人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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イアソン「なぁあんた。あのデメテルの娘だよな?なんかイメージと違くないか?なんつーか、気が強くない?」

ペルセポネー【メソメソ泣いていては冥界を支える神の妻ではいられません。強くなる必要があったのですわ。夫のお尻を蹴り飛ばせるような強さが。それが私を鮮烈に奪った神ハデスへの礼儀!!】

オリオン(可憐なままだと神連中の食いもんだしなぁ・・・本当にギリシャでは清楚とか嫌なフラグなんだわ・・・)

ペルセポネー【神々の兄として在りながら、僻地に押し込み雑務を任せきりにし遊び呆けるゼウスを初めとしたオリュンポスの連中!いつか私の夫が、然るべき権利と威光を以て神々の頂点に勝ち上がりますわ!覚悟の準備をしておきなさい!】

ケイローン(・・・?今、それが絶好のチャンスなのですが・・・)

ペルセポネー【見えましたわ!あそこが我等の神殿でしてよ!】


ハデス神殿

ナイア「全くの無傷です・・・驚きました・・・!」

マカリオス「ここだけ、争いも起きてないのか・・・?」

ペルセポネー【争い?なんの話ですの?】

イアソン(・・・いやいや、まさかな。まさかこんな一大事にそれは無いだろいくらなんでも・・・)

?【ペルセポネー!ケルベロス!】

ロマン「うわっ!?」

【無事だったか!あぁ、良かった・・・急に送られてきた魂が増えて身動きが取れなかったんだ!本当に良かった・・・】

ペルセポネー【ご心配なく。あなたの知己・・・そうですわ知己!聞いてませんわ!!あなたいつの間に私に知らぬ交友を結んでいましたの!?】

ハデス【えぇ!?】

ペルセポネー【皆様!積もる話は神殿でなさいましょう!さぁハデス!あなたの態度で真偽を見極めますので!お話をなさってくださいませ!】

ハデス【は、はい。皆様、では、私の神殿へ・・・】

マンドリカルド(ピンピンしてるっすね・・・やっぱり冥界の神はただもんじゃないってことっすか)

ロマン(ど、どうかなぁ・・・?)

なんやかんやで、一同は神殿に招かれる──


アイツ嫁の事になると早口になるよな

【改めて、よく僕の嘆願に応え我が妻と忠実なる門番を御救援してくださった。皆様の活躍と勇気、義勇溢れるその魂に心から敬意を表し冥界の神の前に一個人として御礼を言わせていただくよ。ありがとう、蒼銀の勇者たち。ありがとう、可憐なる女性達。我が妻、我がペットに代わって万感の謝礼を告げさせてほしい】

 

物腰丁寧に、そして柔らかく誠実に頭を下げる、白髪と切れ長の紫眼、高い鼻に端正極まる美貌に透き通る美白の肌の美男子。毒々しく禍々しい鎧にマントの出で立ち、腰まで伸びた白き毛髪が見るものに畏怖を与えるが、帯びた表情と物腰の柔らかさは、まるでお伽噺の王子、貴公子の様な印象を懐かせる。彼こそが、冥界を一手に担う苦労人にして支配者。ハデス神その人であったのだ。

 

「あ、いえ、こちらこそ御丁寧に・・・」

 

「ギリシャじゃあ神々は大抵威厳の為に男は年食っているもんだが、やっぱりハデスサマは若かったな。とことん貶められるのが付き物で同情しちまうぜ」

 

ギリシャ体系のならわしとして、ゼウスを始めとした神々は勇壮かつ威厳を表すために歳を経た姿で描かれることが多い。雄々しく雄大さを表す為だ。それに対しハデスの肖像画は若々しいものばかりだ。敬いが歳に出るなら、ハデスへの印象は察するものである。やっぱり生来の苦労人であった。

 

