人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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イアソン「よし!お前ら休憩は終わったな!乗り込め!目的地はポセイドン神殿!そこに浮かんでるポセイドンの死骸だ!」

オリオン「死骸っていうなよー!まぁ死骸なんだけどな・・・」

マンドリカルド「ハデス様、素敵なカレー屋があるんすよ。ぜったい行きましょう!」

ハデス【うん!楽しみにしているよ!皆、どうか気を付けて!】

ケイローン『ありがとうございます、ハデス神。必ずや、平穏を取り戻しましょう』

【そちらの皆様も、どうか無事で!・・・ペルセポネー!】

ペルセポネー【よろしくてよ!それでは、神体ハデス!発進いたしますわ!】

イアソン達の発進に合わせ、顕現する神体ハデス。──その偉容は、一同の畏怖と崇敬を呼び起こした。

マカリオス「な、なんて・・・なんて大きさだ・・・!」

数千m、ともすれば㎞はあるであろう黒き禍々しい艦のボディ。漆黒のエーテルを推進財にし進む刺々しいフォルム。全方位に付けられた剣に鎌、命を奪う為の兵器。艦首には女神像が祀られ、禍々しさと荘厳さを顕すハデス神の真の姿。

ペルセポネー【それでは皆様!また御逢いしましょう!必ずや無事であらせられますように──!!】

マカリオス「で、でかい・・・」

アデーレ「これが・・・ハデス神の真体・・・」

ハデス【艦首にはね、ペルセポネーを模した女神像があるんだよ。・・・気付いてくれたかな?】

皆知ってる・・・。イアソンの船と比べ数千倍の巨大さを誇るハデス神の見処を聞きながら、イアソン達はワープし、目的地へ向かうのであった──


海神ポセイドンの功績

「親父・・・いや、ポセイドンかぁ・・・くたばってたかぁ。そりゃあ良かったのか哀しむべきなのか・・・ビミョーだなぁ・・・」

 

ワープホールの中、ハデスより託された座標の下に整備された宇宙船が駆け抜ける新生アルゴー号。ポセイドンの亡骸を楽園に回収し、新生宇宙航行艦として生まれ変わらせる為に、ポセイドン神殿宙域に向かう最中である。オリオンはそんな旅路の中、青色吐息にて流れ去って行く星々を眺めている。

 

「えっと・・・オリオンさん。ポセイドン神の息子なのよね?ポセイドンとはどんな神なのかしら?」

 

「え、それ聞いちゃう?エレシュキガル様なんて言う善良極まる神様がそれ聞いちゃう?」

 

エレシュキガルの疑問に、苦笑いが隠しきれないオリオン。ポセイドン、オリュンポス十二神の中でもゼウスに次ぐ強さと威厳を持つ海と地震の神。オリオンの父にして、ハデスの弟にして兄である大海の支配者。その手に握る海神の矛と共に絶対の権勢を主張する偉大なる海神である事は疑いが無い。

 

『彼は海と地震、転じて物質の全てを掌握したとされる偉大なる神。その権勢と威光は、ゼウスを除き並び立つものはいないとされる程の存在です。ティタノマキア、ギガントマキアの伝承にも、ゼウス神側の重要な存在として名を遺しておりますね。まさに、偉容と力においては最強クラスの方と言えましょう』

 

「んー、まぁ力は強いよなー。このガタイも親父譲りなところあるしなー。まぁそんな神様だよ!そうそう!エレシュキガルちゃん、俺が言えることは一つだ!絶対にギリシャの海辺を一人で散歩しないようにね!絶対酷い目に遭うのは目に見えてるからね!ほら、あの・・・」

 

「カイニスな。アレもアレでカイネウスになった後はイキり散らしてたから同情する気にはあんまりなれないけどな。イニスはアレどんなアレになったらああなったんだ・・・?」

 

イアソンらギリシャ組の反応は、どうも偉大なる神を称え奉る雰囲気や表情にしては暗く重い。凄いには凄いんだけどさぁ・・・みたいな微妙なニュアンスである。ケイローンは、あくまで中立的に言葉を紡ぐ。

 

『信仰上、仕方ない部分はあるのです。神々とは人類が自然の脅威を崇め、畏れたもの。理不尽な現象が神となったのですから人に優しい神というのはおかしい。それでは何故大自然は恐ろしいのかの説明がつかなくなってしまいますからね。津波や嵐、地震といった側面を司るポセイドン神が荒々しいのはそういった事情もあるのでしょう。神々とは理不尽なものなのです。・・・まぁ、限度はありますが』

 

「端的に言って女性の敵だもんね。カイニス辺りとか息子の俺でも擁護出来ないもん。最低だもん。もう本当、俺のクズさとかはポセイドン譲りって事で!」

 

「血は争えねぇよなぁ・・・特にギリシャではなぁ・・・」

 

(そんなにも壮絶なのかしら・・・カルデアのアルテミスが女神channelで『リッカに近付くギリシャ神がいたらすぐ教えて!』なんて真顔で言うくらいだから凄いんだろうけど・・・)

 

【知りたいのなら教えて差し上げますわ!!】

 

歯切れの悪い男性陣に割り入ってきたのは、通信を送信してきたペルセポネー。そう、彼女にとってはポセイドン神に向ける慈悲などなく、顔も合わせたくない不倶戴天の間柄。何故ならば。

 

【あの海神!!殺しても飽き足りないあのポセイドンの御方は!私の母!デメテルを無理矢理組伏せた過去がおありですのよッ!!馬になって!馬になって!!こんな屈辱が在りまして!?私の母を!よりにもよって馬になって・・・ッ!そして、そして・・・あぁあぁあぁ・・・!!なんと、なんと忌々しい・・・!ハデスの血を汚したおぞましき二柱・・・ッ!!】

