エア「・・・誰もいないのですね、本当に。侵入者を迎える兵士さまも、誰一人」
《王族とは大抵暗殺の忌避から人払いを好むものだが、使用人の一人もいないとは驚愕よ。ただの一人も信じておらぬとは、あまりに生き辛かろう》
フォウ『・・・なんとしても、行ってあげようね。エア』
──もちろん!でも・・・
デオン【・・・】
「・・・ワタシは王妃を倒しに来たのではありません。止めに来たのです。彼女の心から引きずり出される憎悪を。ですから、どうか・・・そこを通してはくださいませんか。デオンさん──」
【お前が王妃を止めるだと・・・?あの王妃の憎悪は、確かに王妃が懐いているもの。我等が白百合の王家が彼女に与え続けてきたもの!彼女が懐き、抱えてきた嘆きそのもの!】
王宮の頂点、マリーが待つ場所に向かうラマッス仮面。その路行きを阻む黒き百合、王家に仕える騎士・・・デオンが阻む。ラマッス仮面は立ち止まり、真っ直ぐに向き合った。
「あなたは王妃を護るのですね。今のマリーが、憎悪に支配されていると知りながら」
【そうだとも。今の彼女は正当な復讐を謳っている。彼女に我等フランスが行った罪はあまりに深い!そんな彼女の想いを、意志を止める権利など誰にも無い!誰にも──あるものか!】
剣を構え、デオンはラマッス仮面へと一直線に切り込み突撃を行う。武器を握らず、静かに佇むラマッス仮面に苛烈な剣戟を見舞わせる。
【彼女は愛を謳い、その心の翳りを誰にも見せはしなかった!最後まで民を、フランスを愛し微笑んだ!その心に刻まれた痛みを、誰にも見せぬままに・・・!】
「───」
ラマッス仮面には全てが見えている。ギルガメッシュと共に見続けた視点は、万物を俯瞰する領域にまで達し戦況を、盤面を、戦略を、戦術を、戦法の全てを見通し見切る。故に、セイバーであるデオンの剣ですら、一歩も動かず、微かに手先と足先、首といった部位を動かすだけでかわし続けている。ラマッス仮面に、マリーの宝物を傷付ける意志は無いのだ。
【私は王家の騎士として、彼女に憎まれ罰されるべきの不甲斐ない者だ・・・。彼女を止める資格など無い。私の仕えるべき相手は、我等フランスが貶めた相手なのだ!ならば私が示す忠義はただ一つ!彼女の憎悪を守護し、彼女の願いを叶えることだ!彼女が懐いた憎悪を、黙して受け止める事だ!それが──】
「それが、あなたの罰。今度こそ、マリーの心に、全てに寄り添う事を選んだ。例えそれが・・・」
【あぁ、そうだ!それが、例えフランス全てへの憎悪でも!尽きる事無い怨嗟でも!今度こそ、今度こそ彼女を誰にも否定させはしない!】
自身は護れなかった。彼女を、彼女の尊厳を、名誉を、彼女の大切なものを護りきることが出来なかった。それどころか、彼女を蔑み、処刑台に送ってしまった。
だからこそ、今度こそ守護してみせる。彼女の心を、彼女の尊厳を。例えそれが尽きぬ憎悪であり、フランスの滅亡を心の底から望んだのだとしても。その願いを、その怒りを、その憎しみを護るのだと。王家の騎士として今度こそ。
【邪魔は──させない!今度こそ!彼女を護るんだ!誰にも、彼女を否定させはしない!】
「それがあなたの決意、それがあなたの覚悟・・・!」
ラマッス仮面は、その決心と覚悟を肌で感じ取る。デオンは彼女を否定せず、その心を受け入れ、全てを護る事を決意した。憎悪であろうと、それが本心であるのならばと。それは、デオンの定めた騎士の道。
《真に王妃を想うならば、諫めるもまた騎士道であると想わんでも無いが・・・それほどに無念であったのだろうよ。此処に至って苦言はよそう》
『エア、大丈夫かい!?彼、えっと彼女?デオンを突破しないと、マリーには辿り着けない!』
──うん、解ってる!でも、デオンさんは・・・倒さないよ!
エアは奪いに来た訳でも、倒しに来た訳でも無い。膨れ上がった憎悪から、彼女の心を取り戻す為に此処にいるのだ。そして何よりも・・・
──デオンさんだって、マリーの大切な宝物・・・!もうこれ以上、マリーを哀しませることも、傷付けさせる事もしない!
デオンもまた、フランスと・・・何より、マリーの宝物なのだから。そんな存在を、奪い取るなどという選択を選ばない。それがラマッス仮面の・・・エアの決心、決意なのだ。だから──
「だから・・・!あなたを倒さず!あなたを越えていく!」
【何・・・!?】
ラマッス仮面は動いた。デオンの心を垣間見る事で、それより先にいるマリーに辿り着き、なんとしても憎悪の暴走から彼女を解き放つ。その為にも、此処では決して負けられない。だからその為の奥の手を、一瞬だけ解き放つ・・・!
