オルタ【・・・】
ナーサリー「・・・怖いおかお、なさるのね」
マリー【・・・ごめんなさいね】
~
【子供なんて・・・辛くなるだけよ。思い出したくもないもの】
アジーカ【?】
【・・・あら、あなた・・・】
【o(`^´*)】
【ふふ、励ましてくださるの?優しいのね】
【(`Δ´)つ】
【これは・・・】
『スイーツじゃんぬ』
【d=(^o^)=b】
オルタ【・・・もう。フランスの聖女の店をだなんて。意地悪なのね】
(でも、こんなもの一口食べてレビュー最低にすれば嫌がらせくらいになるかしら。改築もなんとなく気が乗らないし・・・)
【・・・私に勧めた、だなんて。言ってはダメよ?】
【(⌒‐⌒)】
(どうせ、そんな大したものじゃない筈──)
「・・・・・・」
スイーツ店の片隅。其処は楽園どころか世界有数の甘味処。そこに至ればサーヴァント以外の人間は糖尿病か贅肉との戦いに陥る他無くなる魔女のサバトの場かもしれない珠玉のスイーツ店、スイーツじゃんぬ。世界に向ける憎悪を、克己と鍛練の業火に変えて奮う我等がじゃんぬのスイーツ。飾り、味、見た目共に最高峰のスペシャルパフェを、苛立ちながら食べる者が一人。見るものが息を呑む美貌、史実出身離れした驚愕の三桁バスト。そして金色の瞳、白い肌──オルタナティブに見られる、銀と白のかかった髪を持つ高貴の憎悪の具現。
「・・・腹立たしい・・・非の付け所が無いわ・・・」
マリー・オルタ。フランスに関わる全てを憎悪する黒き王妃。その側面は復讐者。子を、夫を奪ったフランスを憎む、マリーの心の棘の具現。彼女は意外にもじゃんぬ、フランスの魔女たる彼女の店にスイーツを食べに来ている。マリーのブリオッシュや紅茶など穢らわしいとまで言いきったオルタが来た理由、それは割と簡単。
(レビューで扱き下ろし、炎上でもさせちゃおうと思っていたのに・・・!腕前が前評判以上だなんてそんなことってあるかしら・・・!)
嫌がらせ、批評、酷評しようとまずは味わう為であった。一口食べて書き込もうとしたらいつの間にかパフェが消え去っていた、そんなノリの王妃の誤算。火力、突撃が信条のじゃんぬのスイーツ。批評やアンチを『美味しさで黙らせる』という正面突破に黒き王妃は撃沈したのだ。フランスの手掛けたものを完食してしまった屈辱に、ぐぬぬと歯噛みし不機嫌オーラを醸し出すマリーオルタ。
「フフン、マリーのオルタなアンタがアンチ目的で来たのは解ってたわ。だから私は、アンタのスイーツにいつもより全霊を込めたのだもの。私の熱意と情熱!侮らない事ね!」
(なんか出てきたわ・・・)
厨房からやってきたパティシエ衣装の黒じゃんぬ。自身の成果でデマと悪評を粉砕するあべんじゃぁ。どや顔でマリーオルタに勝利宣言。忌々しげに舌を噛むマリーの席にどすんと座る。営業はお仕舞いである。
「結構なお手前でしたわ。ふん」
「そうでしょうそうでしょう。存分に歯噛みするといいわ!愉快ね、フランス憎しな王妃様に真心を込めたスイーツを完食させる!フランスの魔女が手掛けたものを!これが、フランスへの復讐!成ったわ!今!」
不機嫌そうに貧乏揺すりするマリー・オルタ。そう──女神などの外的要因がなければ彼女は理性的だ。あくまで虫酸が走る、おぞけが走るという程度の感情を撒き散らしたりはしない。フランスにまつわるものがあるのは仕方無い。だが、自分は貶す以外で関わりたくない。・・・美味しいスイーツを食べに行くためにあれこれ理屈をつけなくてはならなかったのも、この霊基を納得させるためだ。スイーツは美味しかったのだ。彼女的には悔しい事に。
「ごちそうさまでした。代金はお支払したわ」
「待ちなさい!」
「待たないわ」
「お話があるのよ!」
「私には無いわ」
そんなやりとりの後、カバディばりに主導を争う後共に一息付くまで五分。私はあの女の贋作で作り物!魔女なら話しやすいでしょう!というジャンヌオルタの生い立ち全てを振り切った熱い説得に返す言葉なく、マリーオルタは折れたのだ。
「アンタ、フランスが嫌いなんでしょ?フランスに裏切られたから?自分を殺したから?」
「そんなのはどうでもいいのよ。・・・無知で残酷な民達に奪われたものが、私には何よりも大切なものだった。それだけ」
じゃんぬの問いに返すオルタ。言わないと帰してくれなさそうだからとそっけなく。彼女の人格は、憎悪と同時にやや我儘王妃の面も出ている。威光で照らす相手などいないから、ワガママ三昧するわとの心持ちであるからだ。じゃんぬはそれを聞き、ふぅんと頷く。
「私達・・・仲間ね」
「は?」
「仲間よ。フランス嫌いなんでしょ?私も嫌いよ!まぁ、リッカとリッカを取り巻く環境以外は皆嫌いなんだけど私。私も嫌いだから!ピエールとかピエールとか!」
拍子抜けするオルタ。マスターの一番のサーヴァントだったと聞いていたので、復讐なんて良くないわ!と言い出すかと思えば全肯定である。キョトンとするマリーオルタ。
