人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ロマン「精神汚染深度が高すぎる・・・!これは復帰しても戦闘どころじゃないぞ・・・!アフロディーテさんエグいことするなぁ・・・!」

ダ・ヴィンチちゃん「ヘカテー・クリロノミアを投与だ!適量だよ適量!入れすぎないように!」

ケイローン『ヘラとの合わせ技とはえげつないことをする・・・しかし、サプライズ・ニャルとは一体・・・』

ナイア「お父さんの受け売りですが・・・『物語を作るとき、其処にニンジャを登場させ、そちらの方が面白かったらそのネタはボツにする』という文法をクリロノミアでやる、との事です」

ロマン「結局ショック療法じゃないか!?」

ヘスティア「・・・・・・・・・」

オリオン「うぐ、うぐぐ・・・・・・股間は止めて、股間は・・・」

イアソン「俺だ・・・お前を魔女にしたのは、俺だ・・・メディア、グライア・・・許してくれ・・・」

ラクシュミー「マンドリカルド、エレシュキガル!しっかりしろ・・・!」

エレシュキガル「誰もいないわ・・・誰も、いない・・・」

マンドリカルド「ヘクトール・・・マジ、マジすいませんでした・・・」

ヘスティア「───────────(ブチッ)」

ロマン「?何の音?何か切れた?今・・・?」

ダ・ヴィンチちゃん「あ、あれ!?ヘスティア神がいないよ!?」

XX「ばっかもーん!治療に専念してください!ヘスティア神なら大丈夫です!勘がそう言ってます!!」

ナイア「・・・お父さん。あなたもきっと、大丈夫ですよね・・・?」


こんなに死を意識したのは探索者渾身のマーシャルアーツ+キッククリティカル以来ですby邪神

【女神の権威は不滅!オリュンポスの栄光の女神の座は、我等のものに!この宇宙の総てを我等の美貌の下に!!魔獣の女神に、オリュンポスの三女神に、永遠の栄光在れ──!!】

 

ニャルの最後の一芝居により捕らえられ、肥大化した三女神と魔獣女神の合体したニャル・エキドナ。(内部で再生した録音スピーカーにより)絶妙に女神の有り様をエミュレータしながら暴れまわる。衛星ならば易々と掴み砕ける程に巨大化した、触手の怪物の身体と、魔獣の下半身。醜悪な女神達の表情をくくりつけた露悪的な造形の怪物が暴れ回り狂う。その巨大さは、最早宇宙船や生身の存在が対処出来るスケールを遥かに上回っていた。ブラックホールトリガーに取り込んだ膨大なエネルギーを源に、ゼウス宙域を破壊せんとする程の暴虐が繰り返される。その様相は、まさにテュポーンの妻エキドナ・・・厄災そのものの暴走に相応しい恐るべきものだ。内部に融合したニャルも取り込まれた形であるが・・・女神の悪逆と嫉妬を露にし、放逐している。細胞の訴えをそのまま放置しているのだ。

 

(これは正真正銘の賭けだ。割と命懸けのな。さて、ヘスティアちゃんはどう出るか・・・)

 

音声を記録し続け、同時に暴れ続けるニャル・エキドナ。クリロノミアにて訴え続けていた細胞の衝動を、そんなに伝えたがってるなら聴かせてやんよとオープン・スピーチで垂れ流していながら、その時を待ち続ける。重大な精神汚染を食らったメンバーはすぐには戦闘続行は叶わぬだろう。だからといって後方支援組、アデーレやマカリオス達ではこの醜悪な集合体はどうする事も出来ないだろう。

 

【オリュンポスの女神たる存在は我々だ!これまでも、これからも!この宇宙に!女神の永遠の美徳あれ!】

 

(笑わせんなw)

 

