(改築、改築・・・それされたら、私の居場所がまるきり変えられちゃう・・・陰気臭くて、すごく暗くて、お姉さんみたいに出来ないから・・・)
【で、でも・・・断れない・・・善意で、優しさを・・・断りたくない・・・ど、どうしよう・・・どうしよう・・・】
(変わらなきゃ・・・で、でも、私には、この、この場所しか・・・皆に、相談・・・でき、できる・・・できない・・・)
【わ、私は・・・どうしたら・・・】
ギル『ツクヨミとやら。王が参ったぞ。要望はまとまったか?』
【あ、あわわわ・・・】
(ど、どうしよう・・・どこか、いじってもらえる場所を・・・考えなくちゃ・・・)
【ツクヨミのじくう なるべくお静かにお願いいたします】
御機嫌王らを迎えしその警告。時空すらを異ならせるツクヨミ空間にも、誰が来るのかすら不明瞭な筈なのに掲げる徹底ぶりは流石と言ってよい厭世、人見知りな神様である。だが、拒絶は出来ない辺りに生来の気弱さが垣間見れる。王と姫は目を見合せ、意を決する。
──高笑い、気持ち抑え目で参りましょう・・・
《うむ。省エネ王として名を轟かせるしかあるまいな》
静謐に、それでいて確かに。黒き王妃も控えている中、更なる改築と発展のために後退はあり得ない。ゴージャスが今、神の社へと脚を踏み入れる・・・
~ツクヨミ 楽園へのワープ通路
ツクヨミ【あ、そ、その・・・御足労、ありがとうございます・・・改めまして、招いていただき、本当に・・・ありがとう、です・・・】
「随分と用意のいい神もいたものよ。太陽のめの様に自らの領域を先んじて確保していたとはな。自己主張が苦手と言うのは三味線ということか?」
【そ、そんなつもりは無いです。ただ、私は、そのぅ・・・あのぅ・・・】
「申してみよ、どうしたのだ?」
【あの、その、えと・・・うぅ・・・】
──これは、落ち着いてお話できるまで時間を置いてみるのはどうでしょう?
《ふむ、それもそうだな。幸い散歩には事欠かぬ地理だ、存分に散策してやるとしよう》
「では我は社を見回る。言の葉を紡ぐ準備が整ったなら口にせよ。ではな」
【あ、うぅ・・・は、はい・・・】
~ 賽銭箱
《確か500円はこれ以上が無いと逆に縁起が悪いと部員の知恵にあったな。まぁ小銭に糸目を付けた事など無いのだが。相場が解らん》
──こういうのは御気持ちです、おきもち。ご縁があるから五円と言った様子の!
《成る程。では不壊の絆の験担ぎとして・・・延べ棒でも入れておくか》
──間に入るでしょうか・・・?
《脇に置いておけばそれで良かろう。些細な気持ちばかりの品だ、盗むような卑しい輩などおりはすまい》
──楽園にはいませんね!そして物理的に重いですし・・・では、御祈りの後に御神籤を引きましょう!
~御神籤引場
《この面妖な箸入れを振るうのか?番号を見てその紙に書いてあるものが運勢・・・ふむ。エア、どうだ?》
──じゃーん!大吉です!ギルや皆様と共に在れる今を思えば、至極当然ですが!
《やるではないか、エア。それでこそ我の至宝よ!どれ、我もガチャの験担ぎがてら引き当てるとするか。まぁ、大吉以外あり得んが──》
『大凶 待ち人来たらず』
《───どうやら利益と神威は信頼できるようだ・・・誉めてやろうではないか。少し目頭が熱くなったわ・・・》
─む、結びましょう!結べばなんとかなると伺いました、きっちり結べば大丈夫!なはずです!
《そうさな・・・フッ、だがそれでよい。因果を捩じ伏せてこそ、王の勝利は花開くというものよ!だがなるべく上に結んでおくか・・・》
──お気になさっていますものね、アルトリアさんに関しての事は・・・
~絵馬書き
《得手に描けたか?絵も願いも書かせるとは中々に手間取らせてくれる。願いを請わせるも一苦労とは、日本の神は堅苦しいものよ》
──ウルクの神々は、もっとフランクなのでしょうか?
