人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ギルガメス宙域 ジグラッド内

ギルガメス「そろそろ、我が最愛の花嫁が来る頃合いであろうが・・・ふはは、楽しみすぎて寝れぬ幼児が我ったらお茶目さんめ!今か今かと待ち受ける瞬間こそ最高の宝よな!」

(花嫁を迎えるために艦隊には祝砲のみしか積んでおらぬが、あのZIPANGめ以外には我に歯向かう輩など存在しておるまい。その為に雑種どもを間引いたのだ。さぁ、お膳立ては充分であろう!)

「さぁ来るがいい我が花嫁たるセイバーよ!そして剣を捨て我が妻となれ!さすれば宇宙大帝、ギルガメスの名の下に、宇宙全てをくれてやろうではないか!ふふははは!はははははははは!!」

『エマージェンシー、エマージェンシー。艦隊ワープアウト、艦隊ワープアウト』

「来たか!・・・む?艦隊?どういう事か?結婚家財の持ち込みか?」

『ワープアウト先──ジグラッド背後』

「──何!?裏口から控え室入りか!?」



ゴージャス《ふふははははははははははは!はははははははは!!覚悟と用意はいいな!総員!──決戦の幕を開けよ!!


掴め!宇宙の命運!ギルガメス攻略戦!~艦隊戦~

「随分と好き勝手やってくれたわね、ギルガメス。・・・あなたは意思持つ嵐、思うがままに振る舞っているだけで誰かを省みるなんて思考、まるで無いんでしょうけど・・・」

 

ギルガメス宙域。このユニヴァースの根源の地域にして、次シーズンの覇権と未来が全て集約するこの地にて、エレシュキガル率いる銀河警察艦隊がワープアウトを完遂する。

 

「・・・それなりに、労働環境の改善にはなったし、マイナスばかりではなかったのも事実。何より次シーズンの芽を残す公平な裁定には感謝しておきます。こうでもしなきゃ変われないなんて恥ずかしいけれど、きっかけは必要だったものね。まぁ──」

 

全宙域に幅広く展開された、黄金の光の艦隊にこれより挑むエレシュキガル。全宇宙の戦力を結集した、銀河警察の最大戦力。しかしそれでも、数の不利は覆らない。真正面から行っては覆せない戦力差。10対1、100対1の戦力な事に変わりはない。宇宙の損失はそれほど大きかった。だからこそ──

 

「──やりすぎにも程があるのだわ!!建て直しにどれだけ苦労するか!!全砲門開け!ギルガメス艦隊・ギルガメジグラッドの背後から一斉射撃!開始ーっ!!」

 

だからこそ、渾身の奇策を練って挑むエレシュキガル。その奇策──それは自身が乗る旗艦とその護衛艦、それらを『ジグラッド背後にワープアウト』させ、大混乱を巻き起こすものだ。自身という囮で、辺りの関心を引きつつギルガメスの背後を取る。フランスの協力があればこそ叶った奇策中の奇策、一か八にも思える体当たり戦術である。その一気呵成は、少なくない効果を叩き出す。

 

『敵指揮系統、混乱中!まだ戦闘準備すら済んでいない模様です!』

 

『敵艦隊、攻撃せず!同士討ちを躊躇っています!』

 

書記官ロボたちの言葉に頷くエレシュキガル。そう、ギルガメスは宇宙一の大帝であるが同時に宇宙一のスロースターターである。広大に展開した宇宙艦隊は戦闘と言うより観艦式、展覧会の側面が強い全ボディレアメタルやエーテル製造の特注ワンオフ品。艦一つで星が買えるなんてザラな豪華な品物である。当然、それらは代えが効かない最高クラスの品物だ。壊れるなぞ、攻めこまれるなぞもっての他である。そして自身が壊すもまた然り。そして、攻め込まれると思ってすらいなかった。花嫁がブライドシップに乗り貞淑に嫁入りにやってくる想定のパーティーネオン用の砲弾しか入れてなかったのだろう。慢心、恋愛脳此処に極まれりである。エレシュキガル艦隊の背後からの本陣奇襲に、全力で引っ掛かった形だ。

 

「艦隊戦に移行するまで数分の猶予があるわ!ドゥン・スタリオンⅡ!オデュッセウスの木馬!スペースアルゴーの発艦を!」

 

