ラクシュミーの点呼に答え、全力でフルスロットルをふかすスタリオン。イアソンと同時のスタートでありながら、ほぼ全ての魔獣が此方へと向かってくる。
【これは・・・】
「私の不運は、私由来のものではない。いや少しはあるかもしれないが・・・私の中に一部宿る女神の司る属性によるものだ」
【インド、不運、不幸。・・・あっ、ふーん・・・】
「察してくれたか。あくまで一部であり全体ではないため、私は私のままだが・・・不運や不幸は、逆に考えれば【最悪の結果は必ず引ける】という運命の確定を引き起こす。ならばそれを利用すれば!」
【たまたまこちらを狙う魔獣がわんさかと来る訳か。成る程、運の弾除け・・・お見事、ラクシュミーさん】
「このままではなぶられるだけだが、何、私は一人では無いとも。だろう?」
【その通り。ナイア、XX!出撃だ!】
XX『了解!XX、アーヴァロン!行きます!』
ナイア【行ってきます、お父さん】
ニャル【行ってらっしゃい。さぁーて・・・】
「何故パソコンを開く!?」
ニャル【勝利の布石♪】
【ラクシュミーの何かしらのアクションにより、魔獣の大半はこちらを狙ってきているようだ。これから我々の宇宙船を陽動運航させ、数分の後にワープで別荘へ離脱させる。準備が整うまでの間、存分に狩り生き残れ。以上だ、健闘を祈る】
ゼウス宙域にて始まった、魔獣掃討戦。未だ宇宙に拡がる魔獣達が帰還していない手薄を攻めたこの一手にて、陽動作戦チームが行動を起こす。月程度の衛星クラスの大きさを誇るエキドナの母胎周辺の魔獣を引き寄せ、本隊を突入させやすくする難解なミッション。分の悪い賭けが幕を上げる。
『見渡す限りの敵対魔獣!食べ放題バイキングってこういう事ですね!お先ですよ、ナイア!翔べ!アーヴァロン!!』
先陣を切り、駆け抜けるは蒼銀の刑事ヒロインXX。武装、アーヴァロンを全力展開し敵陣の中へと真っ直ぐに斬り込んでいく。蒼い軌跡がまるで彗星の様に駆け抜け、無数の魔獣が紅き火花と化し宇宙に散る。元銀河警察敏腕刑事の腕前は決して大言壮語でも虚言でも無い。上下左右に至るまで迫り来る魔獣を、アルトリア名物魔力放出で蹴散らしながら駆け抜けていく。そして群れの中心に辿り着き──
『ダブル!ダイナミーーーーーック!!!』
ロンゴミニアドの全力展開による周囲殲滅。X字に宇宙ごと切り裂かれ、末端魔獣がチリと化す。対多数において、アルトリア顔というものは絶対的強者なのである。黒色の宇宙に、蒼き閃光が瞬き抉れる。宇宙規模の戦いとは、何もかもが大きい方が勝つのだ。だが、魔獣達も有象無象ばかりではない。
『おっと!流石に指揮官クラスはいますよね!』
すかさず反撃を行ってくる、完成度の高い個体。オリジン・キメラやオリジン・ラミア。それらが群れを統制する隊長としての役割を果たしXXに肉薄を行う。爪や光弾を、ロンゴミニアドとアーヴァロンの出力で受け止め押し返すXX。
『ナイア!後詰めよろしく頼みます!』
【頼まれました】
『『!?』』
瞬間、寸断に細切れになる隊長格の魔獣。XXに気をとられていた瞬間、タルタロスを装備したナイアに背後からバラバラにされたのだ。高機動にてレンジ内の生きる生物を寸断する。死神と直死の魔眼を掛け合わせた装備の前に、魔獣達の相性は致命的だった。すかさず背後の棺桶型ブースターより、五月雨撃ちが如くエーテル弾を乱れ飛ばす。『先の一撃で生き残った隊長格の魔獣』を狙った一撃であり、それらは正しく戦果をもたらす。隊長格を失った周辺の魔獣の群れが、明らかに精彩を欠く。この作戦は、二人で練り上げたものだ。隊長格をナイアが落とし、その回りをXXが攻め滅ぼす。少なくとも、これにより増援や穴埋めとしてますます戦力が此方に投入されるだろう。消費度外視の大盤振る舞い作戦だ。ニャルの言う、時間切れまで粘ればいいのだから。
