《さて、人事は尽くした。後の天命はどちらに傾くのやら。神々などに下げる頭はないが、戯れの願掛けくらいはしてやらんでもない。どれ・・・》
──ギル!今スサノオ様が演舞にて勝利祈願の『ZIPANGの国技・SUMOU』を披露なさってくださるとか!
フォウ(星くらいは簡単に壊せる力と力のぶつかり合いみたいだぞ!見に行こうじゃないか皆で!)
《なんだそれは創生神話か!早速最前席で見に行くぞ!かぶり付きで拝見してくれる!》
──厳重なバリアで護られなければいけないスポーツ・・・どんなものなのでしょうか・・・!楽しみですね・・・!
フォウ(スサノオは横綱みたいだぞ!絶対強いよ!ビデオ取ろうビデオ!)
《ふははははは!署長めに見せた反応が見物よな!》
・・・後にゴージャス達は、空中を自在に飛び回り技が決まるごとに大陸を揺らし破壊し、それを修復する行司・・・ZIPANGの神秘を目の当たりにするのだが、それはまた別のお話──
「はっ!やっ!てっ!やぁっ!」
各人が思いを込めてZIPANGを回る中、ギルガメスを倒すための最後の切り札・・・アルトリア・リリィは自身を集中させる為に鍛練を行っていた。手にしたカリバーンを、流れる所作で懸命に振るい、決戦の気運を高めていく。彼女の持つ聖剣は最早、カリバーンだけではない。プロトマーリンが遺し、託した・・・数々の聖剣達と共に、来たるべき戦いへと想いを託し乗せている。
「マーリン、見ていてください・・・!私はやります!絶対やってみせますからね!」
「はーい、見てるからね。やる気に満ちているのはとても素晴らしいよリリィ。その調子で」
「マーリンではないんです!マーリンではないマーリンです!」
ははは、ややこしいなぁ!マーリンはりんご飴を食べながらリリィの特訓を見つめている。味は感じてはいないが、美味しいという感覚と感傷、その感情を楽しんでいる。その光景と、リリィにもたらされた聖剣の輝きの・・・織り成された二つの奇跡。
「未熟だけれど、無限の可能性に満ちたリリィ・・・彼女が行き着く果てに満ち溢れた聖剣の輝き。旅路を行く彼女と、旅路の果てに待つ聖剣。ユニヴァースの私も、粋な計らいをするものだねぇ」
未熟なリリィと、輝きの旅路の果ての聖剣。カルンヌゥエン、マルミアドワーズ・・・それぞれ、綺羅星の様に煌めく剣の数々を一生懸命に振るうリリィの姿に、数奇な宇宙の旅の在り方を感じられずにはいられないマーリンは、ギルガメスを討ち果たす可能性を持つであろうリリィから眼を離さない。
『ギルガメスは自分に相応しい花嫁をお探しになっています。そしてそれ以外のセイバーを決してお認めにならないでしょう。具体的には金髪碧眼、小柄で凛々しいセイバーさん以外を認めにならないはず!初手えぬま・えりしゅを回避し対等に戦うためにも!リリィさんが矢面に立たなければならないという筋書きですね!そうですよね!?』
其処に解説と共にやって来たのは我等がお婆ちゃん、イザナミである。がんばり屋なみんなに、楽園の者達に差し入れのお菓子などを配り歩いているイザナミおばあちゃんが、リリィ達にも渡すためにやって来たのだ。そしてギルガメスの気質を完璧に見抜いている慧眼もチラ見せしながらの大阪のおばちゃんムーブにマーリンは思わず笑みを溢す。
「その通りだとも日本の尊きおばあちゃん!いやぁ今回ばかりは千里眼持ちの立つ瀬がないなぁ、ロマニも私も活躍がいまいちだねぇははは!」
『何を御謙遜を!何かをしたいと、成し遂げたいと決意し立ち上がった時点でどれほど立派な事か!誰もがもうダメだと諦めた宇宙で、皆様の姿を捉えた瞬間『あ、大丈夫だな!』となったんですよ私は!はい!自信を持ってくださいませ!皆様は凄いのです!全肯定イザナミおばあちゃんになりますよー!とっても凄い!凄いのです!』
イザナミはその眼で、神の叡知でユニヴァースの変化を見ていた。セイバーウォーズ・・・壮絶な花嫁探しの一部始終を。このままではシーズンどころかユニヴァースの危機!そう決心したイザナミは人知れずアマノヌマボコの最大解放にてエヌマ・エリシュを乗り越え、真面目モードにて調停に乗り出そうとしたのだが・・・その一瞬に垣間見た未来の一つが、『別世界からの助け』という結果であったと語る。
『誰が来るのかはぜんっぜん解りませんでしたし、敵か味方かすらも曖昧過ぎましたけれど、確信はしたんです。『あぁ、宇宙はもう大丈夫だな』って。おかしいでしょう?笑っちゃうでしょう?タケちゃんにこっそり言ってみたら『朝御飯はもういただいた筈だが』だなんて!別におばあちゃんボケてませんよーだ!・・・ボケてませんよね・・・?』