【ペルセポネーは最初から気丈な訳ではなかったんだ。僕やケルベロスを叱咤激励してくれる様に強くなることを選んでくれてね。ケルベロスも見た目に似合わず大人しいだろう?番犬、守護者としては優秀だが僕に似てしまって覇気にかけてしまっていて・・・ペルセポネーの剣幕に驚いてしまっていたならごめんよ。彼女は本当に僕には勿体無い良妻賢母で】

 

(めっちゃのろけてくるなこの冥界神・・・)

 

【まぁ、ハデス?そのように解りきった本当の事を言うのは嬉しいのですが、あなたの事もきちんと話さなくては。さぁ!あなたが何者か高らかに宣言致しましょう!大きい声で!!】

 

【え、僕?・・・・・・・・・・・・・・・ハデスです。いや今のは、ハデス、と敬語のですを合わせた言葉でギャグや洒落とかじゃなくて・・・】

 

【まーたその様な事を気にする!あなた解っていますの!?わざわざ冥界におわすあなたを気にかけ助けに来てくださった恩人なる方々でしてよ!きちんと友好な態度を見せ!威厳にて圧倒しなければならない局面で何を気後れしていますの!?胸を張りなさい!誇らしく雄々しく隣人と並び立つのです!】

 

【い、いいよ・・・ペルセポネーとケルベロスが無事で、君達を助けてくれた事実だけで・・・】

 

【【【(スンスン)】】】

 

(とうやら、夫婦関係はペルセポネー側が強くならざるを得なかった様ですね・・・)

 

ケイローンの言葉通り、ハデスは感謝と礼節は遵守するが自身の事になると口数が少なくなる。極めて自己主張が薄い神のようだ。イアソンとオリオンが試しに会話を振ってみる。

 

「あんた、冥界の統治を真面目にやる頑張りやさんだよなぁ」

 

【そう、かな?ほら、誰かがやらなきゃいけない仕事は大抵誰もやりたがらないから、じゃあ僕がやればいいかなって・・・そんなに偉くないよ・・・うん・・・】

 

「可愛い嫁さんだよなぁ!」

 

【そうだろう!?始まりはとても強引で無礼で、悪い事をしてしまったけれど・・・僕にとっては自慢のお嫁さんだよ。僕の至らなさで夫婦関係が悪化したことは、申し訳なく思っているんだ。僕には欠かせないんだ、ペルセポネーは】

 

どうやら、自身の事はあまり重要視していない奉仕体質なようで。神らしい威厳を押し出して来る事のない善良さを持っているようだ。その人柄は、自身と妻の評によく現れている。

 

「ハデスちゃんも、ペルセポネーちゃんもいつもお疲れ様~。私達、罰とか与えられたりしないのかしら~、大丈夫~?」

 

【ヘスティッ、・・・・・・大丈夫、です。僕がそちらの娘に助けを求めたので、同盟者として招いた形を取りました・・・はい・・・あの・・・】

 

「やっぱり、あの声はあなただったのね!」

 

【あなたもいらしましたのね、ヘスティア神。ならばザクロも裁きも不要でしょう。そして、我等の冥界を荒らしに来たわけでも無いことを認めます。私達、世情にはとても疎いので。ハデス!しゃんとなさい!我々の同盟者と認めたならば対等の付き合いなのですよ!あなたが尻込みしていては示しが付きませんことよ!?】

 

本来なら生者は冥界に訪れられず、例外的に処罰を与えられねばならない。それをハデスは見越してあらかじめエレシュキガルに救援を求めた。そうすることで、自身が望み求めた一行と立場を保証出来るからだ。狼藉者と裁きを下すことも無い。消極的なだけで、彼は妻と番犬、そしてアルゴノーツをも護る聡明さを持つ神なのである。だがその事を、彼は決して驕ることはない。

 

【無事で良かったです。冥界名物のザクロをお土産に持っていってください。あ、冥界滞在の効果はありません。ただの美味しいザクロですから】

 

(普通に土産をくれた!?)

 

【僕の宝を護ってくれた御礼です。僕に出来る事があればなんでも言ってください。力に、お役に立ってみせますよ。ペルセポネーやケルベロスを助けてくれた恩に報いたいですから】

 

(なんて事だ・・・まごうことなきいい神じゃないか・・・さっきから御礼しか言われてないぞ・・・!)

