人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ギルガメス「では、改めて意志を問おうではないか。真なるセイバーよ、我のものになりに来たのだな?」

リリィ「いいえ、違います!あなたを倒して、新たなシーズンをもたらすためにやって来たのです!」

ギルガメス「ふはははははははは!それでよい!素直にはいなど言われては興醒めだ。嫌がる妃を男の度量で組敷くが婚姻というものだからな!」

マンドリカルド「あの、差別発言なのでは・・・」

ギルガメス「何を言う。男と女はつまるところそれしかあるまい。女など甘やかせば甘やかすほど付け上がり肥え太るのみの生き物だ。鞭で躾し上下関係を教えてやるくらいが丁度よい。そんなだから貴様は陰の者なのだ」

マンドリカルド「そんなっ・・・本当の事をっ・・・!!」

イシュタル「ダメージ受けない!流石は初夜権を振るいまくった暴君王様、最低の極みね女性の敵!」

「フン、上っ面だけの美しか探求せぬ貴様などに言われる筋合いはない。そんなだから貴様は民に、人に見捨てられたのだぞ?旧き女神」

イシュタル「はぁ!?」

ギルガメス「まぁよい、新郎新婦の催しがてら付き合ってやる。整然盛り上げろよ、太鼓持ち共──!」


絶対真理の決定とは

「さぁ来るがいい、花嫁に貧相な女神、そしてひもじき性質の下らん男よ!我による、我の為の婚約の義、此処に開幕だ!全身全霊をもって盛り上げてみせよ!」

 

タキシードのギルガメスの挑発にも侮辱にも取れる開催の宣言が結婚式場に響き渡る。この宇宙を絶賛大混乱に叩き込んだ傍迷惑な王、ギルガメス。彼の目論見が成就せんとする今、懸命に抗う三つの存在。

 

「別に盛り上げに来たんじゃないっつーの・・・!油断しちゃダメよ、あんなんでも立派にギルガメッシュベース、強さはマジで本物なんだから!」

 

「解っているではないかさもしき善の女神よ!ならばさらに思い知れ、有象無象の雑種が束になろうと頂点には及ばぬ普遍の事実をな!!」

 

傲岸不遜な言葉と共に展開される、親の預金通帳より見た王の財宝。きらびやかな刀剣宝槍の数々、全て宝具なる逸品が贅沢極まる質量にて敵対者と花嫁候補に放たれる。それらの規格外の光景に度肝を抜かれたのは──

 

「いいっ!?ちょ、待っていきなりとか──」

「リリィ!」「はいっ!」

 

ロジェロにボコられ世界を儚むようになったマンドリカルドのみ。リリィは楽園にてこんな乱雑な照準とは比べ物にならない絢爛な輝きを、イシュタルは師より教わったあらゆる事に動じぬ心を以て威圧から逃れ、それぞれの反応と対応をしてみせる。

 

「ぼさっとしない!大丈夫よ、適当に投げてるだけなんだから!」

 

スペースイシュタルが居合いの構えにてマンドリカルドの前に立ち、片っ端から叩き落としてのける。圧倒的ではあるが、その刃には慢心の毒が篭っており量以外に技術を抜くものはない。一手遅れたマンドリカルドを、素早くフォローする。

 

「マルミアドワーズ!カルンウェナン!やっちゃってください!」

 

同時にリリィがその装備──密かに改良製造された艦用コスモリアクターを有用した簡易アーヴァロン・ブースターを使いマーリンの遺した聖剣達を飛来ユニットの要領で操りギルガメスに肉薄する。飛行能力、戦艦並の大出力による剣の一撃。シルバー艦隊とゴールド宙域にて辿り着いたリリィの最終形態が今、ギルガメスに牙を剥く。

 

「おぉ・・・!可憐すぎて胸が苦しいぞセイバー!名前を聞かせよ我が花嫁!丹念に丁寧に愛でてやろうではないか!」

 

「アルトリア・ペンドラゴン!セイバーリリィ!そしてお付き合いは先程も言った通り、断固御断りします!自分の為に、他の全てを不幸にする王様と、決して一緒になんてなりませんっ!」

 

ブースターと、力任せの魔力放出にて圧倒的な剣圧を叩き込むセイバーリリィに、ギルガメスは感嘆の意を漏らす。可憐でありながら、竜のごとき圧巻の剣捌き。相反するものを兼ね備えた自らの妃を、心から自慢し称賛を表したのだ。タキシード姿なる慢心極まった姿でも、その猛烈な勢いの剣をかわしてのけるはまさに英雄王の成せる技である。王は、王の卵たるリリィの持論に鼻を鳴らす。

 

「ふはは、可憐なのはその見た目だけでは無いようだな!民草、或いは有象無象の輩どもの為に尽くす様な愉快な持論を抜かすとは何処までも愛いヤツよ!」

 

「何を!」

 

「王とは世界の覇者、その手に全てを掴むモノ!故にこそ、万象全てを以て世を愉しむものだ。世界や宇宙もまた我のものならば、其処に在る雑種をどう弄ぼうと我の裁量一つよ!」

 

その、本来の英雄王が持つであろう王道の側面の持論にリリィの手が震える。自身のみを是とした絶対王道。それこそが本来の英雄王。楽園の奇跡たる御機嫌な王とは似通った、しかし決定的に違うもの。突き付けられるギルガメスの言葉に、そしてその王道のもたらした惨劇に、それに巻き込まれた民達の嘆きに、リリィの心は荒れる。

 

「ものは言い様ね。ガチャの爆死の腹いせに宇宙を滅ぼしたようなみみっちい男が!」

 