《そもそも人に貸す耳など持っておらぬが正解だ。崇め、奉るは当然の事。神が泥から人間を造ったのは、神の労働を肩代わりする奴隷を欲したのが発端てあるからな》
──人の扱いはやはり、神代では軽いものだったのですね・・・
《ティアマト、エレシュキガル、マルドゥークはカルデアとの触れ合いで変化した部分もある、或いは機会を得た事による本懐を果たしていると言った様相だ。マルドゥーク神やティアマト神は人どころか神が興る以前の原初を舞台にした神であるからな。親愛であれ、回帰の願望であれ。関わる機会は待っていたであろうよ》
──マルドゥーク神、皆・・・ありがとうございます!あ、イシュタル様は・・・
《アレは今は愉快な存在だが、本来は更に冷酷かつ愚かしい女だ。よもやあの駄女神を矯正しうる魂があろうとは、我も予測できなかったがな》
─依代の女の子・・・トオサカリンと仰有られておりました。とても才気あった魅力的な方なのでしょうね・・・
《我と組んでいたなら、面白い結果になったであろう。やはり幼くして両親を失ったのがよい結果に繋がったのであろうな。うむ、塞翁が馬というヤツよ》
──いつか会ってみたいですね!神を宿す資格のある少女に!
《うむ。フェイカーごときを使いこなす技量・・・マスターとして見ても、かなりの逸材であろうからな!さて、次は・・・》
こうして、二人は様々な施設を見て回った。参道、分社、本社・・・月夜に照らされながら進むツクヨミの社は、招かれし者に加護と安らぎ、そして穏やかな一時を送ってもらいたいとする思惑を十二分に感じさせるもの。王とエアも、月夜が照らす道をただ歩くだけで充足を味わった程に。
【あ、あの、す、すみません・・・そのぅ・・・】
そして、ツクヨミが顔を出す。言葉を纏める事が出来たのか、リンゴ飴を舐める王と姫が振り返る。
【あの、その、えと・・・すみません、その・・・神様って、誰かに何かをするのが当たり前で・・・個人に何かしてもらうというのは、不馴れで、せ、せっかく、空間を用意してもらえるのに、私、私・・・】
──ギル、これは決まりました・・・ね?
《うむ、お前が浮かべた決断は恐らく我と同じであろう》
友達だけに留まらず改築までしてもらえる。その幸福にフリーズ寸前になるツクヨミに対し、王と姫は頷き、決断を下した。
「うむ、『このままで良かろう』。お前の社、改築するべき箇所は見て取れぬ。お前の部屋は此処で異存はあるまい?」
【え・・・】
──ワタシ達はお部屋を確保するために訪れましたが、確固たる空間がある方の和を崩そうとは思いません。お見事な空間です、ツクヨミ様!
穏やかな風、照らす月、星が散らばる空。そして邪気の介在しない平穏なる空間。それはその場で完結しており、手を加える必要が無いほどだった。楽園創立から今に至るまで、ツクヨミが極めて稀少な『改築不要』の場を持つ者である。それは、王の予想を上回るものでもあった。
「在るべき姿、在るべき形を持つならば我の出る幕は無いということだ。誇るがいい、月の神。貴様は我等の職務に暇を持たせるほどの磐石な部屋を示したのだ」
【あ・・・】
「楽園に在するならば、不要と断ずる自由も確約されている。不要ならば不要と言えばそれでよい。これよりも、楽園に在し思うままに過ごすがいい。我の墨付きだ、誰かを招くも良かろうさ」
ではな、とツクヨミの空間を認めた王は立ち去らんとする。或いは、既に見ていたのだろう。この場、この空間こそを求めている者がいるのだろう。ならば、無理強いはしない。ツクヨミの社は、安らぎという点で満点以上だったのだ。
──どうか、ごゆるりと!よろしくお願いいたします!
王らもまた、お土産や御守りを持ち立ち去る。その、自身の空間を尊重してくれた事実に、ツクヨミは目を潤ませつつ──
【ま、待って・・・!】
「ん?」
【つ・・・作って、ほしい、ものが・・・あります・・・!】
勇気を出し、思い付いた提案を告げる──
マンドリカルド「驚いたっす。まさか、俺達と会える為のワープゾーンをリクエストしたなんて」
ツクヨミ【その・・・私の居場所、そのままでいいと言ってくださって・・・嬉しかった、です。だから・・・私が、変わろうって・・・いい方に・・・】
エレシュキガル「引きこもりを選ばず、自分も誰かと触れ合うことを選んでくれたのね・・・!」
ツクヨミ【お、お母さんや、お姉さんを言い訳に逃げていたら、変われないから・・・私も、楽園に来たから、何か、変わりたいから・・・だから、ですから、その・・・】
ラクシュミー「無理をしなくていい。変わっていこう。私達も協力する」
マンドリカルド「とりあえず・・・ドライブとかカラオケとか、行けるようになりましょう」
エレシュキガル「私達が一緒なのだわ、ツクヨミ!」
【はっ、はははは・・・はい!よろしく!お願いします!】
ギル《・・・変わらぬものもまた良し。また一つ学んだな、エア?》
──はい!変わらぬ美学、変えぬ美徳!それらも重んじて参りましょう!
ツクヨミ~ 皆と会える繋がり
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