皆の活躍により、ギルガメスはその野望を挫かれ聖剣の輝きに消えた。
動きが止まったギルガメス艦隊に叩き込まれる、怪獣やサーヴァントの必殺技。ギルガメスと共に行動不能になったシドゥリを、そっとギルガメスに気付かれぬまま修復する。彼女程の敏腕、喪うのはあまりに惜しい。
楽園の皆も回収するもの、破壊するもの、必殺技を打つものに別れ、形成を覆し艦隊をついに打ち破る楽園一行。
彼等は歓喜し、盛大な宴の約束を行う。
しかし──その前に、彼女にはやることがある。それは彼女こそが行うべき、急極まれど誰もが望んだ言葉の羅列。静かな宇宙を取り戻すためのもの──
『皆様、突然の発表・・・そして、お時間をいただく事を御許しください。私はエレシュキガル。この惨劇が起こりうる前、皆様の声援と言葉に後押しされ・・・銀河警察の一日署長となった女神の一柱。今回はこの場を借りて、全宇宙の皆様に言葉をお伝えします』
戦いに明け暮れる宙域、或いは遥かな果ての星系。セイバーウォーズ末期のシーズン。そんな世紀末めいた宇宙のテレビより・・・否。あらゆる情報端末に、銀河警察本部よりメッセージが届けられる。それは、真紅の華にして麗しき女神。その女神エレシュキガルが銀河警察の衣装に身を包み、毅然とした態度で言葉を紡ぐ。
『宇宙大帝、コスモギルガメスが巻き起こした前代未聞の惨劇、セイバーウォーズ。他者が他者を虐げ、優劣を定めることを良しとした黄金の地獄たるこのシーズン。先により巻き起こされましたこの恐ろしい戦乱、皆様はいつ終わるのかとも知れぬ混乱と絶望の只中にいらっしゃった事でしょう。我等銀河警察もまた、ギルガメスの暴虐に成すすべなく蹂躙され、皆様を守護する役割を全う出来なかった事をこの場を借りて謝罪いたします。本当に、申し訳ありませんでした』
深々と謝罪するエレシュキガル。先の銀河警察署長──冥界の王ネルガルはグリーンモンスター・エルキドゥに概念すらも締め殺された為に此処には現れず、続いて彼女は改革の意志を告げる。
『今回の騒動の爪痕はとてつもなく深く、大きく、数多の犠牲と大いなる痛みと嘆きを作り出しました。そして、その混乱を助ける大きな力となったのは、この危機に手と手を取り合わんとした聡明なる銀河の勢力達。悪逆無道の中にも正しき決断と判断を失わなかった真に力と智恵を持つべき頼もしい隣人達の力であったのです。フランス、ローマ、ギリシャ、ZIPANG、レジスタンスの皆様方──』
其処に、別宇宙の存在たる楽園の名はない。彼等は公には存在せず、エレシュキガルが率いた銀河警察がギルガメスを討ち果たしたとの記録の改竄が成されている。これは、他ならぬ御機嫌王の判断にして決断だった。
~
神輿は一つでよい。楽園の我等と銀河警察の貴様らが存在するとなれば、派閥と別宇宙の要請をしたと要らぬ禍根を生む。愉快な宇宙旅行の礼だ。雑種どもの羨望、全てまとめてくれてやる。
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誰よりも財宝を愛し所持しながら、愉快な一時のみを報酬とするゴージャス・ギルガメッシュに他ならぬエレシュキガルが猛抗議を行った。話が違う、不公平だ。力を借りるだけ借りてそんなのは筋が通らない。あなたたちは救世の英雄であるべきなのにと。だがそんな愉快な糾弾を、ゴージャスは更に笑い飛ばした。
~
たわけ。誰が好き好んで他人の庭を手入れるものか。我等はただ痛快愉悦の叙事詩にこの一幕を加えるだけに動いたに過ぎん。貴様らはそのついでに助けられたのだ、其処は間違えるな。
であればこそ、此処から先の未来は貴様らのものだ。どの様に失態を改善し、反省し、より良い未来を作っていくのか。報酬を寄越したいと願うならば、さもしい栄光ではなく偉大な歴史の紋様を我等に見せるがいい。貴様らの決意、紡ぐ未来の末を以て、我等が受けとる報酬とする。
