(マンドリカルドは頑張っただろうか。無事であっただろうか・・・アイツは成長しているだろうか?広告などどうでもいい、無事に帰ってきてくれたなら・・・)
マンドリカルド「店長!生きてるっすか!無事っすか!?」
ハジュン【思いの外元気に帰ってきたな!よし!・・・良かった、無事だったか】
「これから友達とカレー食べるんで!貸し切りいっすか!?」
【何!?貸し切り!?友達!!?】
「あ、やっぱりそんなに驚くとこなんすね・・・女友達なんすけど・・・」
【女友達!!!?】
「そんなにすか・・・いや、そんなにすね・・・」
「女友達!?」
【お前も驚くのか・・・!?】
「ただいまっす、店長。良かった・・・当たり前だけど、此処は変わってなかったっすね」
ZIPANG宙域にて、ゴージャス達の大宴会が始まっている。星を挙げての大宴会であり、星を救った英雄達に相応しい催しであるが・・・彼、マンドリカルドはそれに参加する前に其処へと足を運んでいた。
【無論だとも。流行りやニーズに惑わされることなく己を貫き常連さんが求めるありのままの姿を護る。それがオレの店長としてのポリシーだからな】
其処とは、ハジュン・カレーショップ。爽やかな好青年であるハジュンが、宇宙を股にかけ誰かを幸せにするためにひっそりと開いた覇道カレーを格安、サービス値段で振る舞う隠れた三ツ星カレー店。そこは、マンドリカルドがたまたま見つけたイチオシカレー屋さんでもある。この旅路の始まりの場所に、こっそりと彼は戻ってきたのだ。
「変わらないものって、ありがたいっす。其処にあってほしいものが、いつでもそこにある。凄く有りがたくて、嬉しい事っすから」
【そう言ってもらえると助かるよ。オレは生きているもの全てに満腹の幸福を与えてやりたい。それだけを願うだけの男だからな。しかし、お前は変わったぞ。しかもとびきりいい方向にな】
今日のカレーショップは閑散としている。二人を除いて、客は誰もいない。それもその筈、マンドリカルドが仲間達の為に貸し切りを頼み込んだ為だ。そしてそれを、ハジュン青年も快諾したゆえの環境、状況だ。その言い出しっぺがあの陰気なマンドリカルドという事に、ハジュンは驚きと感動を隠せなかったのだ。
「そ、そうっすかね。それなら、良かった。マジで緊張しきりで喉カラッカラだったんす。お水貰えますかね?」
【勿論だ。変わるということは未熟で希望に満ちた証しでもある。作れたんだろう?素敵な友達が】
ハジュンのお見通しの言葉に、照れつつも頷くマンドリカルド。しかも友達が出来ただけではなく、これから新しくなりたい友達がいるとの決意も新たに、彼は水を飲み干した。
「そうなんですよ。店長のカレー、知ってたけど食べにいく勇気がないって方だったんで思いきって誘ってみたんです。いっそのこと、自分からやけくそ気味に。そしたらOKが飛んできてめちゃくちゃ焦って、その時のテンションで貸し切り頼んじゃって・・・すんません、店長」
【何も謝ることはない。交友の輪が宇宙に溢れ、絆と他者の触れ合いが宇宙に満ちるのは素晴らしい事だ。この広い宇宙、一人きりではあまりにも寂しいからな】
あくまで優しく受け入れてくれる店長に、マンドリカルドはぽつぽつと話を聞かせる。会話の練習相手でもある店長に、陰キャなりに勇気を出して自分から話を振ることを決心したマンドリカルドは果敢に対話に挑む。その成長ぶりは、ゴージャス達と出逢う前とは別人だ。
「オレ、他人との距離感がよくわかんなくて逃げてたんすよね。独りが気楽でいいとか、友達なんて重いだけだとか、俺は日陰の側の人間だから、独りなのはしょうがないとか・・・仲良くなる一歩を踏み出せなかった、というか踏み出そうとしてなかったっす」
【そうだな。他者との触れ合いは距離感を計り、時には傷つき喧嘩して、理想の距離を見つけ出していくものだ。それが時に、心に一生残る傷になってしまうこともある。言葉の刃は鋭いものだからだ】
「うす。だからずっと、独りで気ままに生きていくんだなと開き直って、でもちょっと寂しくて・・・でも、どう変えていいのか解らなくて。そんなままズルズルしてて、仲良しなの店長だけでしたっすもんね。ご心配かけました、ホント」
ハジュン店長は、自身の店に独りで通うマンドリカルドを思い案じながらも彼のスタンスに口を出すことはしなかった。もっと自信を持つべきだと思っていたし、友達を増やしてほしいとも願ったが、それはあくまでマンドリカルドが決断する事。自身はただ、聞き役と話し相手に徹していたのだ。彼が、自分から変わりたいと願うことを信じて。ハロワに行く事を願うニートの母親のように。
【御安い御用だ。オレは他者の幸せが幸せだからな。どうだった?変わることが出来たか?】
「はい。オレなんかには勿体無い友達が二人、これから友達になりたい人が一人できたんすよ!あ、皆女神か女神の類縁者なんで一人って数え方はどうかと思うんすけど・・・」
