人理を照らす、開闢の星

新生！発進、ヒーリング艦ヒュプノス！

～信仰集計中～

ナイア「ヒュプノス様」

ヒュプノス{･･･どうした？}

ナイア「ヒュプノス様の御家族たるニュクス様と、タナトス様は･･･」

ヒュプノス{･･･ニュクスは、夜を司る女神であり、夜そのものであった。それ故、ニュクスは世界と共に果てたのだ}

ナイア「はい･･･タナトス様は･･･」

{タナトスは、死を司る神。全てがサーヴァントたる世界において、死という概念は稀薄になってしまい、兄は自らを自然へと還元、意味消失を行ったのだ。･･･残るは、形見のみ}

ナイア「･･･家族との別離。本当に、なんと･･･悼ましい･･･」

{･･･悼むのか。神を、人が}

「･･･人が神を想う事の奇跡を、私は知っています。神を悼み、偲び、想う。私達は･･･人間は、いつの間にかそういった事が出来るようになったのです」

{･･･}

「･･･必ず、取り戻します。せめて、あなたが家族を想う、平穏なる時間を！おす！」

{･･･おす？}

「リッ、･･･私の生涯の親友がたまに行う、気合いの掛け声です。それでは！」

ヒュプノス{････････････}

---

【手に入れた収益はまとめて楽園職員の口座と王様に提供、と。これぐらい売れたならば、ニャルマネーイズパワーシステムで信仰還元は充分な筈だ。どうかな？ヒュプノス神】

ヒュプノス{──力が満ちる。信仰を感じる。･･･感謝する。期待に応えることが出来そうだ}

ノートパソコンに向かい計算を行い、信仰という概念を抽出。エネルギーとしてヒュプノス神に叩き込むニャル。そのエネルギーの形は、カルデアの霊基拡張ツールたる種火だった。無数極まる種火の焔が、ヒュプノスに注ぎ込まれていく。

「はわぁ～！燃えてるぅ～！ヒュプノスが燃えてるわぁ～！」

「お父さん、これは･･･！？」

【いやぁね、意外な事が判明したんだが。どうやらカルデアにおける叡智の焔･･･これはギリシャ神格『プロメテウス』の焔だと解った。プロメテウスが人理の危機の際にもたらす叡智。それを突き止め、ヒュプノス神に使えるようにチューニングした訳だ。要するに、非常に相性がいいんだよ。ギリシャの神の力にするのはな】

イシュタルのノウハウからパクったマネーイズパワーシステムにより、信仰を種火に変換しヒュプノスに注ぎ続ける。プロメテウスの焔は、やがてヒュプノスの身体に進化、そして変化をもたらし本来の力を取り戻させていく。

{──･･････！}

陽炎の様に頼りなかった翼は再び開き、隠匿の証だった牧羊的な服装は荘厳にして穏やかなローブ霊衣と変わる。羊をモチーフにした杖を持ち、絶世の美貌に輝く琥珀色の瞳、羽飾りをもたらす美しく整った短髪の青年像。眠りを支配し、共に歩むヒュプノス神の完全なる姿。その御神体が此処に甦る。力強く立ち上がり、空を見上げるヒュプノスの眼差しは天を射抜く。

「「「「「めぇ～！」」」」」

羊の合唱と共に、辺りの光景が一変する。暗き漆黒の夜空は、ヒュプノスの翼より出でるクリロノミアにより星とオーロラが瞬く。満天の星空と、何処からか流れてくる穏やかで優しい音楽。川が現れ、湖が現れ、眠るための棺が現れる。神殿たる領域が、ヒュプノスの復活に対し本領と真の姿を現したのだ。そこは平静ながら、人が夢見る『夢想』の世界がそのまま現れたような光景をもたらした。──眠りを司る神の、完全復活である。

{皆、大層な苦労を掛けた。伏して詫び、同時に感謝しよう。この身に懐いた力、決して無駄にしてはならぬ}

「良かったわぁ～！おめでとう～！･･･あれ？何か貰いに来たのでは無かったかしら～？」

{ヘスティア、目的は我がクリロノミアである。我が身と安寧を求める魂が在るならば、遠慮なくお前達に託そう。さぁ、持っていけ}

翼を開き、一ヶ所に風と静けさを纏め上げる。翼より猛烈に迸る緑と白の粒子。神威、そして眠りをもたらし精神の平静と鎮静をもたらすクリロノミア。本来の目的たる、ヒュプノス=クリロノミアである。信仰が万全となったヒュプノスは、領域全体を神殿として生成する。羊たちから、草木から、万全極まる量を供給出来たのだ。本懐は、此処に果たされたのだ。

「やりました！これでポセイドン神の精神の平静を引き起こし、ロックを解除することが出来るやも！」

【いいや大丈夫だ。何故か解らんが精神レベルが弱まっている。今それを使えば無用な抵抗をされずに済むだろう。いや本当に何故か解らんがな。ラッキーな事もあるものだ】

「ありがとうヒュプノス～！ハデスも皆も、オリュンポス神に数えられる子達だけが神様じゃ無いものねぇ～！」

我が子の事のように喜ぶナイア、ヘスティア。アルゴノーツ一行は休息をもたらし、所望のものを手に入れた。万事上々に運ぶ事だが、更に此処に嬉しい誤算が発生する。

{心より感謝しよう、皆の者。･･･そして、提案がある。我が身を、皆の役に立てることは出来ぬだろうか}

【お？クリロノミアだけではなく、御本人自ら助力をしていただけると？】

{あくまで、これは信仰を共有してもらったが故の本領に過ぎん。皆が本懐を遂げ、立ち去った際。再び消滅を待つのでは話にならん。──立ち上がることが出来たなら、歩き出さねばならぬのだ。神は、絶えず在らねばならぬのだから}