『このままこれを繰り返していきましょう!付いてきてくださいね、ナイア!』
【そちらこそ、バテたりして隙を晒さないように。懸命にフォローはしますけれど】
互いに撹乱するための高速移動を繰り返し、チャンスあれば即座にXXが辺りを吹き飛ばす。浮き彫りになった個体差をナイアが問答無用で斬り裂き、撃ち殺し、船に近付く魔獣達を捌いていく。
「たった二人で此処までの防衛を行えるとは・・・!」
【犯罪者グループなどの鎮圧を日常茶飯事に行っていたXX、完全ソロでクトゥルフ連中を狩っていたナイア。あなたと同じで、窮地や劣勢などいつもの事なのですよ。あの調子なら問題ない、このまま魔獣達をイアソン達に目が行かないようからかいましょう】
驚愕するラクシュミーに、何でもない当然の事とほくそえむニャル。触手とニュクスの闇にて視覚を誤魔化し、『反応はあるが姿が何処にも見えない』という状況に陥らせ追撃を混乱させる。無数に後方に魔獣が飛来していても、問題なく航行していられるのは邪神の手腕であり、その圧倒的反応はラクシュミーが捻出している。まさに、見えざる霜降り肉である。極上の肉を、目にすることすら叶わない。
【このままの調子で行けば、私の目論見通りになる筈だ。娘と友人の活躍と頑張りに期待しよう。楽園のあの御方に連絡を送って・・・】
基本的にピンチや番狂わせを探索者にアホほど思い知らされているので、数や魔獣がどうのとニャルは気にしないし動じない。怖いのは娘の反抗期と鬼神の圧倒的パワーと星の戦士だけであると鼻唄を歌いながら、彼は楽園のとある存在へと要請を送る。
「私も負けてはいられない・・・!邪神ニャル!あなたのその余裕、虚構でないと信じるぞ!」
【どうぞどうぞ。関係無いけど女性声でニャルって言われると可愛い響きだねってならない?私はなる】
「それは心底、どうでもいい──!!」
魔獣達を誘き寄せ続けるラクシュミーとニャル。誘蛾灯に釣られる蛾の様に殺到する魔獣をナイアが、敵陣に攻め込む役割をXXがこなす。宇宙における超攻撃的な時間稼ぎの陽動作戦が展開される──
~その頃、楽園の一室では~
『御力の一端を御借りしたく思います』
【・・・ほう。私の知る力の一つか。これは、確かにお前に縁のある力だな】
『たまにはアイツにも真っ当なヒーローしてもらいたいので。御一考を御願い致します』
【──良かろう。未来への飛翔を、助けてやるとするか】
~
作戦開始から、三十分が経過。二人の決死の攻略にて、銀河と魔獣の割合が七割、三割となり始めた頃。敵味方双方に異変が起こる。
『む!アーヴァロンとロンゴミニアドのエーテル残量が心許なくなって来ましたね!具体的には残り四割ですか!』
【此方は燃費の良さが自慢です。一度帰投を。XXの分までなんとかもたせます】
『何言ってるんですか!相棒から目を離すなんてナンセンスです!クトゥルフ特効入ってない貴女って精神はキレたナイフじゃ無いんですから!』
【確かに・・・悪口や罵倒が上手く思い付きま、──!?】
エネルギーが減り、補給が必須なXXに対し、魔獣達は予想外の集結を行う。大小分け隔てなく、一ヶ所に密集する形で集合を始めたのだ。
【あれは──もしや『合体』・・・?】
無数の魔獣が融け合い、混ざり合い、融合し、合成されていく。その大きさは惑星クラスの巨大さにまで到達し、その姿の全容を現す。宇宙を呑み込むような巨体の人型。それはまさに、オリュンポスの神々が戦った巨人が如く。そしてそれは、神話における天空を支える巨人が如く──
【グゴォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオ!!!!】
宇宙を震撼させる怒号を響かせる、超絶魔獣集合巨人。テュポン・アトラスがその姿を現す。腕の一薙ぎが次元に穴を開け、そのまま『次元を引き裂きながら』腕を此方に向けて振るわれる。
【XX!くっ──!!】
