人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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マリー【私の、心に・・・?まぁ。獅子のあなた。あなたはフランスなのかしら?】

ラマッス仮面「いいえ。──ワタシは、とある王に至宝の銘を賜った獅子の仮面。何よりも貴女を認め、その生きざまを善きものと定めた王と共に。貴女の心に寄り添いたいと願うもの」

マリー【まぁ・・・】

デオン【戯れ言を・・・!王妃、お下がりください。狼藉者を近付けさせは致しません!】

サンソン「・・・・・・」

マリー【おかしな事を言うのね。私にとってはフランス全てが狼藉者なのに】

ギル《民の、国の全てが狼藉者と来たか。・・・・・・歪みに歪んだものよ。最早捨て置けぬな》

マリア【まぁ・・・デオンの顔を立てましょうか。では、王宮で御待ちしておりますわ。私の代わりに、フランスを蹂躙なさって?それでは、また】

首の無いガラスの馬に乗り、飛び上がるマリー。手を振る王妃をラマッス仮面は見上げ、見つめ続けた──


希望は王妃に捧ぐ華なり

【王妃が逃げたぞ!】【大罪人、マリー・アントワネットを逃がすな!】【ヤツを許すな、ギロチンで首を落とされるべきはあの王妃だ!】

 

復讐を中断し、ゲームの様に乱入者の奮闘を楽しむ事としたマリーは、デオンを引き連れ王宮へと帰還する。必ず再び相見える事を誓い、あえてエアはその姿を見送る。そして同時に、王妃を糾弾し続ける王妃の民──否。【歪められたフランスの姿】に向き直る。そして、肩に乗る最愛の親友と頷き合う。

 

「フォウ、御願い出来るかな?」

 

(うん、任せて!ラフム以来の活躍だ、気合い入れて行くよ!)

 

エアの頬にキスを送る、跳躍と共に大地にフォウが降り立つ。人類悪から昇華され、たった一人の魂の為に至尊を守護する獣、プレシャス・ガーディアンとしての姿を顕現させる。

 

『思い出せ、フランスの皆!君達は彼女に酷いことをしただろう、君達は彼女を裏切っただろう!だがかつてのフランスの王宮で、彼女は君達を裏切りはしなかった筈だ!君達にその輝きで、希望と夢を与えてくれただろう!いつだって彼女は君達を愛した筈だ!』

 

その身長は五メートルにも及び、身体中を真エーテルで構成し、虹色に輝き可視化され満ち溢れる程の運命力(プレシャスパワー)を凝縮した完全無欠の結末の化身が、咆哮と共に自らの力の一端を解放する。

 

『君達の王妃は、本当に素晴らしい方だ!例え時代が、君達が、後の世が彼女を侮辱し軽蔑していても彼女は君達を愛している!今もだ!思い出せ!彼女が何故、未来の果てまで語り継がれる王妃であるのか!』

 

「・・・!」

 

『それは君達が語り継いだからだろう!彼女の輝きに恋をして、いつまでもいつまでも胸に宿していたからだろう!英雄は一人では生まれない・・・いつだって英雄を支える誰かが、応援してくれる誰かがいるから生まれるんだ!マリー・アントワネットを誰よりも愛していたのは誰だ!夫か、子供か!正解で、間違いだ!』

 

マリー・アントワネットの活躍を、輝きを、フォウは目の当たりにしてきた。自らが最も敬愛する姫の親友に、これ程相応しい者はいないと確信するほどに。

 

【【【【【・・・・・・!】】】】】

 

民達──マリー・アントワネットの憎悪にて再現された【革命の民達】。彼等もまたフランスの一側面ではあれど、それが全てではない。これは憎悪の王妃が見たフランスの心象風景の一端。憎悪と醜悪のフランスに生きる、在りし日の、歪めきられたマリーの心の風景。

 

即ち──この憎悪のフランスこそは、憎悪に満ちたフランスこそは。あのマリーが心に懐いた歪みきったフランスそのもの。ならばこそ民はマリーを庇わない。ならばこそ民はマリーを糾弾する。この星を覆う、マリーがフランスに懐いた絶望の心象そのもの。

 

(マリーの心に、ちょっぴりある憎悪を無理矢理引きずり出し展開するならば、考えられるのは【固有結界】。アヴェンジャーとしてのマリーの世界の顕現。それなら・・・!)

 

エアは懸ける。それがマリーが心の底から望んだ姿でなく、そしてそれが紛れもない英雄を反英雄に仕立て歪めたものならば、きっと──

 

『思い出せ!!王様も王妃も──称えて支えるのは君達民の力じゃないか!!』

 

【【【【・・・・・・!】】】】

 

咆哮に、本来あり得ない虹色の魔力を込めて放つフォウ。黒き泥が悪性の虚数魔力ならば、虹色は人の希望、善性を込めた真性魔力。昇華されたフォウは運命力と人の善性を司る。エアに、王に勝機と確信はあった。何者かがマリーの心の憎悪を無理矢理引き出したと言うならば、確かにその力は、憎しみは強いものだろう。

 

《しかしそれは真の無い、肥大化させた憎悪。規模は大きく見通しが悪い濃霧の様なものだ。ならば対策など容易、徹底的に晴らしてやればよい。──マリアめが、本心から復讐を望んでいたならば通じぬ手ではあったがな》

