人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
『調味料ガン詰め麻婆』
「いただきます!ハム、ハフハフ、ハフっ!ハム、ハフハフ、ハフっ!ハム、ハフハフ、ハフっ――!!」
「ダダダダダダァ!!」
獣めいた咆哮をあげながら、脈動する血斧を嵐のごとく振り回しマシュを打ち据えるエイリーク。振り撒かれる剥き出しの血の臭いと殺気が充満する
「はぁあ――ぁあぁっ!」
しかしマシュも退かない。弾き返し、受け流し、押しては引き、引いては押しを繰り返し血の嵐をはね除けていく
「バーサーカーとの戦闘経験は、ローマで沢山積みましたから・・・!」
「ヌゥウゥウ――!!カタ、イ!メザワ、リ!ダダダダダダァ!!」
咆哮と共に、より激しくなる攻撃、マシュに降りかかる致命の嵐
「ッッ――!」
歯を食い縛り、マシュは更なる衝撃に備える体勢を整える
「ダダダダダダァ!!」
「――来て!『レオニダス』!」
雪花の盾に、炎の守護が合わさり血の怒濤を受け止める
二つのシールドが、エイリークの勢いを殺し、減衰させたのだ
「ヌゥウ!!?」
「レオニダスさん!」
「押し返しますぞ!マシュ殿!」
「はいっ!――やぁあぁあぁ!!」
盾をぶちかまし、気合いと共に、ブルドーザーの要領でエイリークを押し返しマスターと距離を離させる
「ヌグゥウゥウゥウゥウ!!」
「先輩っ!!」
「(エイリークは斧を振り回してる。他に武器は持ってなさそう。アレを何とかすれば無力化できる――なら!)来て!『ダビデ』!」
右手が輝き、イスラエルの偉大なる駄目親父が君臨する
「お、出番かな?」
「石投げて!アイツに!それで決める!」
「~♪任せてほしいな。――では」
気楽にそこらの石を拾い上げ、鼻唄混じりに投石のフォームに入る
「君には改心する・・・いやいや、頭がアレだとしても形式的にね?」
「グゥウゥウゥウ!!!」
「では仕方ないな――それでは」
フォームにて力を伝導させ、ダビデは巨人殺しの逸話を再演する――!
「『
放たれた彗星のごとき投石が、距離を一瞬でゼロにしエイリークの頭蓋に迫る――!
「マシュ殿!」
「くっ!」
二人が投石の軌道から飛び退くのと
「ガガガッ――――!!??」
こめかみに、石が直撃したのは同時だった
「ナイッショっ!!」
「いやぁ、なんとかなるもんだねぇ」
「――・・・・・・」
エイリークは失神、気絶し、その手から斧が落ちる
『そうか!ダビデ王は投石で巨人ゴリアテを気絶させ、ゴリアテの剣で首を跳ねた!その逸話が昇華されたダビデ王の宝具は、相手の武器を使用できなくさせるのか!』
「よく調べたねぇ。聖書を読んだのかな?」
『勉強の成果よ。ね、リッカ』
「うん!召喚した英雄の神話は全部学習してるからね!」
「先輩・・・!流石です!」
「まだだよ、マシュ!霊核を穿たなきゃサーヴァントは倒せない!慢心は禁物!止めを刺すよ!来て!『クー・フーリン』!」
更に右手が輝き、アイルランドの大英雄が顕現する
「動けない今のうち!槍で決めちゃって!」
「おー容赦ねぇ~・・・スカサハの師匠を思い出すぜ」
「――・・・」
「悪いな、ヴァイキングさんよ。詰みの大役、果たさせてもらおうか――!」
槍をぐるりと回し、莫大な魔力を解放する
躍動する筋肉――放たれる、因果逆転の必殺の槍!
