人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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イアソン「このまますぐに攻略!・・・と行きたいが、宇宙の長旅にはきちんと備えなきゃな。ナイア!お前の親父の別荘とハデスの神殿をくっつけるよう親父に頼めるか?」

ナイア「お任せください!」

イアソン「XXはハデスの神体にデータ入れとけ。警察手帳的なやつをな」

「解りました!」

イアソン「ロマニはケイローンと座標照会!ダ・ヴィンチはハデス神殿の把握とハデス神体のデータを借りとけ!解析しない手はないからな!アデーレ、ヘスティア、マカリオスは休め!オリオンはペルセポネーに接近禁止!ラクシュミーは見張りだ!俺は寝る!!」

オリオン「なんだよぅ!まだなにもしてないぞー!」

ペルセポネー【お誘いには乗りますわよ?あなたがハデスより素敵ならば、ですが】

オリオン「・・・き、筋肉の量ならワンチャン・・・」

ペルセポネー【ハデスはああ見えて・・・パワフルですのよ?】

マンドリカルド「あの、俺は・・・」

イアソン「散歩でもしとけ!」

~ロビー・休憩室

マンドリカルド「神殿つっても、なんか未来的な場所なんだな・・・」

(・・・ハデスさんか・・・ちょっと話、してみたいかな。同じ陰キャとして色々・・・)

「なーんて、あんな有能な神様がこんな休憩室にいるわけねーよな・・・」

ハデス【(ビクッ)】

マンドリカルド「!?」

(い、いちゃったよ・・・!)

「・・・・・・ど、ども」

【こん、にちは。あはは・・・】

(・・・か、会話!会話続けねぇと・・・!)



陰キャであるならば、一生に一度は夢見る『リア充』の称号

「・・・あの、すみません。質問、いいっすか」

 

陰キャは陰キャを知る。陰キャ同士は惹かれ合う。例えそれが廊下であろうとロビーであろうとも。具体的にはマンドリカルドは休憩室のロビーで出逢ってしまった訳で。経験上自分から切り出さねばずっと埒が開かない沈黙が続くことを理解していたマンドリカルドは、勇気を以て彼に話し掛ける。絶世の美男子にして、オリュンポスの冥神・・・ハデスにだ。

 

【な、何、かな。ぼ、僕に答えられる質問だと、嬉しいのでしてございますが・・・】

 

ハデスはハデスで、永い間妻と番犬を除けばたまにやってくる伝令神の言葉と物言わぬ魂しか相手取らない神な為、オフモードだとどうしても会話能力の拙さは拭えなかったりする。それでも対等の隣人と認めた為に会話と質問に応じる姿にマンドリカルドは勇気付けられる。この神は、いい日陰神だと確信を持ったのだ。今なら行ける。確信し、言葉を紡ぐ。

 

「ハデスさん、自分の身体や至宝まで俺達に託してくれましたよね。それはめっちゃ嬉いし、超助かるっす。でも、その・・・あの・・・」

 

【あ、あぁ・・・・・・】

 

「・・・お、惜しかったりはしないっすか・・・。ハデスの兜や、自分自身の本体も。いやそもそも、自分を冥界に押し込んだ連中の為に戦えるその心構え。その秘訣とかを、よかったら教えてもらいたいなぁ、と思いまして・・・」

 

かつてデュランダルや栄光を求めあちらこちらを冒険し、そしてそれを手放した儚さを知るマンドリカルドだから解るその潔さと尊さを躊躇いなく捧げるその高潔さは何処から来るのか。

 

無事の保証はない。もしかしたら負けてしまい、全てを失ってしまうかもしれない。宝も、妻も、自分自身もだ。自分は普通でマイナーなサーヴァントなので、もし同じ立場だったら、本当にハデス神と同じ選択を行えるか自信がない。それが英雄として、どんなに尻込みし臆病風に吹かれると解っていてもだ。どうしても、失う怖さが先に来る。それを、ハデス神は躊躇わず決断した。

 

(神様だからなのか?それとも実は陽キャだったのか。知りたい。そこんとこ、ハデスさんはどんな判断でやったんだ・・・?)