 

無理矢理型に嵌め込んだ憎悪、自分が選択した憎悪。今回のケースは前者と懸けた。ならばそれは星を覆う程に強靭ではあれど、『それを覆そうとする力』に耐性は低いと狙いをつけたのだ。エアはマリアの心の歪みとひずみを正すために。そして、フォウには、自分と同じように大切な者を支える民と国の絆を甦らせる為の力を。そしてそれは──確かな結果として現れる。

 

【・・・俺達は、王妃を裏切った民だ】【今更、王妃を称える資格は無い】【俺達は、王妃が見た民なんだ。俺達が王妃から消えることはない。】

 

『・・・・・・』

 

洗脳ではない。あくまで訴えかけるのみ。憎悪だけではないと、それだけではないと伝えるもの。彼女の心を、ねじ曲げるものではない。民達は憎悪のマリーの風景から溢れ落ちたもの。その側面。

 

【・・・だけど。あんたらが、フランスに生きる俺達を、あの王妃を素晴らしいというのなら】【私達に、それを止める権利は無い筈だ】【フランスを素晴らしいと言ってくれたのなら】

 

その訴えは、微かでも届く。何故なら、憎悪とは──愛の反対。愛なくして憎悪はない。憎悪無くして愛は無いからだ。

 

【俺達には、もうどうしようもできない】【王妃にはもう、憎しみしかぶつけられない。王妃の顔が思い出せないんだ】【俺達がもう思い出せない、王妃の顔を知っている君達に・・・託すしかない】

 

憎悪が引き出された物ならば。それにより歪められた側面ならば。真にマリー自身が望んでいないものならば。きっと届く筈だ。きっと変えられる筈だ。

 

【・・・頼む。こんな事を言うのは都合が良すぎるけれど】【取り戻してくれ。あんたたちが大好きな、フランスとそこで笑う王妃を】【俺達は、もう邪魔をしないから】

 

心とは、人間とは。多様性と可能性を秘めた生き物だからだ。民達は、王妃が見た憎悪の側面として消えていく。だがその消滅は呪詛と憎悪ではない。王妃に寄り添わんと、王妃の心を救わんと決意した白金の獅子に希望を託しながらの、自決に近い──昇華であった。

 

「──承りました。彼女の心を襲う歪みを祓い、フランスを照らす光を取り戻してみせます。だから、どうか」

 

『マリーの心に帰るといい。君達だって、マリーが人間であり、狂人ではない魅力的な人間であることの証なんだから』

 

【・・・ありがとう。醜い心というものは、受け入れ難いものだが・・・】【君達のような者が、来てくれて良かった──】

 

革命の民達は消えていく。与えられた歪みより大きな真理と昇華を与えられ、歪んだ憎悪から解放されたからだ。彼等はマリーの愛を証明する憎悪として、確かに彼女の心へと還っていったのだ。

 

「・・・・・・何者かは存じ上げませんが、マリーを心から想ってくださる方である事は感じられました。──本当に、ありがとう」

 

「こちらこそ。・・・えっと、戦いますか?」

 

《エア、お前は普段から覇気が足りぬな・・・》

 

一戦やっとく?みたいな提案を行うエアのほわほわさを隠すための獅子面ですら隠せない穏健派発言に、サンソンは毒気を抜かれたように笑う。

 

「・・・いいえ。僕は王妃への償いと罰として、処刑をするしかなかった腑抜けです。僕が王妃の為に戦うなど、許される筈がない」

 

『そんな事無いだろ。どんなにみっともなくとも推しには全身全霊を懸けるものだよ』

 

「我々はマリーの憎悪を受け止める為の存在。真に王妃を案じ、助けようとするものを阻む事がどうして出来ましょうか。どうかよろしくお願いいたします。優しき獅子に・・・珍妙な白き獣」

 

『珍妙だとぅ!?』

 

「このフランスが、マリー以外の手により歪められたというのなら──どうか、マリーの愛した国と、彼女自身に・・・光を」

 

処刑の刃を下ろし、処刑の終わりを告げるサンソン。その託された希望を果たすことを、エアとフォウは頷いた──




ラマッス仮面「共に参りますか?ヘルメットは此処にありますが!」

ギル《待てエア、シートは使うな。アルトリアめにどやされよう、サイドカーを付けよ》

サンソン「ありがとうございます。ですが僕はやることがありますゆえ、お先に」

フォウ『やること・・・?』

「えぇ、生前からの望みです。・・・どうか王妃と、このフランスをよろしくお願いいたします」

「──必ずや。マリーを取り戻してみせます!」

アクセルを込め、ギルギルマシンにて駆け抜ける白金の獅子と獣を見送り、サンソンは向き直る。

「──希望に満ちたフランスに、もうこんなものはいらないのだろう」

自身の力を込め、マリーが再現した巨大なるギロチン目掛け──

「もう、死と共に訪れる希望は・・・必要ない」

刃を振り下ろし、粉々に打ち砕いた。革命と処刑の象徴、巨大なギロチン。

──王妃のフランスに自身と並び、最も不要なものを──
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