?「ウォオ・・・!ウォオ!ネロォ・・・!」
?『うむ。かの者らこそ希望。そして力を合わせるに足る遥か異なるローマより来たりしローマ。丁重に触れ合わなくてはならぬ』
?「ゴールドセイバー宙域にはどうやら今のところ物見遊山といったところであろうな。余裕の戦運びだ。この私のふくよかさのような」
?「ウォオォオデブゥウゥウゥウ!!!」
?「ふくよか!ふくよかなのだ!」
?『フッ・・・愛し子らよ。ネロを待て。かの華やかなローマの歓待を、我等がローマの歓待を彼等に』
「はっ」
「ウォオォオ!!はい」
?『ZIPANG、そしてゴージャス。我等は合わせねばならぬ。次なる時代を掴み取る力を。そして、血にまみれた革命のフランスを、ギルガメスを制する力を──』
「へぇ・・・これが華の都、ローマって場所なんだ。第二特異点の記録は見ていたけど、こうして訪れてみると違うものだね?」
エルキドゥの所感が示す通り、ヴィマーナを格納して都市に訪れた一同を迎え入れた惑星ローマの喧騒・・・それは今まで訪れて来たどんな場所よりも騒がしく、華やかで、そして美しかった。海面に隣接したローマの都市に生きる者達は、破滅の裁定などどこ吹く風と言わんばかりの安寧と発展を誇っている。
「見たまえ!出前やお土産屋も完備しているよ、本来の目的を早くも果たせそうじゃないか!カルデアの皆のために買っていこう!美人の御婦人に挨拶してもらいたいが、いるだろうか?」
「皆それぞれの携帯端末を持っているんだね。ごめんよ、少し見せてくれるかな?・・・ローマアプリ?」
「はい、旅の御方。中央の神祖ロムルスの大樹におらせられる皇帝同盟の配信をリアルタイムで目の当たりにできる素晴らしき端末アプリでございます。カリギュラ様・・・はともかく、カエサル様、ネロ様、ロムルス様の配信は面白く為になるものばかり。毎日の生き甲斐なのですよ」
『驚いたわ・・・!ゴールド宙域の星々は不明な情報だらけだったけど、まさか皇帝達が共同で国を運営しているなんて!しかも民達に端末まで用意して・・・!』
「普段は皇帝達の何れかを神祖ロムルスが選別し任せるのですが、今シーズンは特例として皇帝達も力を合わせる時だと定められたのです。ネロ陛下、カエサル陛下、カリギュラ陛下、そして偉大なる神祖ロムルス・クィリヌス様。磐石なる態勢をローマは整えられたのですよ。我々も、その威光と恩恵には深く助けられておりまして」
商売、そしてアプリ、何より驚愕すべきは皇帝が数人介在しローマを守護している事実。ネロだけでなく、カエサルやカリギュラもこの惑星に存在し星の統治を行っているらしいのだ。かつての特異点とは真逆の状態、万全の防衛が現れていることになる。そして、それを後押しする最先端の治世の証が、一人一人に至る端末の譲渡である。何気無く話した民でさえ、紅き煉瓦の色合いのタッチ式端末を所持している現代の情報社会めいた太作をとっていたのだ。無用な噂の伝播を抑え、情報を正しく伝える為の策であろうか。それを皇帝が伝えるとあらば、確かに無用な混乱は避けられるのかもしれない。
『ロムルスと言えば、ローマの基礎を作り上げた偉大すぎるローマ・・・最期には神にまで至ったとされたトップサーヴァントの呼称ね。伝説の存在で実在すら疑問視されていたけれど・・・』
(話によるといるみたいだね?ネロやカエサル達も存在してるって・・・これ、かなり本気のヤツじゃない?このローマって星)
ロムルスが皇帝を召喚し、民達の情報統制を図ったと言うならば、このローマがゴールド宙域にランク付けされるのも頷ける。かつての人理修復の際にも強敵として、ローマとして立ちはだかった偉大なるローマ。バビロニアの際にもその威光を示した神祖が国の舵取りを行っているとあらば、その磐石さは推して知るべしだ。
──フランスの動向は気になりますが、だからこそこのローマ勢力との敵対は避けておきたいところですね。・・・ローマと言えば・・・
そう、エアは忘れていなかった。ローマと来て、とても印象深いもの。まだ無銘として右も左も解らぬ頃に初めて口にした、とても美味しい果実。
《フッ、最早遥か昔と誤解するばかりに懐かしき記憶だが覚えていたか、エア。我も同じ感慨に浸っていた所よ。どれ──》
「おい。リンゴを一つ買い求めよう。釣りはいらぬ、延べ棒毎持っていけ」
適当な露店に金塊をくれてやり、リンゴを一つ手に取る王。その瑞々しさと手に伝わる触感は、最早遠き記憶のローマ特異点を郷愁と共に記憶を思い起こさせる。
《ローマの市場を買い占め、買い物王として歴史に名を刻んだ事もあったな。よもやこんな宇宙の辺境でそれを思い起こす事になろうとは》
──ネロ皇帝と入浴我慢大会をしたり、行軍の際に欠伸を漏らしたりしておりましたね。ふふっ・・・無銘であった頃が、もうとてもとても昔に感じられます。それほどに、毎日愉しく愉快に満ちていて。
《どちらのローマがマシか、決めたのもこれであったな。アルトリアめが我に懐き始めたのも、お前の提案の贈り物であった》
思い返せばとめどなく思い出が甦る、人理修復の旅路。二つ目でまだまだ研鑽不足であった無銘と器の関係性の二人の思い出を、笑い合いながら語り合う。そのまま、王はリンゴを一齧りし咀嚼する。王とエアの口に、瑞々しい甘さと僅かな酸味が一面に拡がり抜く。あの日になんとなしに食べた、リンゴの味と変わらぬ美味さ。
《やはりローマのリンゴは美味よな。個々もかわらず、リンゴ一個分の価値は存在しているようだ。変わらぬ伝統、というヤツか?》
──ふふっ、はい!リンゴ一個分素晴らしいローマ、ですね!
