人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ギル「これが我が目星を付けた改築スケジュールだ。目を通しておけ。お前が取り組むべきは山積みだぞ?無論、物資が入り用であるならいくらでも融資してやるがな」

エレシュキガル「望むところよ。今度こそ、働きやすい環境を作ってみせる。ネルガルとは違う、銀河警察の在り方をね」

「ネルガルと言えば・・・ついぞエルキドゥは見なかったな。ユニヴァースの何処かで朽ち果てたか?」

「そう、かもね。生きていたら間違いなく引っ掻き回しに来るはずだし。考えたくはないけれど・・・」

「・・・ギルガメスに止めを刺すついでの旅にて探してみるか?」

エレシュキガル「あ、それは大丈夫!安心して、適任がいるのだわ!」

──適任、ですか?

エレシュキガル「えぇ。ほら、向こうで話をしてる──」


エピローグ

宴は続き、また必ず終わりを迎える。混乱と波瀾に満ちたシーズンもまた終わりを告げ、別れの時がやってきた。それぞれの道へと、帰るべき場所へと戻りゆくのだ。平和とは、掴んでから維持し続けていかねばならないのである。その為に、それぞれの未来を切り拓く準備を始めるのだ。

 

「宇宙の見張り、警備、パトロールはお任せしてもらって大丈夫っすよ。ハジュン店長と一緒に各地を回る旅に出ますから。カレーと平和を届けて回るんで。やっぱり、お腹がいっぱいだと戦う気も無くなると思うんだよな・・・」

 

食料の概念、ユニヴァースで失われた食事の概念を復活させていく旅に出る。ZIPANGのサポートも受けつつ、ハジュンのカレー屋台と一緒にユニヴァースを巡るのだ。争いがある場所にやんわりと介入し、カレーを振る舞い、温和に争いを終わらせるのだと彼は語る。既に、カレー屋台は出来上がっていた。デュランダルと曼荼羅の旗である。

 

「あら、見かけたら是非利用させてもらうわね。私はこれからギルガメスを追いつつ、宇宙の調査に向かうわ。宇宙の監視を含め、銀河警察のワンマンアーミーとして。放っておくと絶対にろくな事にならないものね・・・争いの種は見逃すわけにはいかないわ。このまま引き続き、傍迷惑な宇宙大帝を追う任務に就く」

 

スペースイシュタルは銀河警察特別隊員としてエレシュキガルの指令の下宇宙を駆け巡る事となる。彼女は表舞台に立たず、人知れず宇宙を護る紅き刃としての道を歩むのだ。そして何処に在るのか、第二第三かは解らないが・・・ギルガメスを阻むため、決心と決意を胸に再び飛翔するのである。

 

「あなたたちはどうするの?・・・なんて、愚問もいいところか。世界、これからも救うんでしょ?」

 

「はい!楽園は全人類の希望、世界を救うために戦い続けます!でも確か、召喚の縁が溜まりに溜まっていると王が嘆いていましたので・・・帰ったらそれの精算が先かもしれませんね!」

 

リリィ達は無論の事、楽園ヘと帰る。この場の勝利は格別だが、永遠に浸ってはいられない。次の愉悦と研鑽の場を求め、来る決戦の日を見据えこれよりも進歩、進化していくのだ。完成と完璧は停滞の証。未完成、未達成があるかぎり成長と克己は終わらない。リリィ達は、また新たな旅路を紡ぐのだ。

 

「そっか・・・。でも、あんた達ならきっと大丈夫だよ。あんた達も、あんた達が生きる世界もきっと凄く、素晴らしいものだって信じられるんだ。この、長いようで短かった旅路でそう思えるくらい、あんた達を見てきたから」

 

「私も同感。今回ばかりは私達だけではどうにもならなかった。この宇宙を纏め上げてくれたあなた達なら、きっとこれからも上手くやれるはずよ。あなたも自信を持って、リリィ。ギルガメスに引導を渡したのはあなたなんだから」

 

「いいえ、私の力だけではありません。楽園や、銀河警察・・・素晴らしい皆がいてくれたからこそ、勝利を約束できたんだと私は思います!」

 

未熟な自分が、宇宙を困らせる巨悪を討ち果たせた事。それは聖剣の輝きや理想郷の活躍だけでは決してない。どんな困難も笑い飛ばし、力を合わせ、一致団結した事により引き起こせた必然なのだとリリィは語る。この広大な世界で、宇宙で出逢えた奇跡の形なのだと。

 

「まぁまさか、ギルガメスと全面戦争が出来る組織だとは思わなかったわ、カルデア。そりゃあ、規模と質がそれくらいじゃなきゃ世界なんて救えないか・・・」

 

「古今東西の英雄が集まる場所・・・うぅ、成長したつもりだったのに胃がキリキリするぜ・・・」

 

「ふふっ、こうして縁は結ばれしたし、呼ばれるかもしれませんね!私達のいるカルデア・・・王が作った楽園に!」

 

例え離れても、紡いだものは無くならない。縁が結ばれているならまた会える。始まりはメチャクチャでハチャメチャで、旅路も長く険しいものではあったが。それでも楽しく、素晴らしい思い出と縁は手に入れた。きっとそれが、自身らを繋ぐ縁。また会えると信じられる確信なのだろう。また肩を並べ戦う事が出来る。そんな未来を想像し、笑い合う三人。

 

思えば、この三人は未熟であったが故に主軸であったのだろう。リリィは失われたもの、虐げられたものの想いを抱いて聖剣を操り、マンドリカルドは自身の弱さと同じ悩みや苦しみを汲み、労ることが出来るようになった。イシュタルは善とは機械的に執行するものではなく、願いと想いを刃に乗せて悪を断つものと定義した。この三人の研鑽が、ギルガメスを討ち果たしたのであるならば。それは確かに結実していたと言ってもいいものなのやもしれない。