細胞の訴えを抽出し、嘲笑いながら、その時を待つ。これは賭けだ。あらゆる意味で・・・人の善性を、この状況を打開出来る者の決断を。そして、真なる絆と愛の在り方を。それこそが、自身がもたらした醜悪な女神の集合体を打ち破る唯一無二の光明なのだ。ニャルは、ヘスティアの奥の手に予想と目星をつけ、ひたすらに女神の集合体を最低限に制御しながら待ち続ける。ニャルは女神のスキャンダルを獲得し、同時にでっち上げながら、決定的な瞬間を撮る為に待ち続けているのだ。──そして・・・

 

【──来たか。さぁ、決定的な瞬間を映すタイミングは出来ている。よろしくお願いするよ】

 

ニャルは、ウィンドウからそれを見た。──たった一人で、女神集合体に相対する影が一つ。この醜悪な状況に、終止符を打つことの出来る存在が現れる。

 

『──ヘラ、アテナ、アフロディーテ。私は、此処にいるわ。もう、暴れるのはお止しなさい。何処にも行ったりしないわ。もう逃げないもの』

 

ヘスティア神。最愛の者達を護るために、立ち上がったゼウスの姉にして家庭の守護神。いつものほわほわな口調はそこには無い。守護神であり、全能の神の姉たる威厳を醸し出す神として、狼藉を働く女神達を見上げている。彼女は、決心を固めたのだ。

 

『私を殺したいのは貴女達の勝手・・・。誰にでも好かれる存在になるには、私はまだまだ修行が足りないものね。私のようなぼんやりさんが、貴女達の上に立つのに納得出来ない気持ちも解る。──だけど』

 

自身への殺意や敵意も、彼女は受け入れた。それはいいのだ。自分をどう思うかなど、それは自由であり殺意でも構わない。・・・だが。

 

『でも、これ以上の狼藉は許さないわ。女神として、神として・・・宇宙に生きるものの命を脅かす事は許さない。──アデーレやマカリオスの未来を閉ざそうとする者を、私は赦さない』

 

ヘスティアの懐く思い、それは自分が守護するべき生命の明日と未来。自身を信じ、頼ってくれた者達の心。それを奪う者を脅かすものに、決して譲歩してはならない。慈愛と無関心は違う。愛する者がいるのならば、守護女神として、決して譲ってはならないのだ。だからこそ──

 

『此処で、決着をつけましょう。・・・ゼウスの姉、ヘスティアとして。貴女達の狼藉を糺します。──ヘラ、アフロディーテ、アテナ。覚悟なさい』

 

【【【──!!】】】

 

『──お仕置きの御時間よ~!もーう怒ってっけっ!ぼーけなす~~!!』

 

ヘスティア、怒髪天。度重なる女神の狼藉の繰り返しに、完全に堪忍袋の尾が切れた。ギリシャ地域の訛りじゃない言語が降りながら、いよいよ以てその神体を顕す。ヘスティア神の本体たる、神体そのものを。宇宙を柔らかくすり抜け、その偉容を露としたのだ。

 

【───・・・・・・】

 

・・・その時、邪神は本格的に【死】を覚悟した。本能、邪神の危機察知能力が突き抜ける悪寒を、焦燥を、これまでの総てが足許から崩れ去る程の戦慄を覚えたのだ。想像を、遥かに上回っていた。想像を絶していた。

 

ヘスティア女神の神体、それは誰もがイメージする聖母、女神、母親が具現化した人型の女神。人々の信仰を受け、その求められし慈愛のままにヘスティアは姿を変え、人に寄り添った為だ。今までの神々の艦隊とは異なり、処女の誓いを受け明確に人型で完結する女神像。──戦慄を受けたのは、その女神が手にしていたもの。ゼウスが姉の純潔と貞操を護る為に秘密裏に託していたもの。ポセイドンなどの力が強い神から、自身を護るために護らせていたもの。

 

【───・・・・・・ゼウスの、雷霆・・・】

 