良いな?我等は我等の愉悦を愛するのだ。いつか我等が星を飛び出す時、貴様らの紡ぐ未来が我が至宝に見せるに堪えぬ下らぬものに成り果てていたならば。
──ギルガメス等とは比べ物にならぬ裁定を、貴様らの宇宙にくれてやる。貴様らの歩み、残らず原初の塵に還ると心しておけ──
~
『此度の宇宙の危機を以て痛感したのは、一極した秩序の番人ではなく。他者と手を取り合い、支え合い、助け合う強さを持った皆であるのです。故に私は此処に宣言致します。銀河秩序防衛警察機構が所持する宇宙の番人たる唯一の格位を返上、同時に今報告した国々に分割譲渡。権力の一極化ではなく、皆で秩序を護り抜く体制の設立を此処に提案致します』
ギルガメッシュのその言葉をエレシュキガルは受け入れ、今回の一件を共に乗り越えた者達と作る新たなる組織を考案した。自分一人では不可能な事、見えないことを教え合い、支え合い、助け合う、高く遠い理想の組織を目指す者達の結集した組織。──秩序を護るだけでなく、より良い未来を夢見る景色。
『その名も──銀河同盟『
この中に、この内にどれ程名前を入れたかったか、告げたかったか。本来なら勲章を首にかけてあげるはずの者達を、黙殺しなければならぬ哀しみに言葉を詰まらせながら。それでも毅然と語りかける。
『私達は今度こそ、秩序の維持に全霊を懸ける事を誓います。サーヴァントだけとなったユニヴァース、完璧な守護は難しいでしょう』
彼等がそうだったように、彼等が成し遂げたように。自分達も、そうすること。そう願うこと。それこそが、道を拓き新たな未来へ辿り着く為の無二の道にして選択。
『ですから、皆様の力も貸してください。未来や平和とは誰かに与えられ、護ってもらうものではありません。共に歩み、探し、手を取り合い作り上げていくもの。もう、未来を奪われないように。明日を失わないように。宇宙の全ての皆様の力が必要なのです。──故に、私は此処に宣言致します』
楽園の皆が再び、この宇宙に来てくれること、来てほしいと願ってくれることを信じて未来を作り続ける事。その理想が、いつか必ず正しい姿で大いなる花を咲かせるように。
『コスモ・ギルガメスが巻き起こした今シーズン『セイバーウォーズ』の終焉、並びにセイバーウォーズの先に繋がるシーズンの到来を。皆様、本当にお疲れ様でした。どうか、次のシーズンにおける我等の使命を、忘れることがありませんように──』
エレシュキガルが戦いを終わった際に真っ先にやるべき事は、これだった。故に彼女は、署長に選ばれた。他者の痛みを知り、自身の痛みを隠す優しい娘を
『どうか皆様。未来へと至るために力を合わせましょう!誰が見ても素晴らしく、美しく、後に続く未来へと辿り着く為に!本当に、本当に──お疲れ様でした!宇宙に住まう、全ての皆様──!』
エレシュキガルの放送は、妨害される事なく正しく伝えられた。戦う理由は、最早存在しないからだ。
『放送を、繰り返します。どうか皆様、武器を手放し他者の言葉を落ち着いて聞いてください。我々は、共に歩む仲間なのですから──』
エレシュキガルの放送は、ほぼ一時間である。それを一日中、苦労を感じる事なく公演し続けた。
──武力ではなく、理性と心で未来を掴み取る為に。
そして──その願いは届けられ。憎しみと哀しみの連鎖を断ち切るように銀河の各種で繰り広げられていた戦いが収まり、消えていく。
エレシュキガルは語り続け、一人も聞き漏らすことのないように話し続けた。その決意は翌日に形となり──
──翌日には、戦闘宙域は宇宙の二パーセント以下との報告と共に未来を臨む者たちが降伏、協力。
此処に──ギルガメスの花嫁修業は完全に終幕を迎えたのであった──
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