『発艦開始!全艦、最大戦力でジグラッドに突入を慣行しました!艦長!』

 

「よーし、主砲放て!ジグラッドのバリアに穴を開けて!ロムルスにも合図を!一気に貫くの!撃てーっ!!」

 

瞬間、エレシュキガルスペースシップの最大出力の砲撃をチャージし、最大出力ギリギリでジグラッドのバリアへと叩き込む。持てる火力の最大だがジグラッドもまた堅牢。僅かにバリアに穴が開くだけに終わる。だが、それでいい。それが狙いなのだ。

 

『こちらヒロインX、ドゥン・スタリオンⅡ!突入成功!』

『アルゴノーツも同じくだ!全員無事だから安心しろ!』

『木馬、いいですね!好きですよ!XX!辺りを撹乱します!』

 

ジグラッドへの突入を成功した報を聞き、安堵するエレシュキガル。これでギルガメスに辿り着く事なくゲームオーバー、という線は消え去った。ギルガメスを倒すための希望は、確かに届けられたのだ。一息付き、未だ敵が戦闘準備完了していないアドバンテージを大いに活かす。

 

【ハデス!ローマ、フランス艦隊!いいのだわ、思う存分やっちゃって!】

 

『任せるがよい!余は艦隊戦だって大得意だ!むしろ苦手なものなど無い!!』

 

『こちらサンソン、フランス艦隊。了解しました、デオンと共に攻撃を開始します』

 

【うん、解ったよ!ギリシャ戦力も思い切りやる!行くよ、ペルセポネー!】

【お任せになって!ヘスティア神、ヒュプノス神が後方におります。危険になったら御下がりなさいな!行きますわよ、ケルベロス!】

 

【【【ワゥ!( ゚皿゚)( ・`ω・´)(・`ω´・ )】】】

 

四方八方よりフランス、ローマ、ギリシャの艦隊達が戦場にワープアウトし、更に混乱を巻き起こす。フランスに設置されたワープシステムは、艦隊に神出鬼没の展開を可能にした。かの国の協力が無ければ真正面からこの無数の艦隊に挑まねばならなかったし、宇宙を回らなければこれ程の戦力の充実は有り得なかった。楽園が、宇宙全てが重ねてきた道筋が今、ギルガメスに叩き付けられている。宇宙の命運が、此処に委ねられている。

 

【スサノオ!義によって助太刀するぜ!行くぞタケル!母ちゃんにいいとこ見せるんだ!】

『無論だ。狙いを付けずに済むのは楽だな』

 

ZIPANGからは(勝手に)スサノオとタケルが援軍に現れる。スサノオは艦隊に自らの拳で穴を空け、タケルは艦船を合気で放り投げる。最小単位の戦略兵器もかくやの武力が、エレシュキガル艦隊に合流してくれたのだ。

 

「私達はギルガメスを楽園の皆が討ち果たすまでの時間稼ぎ!無茶はせず時間を稼ぐのよ、無理ならすぐに下がって!ニャルのドックは解放されているから!このまま艦隊に傷を入れ続ければギルガメスの手痛い出費になるはず!準備出来ていない今がチャンスなの!」

 

【【『『『『了解!!』』』』】】

 

全員に指示を飛ばすエレシュキガル。その懸命さと優しさに満ちた指示に全員が応答する。宇宙に飛び散る花火が、黄金を彩る。それは皆の奮闘が、身を結んでいる証。この調子でいければ、作戦の完遂は決して夢物語ではない。

 

「だから皆、この調子で──」

 

『熱源接近!こ、この船を集中して狙ってきます!』

 

「ッ!バリア展開、ローリング!弾を無力化して!」

 

瞬間、旗艦にのみ向けられた最大クラスの波状攻撃。最低限の攻撃で最大の成果を狙った弾幕の嵐。間一髪で艦が回転し、ダメージ被害を無力化するがその衝撃は甚大である。そして、勿論それで終わりではない。

 

『わ、我が艦周辺の艦隊、準備を終えた模様です!第二波、第三波、第六波まで予想されます!』

 

ギルガメスは確かに慢心しているかもしれない、だが、それでも盤面を観るその眼、その観察眼は紛れもなく英雄王のそれだ。彼にとっての雑兵は構う事なく、躊躇わずにクイーンを狙ってきたのである。

 