一度振るえば総てを消し飛ばす。宇宙の総てを灰塵に帰す。魔獣神テュポーンすらも半死半生にしたとされ、あらゆる神々が畏怖するゼウスの秘宝。それが、ヘスティア神に握られている、聖剣変換して何億、何兆、もはや数えるも愚かな程の大権能。──ゼウスがなす術なく滅ぼされようと、姉と姫だけは逃がす為に託したもの。

 

【【【────】】】

 

ニャル・エキドナは行動を停止した。否、畏怖し、恐怖し、動けなくなったのだ。脈動だけでビッグバンに匹敵する鼓動を刻み、宇宙を消し飛ばす大権能の中の大権能。それらを目の当たりにし、細胞の一片に至るまでが完全に萎縮し恐怖に折れたのだ。最早、抗いなど何の意味ももたらさない。『それ』を握りしモノに、敵うことなど有り得ないからだ。──ギリシャの神達の最後の良心が途絶えない為の、ゼウスの最後のセーフティー。それを、最も大切な存在に託したのだ。

 

『最終的裁定機能ケラウノス 限定解除

対惑星破壊機構 限定解除

対星系殲滅機構 限定解除

対時空攻撃機構 限定解除

対概念破砕機構 限定解除』

 

ヘスティアの声とは思えぬ無機質な機械アナウンスが響き渡り、ヘスティアの神体がゆっくりと切っ先をニャル・エキドナへと向ける。この時ばかりは本気で逃げ出したくなる。口ずさんでいる言葉が洒落になっていない。自分は今、一つの神話体系の頂点の攻撃の餌食にならんとしているのだ。流石の邪神も、心臓に生えていた毛が永久脱毛である。

 

【娘よ、先立つ不幸を許せいやまだだ諦めるな私にはたっぷりの加護が付いているでもめっちゃヤバいし正直怖いでもこれってボケ老人の目覚ましに使えねあっワンチャンアザトースの目覚ましに使おうか落ち着けあっ娘と出逢った風景を思い出すなあっこれ走馬灯?走馬灯かこれ】

 

【【【───!!】】】

 

【あっこら、逃げるんじゃあない!末路は潔くするものだ!──よし、覚悟を決めるぞ・・・!覚悟とは犠牲の事ではない・・・覚悟とは暗闇の荒野に進むべき道を切り開く事。マルドゥーク神のレガリオン・パニッシャーの方が強い!──筈だ!恐れるな・・・畏れるなよ・・・】

 

逃げ出さんとする女神達を縛り付け覚悟を決める。──生き残る根拠はある。確信もある。だが、万が一があったら娘に遺言も遺せずくたばることになる。ちょっと泣きそうになりながらも、邪神は娘の未来の為に踏みとどまった。──一秒後に、来る。総てを消し飛ばす一撃が来る──!

 

『超限定発動──空よ、裂けよ。星よ、砕けよ。天に有りしは全て(かれ)。星を統べしは全て(かれ)!』

 

 

ヘスティア神がゼウスの口上を読み上げ、宝具を放つ。──大権能、姉を護衛せしギリシャ最強の一撃!

 

【───ッッッ・・・!ナイア!血の繋がりなんぞよりも深く、強く!私はお前を愛している!】

 

音声を、ヘスティアが邪悪な女神を討ち果たす瞬間を記録し、楽園の、次代の統治を磐石なものとするために中心に残るニャル。彼にとって今、大事なものは自分ではない。

 

我、星を裂く雷霆(ワールド・ディシプリン・ケラウノス)』~~~~!!!』

 

例え、塵も魂も残らぬ雷に晒されようとも。もう二度と戻らない、ちょっと強いホモ・サピエンスとしての自分が消え去ろうとも。

 

【楽園と、それに連なる総てに歓喜の祝福在れ!う、ぉおぉ!おぉおぉおぉおぉおぉおぉお──────!!!!

