人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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「ねえ、オルガマリー?休まない?具体的にはこの、特異点が終わるまで」


「何をいってるんですか師匠・・・」


「なんだか、とてもとても嫌な予感がするのよ!凄く!」

「・・・ギリシャの皆、どうしたのかしら・・・?」


散る財、消えぬ財

「アンタたちの言い分はなんとなく解った。酔っぱらいをだまくらかす詐欺師って訳でも無さそうだしね」

 

 

 

事情を把握したドレイクは、反芻するように頷き、また酒を煽る

 

 

 

「アンタらはこのイカれた海を何とかしたい。その為には海をよく知る人間がほしい。それのアテが、海賊のアタシしかいないって訳だ」

 

 

「海賊とかはどうでもいいです!ドレイク姉御が必要なんです!」

 

「威勢がいい娘だねぇ・・・!アンタとは仲良くなれそうだ!そうだね、アンタらは商人的に伸びしろ抜群な商品だから、ここで投資しておくのも悪くはないんだが・・・」

 

ジロリ、とこちらに視線が向けられる

 

 

「問題はこっちさね。財宝男」

 

「ほう?我を値踏みするか、開拓者。貴様の審美眼、マスターとマシュを高く買う辺り、それなりのモノとは査定してやるが」

 

・・・どうも、嫌われてしまったようだ

 

 

「悪いね。顔も美形、羽振りもよし、気前もよしの男なんだろうけど・・・」

 

「・・・」

 

 

「アンタとアタシ、根っこのとこが致命的に合わないみたいな感じがするのさ。アンタ、財宝を無限に所持してるんだって?」

 

 

「然り。我が財は無限と圧政の究極。貴様らが一生をかけてさもしく集める財宝なぞ、我には芥子屑に過ぎぬわ」

 

「――相容れないのはそこだよ。アタシも財は大好きだ。いくらでもかき集めるし、いくらでも奪い取る。それが海賊、海に生きる者の生き方だ」

 

「――――」

 

 

――彼女は退かない。英雄王を前にして、けして

 

「けどね、アタシが財を集めるのは、嵐のように使いきるためさ!そこから見てみればアンタは全くふざけてる!減らない財なんて、海に生きる奴等の人生をひっくり返しちまうじゃないか!そこに全てがあるなら危険を犯す必要もない。バカ野郎どもと生命を張る必要もない。知らないものを見つける喜びもない。おっ死ぬかもしれないスリルもない。あぁイヤだイヤだ、考えたくもない!一人が財宝を独り占めなんて、この世の総てを手にいれてるなんて面白くないにも程がある!」

 

――それが、海賊の矜持・・・

 

 

「欲しけりゃ奪う!なけりゃ探す!苦労もするし、死ぬ思いもする!だけどね、ソイツを乗り越えて掴むから宝は価値がある!ソイツを使いきるから人生は楽しい!それが海賊!それがアタシの定めた生き方さ!アンタがどこの誰だろうと!この『生き方』だけは譲れないのさ!なぁ、野郎共!」

 

「「「「「うぉおぉおおぉ!姉御!イカすぜ――!!」」」」」

 

 

沸き上がる海賊の歓声

 

 

「――――」

 

 

「だからね。アタシがアタシでいるかぎり、アンタと肩を並べるわけにはいかないのさ。悪いけどね」

 

・・・器は何も応えない。どんな所感を、器は抱いているのか

 

「ギル・・・」

 

――自分は、・・・とても

 

 

「――ふ」

 

 

「あん?」

 

「ふ――はははははは!!はははははははははははは!!フハハハハハハハ!!」

 

 

「ギ、ギル?」

 

 

「――よい!気に入った!!」

 

 

――感嘆していたのだ。魂が震えていた

 

 

「はぁ?」

 

 

「それはそうよ!いくらさもしく浅ましくとも、賊は賊!そこには矜持があり、下らぬとも意地があり!確かな誇りがあろうな!それは事実!事実だとも!」

 