【～。そうですな、なら･･･】

「お父さん、それならば･･･銀河警察に就職、睡眠と安眠の守護神になっていただくのは如何でしょう？仕事に疲れた精神と魂を、ヒュプノス様に司り癒してもらうのです。精神と魂の澱みを祓う。それは霊体であるサーヴァントにもきっと有効な回復手段であると考えます」

ナイアの判断に、ニャルは手を打つ。確かに銀河警察程、安寧を渇望する施設はサーヴァントユニヴァース内に無いだろう。ハデス神、ヒュプノス神、ヘスティア神の地位向上に、決して悪い手段ではないはずだ。

「あ！なら冷凍睡眠中のエレシュキガルちゃんの解凍をしていただくのはどうかしらぁ～？きっとヒュプノスにしか出来ない事よぉ。ハデスと協力して、死と睡眠･･･無理ない労働と、休憩を二人で監督していただけたならぁ～･･･」

【労働環境の大きな改革に繋がる、か。メリットまみれの素晴らしい申し出だ。断る理由は無いな。──お願いできますかな？ヒュプノス神】

頷くヒュプノス神。それと同時に、草原中の羊たちが集まり、くるくると回り始める。その回転はやがて渦となり、大いなる神威となり──

{了解した。我の神体を──銀河警察に向かわせる}

『ふめめぇ～！！』

現れし、超巨大なる──翼を生やせし羊。あらゆる衝撃を跳ね返し、メンタルを癒す機能を多く揃える精神部分ヒーリング艦。ヒュプノスの端末一体型戦艦『ヒュプノス』が、その姿を現す。見た目はまんま･･･空を駆けるおっきなおっきな羊である。

「「おぉお～！！」」

だが、その姿は極めて有機物、何より羊そのものなフォルムは女性の心を鷲掴みにしたようだ。お尻から虹を出し空を飛ぶ姿は、非常にメルヘンチックでファンタジー。冥界のタルタロスにノンビリ過ごしていた羊が、空を飛ぶ日が此処にやって来たのだ。感嘆と共に、銀河警察を目指して飛ぶヒュプノスの神体を見守っている。

{では、早速向かう。ハデスに通信を開き、機能をあちらに譲渡。後に合流し銀河警察の復帰に尽力しよう}

【そうしてもらえると非常に助かります。エレシュキガル、ヘスティア神を二大筆頭にハデス神とヒュプノス神で労働に相応しい休息を提供させてやってくださいな】

{了解した。そちらもポセイドンを眠らせ、その手に海の力を手にするのだ。宇宙の安寧と平穏を･･･どうか、頼むぞ}

【お任せください。ギリシャ最高の慈愛の女神と私に･･･いいや】

慈愛の女神たるヘスティア神は勿論のこと。ニャルは私に、ではなく。邪神の行うことなどあくまで些細なものであることを念押しし、言い直す。

【汎人類史。その全てを背負う王と姫。その財達に。このしょうもなくも愉快痛快、奇々怪々な宇宙の混乱を見事制してみせましょう。勿論──】

「お、おぉ？」

【私の自慢の娘にも、乞う御期待♪】

「あらあらぁ～♪」

{･･･フッ･･･}

ナイアの肩を抱き寄せ、朗らかな笑顔と共にガッツポーズを取る邪神。そして、キョトンとしながらも、やっぱり笑顔で敬礼するナイア。それは、宇宙の希望を示すがごとき笑顔と、安堵の表情にて。二柱のギリシャ神格に、絶望を打ち払う希望を感じさせるものであった──

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ヒュプノス{･･･ならば、お前達の道行きに。手向けとして形見を持っていけ。娘よ}

ナイア「形見、ですか？」

{我が母、ニュクスの水晶･･･そして、タナトスの刀と力を}

ニャル【ほう、魔具としての譲渡か。神造兵装としてレアな装備だ。風邪以外は貰っておけ】

ナイア「──は、はい！宵夜の力、お借りします！」

同意を得て、ナイアに譲渡されるニュクスとタナトスの力。それを手に入れたナイアの武装に──変化が起きる。

ニャル【ほうほう、これはカッコいいじゃないか。ペルソナのタナトス知ってたんだなお前】

ナイアの持つ棺桶が分裂、浮遊し、ブースターとして空中に浮遊する。腰には死神の髪切り刀、漆黒の鎧【タナトス】を装備し、鼻から顎を覆うフェイスマスク。夜闇と星空をイメージさせたマント【ニュクス】を装備した高機動、ワープ近接斬撃特化型兵装【タルタロス】を身に付けたナイアの新フォームが誕生する。

ナイア「これは･･･XXのアーヴァロンと一緒に翔べる装備です！」

【貰っていいんだね？】

{供養にもなる。──宇宙を任せたぞ}

ヘスティア「ありがとう～！ヒュプノス、気を付けてねぇ～！」

ヒュプノスと別れ、ナイア達は急いで宇宙船へと戻る。ポセイドンの神体を手に入れる為に、仲間達を起こし神殿へと戻る──