瞬時に、瞬間的に心臓と一体化したトラペゾヘドロンを起動させ、XXと共に邪神宇宙へと離脱、生還を果たす。絶対安全、緊急離脱の手段ではあるが、マスターと認めた存在抜きでの負担は、壮絶極まる規模である。帰還したナイアは、肩で息をするほどに疲弊していた。
【はぁ、はぁ・・・緊急時により、無理矢理起動させました。エネルギー回復まで、ちょっぴり時間がかかります・・・ふーっ、ふーっ・・・】
『ちょっぴりには見えませんが!?あぁもう、貴女本当に大切な人相手には加減がないんですね!そういうとこ大好きですけど!』
【私も、好きですよ。XXの事・・・ひゅー、ひゅー・・・】
『~~そういう事は日常的に言ってくださると嬉しいんですが!』
【グゴォオォオォオォオォオォオ!!!!】
魔獣集合体・テュポン・アトラスの前に、疲弊した二人の希望。陽動の目的は完全に果たされたが、宇宙を貫く魔獣に絶体絶命──
【──よし来た。ラクシュミー、ワープホールを開く。その先で待機。任務は果たした】
「!?」
【これを待っていた。娘達の尽力で魔獣が束になる瞬間を。ちょっと行ってくる】
連絡をつけ終わり、それを持ち出したニャルがハッチを開ける。いつもより楽しげに、楽園より送られた『それ』を持ちながら──
ヒロインXX『こうなれば!必殺!ダイナミック・ブロークン・アーヴァロンを──!』
ニャル【自己犠牲は良くないぞ。一端スタリオンに戻れ、二人とも】
ナイア【!?お父さん!?】
ニャル【よく頑張ったな。これで魔獣は一纏めにされた。卵抱えたゴキブリを踏み潰すと、卵が辺りに飛び散るからな。駆除にはまとめてが一番だ。少し休んでいろ】
ナイア【──、解りました。XX、ひとまず戻りましょう】
XX『何をするつもりなんです!?アレ、なんとか出来るんですか!?』
【まぁねー。多分なんとかなる。知り合いにも連絡するから安心しなさいな。じゃ、また後で】
XX『知り合いって──!?』
瞬間、ワープホールにて三人を別荘へ飛ばし、一人で巨人を見据える。肥大化した巨人に対しても、ニャルは嘲笑を止めはしない。何故なら──
【さぁて、たまには私もお前も世の為人の為に働こうじゃないか。その力、存分に使い倒させて貰うぞ?気にするな、私とお前の中じゃないか】
そう告げ、右手に収めた一つの『ウォッチ』を起動する。──かつて、星を狩り滅ぼす活動を行っていた際にコンビを組んでいた、戦慄の星人の力。
『エボル!!』
スイッチを押した瞬間、ニャルの腰にベルトが巻かれる。星を滅ぼす使命を背負い、全てを喰らう侵略者、ブラッド族のベルト。人間には扱えぬ──エボルドライバー。
『火星からの侵略者!地球を狙う悪のライダーは・・・エボルだ!!』
【ベルナージュさんはキレていいと思うの。──ほいっ】
同時に自分の胸より、成分を抽出する。宇宙の深淵を意味するトリガー・・・それを今は仕舞い込み、二つのボトルを差し込む。
『コブラ!』『ライダーシステム!』『エボリューション!!』
電子音声に従い、右手でレバーを回し込む。プランナーと共に、第九モチーフの歓喜の音声が流れ待機を行う
ニャル【お前んとこの宇宙もいつか滅ぼしてみたい・・・なんて言わなかったら、ずっと仲良く出来たのになぁ。・・・な、エボルト?】
『アーユー・レディ?』
ニャル【──勿論だ】
嘲笑と共に手を広げるニャル。同時に、鈍った身体を強化する戦闘服として──
『コブラ!コブラ!エボルコブラァ!!フッハァーッハーッハァッハッハァッ!!!』
ニャル【フェーズ1。完了。さぁ、張り切って滅んでもらおうかな?】
最高最善の魔王より借り受けたウォッチにより、最低最悪の邪神が変身した最凶最悪の仮面ライダー・・・エボル。宇宙の平和の為に、邪神が仮面を纏い牙を剥く──
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