 

・・・いよいよ、別れの時がやって来た。宇宙船が飛び立ち、様々な星に交差していく。ワープホールを開き飛び立っていくそれらが、その時を告げる。

 

「・・・改めて、本当にありがとうございました。イシュタルさん、マンドリカルドさん。どうかユニヴァースでも御元気で!」

 

リリィもまた、間近に浮かぶ楽園の船を認め手を差し出す。別れの握手・・・必ずまた会おうと誓う握手。

 

「えぇ、楽園の道筋に善がある限り・・・私はあなた達の味方よ。本当にありがとう、私の呼び掛けに応えてくれて。困ったら、いつでも呼んでちょうだい。何処にいても助けに行くわ」

 

その手に重ねる、イシュタルの手。本来なら、少し前のマンドリカルドであったなら硬直し、何も言えぬとばかりにカチカチに固まっていたかもしれない。・・・だが、彼もまた大きく成長した。最早女性と言うだけでキョドるマンドリカルドは存在しない。

 

「はいっ!あぁいや・・・。・・・俺の力も必要になったら、いつでも呼んでくださいよ。ローコストっすけど・・・コストに見合わない活躍をしてみてるっすよ!いい意味で!いい意味っす!」

 

入念に手を擦り、拭いた後に恐る恐る手を重ねるマンドリカルド。もう、コミュニケーションに難儀していたマンドリカルドの面影は・・・多少あるが・・・それでも、ずっとずっと成長したものである。手を重ね合い、再会を強く語り、目線を交わす。・・・そして、やがて歩き出す。それぞれの向かうべき先へと。

 

「それでは、また!いつまでも、この蒼空の下で御元気で!」

 

「そっちもね!ゴージャスによろしく!あなた達に出逢えて、本当に良かったわ!」

 

「また是非店長のカレー屋で会いましょう!本当に、本当にあざっした!楽園の皆に、よろしくお頼みするっすよ~!」

 

宇宙の争乱は収まり、漸く訪れた平和を噛み締める。その平和を護らんとするもの。その平和を堪能するもの。そして自らの次元へと戻り、戦いへと戻るもの。三者三様の結末により、ユニヴァースのセイバーウォーズは幕を閉じる。

 

「果たして世は事も無し。セイバーウォーズは終幕を迎え無事にハッピーエンドを迎えるのでした。うーん!こうでなくちゃね物語は!さぁて、いつ楽園に招かれちゃおっかなー!」

 

【あぁ、いたのかマーリンちゃん。君に奢りの作品があるぞ。麻婆カレーだ。超絶的に辛いのが好きとは意外だな。どうして言ってくれなかったんだ?】

 

「はっ、えっ?いやそんなの頼んでな」

 

【心配するな、辛さにはスプーンが止まらなくなる絶妙な辛さが存在する!俺はそれを見極めた料理を作るのだ!だからこれは死ぬほど辛いが旨い塩梅になっている!さぁ一口どうぞ!】

 

「あぶわぁあ辛い!すっっごい辛い!!でも不思議だスプーンが止まらない!?なんだいこれ麻薬!?麻薬なの!?完食するまで止められない止まらない!?なんでだいこれぇ!?だめぇ味覚こわれちゃあぁう!!?でも美味しいー!?」

 

・・・悪戯好きの夢魔も浄化されつつ、セイバーウォーズ・シーズン1は幕を閉じた──




エレシュキガル『別れの挨拶はきちんと済ませた?なんなら滞在しても良かったのに・・・』

イシュタル「別れは引き伸ばさない主義よ。必ずまた会うんだから、淡白なくらいが丁度いいの。いつまでも感傷には浸ってられないわよ?指示をちょうだい、署長。どこに行こうかしら?」

エレシュキガル『えぇ、それじゃあまずは暗黒宙域の──』



ハジュン【見違えたな、リカルド。友達もいっぱい増えたようで何よりだ。きちんと連絡先は間違えていないな?】

リカルド「大丈夫っす。・・・ハジュンさんの友達無量大数には叶わないっすけど」

【はっはっはっ。友達は数でも競うものでもない。大切に育み、紡ぐものだ。どんな困難でも忘れるな!生きてるだけで、最高さ!】

リカルド「見習うっすよ・・・!まずはツクヨミちゃんを常連に出来るようなカレー、作るっす!!」

【その意気だ!とことんやるぞ!人生とは!挑戦だからな!!】



騎士王「お帰りなさい。お帰りを御待ちしておりましたよ」

ギル「土産話も、品も数多無数にある。・・・しかし驚いたな。時系列がユニヴァースに赴いてからこちらでは数日しか経っておらぬとは」

騎士王「お陰で怪しまれる事も少なく。そちらでは一週間程でしたから・・・数日のズレですね。すり合わせを行いましょう。では、こちらに」

──?

「ふふっ。準備は万端ですよ、プリンセス」


~パーティー会場

子ギル「待っていましたよ、エアさん!」

──ギルくん!?

リッカ「お姫様!三歳の誕生日~!!」


カルデアスタッフ一同「「「「おめでとうございま~す!!!!!」」」」

──皆様・・・!

「フッ、ならば告げるとするか。──王の帰還!!出迎え御苦労──!!!」

争乱を終えた後も、改築や召喚などの愉悦は数多。だが今は、この得難き日を共に──

セイバーウォーズ・ギルガメスの欲望

──完

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