ロムルスのローマに対し、皇帝同盟のローマに対し、無銘と器がネロのローマを庇護する理由としての決め手。それは何の気なしに食べたリンゴの美味さであった。活気と笑顔に育てられたリンゴ一個分だけ、あらゆるローマよりネロのローマが優れていると器であった頃のギルが下した、粋な裁定を思い返し笑い合う。
《そら、エア。お前も食え、前と違い、我と同じ果物に齧り付く栄誉付きだぞ?》
エアに差し出される食べかけのリンゴ。王の悪戯っけな表情に緊張しながら、慎んで受けとらんとするエア。
──こ、光栄です!そ、それでは・・・
「あ、リンゴ買ったの?僕にもちょーうだい(シャクッ)んー、おいひぃ!」
「なっ!?エルキドゥ貴様!我とエアのイベント中に割り込みおったな!?」
「どれどれ?(シャクッ)んー!味は解らないけれど、君達の想いを馳せた味わいはよく伝わるよ!なんという瑞々しく爽やかな味わいなんだろうか!これは確かに、このリンゴ一個分ネロ皇帝のローマを護りたくなるのも頷けてしまうなぁ!」
((シャクッ)独り占めとからしくないぞオマエ!ケチケチしてないでエアの分も買うんだよホラホラ!)
「えぇい貴様ら!我等のノスタルジックな想い出を阻みおって!つまみ食いなる卑しい真似など言語道断!貴様らの分も買ってやる故一列に並ぶがいい!!」
「「(わぁーい!!)」」
──あららら・・・
エアの手に残されたのは、シャクシャクと噛み噛み跡のついた虫食いリンゴ。でも、あの時より自分達の取り巻く環境がずっと愉悦と喧騒に満ちている証のリンゴ。
──あむ、んくっ。・・・うん、美味しい!
かつてよりずっとずっとはっきりと感じる味覚にて、そのリンゴを一口齧る。甘さと酸味が、この世界に生きている実感をくれるのだ。
《エア!リンゴ飴もあるようだ、共に食うとするか!マリアめの土産にもなろう!》
「モツとかない?」
「御婦人、サービスしていただけはしないかい?そう、私の素敵なフェイスに免じて・・・」
(御巡りさん!不審者がいます!!)
──ふふっ。はい!いただきます!あの、よろしければお土産をマリー二人分・・・
この美味しさを共有したい人が、今はたくさんいる。自分の置かれた環境の幸福さを噛みしめながら、エアは一行と共に行く。
このまま、一行はしばらくローマの都市と市場を堪能し、山のような土産を買い揃えたのだった──
ギル「ふははははは!宇宙の危機に土産を買い込むとは大層な余裕ぶりよな!我等はこうでなくてはな!」
エルキドゥ「銀河警察にも送っておくから、皆で食べてね。署長」
エレシュキガル『ありがとう。・・・本当に楽しそうにするわね、あなたたち』
フォウ(それはもちろん!自分達が楽しくなきゃ愉悦なんてできないさ!)
マーリン「ふふっ、そういう所に私は惹かれたのさ。涙とは無縁の素敵な旅路にね」
エレシュキガル『ふふっ。納得』
──早くも満足度が高いですが・・・ネロ陛下は何処にいらっしゃるのでしょう?
「そういえば忘れていたな。呼び出すだけ呼び出し姿が見えぬが──」
丹下声『いっぱいローマを堪能したな!余は嬉しい!だが本番は此処からだ!よくぞ来た勇者達!歓迎するぞ!海を見よ!アレはなんだ!?美女か、ローマか!?』
瞬間、振動と共に都市が揺れる。響き渡る声と共に──海よりそれはやってきた。
「もちろん!余だよ!!おーい見えるであろうか!余だよー!この劇場にてそなたらを迎えに参った!こちらにこーい!!」
──ネロ、陛下・・・です、よね?
ギル「・・・セイバーなのかキャスターなのか。どっちなのだ、あの愉快な劇場は」
エルキドゥ「わ、この石像どうなってるの?」
ネロ「あっ待て!その、その石像は乱暴に扱うでなーい!」
海上にて現れた劇場、それを駆るネロの破天荒ぶりにも、圧倒される一行であった──
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