膝を叩き笑う器

 

 

――困難があるなら挑む。死にそうな思いをしても、乗り越える。それを乗り越えて掴むものには、確かな価値がある

 

 

その誇り高い生き方は――英雄王が愛する『人間』そのものの生き方だったのだ

 

 

これが海賊。これが星の開拓者

 

 

これが――人間の誇りを燃やし、歴史を変えた、一人の大海賊の輝く生きざま――

 

 

「よくぞ言った!そこには不可能を打破する可能性があり、そこには浅ましく輝く矜持がある!貴様の生き様、認めよう!フランシス・ドレイク!」

 

 

「お、おう・・・随分物わかりがいいじゃないか」

 

「普段の我なら弁明の余地なく串刺しよ。だが今の我は唯一無二のご機嫌王!あらゆる無礼は笑って流す!故に貴様の無礼は不問に処す!」

 

――むしろ、彼女には感謝したい

 

 

武器も振るわず、ただ自分の生き方だけで。この王に立ち向かったのだ

 

――お陰で、自分は早くも、素晴らしい輝きに触れることができたのだから

 

 

「う、ううん・・・参ったねぇ。こうも素直に通されると、初対面で突っ掛かったアタシがバカみたいじゃないか・・・」

 

「姉御がしおらしい!?お前ら伏せろ!槍が降るぞ!!」

 

「首刎ねて船首に垂らすよボンベぇ!!」

 

 

「で、でもどうするの、ギル?肩は並べないって・・・」

 

「あぁ、我は肩を並べぬ。ドレイク、貴様はこやつらに力を貸してやれ。我は貴様の助力はいらぬ」

 

「助力はいらない?じゃあ、どうするんだい?」

 

 

「何、簡単な話よ。――我は貴様を雇うのだ」

 

――そうだ。並べるのは無理ならば、自分は別の関係を選ぼう

 

 

「やとう、だってぇ?」

 

「貴様の腕を、貴様の知恵を、貴様の運命に我は投資し、貴様は振るう。つまり・・・我は上官!貴様は副官よ!」

 

「――」

 

「単純であろう?財の切れ目が我と貴様の縁の切れ目!これ以上後腐れない関係はあるまい!貴様は報酬目当てで我を使い、我は手腕目当てで貴様を雇う!完璧ではないか!」

 

「――ッ、あはははははは!なるほどなるほど!それなら後腐れもない!お互いのプライドも傷つけない!いいさ、生きるためなら泥水啜るのが海賊!羽振りがいい上官に仕えるなんて屁でもないさね!」

 

――うん。お互いを尊重した上での、打算的な関係。これが落とし処だと思う

 

 

「解った!このフランシス・ドレイク、マシュとリッカの仲間になり、そしてアンタに雇われようじゃないか!当然、惜しみ無く財宝をくれるんだろうね?」

 

「無論だ。精々報酬分の働きをして見せろよ?我を退屈させるな、開拓者!フハハハハハハハ!!!」

 

 

『ま、丸く収まった・・・のかな?』

 

『そうみたい。・・・よかった』

 

「よろしく!ドレイク姉御!」

 

「心強いです!」

 

「はいはい、任せときな!」

 

「そら、前金だ。受けとるがよい」

 

黄金の波紋から、ボトルを投げて寄越す

 

 

「――は?これ」

 

「香辛料よ。貴様の働き次第では、こんなものいくらでもくれてやろう」

 

 

「――ま」

 

「ま?」

 

 

「マジでぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇえ!!!!??」

 

 

バタンとぶっ倒れるドレイク

 

 

「フォウ!(今だ!)」

 

「姉御――!!!」

 

 

「なんだ。たかだか前金で倒れおって。先が思いやられるぞ?精々気張るのだな!フハハハハハハハハハハハハハ!!!」

 

 

――こうして、なんとか水と油の同盟は、雇用契約として果たされたのだった




「麻婆、胡椒・・・――香辛料・・・」


「――!!ひらめきました!」

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