「その心臓貰い受ける!『
その槍が、心臓を穿つ――瞬間
「――・・・ガ・・・」
――影法師のように、エイリークと、その得物たるブラッドアクスが消失する
「ボル――っとと!・・・なんだ?」
槍を慌てて引き留め、つんのめるクー・フーリン
「消えてしまったみたいだね?まさか頭に石が当たったくらいで死なないとは思うけど・・・」
「誰かが呼び戻した、といった所でしょうかな。・・・どちらにせよ、危機は去ったようです」
「では、戦闘終了ですね・・・皆様、お疲れさまでした」
警戒体勢を解く一行
「クーニキの槍、当たらなかったね」
「消えちまったからノーカンだろノーカン。金ぴかには内緒にしといてくれや」
「僕の石の方が精度は上みたいだねぇ。いやごめんごめん」
「よっしゃ、刺すわ」
「待った待った!」
「マシュ殿、また一つ強固になられましたな」
「レオニダスさんの鍛練の賜物です!」
「おっ?終わったみたいだね!流石アタシの見込んだ女傑だけはあるよ!」
満面の笑みで合流したのはドレイクだ。手には、日誌のようなものと、地図のようなものを持っている
「姉御ぉ!」
「喜びな二人とも!宝はあったよ!とびきりのね!」
「それが、ですか?」
「そうとも!ヴァイキングは出発から到着するまでの航海を全て細かく記す。島の形、海岸の形、海の気候、言うなればここに、ヴァイキングの全てが詰まってるのさ。そして新しいインクの臭いのする海図!こいつぁ別の島の情報に違いない!どうだい、海に生きるアタシたちにゃとびきりのお宝だろう?」
「な・・・成る程・・・私達のような海に不馴れな人間には見抜けない価値を、船長は見抜いたのですね・・・」
「姉御素敵ー!カッコいいー!!」
「止しとくれよ。これくらい当然さね!まぁ、あんたたちのイメージといったらやっぱり金銀財宝なんだろうけど――」
「案ずるな!それは我が用意してやったぞ!」
右手に巨獣の亡骸、左手に果実と大量の金銀財宝を構えた王が帰還する
「ギル!お帰りー!!」
「うむ!無事であったかマスターにマシュ!やはり贋作者とは言霊力が違うな!旗は折るものだ!ふはは!ご苦労であった!」
「うん!マシュも頑張ったよ!・・・逃がしちゃったけど・・・」
「無事ならそれでよい!我の助力を借りぬ奮闘、見事であった!!」
――二人の頑張りに報いるために、ちょっと頑張ってみた
この島のヌシとされる6メートルの猪を討ち果たし、食べられる果実を査定し収穫。ついでに秘められた埋蔵金を掘り当て回収した
「・・・うん!」
「はいっ!よくぞ無事で、二人とも!」
「当然だ!そら、山分けだ開拓者!我には無用なものだが、半分なら遺恨は残るまい!」
「解ってるじゃないか!かなりの上物を仕留めたねぇ!」
「フッ、我は総督王にしてコレクター!ただ歩くだけで懐を豊かにするゴージャス王だ!次の島までには少しかかろう、これを焼いて食らい活力とせよ!」
「よしきた!アタシもラム酒を振る舞うとしようか!大量大量!だから海賊は止められないのさ!今日は歌うよ!西へ西への大航海の景気付けにね!」
「おー!!」
「解りました!」
「では船に戻るとするか!我を称え、賛美し!そして崇め奉れ!このゴージャス総督王をな!ふはははははははは!!」
「よく笑う男だねぇ本当!」
――そうして戻った船ではイノシシ鍋パーティーが盛大に行われ
「サバイバル料理なら任せとけ!」
「生き生きしているな、クー・フーリン・・・」
「うむ、お代わりよし、盛り合わせよしの大物だナ。さらばイノシシ、食物連鎖に還るがよい」
「野郎共!!グラスは持ったかい!?」
「「「「おー!!」」」」
「次の島は西だ!十時間、風を捕まえりゃ八時間!それまで飲んで食って歌って騒ぐよ!!」
「「「「「いぇーぃ!!」」」」」
「マシュ、かんぱーい!!」
「せんぱい、かんぱいです!」
「・・・シャレ?」
「・・・あっ・・・ち、違います!」
『お疲れさま、ギル』
「うむ。労うとは気が利くな」
――どんちゃん騒ぎを行いながら、次の島へ黄金の鹿は進んでいくのだった・・・
「ハム、ハフハフ・・・ハフっ・・・」
「――ご馳走さまでした!はい!食べられますね!大丈夫です!」
(うわぁ・・・我ながらうわぁ・・・)
「辛さは多種多様・・・部員の皆様が提供して下さった調味料で、また一つ麻婆が奥深くなりました!皆様に感謝を!英雄王の為にも、私は精進します!」
(なんで食えるのよアイツ――!?)