人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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エレシュキガル『大量に確保した物資や資源、これはどうするの?』

エルキドゥ「山分けでいいんじゃない?半分は銀河警察にあげるよ。戦力の増強に使えばいいんじゃないかな?」

ギル「うむ、少しは貧相な戦力を強化するがいい。半数は我等の資材に使うが、戦艦等は再利用が叶おうさ」

エルキドゥ「あっ、やっぱりあったよセイバーバッチ!艦長のポケットに入ってた!」

ギル「よし、ならば行くぞ!我等の決戦の地、一味先に味見と行こうではないか!」

マーリン「騒々しくてごめんよ。私達はほら、楽しい旅路自体が報酬なところがあるからね。存分に活用してほしい!」

エレシュキガル『・・・無欲なのか強欲なのか・・・』

フォウ「カネモチノドウラクフォーウ!」

『それ殆ど喋ってないかしら・・・?』



目に悪い最終決戦の地

(ワープアウト完了。此処がゴールドセイバー宙域だ。回りに反応は無い。──うん、全く想像してなかった訳じゃあ無いけどさ)

 

──此処が、ゴールドセイバー・・・ギルガメス様に至るための最後の宙域・・・

 

ヴィマーナがワープアウトを終え、一足速く最後の舞台、ゴールドセイバー宙域へと至るゴージャス一行。ブロンズ、シルバーと来てのゴールドなため法則性は見通せるものではあったが、実際に目の当たりにして見ると、やはり圧倒されると言うものである。其処はともすれば、まさしく黄金郷と言える程の輝きを放っていたのだ。

 

「うぅん、目をあまり慣らしたくない光景だなぁ。ZIPANGは黄金の都と言うけど、実際の黄金郷を目の当たりにした場合気にするのは視力の心配なんだねぇ・・・」

 

そう、黄金の宇宙である。見渡す限りに広がる黄金の海。浮かぶ星も、道行きの航路も全てが黄金。オーロラやデブリの輝きもゴールド一色に染まり、非常に豪華な印象を叩き付けてくる。あまりにも絢爛な輝きに、目の色彩を奪われていくような感覚すら覚える程だ。長く目の当たりにしていれば間違いなく視力に悪影響をもたらすだろう。よく言えば豪華、悪く言えば下品とも言えるその宙域こそ、ギルガメスに至る最後の足掛かり。

 

「君が好きそうな色合いだね、ギル?」

 

「ハッ。我等が求むるは無明の夜空に星が瞬く青銀の大海。このような誂えた黄金の海など興醒めよ。道行きを進む醍醐味がまるで感じられぬではないか!話にならんわ!まぁシルバーよりは華があることは認めてやらんでもないがな」

 

ゴージャス的に見れば金箔を貼った様な宇宙でありまぁ悪くはないが、それはそれで風情が無いと断言する。見るべき星の輝きも塗り潰す宇宙、やはり悪趣味の域を出ないようだ。色合いの好みを除いて。此処から先に、ギルガメスがいるようなのだが・・・

 

『ゴールドセイバー宙域には三つの宙域があるわ。大まかな勢力として点在する三つの惑星・・・その星に住む者達に力を示すことが出来たなら、ギルガメスへの道が開かれる筈』

 

「宇宙規模の戦いとかは起こっていないんだね。シルバー宙域やブロンズ宙域と違って、皆理知的なのかな?」

 

『そうね、エルキドゥ。ゴールドセイバー宙域にもなれば、わざわざ他者から奪う必要も無いほどの力を持つセイバーが地域を治めている。次のシーズンを手にするに相応しい力を持った者たちと言うことね。統治名称はそれぞれ、フランス、ローマ、・・・最後は銀河警察でも殆ど情報が無いZIPANG。この三つの領地が、ギルガメスの裁きを完璧に免れた星々よ』

 

──フランス、ローマ、ZIPANG・・・それぞれ予想できるトップはマリー、皇帝ネロ・・・イザナミ様かアマテラス様、でしょうか?

 

かのギルガメスの裁きを見なかった者、或いは自身が張り合っていたもの、全く届いていなかったもの。それぞれではあるが、宇宙規模の裁定を無傷で乗りきったという実績は確かに最後の試練に相応しく次シーズンを手にするに相応しい聡明さだ。エレシュキガルの言葉通り、宇宙に戦闘の熱源反応は見られない。完璧なまでに整った統治が行われている宇宙な様だ。これより別動隊が、この宇宙を攻略するのだが──

 

「ふむ、私の千里眼で見通せない地域がある様だね。圧倒的な迄の神威と神秘、神の意志が透視を赦してくれない様だ。この神秘的な空間こそ、ZIPANG宙域。宇宙から隔絶された秘境・・・合っているかな?」

 

『御明察。銀河警察も何度も探索部隊を投入したのだけれど、帰ってくることは無かった秘境にして魔境、暗黒深淵帯に並ぶXエリア。ZIPANG宙域よ。其処にはギルガメスすら近付く事はない、正体不明の領域といった所ね』

 

レーダー探知も熱源探知も阻む何者かの神威。隔絶した領域であり全てが謎に包まれている一帯。名のみが残されしZIPANG宙域・・・それは王、マーリンの千里眼すら曇らせる程の秘匿ぶりを誇っていたのだ。勿論、ヴィマーナのワープすらも対象外。強引な単独顕現なら突破が叶うかもしれないが、それにしても座標が必要である。辿り着く事すら容易ではない場所のようだ。一行の攻略すべき星の難易度の高さを痛感させられる。