「あなたの決意、全身全霊で受け止めます!いざ、勝負・・・!」
フォウを首裏にしがみつかせ、バック転を繰り返し距離を取る。だがそれは逃亡では無い。しっかりとデオンに向かい合い、決意の眼差しを送る──
【戯れ言を!君に何が出来る・・・!君に王妃の、何が解ると言うのだッ!】
その言葉を、フランスならざる者が王妃に寄り添わんとする行為を不敬と受け取ったデオンが、刀剣に漆黒の魔力を纏わせる。
【私は最後まで、王妃と共に!この剣と誇りは王妃と共に!例え、この剣が黒に染まろうとも。フランスの栄光が地に堕ちようとも・・・!】
「・・・───」
ラマッス仮面を一刀両断するために、構えるデオン。その一閃をまともに受ければ、必死の攻撃。覚悟の騎士の、必殺の一刀
【私の全ては──王妃と共に!マリー・アントワネットに、今度こそ──揺るぎ無い栄光を!!】
その──かつて果たせなかった忠義を乗せて、デオンは黒百合の王妃の騎士として。王妃にその剣を捧げる。そしてその一閃が──
【おぉおおぉおおぉおおぉおおぉおッ!!】
ラマッス仮面の頭部に目掛け、一直線に叩き込まれる。その決意の一撃を前に、ラマッス仮面は静かに目を閉じる。
「──否定せず、破壊せず、略奪せず。受け入れ、認め・・・そして!」
『ギル!やるぞ!』
《無論だ、フォウ。我が至宝、傷一つつけさせぬわ!》
フォウがプレシャスパワーを運命力へと変化し、エアの覚悟と想いの行動がもたらす結果を最上のものとする。
《エア、我に合わせよ!出来る筈だ、我の至宝たるお前にならばな!》
──はい!
【滅びろ!王妃を惑わせる者め──!!】
そして、エアは目をそらさない。自分がやると決めたことを、絶対にやり遂げる。その気迫と闘志は、自分達を信じ、共に歩んでくれるマスター。──龍の少女より学びし、どんなときでも自分の決心から逃げない心。
「ワタシは、ワタシである事から逃げない・・・──」
振り下ろされるその死の一撃を、真っ直ぐ見据え・・・目を、見開く。
《───今だ!エア!!》
『行けぇえー!!』
──はぁあぁあっ!!
フォウとギルの声に重ね合わせ、エアは振り下ろされる刃に──手を閃かせる!
魔力が弾け、辺りを吹き飛ばす。黒き魔力と、虹色の魔力がぶつかり合い、王宮を揺らぎ震わせる。中心地にて、驚愕が巻き起こる。
【な・・・なん、だと・・・!?】
デオンは、目の前の光景に驚愕を露とする。自身の振り下ろした刃が、一閃が──
「───・・・!」
止められていた。ラマッス仮面の面のギリギリで、両の手に、刃を添えられて。騎士の誇りである刃を受け止められたのだ。
【そんな、馬鹿な・・・!】
「せっ!はぁっ!」
そのまま、刃を捻り天へと吹き飛ばす。騎士の手から、剣を奪う。──倒さずとも、その誇りを乗り越える最大の一手。
エアだけの力ではない。全てを見通す王の千里眼、フォウのプレシャスパワーによる、運命の決定。それらが、戦闘行為に不馴れなエアにこの奇跡を起こさせた。
「これが、ワタシの覚悟。誰からも、何も奪わず・・・王道を貫く決意」
【・・・ッ】
「デオンさん。ワタシ達は先に進みます。ワタシ達はフランスに生きるものではありません。でも・・・どうか。王妃の行く末を、案じさせてはいただけませんか?」
武器を弾き、デオンに差し出すは・・・共に王妃を想わんと願う尊重の手──
デオン【・・・いいや、まだだ!】
「──!」
デオンは短剣を引き抜き、ラマッス仮面へと相対する。王妃への忠義を貫くために。王妃を護るために。
【私は・・・二度と!彼女を裏切るわけにはいかないのだから・・・!】
「──ならば、何度でも訴えます。ワタシ達の想いが、届くまで!」
譲れない事は理解している。ならば、何度でも解ってもらう為に覚悟を決める。──だが、その時。
?「・・・デオン。それ以上に誇りはない。ただ、見苦しいだけだ」
デオン【!?】
「あなたは・・・!」
サンソン「行ってください、ラマッス仮面。王妃に必要なものは、盲目な忠義ではない。暖かく優しい、寄り添う意志だ」
デオン【貴様・・・!王妃を裏切るか・・・!】
サンソン「あぁ。僕は処刑人。元より・・・王妃に寄り添うに値しない。だがこんな僕だからこそ、彼女に必要なものがなにかを見極められると信じる」
フォウ『!君はやっぱり、推しの為に頑張れるヤツだね!』
ギル《ふはは、粋ではないか処刑人!礼は言っておいてやろう!エア、進め!王妃はすぐそこだ!》
「──お願いいたします!」
エア達は走り出す。再び決意を秘めた処刑人の後押しを受けて──!
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