「・・・綺麗事、言わないのね。こんなスイーツ作るくせに」
「ハァ?アヴェンジャーが復讐を忘れられるわけないでしょ。誰を憎もうと、誰を怨もうと終わらない炎。それが私達なんだから」
「そうは見えないけれど?スイーツの魔女さん?」
「それはそうよ。憎悪は消えなくても、憎悪なんかよりずっと素晴らしいものが今の私にあるわ。それが、私を贋作から本物にしたもの。復讐の焔を、未来を切り拓く業火に変えたものよ」
・・・それは?目線だけで促すマリーオルタに、ドヤ顔で胸を張るじゃんぬ。
「絆──そう、Nexusよ!!」
「ごちそうさまでした」
聞いて損した。どうやら牙を抜かれに抜かれた猫だったらしい。アヴェンジャーの恥さらしめ・・・離席するマリーをじゃんぬは制する。慌てて
「待ちなさい!最後まで聞きなさい!いい?復讐者だろうと贋作だろうと、自分が何者であろうと、それは自分を決める決まり手にはならないのよ!レッテル通りに生きなくていいの。解る?」
「何が言いたいのかしら?」
「大事なのは『どう生きるか』って事。毎日憎しうらめしで生きていくのはアレよ、しんどいわけ。アンタはオルタ後輩だから先輩からのアドバイス。お分かりかしら?私も、リッカも、決められた生き方なんて真っ平ごめんよ。誰かの代替でも、本物の影でもない。私達の生き方というか、生きざまは自分で決めるわけ。アンタもそうよ。嫌いなものは嫌いでいいわ。だったらせめて・・・」
せめて、消え去る瞬間に思い返して素晴らしいと思えるものがあるように。そんな出逢いに、今の第二の生が成るように。
「嫌いなものより、好きなものが多い生き方をした方が楽しいわよ、絶対。幸せだし、その方がね。私がそうだから!」
「・・・・・・」
・・・寝ても覚めても失われたものへの哀しみと、憎悪の表情。来るもの全てを拒絶する生き方。憎きフランスの全て。募る怒りと、憎しみ。
だが、それだけでは楽しくないと魔女は告げる。そして、ふと、彼女は思ったのだ。
(私を、子供達・・・ルイと同じくらいの子が見たらどう思うのかしら)
彼女は憎悪に染まらぬ聡明な女性であり、客観的に自らを見据える女性である。そして、その聡明さが導いたのだ。自身を見つめる子らの目線を。
(・・・私の恨みや憎しみは、未来の子達に託してはいけないもの。忘れない、けれど撒き散らしてはいけない)
マスター達、未来に生きる命達。それらに向けるものが、暗い想いだけでいいものか。それは本当に、ルイらが母と仰ぐに相応しい女性なのか。マリーは考え・・・
「・・・」
「あ、ちょっと!」
彼女は歩き出す。口に残る甘味が、疑問の答え。
「ジャンヌ・・・ジャンヌ・オルタだったかしら」
「そうだけど」
「──無様なサーヴァントですこと。マスターへの想いと、スイーツの腕前以外は」
何よ喧嘩売ってるのアンタぁ!とおしぼりを投げつけるじゃんぬに背中を見せ、愉快げに去るマリー・オルタ。
「でも・・・魔女の名に間違いはないわね」
オルタである自分に、親身に接する破綻した聖女の紛い物。それでいて、心と技術は誰よりも本物な無様なサーヴァント。
そんな彼女を笑いながら・・・彼女は一つの決意を新たにしスイーツ店を後にする──
マリー・オルタ 大公園
ギル「改築の案を提出して来るとは驚きだ。不要と突き返すとばかり思っていたがな」
オルタ「魔女に諭されましたの。憎悪に代わるものを見出だした方が愉快になると。四六時中、憎い相手を思うのも馬鹿馬鹿しいですもの。それより・・・」
ジャック「わーい!わーい!」
ナーサリー「素敵!ガラスのお城に馬車だなんて!」
コンラ「広々です~・・・寝転がりです!ごろん~」
アジーカ【( ̄▽ ̄)】
オルタ「・・・今、此処にある美徳を愛でる事。それが、私が失ったものへの手向けになると信じますわ」
──じゃんぬさん・・・!なんという気遣い!ありがとうございます・・・!
オルタ「ありがとう、雄々しき王様。御礼をなさらなくてはね。目をお閉じになって?」
ギル「む。ふはは、役得だな?」
──わくわく!
オルタ「・・・はい、どうぞ。鏡ですわ」
『○×ラクガキ』
ギル「・・・・・・ふははははははは!こやつめふははははははは!油性ではないか!!」
マリー・オルタ「うっふふっ、御免遊ばせ~?」
「「「あははははは!」」」
【( ^∀^)】
──あわわ、消せる宝具!油性消し宝具の選別を~!
木陰
じゃんぬ「そう、それよ・・・時代はあべんじゃぁよ・・・!」
ポン
じゃんぬ「ちょっと何!?邪魔しない」
マリー「ありがとう、オルタ!素敵なあなた!」
ジャンヌ「お姉ちゃんは嬉しいです!感激です!」
じゃんぬ「ぎゃあぁあぁあぁあぁ白いのおかしいのぉお!?」
魔力で練られたペンにより、落とすのに一時間かかった──
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