 

恐ろしい剣幕にて狂うペルセポネー。・・・あくまで伝承であり、サーヴァントユニヴァースや機械神達の実際の行為かはぼかすのだが(プライバシーの為)、ペルセポネーはゼウスとデメテルの間に生まれた子である。『デメテルの合意なくゼウスが組伏せた事により』生まれた子なのである。そして更に馬になったポセイドンに組伏せられ、(ゼウスの入れ知恵とはいえ)ハデスに娘を浚われた事のある女神がデメテルなのである。彼女の愛を勝ち取れたハデス神。まさに奇跡と言っていい。

 

「・・・カイニスニモヒドイコトシマシタ・・・ハイ・・・」

 

オリオンもそれに気圧され背中を丸める。カイニス神はポセイドン神に寵愛を受け不死身の肉体と自らの矛を受け取るのだが、そもそも事の起こりが海辺を散歩していた貞淑を護りし純潔の乙女カイニスをポセイドンが愛した(慣用的表現)からである。何かしらのフォローなど一切ない。カイニスはその身にポセイドンの愛を受けたのである。海辺を歩いていただけで。非合意に、一方的にである。

 

「なんかアテナと争って癇癪起こしてなかったか?メドゥーサとも関係持ってなかったっけ?」

 

『あぁ・・・都市アテネの守護神就任の話ですね』

 

イアソンとケイローンが話すその逸話。アテナイ・・・後のアテネと呼ばれる都市の守護神に相応しいのはどちらかとアテナとポセイドンは争った。ポセイドンは自らの権勢にて塩水の湖を湧かせた。勝ったなガハハと確信したポセイドンに対しアテナはオリーブの木を贈る。オリーブの方が多様性かつ汎用性に満ちとるやんけと民たちはオリーブの木を歓迎。アテネはアテナのものとなった。しかしここで納得いかないポセイドン。なんと津波を起こしてアテナイを消し去らんと癇癪を起こす。ゼウスに諫められ留まったが、とにかく短気かつ粗暴さが目立つ神と言えるだろう。

 

その後、ポセイドンはメドゥーサを見初め親交を深めていくのだが、よりにもよってポセイドンは処女神たるアテナの膝元アテネの下で逢瀬を繰り返したのだ。勿論対決に敗れた報復の意味を多分に含めた行動である。

それに大層腹を立てたアテナ、同時にメドゥーサの麗しき美貌、姉妹を深く愛する優しさに女として思うところがあったのかポセイドンと別れ帰路につくメドゥーサを襲撃。美しき髪を蛇に変え、麗しき目を見たもの全てを石に変える魔眼として変えてしまう。

これに嘆き悲しんだメドゥーサは形なき島に隠匿し、二度とポセイドンに会うことは無かったと言うのだ。

ギリシャ女神の思考回路として、『自らの力の及ばない相手には手を出さずその縁者に報復する』といった傾向がある。あまりにもやるせないのが、怪物に成り果てたメドゥーサ討伐をペルセウスに依頼したのが他なるこのアテナであるのだ。そしてメドゥーサの首を盾に武装する鬼畜っぷりである。ヘラクレス神の神々への評価が推して図れるものである。本当に最低である。

 

『・・・フォローはどこから行えばいいのかすら解りませんが、海を治める神である以上、その信仰は強大です。その躯で造る船は必ずや強い力になるでしょう』

 

「あー、息子として言いたいことは一つあるわ。なんで海の上を歩けるなんて祝福なの?アメンボ?アメンボなの?」

 

「ある意味ギリシャの体現ってヤツだな!どうだエレシュキガル、ポセイドンへ何か感じた事とかあるか?」

 

「じょ──女性の敵なのだわーーー!!」

 

絶叫するエレシュキガル。もしゼウスやポセイドンが楽園に来ることがあった場合の為に、もっともっと自身を高めていこう。そう決意させるに充分な程、ギリシャの男性神は色々と鮮烈なのでしたとさ──




イアソン「お、ポセイドンの話してたらワープアウトするみたいだな。大丈夫かー?起き上がったりしないよなー?」

ケイローン『問題ありません。ギルガメスの天地開闢の理の一撃は神々への致命傷となりました。ポセイドンは海に逃れましたが、自らの神殿で息絶えているでしょう』

オリオン「そだよなー。そうじゃなきゃ女の子神殿につれてかねーよなー」

エレシュキガル「・・・リッカには・・・ハデス神とヘスティア神関係しかお土産話にしないのだわ・・・」

イアソン「それがいい。よーしワープアウトするぞー!シートベルトしめろー!」

一同は和気藹々とポセイドン神殿宙域にワープする。亡骸を回収するだけの簡単な寄り道であるとの楽観もあった。


・・・しかし。そんな彼等を待っていたのは・・・


ポセイドン神殿 周辺

イアソン「何ぃいぃいぃいぃいぃいぃい!!?」

暴風雨巻き起こる空、荒れ狂う海溝。それらをものともせず蔓延る魔獣達。僅かでも操縦ハンドルから手を離せば即座に転覆する大嵐。

『これは、ポセイドン神の権能!?ポセイドン神殿が巻き起こしているのですか・・・!?』

オリオン「なんだこの嵐は!?生きてたのか親父!?」

イアソン「それは後でいい!!手を貸せ艦体が持っていかれちまうぞぉぉお!!」

ポセイドンの神の力を手に入れるためには、嵐を乗り越えなくてはならない。──慣用ではなく、実際に巻き起こる大嵐を、である。

其処は、暴風雨の中心地──
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