ぼんやりと、だが確実に彼女は視ていたのだ。楽園が、別世界の希望が必ずやユニヴァースに来て、この混迷の宇宙に平和と次のシーズンをもたらす存在である事を一度目の天啓にて知ったのだと。ならば、自身が何もかもをしてしまっては台無しになってしまうだろうと、子供達の気遣いに甘える形で待っていたのだ。楽園のZIPANGへの来訪を。
「成る程、となると子供達が言っていた、ZIPANGのレジャー施設の改築はつまり・・・」
『はい!皆様が来てくれた時、全てを大勝利で終わらせた時!・・・ユニヴァースから去ってしまう時・・・誰もが笑顔で、満面の笑みで別れられるように!辛いことを打ち消すような素敵な思い出であるようにと!改築を進めていたのです!』
ならばとイザナミは、全てが終わった後の事を考えていた。疲れた魂に、やり遂げた皆に癒しと祝福を。ユニヴァースに来てくれた異世界の勇者達に感謝と沢山のお土産をと、ZIPANG総出でリゾート施設を作り上げていたのである。それは、イザナミなりの勝利の確信であり信頼である。
『皆で絶対に勝ちましょう!ギルガメスさんに、まずは友達から始めるものと恋愛のイロハを教えてあげてください!そして是非ZIPANGに!お見合いの準備、相談はいつでも受け付けておりますから!』
「ははは、なんてことだ!ZIPANGの神様のお母さんはギルガメスを敵として見ていないみたいだぞぅ!」
彼女にとって、敵や味方などとの括りは無いのだ。争って、喧嘩して、落ち着いたならば一緒にご飯を食べたりお酒を飲んだりするのが当たり前な事。それは宇宙に大混乱をもたらしたギルガメスですら例外ではないのである。肝っ玉と寛容さ、此処に極まれりである。
(恐らくギルガメスも毒気を抜かれちゃったのかもしれないなぁ。悪意を撒き餌に裁定を果たしていたら、純度百パーセントのお節介な善意が釣れちゃったのだから)
裁定の基準が自らを、ひいては他者の不幸を匿名で嘲笑った者達の悪意とするならば、彼女は純粋な心配と思慮でギルガメスに接し続けた。ユニヴァース唯一のイレギュラーに、さぞギルガメスは辟易しただろう。最終的に無干渉を決め込んだのも、自らの最大宝具に無傷で切り抜けた出鱈目さに、若干現実逃避の気があったに違いない。
「では聡明なイザナミ様に一つ。ギルガメスを討ち果たす為の決め手には何が必要になるのだろう?見えたりなさるのかな?」
これ程手を尽くし、ギルガメスと決着を付ける際に必要なものは時の運以外に一体何があるのか。おばあちゃんの知恵袋を頼りにする夢魔の意地悪な問いに、イザナミはうむむと考え込む。
『決め手・・・決め手・・・イシュタルさん・・・スペース新陰流・・・ハンドだめなの君・・・でゅらん・・・でゅらんだる・・・リリィちゃん・・・リリィちゃん・・・遮断・・・理想郷・・・』
断片的な情報、恐らく彼女自身も良く解っていない単語を口にしながら考え込むイザナミ・・・のその情報の精確さに乾いた笑いを漏らすマーリンを他所に──
『い・・・』
「い?」
『・・・一夫多妻・・・去勢剣・・・?』
噴飯ものの単語が飛び出し、マーリンが衝撃に転げ回るのも無理なき程のおばあちゃんの知恵袋。肝心な時にしか役に立たないイザナミの、役に立つのか立たないのか全く解らない智恵が垣間見えた瞬間であった──
リリィ「あ!イザナミ様!御無沙汰しております!見ていてください!必ずやってみせますからね!」
イザナミ『あなや頼もしい!このユニヴァースの未来と行く末、是非是非よろしくお願いいたします!おばばもはりきって応援しちゃいますよ!ふれー!ふれー!』
マーリン「ま、まぁ何はともあれ泣いても笑っても最終決戦!頑張って行こうじゃないか!さぁリリィ、休憩にしないかい?」
リリィ「はい!それではあの・・・タケルさんとお手合わせしてみたいのですがよろしいでしょうか!?」
『あなやタケちゃんと!?できる、できるかなぁ・・・手加減!?絶対!絶対やりすぎはダメですからね!?』
マーリン(聖剣だけでなんとかなるかなと思っていたけど、そう上手くはいかないみたいだね。さて、何が決め手になるのやら・・・)
──決戦の機運は最大まで高まり、今、黄金の宇宙に最後の審判が下される──
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