「少しは焦ったかしら・・・!でもね、こんなの1ヶ月連勤深夜に観る幻覚に比べたら全然なんてこと、っ・・・!」

 

轟音、振動と共に揺れる艦内。ギルガメス艦隊の集中砲火は凄まじく、銀河警察最大旗艦、コスモス・ネオの最新鋭バリアシステムすらもただでは済まない。悲鳴じみたアナウンスが、艦内に響き渡る。

 

『バリア耐久度30%減少!艦内ダメージコントロール準備!残り耐久時間、推測三分!』

 

エレシュキガルは懸命にダメージを計算し、艦のバランスと指揮を執る。自分は最高の撒き餌だ。退くわけにはいかない。本命は楽園のギルガメス討伐部隊に工作部隊だ。彼等さえやり遂げれば、勝利はこちらのもの。攻撃が誤爆し、彼等が死んだなんて展開こそ最悪なのだ。まだ、想定内の事態である事に変わりはない

 

「三分・・・一週間の休憩時間より一分も長いのだわ!本艦は戦線を維持!少しでも皆の弾除けになります!時間を稼ぐの!」

 

【無茶だエレシュキガル!下がって!ここは僕達が!】

 

「いいえ、大丈夫よハデス。私達は勝つわ!笑顔で明日を迎えるために懸命に戦って、勝つの!これは、私にしか出来ない戦いだもの!」

 

署長として、辛いことも苦しいことも一緒に乗り越える。皆だって怖いし辛い。それを分け与えなければ、新しい未来なんてきっと来ない。

 

「皆、私は一緒にいるわ!──っく・・・!頑張るの!有給だって、長期休暇だってあるホワイト企業を夢見て・・・!」

 

『バリア、40%損傷!敵攻撃、激化!』

 

「っ~~・・・ギリギリまで、頑張るのだわ!掴み取るの!未来を!明日を──!」

 

望んだ未来は、すぐそこまで来ているのだ。諦めてなるものか。誰もが定時退社出来るクリーンな企業をきっと皆で。その意志と決意が、エレシュキガルを奮い起たせる。

 

そして──

 

『──よく言った!ならオレもウジウジすんのは止めだ、とことん付き合っちゃうぜ!』

 

【実によろしい。そういう人間賛歌・・・頭プレシャスの私には大好物さ】

 

二つの声が響き、煌めく三つ星の軌跡。撃ち落とされる艦隊。エレシュキガルが顔を上げると、モニターに映るはまろやかなガチムチ筋肉狩人と、そして──

 

 




インナースペース

ニャル【準備はいいな、ナイア、エキドナ。そして──プロテアちゃん】

ナイア「お、おす!」

プロテア【いいですよー!お願いします~!】

ニャル【よし──珍しく血が騒ぐ・・・!】



〔キングプロテア。アクセスグランテッド〕

ニャル【人が産み出す、無限の発想──ゴジラ、モスラ、ガメラ】

〔ゴジラ・アーマーモスラ・ガメラ〕

プロテア【よーっし!いーっきますよー!!】

ニャル【深淵よ、形となれ。──行ってらっしゃい】

〔キング・プロテア──オメガ・モンスターキング──〕



ナイア「え、えっと、カードを・・・此処に」

〔ナイア。アクセスグランテッド〕

エキドナ『メダル、メダルを三枚だっけ!?』

「1、2、3!」

〔ハイパーゼットンイマーゴ・パーフェクトシイング・イフ・テュポーン〕

「お、おーす!」

『皆で呼ぼう!エキドナおかあさーん!』

「エキドナ~!おかあさーん!・・・あ、あれ?あれっ?」

『トリガー!トリガー押してないんじゃない!?』

ナイア「あ、トリガー!えっと、えい!」

〔エキドナ──サイ・ビューティー──〕



オメガ・モンスターキング【ガァアァアァオォオぉおーっ!!!】

サイ・ビューティー『ちゅりーーーっす!お待ちどぉ~~!』

エレシュキガル「なんじゃありゃあぁあぁあぁぁ!?」

黒き鱗肌に背鰭、極彩色の翼に牙を持ち、ブースターを付けた測定困難な超巨大怪獣少女、そして豊満極まる完全なる肉体に、黄色と黒の鎧と角を纏い生やした絶世の美女の突如の出現に、エレシュキガルは目玉が飛び出る程の驚愕と絶叫を現すのだった──

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