 

【【【ギャアァアアァアァアァアァ───!!!!】】】

 

最後の最期まで・・・彼は祈り続けた。自身の辿り着いた、本当の意味の楽園の祝福と栄光を。醜い三女神達の断末魔に負けぬ程に。

 

──本来の担い手でなく、同時にヘスティア神は戦闘機能をもたない為に。その威力は宇宙どころか星も壊せぬ規模ではあるが。神を跡形も無く消し飛ばすなど造作もない。

 

『・・・ゼウス・・・彼女達を責めないであげて。彼女達の本性は、きっとあれだけではないのだから・・・』

 

ヘスティア神の手向けが向けられた『其処』には──最早、何一つ痕跡は存在していなかった。女神すらも・・・

 

──外なる、邪神さえも。




ニャル・別荘

エキドナ『──バカ!この厳つい仮面バカ!起きろ、起きろっての!こらぁ!』

ニャル【──はぁあっ!?】

ニャルが目覚めた先はニャルの別荘。──ゼウスの雷に晒される前に、なんとか帰還が叶ったようだ。機材も、録音も、無事なようだ。『ヘスティアの祝福』が、ギリギリ足りたようである。

【・・・・・・・・・・・・死ぬかと思った・・・・・・】

エキドナ『いや、生きてるのがおかしいんだけどねゼウスの雷食らって!なんで!?』

ニャル【ヘスティア神への愛情だよ。ゼウスは雷に、ヘスティア神に反動がいかないようにロックを掛けてたんだ。包丁にブザーかけるみたいにな。・・・ヘスティアちゃんの祝福たっぷり貰ったお陰で、ターゲットから外れたってわけ】

トラペゾヘドロンにロックをかけたような事を、ゼウスならすると踏んでいた。大切な存在に託すとは、そういう事だ。邪神にあるまじき──愛を信じたのだ。ゼウスの親愛を。

『だからって・・・ここまでやる・・・?一歩間違えてたら消滅だよ、消滅・・・!』

【そうならない対策は取っていたからな。・・・正直ビビりまくった。もう・・・新しい自分で再起動なんてするには、唯一性が高まりすぎたからな】

エキドナも念のため隔離していた為、滅びたのはクリロノミアだけとなる。これで、生まれ変わったエキドナを除き障害は排除した事になるだろう。

【皆も起きる筈だ。ヘスティアちゃんにも無事を伝えないとな。・・・暫く別荘を使っていていいぞ。落ち着いたら皆に説明しよう】

『──ねぇ』

【ん?】

『・・・あんたの娘って・・・そんなにイイの?親として、全部投げ出してもいいくらいに・・・全部を懸けてもいいくらいに?』

【──あぁ、最高だぞ。正直、彼女が要れば私には何にもいらん】

『もし、さ。娘が先に死んじゃったらどうするワケ?・・・生き返らせたり、するの?』

【しない。もし娘が天寿を全うしたなら、それは受け入れるべき生命の営みだ。死んだものは還ってこない。それが、命の唯一性だ。・・・まぁ、生き返らせるつもりなら全宇宙を犠牲にするんだが・・・そんな犠牲の果ての命を、娘はきっと望まんよ。そういう優しい子に、私は育てたんだ】

『・・・じゃあ、後を追ったりするの?』

【そうだな。全宇宙の謎を解き明かして冥土の土産にするだろうな。娘が見れなかったものを全部見てから、あの世に行くさ】

『・・・・・・そんなにまで、そんなにまで・・・想える『子』が、ホントにいるんだ・・・』

ニャル【君も、ちょっと子を慈しんでみればいいさ。男手でここまで出来るんだ。強く凛とした女性が、できないはずがない。──じゃ】

『・・・あの、さ!』

【?】

『──娘さん、母親・・・いないんだよね?』

【・・・片親だよ。養子だからな】

『・・・解った。なんでもない。・・・じゃあね』

【・・・あぁ】

ニャルは娘に、仲間達の下へ歩み出す。エキドナは、その背中をずっと見つめていた──




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