような気配を、神殿がお迎えするために動いたのよきっとぉ~」

イアソン「アルゴノーツ船長の名に懸けて誓ってやる。女神アルテミスの祝福と尊厳は、必ず善き事に使われる。だから俺達を信じてみろ、オリオン!お前んとこの女神が選んだ人間を、オレらの旅を!」

オリオン「・・・・・・お前・・・」

イアソン「フッ、かっこいいだろ?」

「そんなキャラだったか?」

「おぃ!?」

「悪い悪い!・・・そだな、なら・・・」

ロマン『すまない!話の途中だが敵襲だ!えっとこれは・・・ケンタウロスか!?そこそこの数だぞ!?』

イアソン「はぁ!?」

オリオン「──オレが此処に構えてた理由の一つだ!アイツらの狙いも、クリロノミアなんだ!神の力で、好き勝手やろうとしてる奴等だ!」

イアソン「ヒャッハーかよ!クズがいたもんだ!ロマン!アデーレとマカリオスを下がらせろ、XX達を前に出せ!」

『了解!』

オリオン「!・・・力、貸してくれるのか?」

イアソン「当たり前だろうが!クズを生かしておくと面倒だ、さっさと潰すに限る!」

ケイローン『同僚が誠に申し訳ありません・・・』

ヘスティア「あなたとアルテミスちゃんの思い出の場所よぉ?護る理由なんて十分すぎるわぁ~」

オリオン「──サンキューな!」

オリオン(アルテミス・・・文句は勘弁してくれよ。お前の後を、託せる奴等に会えたかもなんだからな!)
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