 

【・・・そう、だね。僕の、あくまで僕の考えだよ。真似しろなんて言えないし、あくまで一つのケースとして考えて、ほしいかな。そして、断っておくけれど・・・】

 

長身、美貌、堂々たる装飾。しかし申し訳なさげな目線と所在なさげな動揺を見せるハデス。安心するわぁ、とニッコリするマンドリカルドに、ハデスは誠実に返答を返す。

 

【至宝たる兜も、なんなら僕自身も。僕にとってはそんなに大事なものじゃあないんだよ。溢れる富も、輝く金脈も、僕にとっては意味の小さいものだ。・・・富は良質な生には必要かもしれないが、決して全てじゃない。・・・ぼ、僕にとっては・・・妻と、その妻と共に生きる世界以外に必要なものは何も無いんだ。愛する妻と、今を生きるだけでそれでいい。だから、僕には妻の生以外に拘るものは無い・・・のさ・・・うん】

 

「・・・なっ・・・」

 

(め・・・めっちゃカッコいいやつ!愛する者の為になら命だって惜しくない!気弱な態度でも隠せてない・・・紛れもなく!ルックスもメンタルもギリシャの異端児なる御方だった・・・!)

 

休憩室で雷に打たれるマンドリカルド。彼は自分より妻が、妻が生きる世界が何より大事と言って退けたのだ。もうその時点で、その時点で自分とは格が違う。その他にも、ハデスの言葉はマンドリカルドを打ちのめした。(自業自得だが)

 

【こ、これはよく言われるんだけれど、僕は冥界の統治を疎んだ事は無いんだ。強がるな、本当は我等が羨ましいんだろなんてポセイドンやゼウスには言われたけど・・・】

 

(兄上方、ナチュラルにクズい・・・)

 

【冥界の統治者なくば、現世と冥界・・・生者と死者の線引きがなくなり世が混乱に陥ってしまう。廃棄物の処理や下水道の管理だって、誰かが必ずやらなくちゃいけない。それと同じなんだ。くじ引きで決まってしまったけれど、僕は冥界に来れて良かったと思っているよ。・・・誰もやりたくない事を誰かが嫌々やらなきゃいけないくらいなら、僕が率先してそれを引き受ければいい。そうすれば、皆は笑顔でいられると思うから。そ、それに・・・その・・・】

 

ペルセポネーや、ケルベロスにも会えたしね。そう締めくくるハデスの気高さと高潔さに吹き飛びかけたマンドリカルドに、質問の返礼を誠実に返すハデス。

 

【世界の為に何故そこまで、といった質問は・・・そうだな。神故の視点というか・・・世界は、沢山のもので成り立っているだろう?君達人間でいえば、電力、風力、食料、建築・・・それらは全て、他の人々がやってくれているから成り立っているよね?】

 

「は、はい・・・もちろんっす」

 

【それと同じなんだ。結果的に、ゼウスやポセイドンは僕に冥界を押し付けた形になった。君達が客観的に見て僕が彼等を恨んでいると思うのは至極当然だと思う。それを否定はしないよ。同情的に見てくれて、むしろ嬉しいよ】

 

ペルセポネーは実際、恨み言ばかりだしね・・・。そう遠い目をしながらも、彼に迷いと、悩みは存在しなかった。その在り方を、毅然と告げる。

 

【でも、そんなゼウスやポセイドンが統治している天空も海も、この世界の一部なんだ。ペルセポネーやケルベロスが生き、冥界に来た魂たちが懸命に生きた世界の一部。だから、僕はそんな世界の一部を憎むつもりも、恨む気持ちも持っていない。怨みや憎しみは人を醜くしてしまう。最愛の妻や、生きる生命の世界を僕の感情だけで左右はしちゃいけない。此処は、僕が妻と共に生きる世界なんだから】

 

