人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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XX「皆様無事ですか!?あんまり無事そうじゃないですね!搬送しますね!」

マカリオス「刑事さん!」

ニャル【クリロノミアの解析は終わっている。別荘に一旦戻り、サプライズ・ニャルで叩き起こしてこい。エキドナは私に任せろ】

アデーレ「ですが・・・!」

ナイア「大丈夫、お父さんは必ずやってくれます。娘の私が、保証します!」

ヘスティア「・・・解ったわぁ~!ニャル君~!いっぱい祝福を受け取って~!」

ニャル【助かります。いや、割とマジに。別荘から、我等が魔王経由で受け取ったもう一つの力も含めて──】



【このウォッチも持っていけ、邪神よ】

【これは・・・】

【お前の企みに、必ずや不可欠となる力だ】



エキドナ【・・・・・・】

【さ、実験を始めようか?】


ラブ&ピースは止まらない

【私の親愛なる部員と仲間達が世話になったようだな。此処から先は普通のホモ・サピエンスとは一味違う・・・愛と平和を護る正義のヒーロー・・・邪神ニャルが御相手しよう】

 

徹底的にアナザーエボルめいた振る舞いを崩さないニャルが、陽気にエキドナに相対する。味方を逃がし、一人・・・いや、見えずとも共にある部員達と共に在る余裕の態度でおどけてみせる。

 

【・・・邪神?神様なの、アンタ】

 

エキドナからしてみれば、正体不明の仮面の輩がエモい相手を庇って来たのだ。疑問符が浮かぶのも当然である。それに対し、ニャルは誠実に答える。

 

【見た目が怖いって?吐き気を催す邪悪と言うのは・・・禍々しく見えるものだよ

 

【見た目の禍々しさの理由は聞いてないんだけど】

 

噛み合ってるようで噛み合ってない質問を皮切りに、神々の決戦が巻き起こされる。輝かしさと懸命さを重んじていたヘスティア周りと違い、容赦慈悲無しの全力の女神の攻撃。身体が軋む程の勢いのそれは、早急にヘスティアにとどめを刺しにいけとエキドナをクリロノミアが急かすからだ。最早縫い目程度しかない安全地帯をのらりくらりとかわし、ニャルは時間を稼ぐと共に本懐を果たす。

 

【その調子だエキドナ。貴女が女神の力を振るえば振るうほど・・・三女神の権威は失墜する。もっとだ!リミッターを外せぇ~!】

 

攻撃をいなし、時には喰らい、それでも気だるげにかわしつづけるニャルの掴め無さに、エキドナは一転して無言となる。カンに障るヤツだと、直感的に判断し、攻撃に手心など加えない。

 

【くたばりなっ──!】

 

手に持つ鞭、そして頭部の蛇達の全体攻撃。アテナ・クリロノミアをフル活用されたその暴虐の一撃は、普通のホモ・サピエンスならば一瞬で粉々になり微塵にバラされる威力と規模の攻撃だ。

 

【ぐ、おっ・・・く・・・っ!】

 

神格のほぼ全てを切り離し、娘の為にその弱体化を受け入れたニャル。純然たる神、それら四柱が相手であるならば多少分が悪い。本来ならニャルは文学科、脚本家の畑だからだ。エボルの力は拘束具として、強化スーツとして大いに役に立っている。髪の蛇に肩を貫かれ、膝を付きながらも、彼は己の本懐を果たす。彼がやるべきベストを尽くす。──エキドナに降りかかる、強烈な虚脱感と脱力感。

 

【──!あんた、アタシから何かを吸ってる・・・!?】

 

【ククク・・・御明察。お前さまの身体に巣食うクリロノミア、醜悪な女神どもの力を私が戴いているのさ】

 

攻撃も防御も最小限に、フルボトルで猛烈に成分だけを抜き取っていくニャル。貫かれても、鞭で打たれても。その余裕と泰然さは崩れず役割をこなす。エキドナを構成していくクリロノミア、それが吸いとられ吸収されていく・・・!

