人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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イアソン「おいおい!ヘルメス・クリロノミアをゴルドルフには渡さない方がいいってどういう事だ?絶対相性ぴったりなはずだぞ!?」

ニャル【確かに相性はいい。しかしダメだ。ゴルドルフ氏はムキムキになってはいけないんだ】

イアソン「・・・なんか、体質的な問題か?」

【いいや、単純に・・・太っていた方が貫禄と愛嬌があるというだけです】

「結局フィーリングとのチョイスじゃねーか!?」

オリオン「ねーイアソン・・・そっちのオレって熊ってマジぃ?」

イアソン「ノーコメントだ!フォームチェンジ出来るようになりゃあいいな!」

オリオン「・・・蠍に追われるのとどっちが辛いんだろうなぁ・・・よくやった俺!頑張った俺!」

ヘスティア「とても~、気が合う人達ねぇ~」

【ヘルメス・クリロノミアの説明は後だ。後はまぁ、落ち着きの証として・・・】

イアソン「?」

【たくさんの新鮮な食材を使った──馬刺はいかがかな?】

イアソン「ちゃんと濾過と分解したぁ!?」


苦労人!冥界の良識神!

「ねぇ、イアソン。ちょっと聞きたい事があるのだけれど・・・」

 

航路を変え、ギリシャの銀色の宇宙を進むアルゴー号。オリオンという三ツ星の狩人を仲間に率いれ、アルテミスの祝福の全てを手に入れた楽園一行は、その勢いのままに白銀銀河を渡っていく。さぁ次は冥界の神殿だ!・・・という最中、イアソンにむけて手を上げる娘がある。冥界の女神、エレシュキガルだ。先ほどから、彼女は襟を正し、身嗜みを整えていた。どうやらバビロニア冥界代表として、これから見える──

 

「あぁ、なんだハデスの事か?冥界の女神として粗相の無いように、ってか?」

 

「そ、それはそうよ。他世界の冥界を見れる、訪問するだなんてそうある機会ではないもの。相手を知り、親睦を深めると言うのは大切なのだわ。イザナミ大おばあ様の様に、慈愛とフランクさに満ちた方とは限らないんだから。礼節!大切だわ」

 

「そりゃあいい心掛けだ。じゃあ教えてやるか。あーと、ハデスはなー・・・そうだなー・・・」

 

エレシュキガルの言葉に頷き、考え込むイアソン。冥界の神にして地下鉱脈の神。富と魂を司り、生と死を司るギリシャの冥府の神。どこぞの夢の国では狡猾で意地悪なイメージで描かれ、そのイメージが人類史では強いのだが・・・

 

「・・・なんかしたっけか?ハデスって。確かオリュンポス十二神にもカウントされてないんじゃなかったか?」

 

「えっ!?」

 

「何言ってんだ。プレイボーイの俺なんかよりずっと肉食系だろー?ペルセポネーを地上から奪い去ったカッコいい神様だろぉ~!?」

 

「プレイボーイ!?人さらい・・・!?」

 

「ハデス様・・・俺もよくわからないな。まだ死んでないし」

 

「直接的にオリュンポスにもいらっしゃる事は少ないし、普通に生きていては出逢うことの無い神様ですし・・・馴染みが深いとは、言えませんね・・・」

 

そ、そんな!と嘆く気持ちとあぁ、やっぱり・・・という想いを味わうエレシュキガル。解っていた事なのだ。華やかな太陽や豊穣の神々と比べ、闇と暗きを受け持ち、死や疫病を担い担いがちな冥界の神は人気が出にくい、あまりにマイナーであるという悩みが付きまとっているという事が。オジマンディアスにも『冥界は暗い!好かん!』とキレられる程で枕を涙で濡らした事もエレシュキガルには一度や二度ではない。イザナミ大おばあ様が凄いのである。エレちゃん大敗北。いいのだわ慣れっこなのだわ・・・笑うのだわ・・・なんて陰気テンションになりかけたところ、見かねたケイローンが補足を行う。

 

『イアソン、オリオン。事実を印象悪げに伝えるのは止めるように。死を管理することは必要な使命、誰かがやらねばならないこと。冥界の神が無くては世界は立ち行きません。死の神は、不可欠な存在なのですよ』

 

「そうなのだわ!(ヒュバァ)」

 

『本来の神たるハデス神は心優しく、真面目で、誠実であり思慮深い神なのです。本来はゼウス神、ポセイドン神の兄であった神であり、父クロノス神との戦も姿隠しの兜を被り果敢に挑んだ勇猛さすら備えた、ヘスティア神と並ぶ程の良心と名高い神であるのです。エレシュキガル殿とも親交を深める事の出来る、素敵な神である事は私が保証しますよ』

 

一転、かなり高い評価を付けられしハデス。実際彼は富を司る神プルトンの名をも持ち、決して悪い神では無いのだ。イメージによる風評被害がとても大きい神なのである。そして・・・

 

『・・・その、非常に運が無いというか、貧乏くじを引きやすい神なので・・・並々ならぬ苦労をしてきた神なのです。具体的には・・・』

 