だから護る、だから救う。躊躇わないし迷いなどない。自身の境遇よりも、自身の全てよりも大切なものが世界に満ちている。妻が見上げる空が落ちてしまいそうならば、なんとしても支えよう。妻が涼むであろう海が枯れそうならば、なんとしても満たしてみせよう。世界が折れそうならば、力を合わせて支えよう。何故なら、その世界は自身が愛する世界であり、妻が生きる世界であるのだから。世界を救うことが、生を護り、妻を護り、冥界を護る事に繋がるのだと。ハデスは心からそう告げた。それが、自身の全てを冥界に捧げた男の(誰も来ないので)明かさなかった胸中。暗き地の底で職務を全うし続けた神の矜持であったのだ。

 

「・・・嫁さんの為に、嫁さんと生きる世界の為に。とんでもないちゃらんぽらんな兄貴達や自身をハブったオリュンポス連中だって助ける・・・か」

 

マンドリカルドはゆっくりと頷いた。そして、全てを理解した。頭ではなく心で理解してしまった。──この人でなければ、冥界は絶対に治められない。この人でなければ、冥界は絶対に保たれない。

 

(大事な人の幸せが自分の幸せだなんて臆面なく言えるのもそうだし、独り善がりじゃなくて躊躇いなく行動に移せてる時点で格が違う。陰キャなんかじゃ、彼は陰キャなんかじゃ断じてねぇ。エレちゃん様と同じだ。自分がそう思ってないだけで、その実チヤホヤされなきゃおかしい陽の者!つまり【リア充】!!──俺なんかが太刀打ちできる隙なんざ、何処にも無かった・・・ッ)

 

【ま、マンドリカルド君?どうしたんだい?】

 

「ハデス様。あんたぁ・・・もっと自信を持つっすよ。あんたは陰キャなんかじゃない。俺の側なんかじゃ、絶対に──」

 

(心が)車田落ちしたマンドリカルドが悟る。エレシュキガル、そしてハデス。彼女は、彼等はまさに──

 

(俺ら非リアの陰キャの夢にして遥か遠き理想郷。『陰キャにも優しくしてくれる性格イケメンな美男美女』──幻想だからこそ、何者にも汚されないって事なんだ──てぇ、てぇ・・・)

 

【マンドリカルド君!?マンドリカルド君ー!?】

 

静かな納得と共に、マンドリカルドの精神は頭から地面に叩き落とされた──




マンドリカルド「あ、ありがとうございました・・・いい、キラメキでした・・・」

ハデス【だ、大丈夫かい!?なんだか死にそうだよ!?寿命と食い違う死ならきちんと伝えてほしい・・・!】

マンドリカルド「いえ、大丈夫・・・ちょっとてぇてぇ成分がですね・・・でも」

【?】

「・・・俺の推し神、ハデス神とエレちゃん様と、ヘスティアさんになりましたっす。一緒に戦えて、光栄です。一緒に頑張りましょう・・・」

【もちろんだ!・・・思えば、こんなに僕の話を聞いてくれたのはペルセポネー以外では君がはじめてだ・・・!よ、よし・・・!マンドリカルド君!】

マンドリカルド「は、はい!」

【良かったら・・・僕と、友人になってはくれないかな?だって、君だって今は世界を救うために戦う英雄、リア充なのだろう?そんな君と友達になれたなら・・・】

マンドリカルド「お、お、俺が?ハデスさんと友達?リア充?────」

【ま、まずは知り合いからで・・・!?マンドリカルド君!?マンドリカルド君ー!?】

「恐縮と喜びが・・・キャパオーバーっす・・・」

自身がリア充であることを処理しきれず・・・ハデスの腕の中でマンドリカルドは静かに息を引き取った──


マンドリカルド 死亡

死因 尊敬性心臓麻痺(尊死)

後にオリオンの心臓マッサージによって蘇生

マンドリカルド「(内臓が)ほぼ逝きかけました」

ハデス神とメアドを交換した

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