 

【アンタ・・・──ッ!?】

 

その行動に硬直するエキドナに対し、身体に巣食うクリロノミアはエキドナの身体を無視しニャルを滅多打ちに攻撃する。蛇や鞭を猛烈に振るう、殺すための攻撃。エキドナの身体の耐久性を考慮していない、細胞レベルの防衛反応。加速度的に、ニャルの鎧にダメージが刻まれていく。

 

【必死じゃないか三女神。そうだとも、お前達の成分を抜き取られては最早ヘスティアちゃんに成す術はない。それだけでなくエキドナを利用しヘスティアちゃんを亡き者にしようとしたんだ。ゼウスの雷かヒュドラの毒、タルタロス幽閉のどれかしか有り得まい。お前達の破滅はすぐ其処まで来ている・・・ぐっ・・・!】

 

女神の殺意の攻撃は、並大抵のものではない。この邪神は間違いなくゼウスに、他の神々に情報を売る。ヘラ、アテナ、アフロディーテの権威は最早地に堕ちる。ニャルを滅ぼさんが為に、自らを護るためにエキドナの身体を操り攻撃を緩めない。だが、ニャルは離さない。貫かれた支点を握り締め、フルボトルにて女神達の成分を抜き取っていく。

 

【ちょ、ちょっと・・・!まどろっこしいんじゃないアンタ!そんな、アタシから成分だけ抜き取るとか・・・!アタシ毎殺せばいいじゃん!?テュポーンの嫁よアタシ!悪側!あと人妻なんだけど!?】

 

エキドナからしてみれば、それはまるでエキドナから女神を引き剥がし、解放しているような動作にしか見えない。単純に殺され殺す獣の観点からの不理解に、動揺を隠せないエキドナ。

 

【百も承知だ。だが、君をどうにも──助けたいという声がチラホラあってね】

 

【は・・・?】

 

【ほら、君・・・手と手を取り合って力を合わせる人間達に尊さを感じたろう?それをエモいと感じだろう?その心を、救いたいと言った者達の声を聞いちゃってね。私も、同感だと思ったんだよ】

 

叩きのめされ、打ちのめされ、それでも彼は自身の成すべき事を止めない。エキドナの苦痛と苦悶の土壌になっている女神達の怨念を、吸い上げ続けていく。

 

【なんで・・・そんな・・・そりゃ、アタシはアンタらみたいなキラキラした奴等を、綺麗だって思ったけど、そんなの・・・】

 

片膝立ちになり、身体中から火花を出す状態になりながらも、ニャルは手を離さない。鞭を手で絡めとりながら、エキドナからクリロノミアを抽出していく。

 

【私の知る、姫様ととてもよく似た女神の話をしよう】 

 

【は・・・?】

 

【慈愛と慈しみに満ちた女神がいた。世界の全てを抱きしめ、見守りたいと願った女神がいた。女神は遂に座を手に入れ、世界をその慈愛で満たしたよ。誰もが希望をもって来世に旅立てる、本当の意味で愛情に満ちたエデンだ。──その誰にも望まれたエデンは、どんな形で終わりを告げたと思う?】

 

会話と共に、ヘラ・クリロノミアの抽出を完了した。これで、ヘスティア神の守護を貫通することは叶わなくなる。

 

【答えはな。慈愛と慈悲を理解できない邪神に尻で踏み潰された、だ。抱きしめられる温もりを、見守られる慈しみを理解できず、【気持ち悪い囲い】として鬱陶しがった邪神に、その女神は何度も何度も踏み潰された訳だ。・・・解るか?美しい、尊い行いというのはな。大なれ小なれ施される側にもそれを理解される心がなくてはならないんだ。──何故、愛や尊重が尊いのか。それはな・・・ぐっ・・・!】

 

エキドナの鞭が、ニャルの顔面を打ち据えた。仮面の半分が弾け飛び、表情が垣間見える。

 

【それはな・・・それを理解できる『心』が在るからだ。尊いものを尊いと、素晴らしいと思える、感じる心が互いを繋ぐからだ。解るか?エキドナ。ヘスティア、アデーレ、マカリオス、アルゴノーツの仲間達。誰かの為に戦う彼等を、お前は『美しい』と感じた。心は生き物の価値を決めるたった一つの部品だ。解るか、エキドナ。お前の中に生まれた、愛と平和を美しいと理解できる心は──】

 

その表情は・・・喜びに満ちていた。誰だって、自分が好きに、誇りに思うものを理解されたなら嬉しい。──仮面で一生懸命隠していた、愛と平和とプレシャスの素晴らしさへの喜びを、不覚にもニャルは晒したのだ。