具体的には彼はオリュンポスの神に数えられない時がある。神々がもたらす宴にも呼ばれなかったり、そもそも誘いが届かない事すらもある。何故か?単純明快、誰も冥界に行きたがらないことと、業務や責務が忙しすぎる為である。生き物が全く死なない日などない。それらの処遇や裁きを行うために、彼は付きっきりでいなくてはならないのだ。浮かれている余裕など無いのである。ゼウスやポセイドンと違って。

 

「そ、そんな・・・で、でも!その真面目で誠実な人格が評価されて冥界を託されたのでしょう?やはり見ている人は見ているのだわ!」

 

『いえ、くじ引きで決まりました』

 

「くじびっ、・・・え?くじ引き?」

 

『はい。天空、海、そして冥界。ゼウス、ポセイドン、ハデスの三柱はそれぞれの担当をくじ引きにて決めたのです。そしてハデス神は哀れ、冥界を引き統治を任されてしまいました。姿消しの兜で敵方の武装を奪う活躍を果たしたというのに・・・同情と憐憫の念に堪えません。ハデス神でなければ下界は八つ当たりで滅んでいたでしょう』

 

「それに~、前言ったみたいに~・・・我が子が王座を脅かすと予言を受けたお父上がハデスと私から先に呑んでぇ~、吐き出すときは逆だったからぁ・・・私達は三男三女になってしまったのよぉ~。ハデスからしてみれば理不尽よねぇ~・・・」

 

長男から末弟に落ち、成果に身合わぬ僻地に飛ばされ、それ以降省みられることは少なく、冥界のイメージで後世には悪役として使われ語られることはとても多い。それがハデスという神の在り方にして、普遍のイメージというヤツなのである。その踏んだり蹴ったりぶりに、エレシュキガルは開いた口がふさがらなかった。

 

「ハデスのエピソードならとっておきのを知ってるぜ!有名な話だが、ハデスはとある日豊穣の女神ペルセポネーに恋をした。一目惚れで、なんとか気持ちを伝えたいとゼウスに相談を持ちかけた訳だ。相談相手がゼウスってだけで面白いよな!」

 

デートどころか女性と話すらしていなかった自分でも、気持ちを伝えられる手段はあるだろうか。そう打ち明けたハデスに、ゼウスはこう返したのだ。『女は皆、強引なのが好き』。真面目にて誠実極まるハデスはそれを真面目に実践し、なんと罠をかけてペルセポネーを略奪してしまったのである。最早属性レベルで異なる者のアドバイスを真に受けた最悪の事態である。

──だが、大事に至ることは無かった。ハデスは誠実であった為、地上に帰りたいと嘆くペルセポネーに何一つ乱暴をすることなく返還させ、その人柄に惹かれたペルセポネーは自らの意志でハデスの妃になる事を決めるなど、その人格は理性的であることを示すエピソードが存在しているのだ。そして、何より傑作なのがそのバレた瞬間のやりとりである。今でもそれは、ギリシャの語り草だ。

 

「ペルセポネーの母、デメテルはそりゃあ怒ってゼウスを問い詰めたさ。ゼウスはめんどくさかったのか、ハデスが勝手にやった事だとしらばっくれた。そしたらそんとき、デメテルはなんて言ったと思う?」

 

「はいはいイアソン君!『心優しいハデスがこんな酷い事をすすんでなさる筈がありません!あなたの入れ知恵であることは分かっているんですよ!』でーす!」

 

「信頼に篤いよなぁハデス!逆の意味でとんでもなく信頼されてたよなぁゼウス!」

 

『全く嘆かわしい事です。この一件にてデメテル神は豊穣をもたらす仕事をボイコット。後に見かねたゼウスが直談判し、地上にペルセポネーを帰すのです。その出来事があって、ペルセポネーが冥界にいる間はデメテルが仕事を放棄するため、四季が生まれ、なにもしない日はそのまま冬という状態へと変化したのです』

 

「冥界の神聖果実がザクロになったのも、冥界でのやり取りが元になってるんだって聞いた事のあるぜ!やることなすこと真面目だよなぁ・・・」

 

「安心しろよエレシュキガル!ハデスに限って、そんなことする筈が無いってのがホントだ、気軽に行け気軽に!」

 

「大丈夫だって。もしもの時に戦うのなら、俺達がきっちり守るからさ!存分に挑んでいけ!」

 

「・・・なんて・・・なんて苦労人なのだわ・・・」

 

顔も見知らぬハデス神。彼女は彼を忍び、頷く。そうでなければあまりにもいたたまれず。エレシュキガルをまだ見ぬ死の神へと深く頷くのだった──




マンドリカルド「あ、お帰りなさいっす。ヒートアップしてましたが、大丈夫っすか?」


エレシュキガル「・・・リカルド。もしこれからハデスさんに会えたなら、一緒に仲良くな世界を作る持ちかけをするのだわ」

リカルド「ど、どうしたんですか急に・・・」

エレシュキガル「誰にも理解されないのは、辛いことだものね──」

エレシュキガルはその話を聞き、ハデスにまず与えるものを見出だした。

それは、安らぎ、運気上昇など。とにかくハデスを応援したくてたまらないエレシュキガルであったとさ──

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