 

ロマンの驚愕の通り、ハデスは恐ろしきイメージと外見に似合わず極めて友好的であった。エレシュキガルにも力を貸してくれたこと、予め客人として先手を打っていた事。優しいだけでない手腕と愛妻家故の人当たりの良さをも感じさせる好漢であることに疑いはない。今なら築ける、いい関係を。イアソンはエレシュキガルに合図を贈る。

 

「──ハデス神、並びにペルセポネー女神!私達はいま混迷の極致にあるサーヴァントユニヴァースを糺すために奔走しているのだわ!そしてその為に!少しでも有用な戦力が必要なのです!ですからどうか・・・」

 

【・・・!】

 

「どうか、力を貸してはいただけませんか?今、この宇宙の秩序は死んでいるのです。ハデス神の御力があれば、きっと・・・」

 

きっと、銀河警察の施設と其処に眠るスペースエレシュキガルは甦る。なんとしてもハデス、そしてその神殿と祝福であるクリロノミアが必要になるのだ。なんとか助けを借りたいとエレシュキガルは懇願する。ペルセポネーはハデスを見やり、ハデスは頷いた。

 

【えぇ、僕達の力が必要なら喜んで。親愛なる隣人にならば、僕達は協力を惜しみません】

 

【ハデスに声を掛け、冥界と偏見を持たずにいらっしゃったあなた方の慧眼と敬虔さに免じ!我等冥界夫妻は助力を御約束いたします!・・・ハデスを忘れずにいてくださって、感謝いたしますわ。優しき皆様】

 

【【【ウォン!】】】

 

冥界の神、女神、番犬は迷うことなく協力を申し出た。それは本来恐るべき、或いは忌避される事が当たり前である者達にとっても嬉しい申し出だったのかもしれない。頼られることに、彼等は迷いを見せることは無かったのだ。

迷いを見せることは無かったのだ。

 

(すげぇすんなり行ったな今回!?)

 

(言ったでしょ~。話せば解ってくれるのよ~)

 

「よろしくお願いするのだわ!あの、えっと、ハデス様・・・」

 

【ハデスでいいですよ。もしくはプルトンでも呼びやすい方に。僕達はこれから、仲間になるのですから。いいかい、ペルセポネー?】

 

【ハデスがそうしたいのならば、私に異論はありませんわ。ただしくれぐれも、ハデスに妙な気は起こさないように。流されやすいので、彼は】

 

極めてスムーズに同盟を結んでくれる冥界の夫婦達。かつてないスピードの同盟に、沸き立つアルゴノーツ達。

 

・・・だが、しかし。ハデス達には、懸念すべき事態が一つあったのだ──




ハデス【あぁ、そうそう。力を貸すのはいいんだが・・・】

イアソン「ん?」

【何かそんな恐ろしい事態が外では起こっているのかい?なんだか冥界が忙しくなってきたのは解るけど、ゼウス達がまたトロイアでも始めたのかな?】

イアソン「・・・は?」

ペルセポネー【ヘラやアテナは何をしてらっしゃるの?私達より先に声はかけなかったのかしら?嫉妬が怖くありませんの?あの魔獣は一体なんなのかしら?】

ケルベロス【【【(オルトロスを悼んでいる)】】】

ケイローン『あぁ、成る程・・・』

オリオン「もしかして・・・」

ハデス【僕達を真っ先に頼ってくれるなんて、君達死期が近いのかな?ゼウスやポセイドンには声をかけたかな?】

ペルセポネー【一日所長の話、とんと聞きませんわね。あの方は何をしていらっしゃるのかしら?】

イアソン(こ、こいつらッ!まさか、まさか・・・!)

全くぶれない、動じない理由。それはまさにこれ。そう、彼等は──

ヘスティア(ぜーんぜん、宇宙の流れについていけてなかったのねぇ~・・・)

どんな状況すらも把握していない、度を越した世間知らずであったのだ──

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