 

【何よりも、美しいんだ。・・・私も、娘に教えて貰ったんだがね。心が通じ、繋がる瞬間は素晴らしいものだぞ。世界が違って見える。本当にな】

 

【アタシが──アタシの心が、美しい・・・?】

 

エキドナは自身の心を疎ましいと思っていた。望んだ事も無かった。ただ、自身にたまたま備わった不要なものだと。だが、邪神は違うと告げる。美しいものを美しいと思える。尊いものを、尊いと思える。

 

──この旅路を支えてきた『心』こそが、最も素晴らしいものだと。だからこそ、邪神である自分が慣れない事をして躍起になっているのだと。ニャルは立ち上がり告げるのだ。

 

【子育て論と教育論は私と決して相容れんがな・・・。いいか、無条件で子供は可愛いものなんだよ。私が絶対に与えられん、血縁という赤い糸を無下にするお前の親としての在り方は決して認めたくないが・・・それはこれから・・・】

 

そして、その時が訪れる。アフロディーテ・クリロノミアも引き抜かれ、最後のアテナ・クリロノミアへ──

 

【運が良ければ、南の果てで・・・ぐっ・・・!】

 

アテナの抵抗により、首に鞭を巻き付けられる。だが、邪神は止まらない。

 

【バカ、止めな・・・コラ、止めろっての!】

 

【──ママ友を作ってみるのも、悪くは、無いんじゃあないか・・・私も受け入れてくれた、筋金入りの──】

 

渾身の力で、鞭にボトルを突き刺し──

 

【──宇宙で最も、善性が集まる場所だからな】

 

首を折られるニャル。同時に、完全に成分を獲得する──。此処に、三女神の呪縛は解き放たれた──。

 




ニャル【いっつ・・・首が折れたか・・・千切られないだけよしとしよう・・・】

エキドナ【はっ!?バカ、なんで生きてるわけ!?キモッ!?】

ニャル【娘がいる限り私はしなんよ。・・・おっと】

エキドナ【・・・あ】

身体を構成しているクリロノミアを抜き取られた事により、消滅、瓦解が始まるエキドナ。ニャルが首を直しながらそれを見つめる

エキドナ【・・・ゴメン。こんなに気にかけて貰ったのにさ・・・】

ニャル【謝るな。抜かりはない。勝利の法則は、決まっているのさ】

この時の為に、ニャルはオーマジオウより追加でウオッチを借りていた。──仮面ライダーを、愛と平和を護る力と信じた男。エボルトが造った、本物のヒーロー。

『ジーニアス!モノスゲーイ!ボトルだらけの超天才の男!』

【──こいつを、こう使う】

ウオッチから生成された、巨大なボトル。あらゆるものを浄化し、新生させる希望の力『ジーニアスボトル』其処に、たっぷりと詰め込んだ──プレシャスパワーをエキドナに解放する。

『あ・・・』

ニャル【消えられては困る。オリュンポスの神々に、テュポーンと睨みを利かせてもらうんだからな】

エキドナの身体を構成するものがプレシャスパワーへと変わる。これで、エキドナを苦しめるものは消え去った。──否。

エキドナ『ちょ!な、何!?こいつら・・・!』

ニャル【往生際の悪い・・・】

ボトルが浮遊し、エキドナを再び操らんと飛び回る。どうやら本当に、ヘスティア抹殺を諦めないようだ。

【──良いだろう。ならば更に一芝居打ってやる。御祓も必要だろうしな】

『ちょっと!?何を──』

エキドナをブラックホールで転移し、三女神のクリロノミアを──自身に叩き込む。

【望み通り、暴れさせてやろうじゃないか。──死んでもらおう、【エキドナ】としてな】

【オーバー・オーバー・ザ・レボリューション!!】

三女神のクリロノミア、それら全てをニャルが、ブラックホールトリガーが取り込み──

【フィーバーフロー!!フフハハハハハハハ!ハハハハハハハハハハァアッ!!】

ニャルエキドナ【エーキーードーーーナーーー!!!】

ヘスティア神の『奥の手』を見越して──エキドナの影武者となったニャル・三女神集合体が宇宙へと顕現する──!

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