全ての戦いが終わった時、彼は勇気を出して、振り絞って、捻り出して言ったのだ。『こ、これから、打ち上げパーティーとか、どう、すかね!』震えてカラカラになった喉から、絶世の美少女達に提案する際の破裂しそうな心臓の鼓動は、ギルガメスを相手にした以上のものだった。断られたら泣こう。カレー食べよう、そう思っていたマンドリカルドは、しかしこうして此処で待っている。
「嬉しい事に属性が似てたお陰で、考えること一緒だったんすよ!エレちゃんやラクシュミーさんもカレー屋にまた来たいって思ってて、店長の額の目が怖いから一緒に行きたいって言ってくれたんす!」
【うんうん、そうか!そしてやっぱり怖いか、この額の天眼・・・絆創膏貼るか・・・】
褐色の肌に額に浮かぶ第三の目、かつて邪教の御神体のアルバイトもしていたハジュンの見た目のフォローから会話は弾み、念願の友達との外食を手に入れたのである。マンドリカルドはテンションが上がりすぎて、ハジュンの見た目のフォローを忘れてしまっていたが其処は店長、笑って流す。
「俺、思ったんす。陰キャな俺は、パリピや陽キャにはなれないっす。だけど同じように、陰キャから一歩踏み出したい人の気持ちを汲むことはできるんだって。俺達めんどくさいですから、友達いらないとかいうわりには諦めきれなくて、いつかチャンスが来ないかなって待ってるんすよ。だから俺、そんな人らのチャンスになれたらなって思うんす!」
【ふっ・・・では、そのチャンスを待つ人の歓迎会と言うわけだな?今回の集まりカレー打ち上げの目的は】
「うす!偉大な姉にコンプレックス拗らせぎみだけど、凄く親切で優しい方だったんす。ギリギリの時もちゃんと応援してくれて・・・恩返しと連絡先交換!これを完遂したいっすね!第一目標っす!」
自分も、二人の友達にとても助けてもらった。だから次は自分が助けたいと気合いを見せるマンドリカルドに、感慨深げに店長は頷く。
(初めて来た頃は、メニューの注文の一言が言えず八時間を水一杯で過ごした男がこうまで。本当にたくましく、素晴らしい成長を遂げて帰ってきたな・・・)
そして、彼は陰気なれど薄情ではない、心優しい男である事実に微笑むハジュン店長。実際、カレーの広告等彼にはどうでもよく、彼に勇気をもたらすきっかけを与えたかったのだ。誰かの為に、自分の為に力を振るえる、お前もまた英雄なのだと気づいてもらう旅に。その目論みは、確かに成就した。彼は立派な、インドア派男子にレベルアップしたのだ。今こうして、自分から約束を取り付けている。
「?どしたんすか店長、ボーッとして」
【いいや、なんでもないさ。さぁ、もうすぐ来るのではないか?準備をしようじゃないか。お前の栄えあるオフ会だろう?なんとしても最高の思い出にしなくてはな!】
「おっす!絶対素敵な思い出にしてみますから!アシストお願しますよ店長!」
これだから、人と人との触れ合いは素晴らしい。こんな絆を見たくて、宇宙と銀河を周りカレーを振る舞っている。
また一つ、自らの本懐を果たしてくれた生命達に感謝しながら、意気揚々と準備するハジュンとマンドリカルドであった──。
マンドリカルド「!店長、LINE来たっす!皆来るって!」
ハジュン【いよいよだな・・・メニューは万全だ、任せておけ!】
マンドリカルド「よ、よ、よーし・・・あやべ、緊張してきて腹痛くなってきた!ちょ、ちょっとトイレいっすか!」
ハジュン【何ぃ!?待て、すぐ其処にいるんだろう!?そんな時間は無いぞ!?頑張れ!初段が大事なんだ!気合い入れろ!】
マンドリカルド「うぅ・・・一朝一夕で変われないなぁ、人って・・・」
ハジュン【──来たぞ!】
ラクシュミー「すまない、遅くなった。ツクヨミ様を招くのに手間取ってな」
エレシュキガル「長い長い戦いだったのだわ・・・凄く恥ずかしがりやだったから・・・」
ツクヨミ【う、あ、あの、その・・・その・・・】
マンドリカルド「──」
ハジュン(そら、リードしてやるのだ。お前が幹事を行い、緊張を解してやれ)
(う、うっす!)
「──来てくれてありがとうございます、ツクヨミ様。エレちゃんも、ラクシュミーさんもありがとっす!さぁ食べましょう!注文もありますんでゆっくり選んでくださいね」
ツクヨミ【う、うん。・・・あの】
マンドリカルド「はい、なんでしょ?」
【・・・頑張ったね。ありがとう・・・皆の為に・・・ありがとう】
マンドリカルド「いえいえ、俺なんか・・・」
【マイルドブレンド君・・・】
「マンドリカルドっすよ!?」
「「あはははははは!」」
ハジュン【フッ──さぁ、好きな席へ!いくらでも食べてもいいぞ!】
「「「おーっ!」」」
【お、おーっ・・・!】
この後、ひっそり楽しく仲良くカレー食べた──
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