「ハッ、他者を嗤い、愚者を愉しむ笑いを上げていいのは我のみよ。我を愚弄し、あまつさえ励ましの便りどころか虚仮にする不敬者なぞ死んで当然!我を敬え、でなくば死ね!これが我のもたらした決定だ!」

 

「笑われるのが嫌ならネットになんか上げなきゃいいと思うんすよ・・・!」

 

「たわけ!だから貴様は陰の者なのだ!我が公衆の面前に晒すは勝利のみと決まっている!そして望むは称賛の声のみ!いいねとリツイート以外に我への声など無用!あまつさえ低評価、批判など存在すら認めぬわ!!」

 

承認欲求を飛び越えた承認要請のみを求めた動画とネットの扱い・・・だが誰もが望んでいるであろう称賛を当然とする傲慢さを隠しもしないギルガメスの我様っぷりに絶句するマンドリカルド、リリィ。彼にとって、称賛しない者には死在るのみの話であっただけの話。

 

「匿名だからとなんの報いも責任も持たぬとも良いという思い上がりこそ間違いだ、たわけ。ZIPANGには無礼打ちという言葉があろう。他者に悪意を向けた輩には当然の報いが下るが世の理よ!顔が見えぬから、身分を隠しているから安全等と我は宇宙に蔓延った無自覚の悪意を一掃したに過ぎん。感謝こそされ、弾劾されるなど筋違いにも程があるとは思わんか?」

 

ネットを見て、王は愉快極まる宇宙の混沌を見ていた。他者の不幸を嘲笑い、自身を持ち上げる無数の者達。姿が見えなくば、手に血が付かなくば容易に人を殺せる獣性をだ。他者の不幸は蜜の味。愉悦とはそういうものだ。

 

──だが、それが自らに向けていられるのならば話は別である。

 

「そりゃ・・・まぁ・・・ネットの誹謗中傷って殺せるっすからね、人・・・だからツイッターもSNSもやんないっすよ俺・・・」

 

「流石は古代の王様、最新のネット社会にケチをつけて逆ギレの癇癪起こしなんて。宇宙大帝が聞いて呆れるわ」

 

「善の女神と言うには御粗末な物差しよな。貴様がやらねばならぬ粛清を我が受け持ってやったのだ、その序でに我は我に相応しい花嫁を求めたに過ぎん。言葉の刃の鋭利さを知らぬ餓鬼を纏めて一掃し、我は報酬に最良の妃を戴く。この無駄の無い裁定の意味が何故解らぬ?愚昧めが、だから貴様らは雑種なのだ。民一人一人の顔色を伺い敷ける善性など在りはせぬ!王が信じるのは、自らの正しさのみと知るがいい!」

 

その意見はハチャメチャで傲慢極まれど、その意見は宇宙の変革にまで到達した。絶対王者の裁定とはそういうものだ。誰もが間違っていると叫んでいても、それが間違っているとしても。王が正しいと定めればそれは絶対的な真理となる。

 

「その点で言えば、今シーズンまでに培われたモノは実に下らんものであった。生き延びたモノは過労死寸前のブラック企業、並びに回線も引かれぬ辺鄙極まる片田舎の秘境。共通するのは我の配信を見なかった蒙昧のみ。我の配信を目の当たりし、生き延びるべき輩が一人もいなかったのが答えよ。この宇宙に他者の痛みを労り、傷を慈しむ真なる尊重に至るモノは。やはり、民に過度に情報発信の手段や技術をくれてやるべきではない。百害あって一理の無い堕落の温床なのだからな。この宇宙の惨状を醜いと言うならばな、それは自由を与えて腐った民どもの性根の醜さと知るがいい!」

 

「話を飛躍させてすり変えるなっての!アンタがやったのは全部!みっともない逆ギレと癇癪起こしってだけの話に過ぎないんだから!」

 

「それが・・・あなたの王道・・・。い、いえ!でも、決して認める訳にはいきません!善も、悪も、一人一人が抱いていくものだと私は信じていますから!」

 

(・・・男として、その自信しか無い生き方は憧れるっすけど・・・)

 

ギルガメスの持論を拒絶するイシュタル、王の在り方の是非に面食らうリリィ、男の生き方に憧れるマンドリカルド。それでも敵対の意志を曲げない三人に対し──

 

「フン。真なる王の言葉の意味が解らんか。憐れにも愛しき無知と流してやろう。ならば未来の妃に解りやすい形で王の威光を示すしかあるまい?この──」

 

財宝より、取り出したるは。

 

「この英雄王のみが持ち得る──剣でな!!」

 

重く輝く、真紅の乖離剣──




リリィ「あれは、乖離剣エア──!」

イシュタル「いきなり抜いてきたわね・・・!リリィ、マンドリカルド!対処の準備はいい!?」

マンドリカルド「こ、こっちはオッケーすよ!手はず通りに・・・リリィさん!」

リリィ「解りました!よーし・・・──あれっ・・・!?」

勝負どころを理解し、決意したリリィ。しかし、出ない。自身の中に確かに在ると信じる、『鞘』が。その形が見えないのだ。

「ど、どうして・・・!?」

イシュタル(もしかして・・・覚悟が揺らがされちゃったとかそういう!?真面目すぎるから受け流せなかった・・・!?)

ギルガメス「ふはは、流石我の嫁!丸腰とは意気や佳し!ならば前戯がてらに受けるがいい!─一掃せよ!エア!!!」

足並み揃わぬ三人に向け、戯れの深紅の暴風が放たれ──全てを呑み込んだ──

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