 

「誰とも関わりを持たぬということは、それを必要とせず自らで完結しているということでもある。ある意味究極の独立とも言える領域にまで至った神秘の里・・・。まるで積もった新雪では無いか。足跡を存分に付け回りたくなるのが本能と言うもの!」

 

『本当に気を付けてよね!?何が待っているか本当に解らないんだから!お化けとか妖怪とか神様とかが当たり前のようにいる、なんて文献には書いてあったけれど、相当危ない場所なのは間違いないもの!』

 

強制突入は未だ危険というならば、選ぶべきはフランスかローマなのだが・・・ローマはともかく、フランスについては些か不穏な情報が入ってきている。デオンがオルタ化し、刃を向けて来たという事実だ。

 

──マリーがセイバークラスを持つ、というお話も聞いた事はありませんが、デオンさんに起こった変化は一体どういう事なのでしょう?マリーとフランスの皆様に一体何が・・・

 

《そうさな。マリアめに剣の腕があったという事実は聞き及んではおらぬ。在るならば我等に隠す理由は無いのだからな。だが、反転し雑念に堕ちる要素ならば幾らでも存在しよう。マリアが生き、照らした時代とは人の狂気と悪性が煮詰まった革命の時代なのだからな》

 

そう。堕ちる理由や切り落とす要素は探そうと思えば幾らでも存在する。マリー・アントワネット程の王妃すら断頭台に送った民達の狂気と時代の激動。憎悪や悪意を全く懐かなかった聖人でないマリーならば、ほんの僅かにでも燻る【何か】があったのだと王は見る。火種は幾らでもあるのだ。自分自身全てを受け入れた王妃が、闇に堕ちる程の何かも必ず。

 

──マリーの生涯を再び見通して見ます。そして必要ならば彼女自身にもお話を。・・・辛いことを聞くかもしれませんが・・・

 

王妃の、友達の身に何が起きているのか。それを掴めば何か糸口に繋がるかもしれない。その意志を固めたエア。

 

・・・そして、『それ』もまた王達を認めていたのだ。

 

【ようこそ、皆様。ゴールドセイバー宙域へ。待っていたのよ?私達の他にギルガメスを脅かすじゃじゃ馬がやって来るのを、ね】

 

(通信だ!逆探知・・・フランス宙域からだぞ!)

 

突如送られてきた通信。それは一同、エアとギルには耳に馴染みのある声だ。王が唯一頼む夜枷の相手、枕元に語り掛ける王妃の声。マリー・アントワネット。しかし──

 

──マリー・・・?

《この枯れ井戸の底のような冷えきった声・・・フン。誰だか知らぬが、マリアめに下らぬ側面を押し付けたものよ》

 

楽園の弾むような、輝くような、耳に心地好い清らかな声音とはまるで違う。冷めていて、残酷で、極めて冷淡で恐ろしい声。あらゆる全てを弄ぶような暴虐の姫とのイメージをもたらす声を、聞きなれている二人ですら把握に一拍置いたのだ。

 

【遊びにいらしてくれたの?素敵だわ。とてもとても能天気で、お花畑な頭を御持ちなのね。ならどうか、フランスにいらしてくださらない?血の水瓶や噴水、お洒落な首のランプ。鼻を塞ぎたくなるような人々の雑踏で、忘れられない思い出をあげるわね。御礼は、あなた達の首がいいわ。ずらりと並べて、頭を開いてブリオッシュを入れましょう。きっときっと美味しいわ】

 

「ず、随分と素敵な趣味を御持ちですね王妃?あの、そちらは歓迎してくださるのかな?」

 

【ええ、勿論。私の、私の為の国にどうかいらして。待っております。素敵なあなたたち。待っております。新たなあなた。フランスは、いつだって私の為に。そう──】

 

通信は途絶える。言葉を残して。

 

【私だけが、幸せでありますように。ギロチンに飲ませましょう。真っ赤で素敵な飲み物を】

 

マリーを知る者には、戦慄すら覚える言葉を残して。




──彼女が、マリー?

ギル《真に他者を恨まぬ者などそうはおらぬという事だ。煌めく星にも翳りはある。マリアめにも、微かな雑念があったに過ぎぬ。・・・しかし、些か強引な気は存在したがな》

マーリン「身震いする程冷たい声だったね!私にもケーキを振る舞ってくれた彼女とは思えなかったよ、鳥肌が凄い!」

エルキドゥ「そういう残虐趣味なら受けて立とうじゃないか。僕のラフムいびりが火を吹くとも」

フォウ(そんなのってある?ボクらの王妃様がオルタ化なんてそんな・・・)

──・・・・・・

エレシュキガル『・・・気持ちは察するけど、とりあえず何処かの勢力とはコンタクトを取りたいわね。フランスがダメならば・・・』

?『無論余ら、ローマしか有り得まい!!よく来た勇者達!ゴールドセイバー宙域で待ちわびたぞ!余は嬉しい!つもる話は沢山あるだろうかまずは此処!ローマに来るがよーい!!』

エレシュキガル『うるさっ!?』

再び繋がった通信は、先程とは全く異なるほどに明るく、底抜けであった──

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