人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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キャストリア「えっ!?お部屋ができた!?本当ですか!?」

御機嫌王「うむ、しかし熱心な輩よなお前は。少しは安らぎを求めてもいいというものを──」

「わーい!では早速見てきます!ありがとうございます!王様ー!」

──あ、待ってください!・・・行ってしまいました・・・

《・・・気掛かりな事がある。改めて要望を問うぞ、エア》

──はい。『マーリンさん』がお部屋のリクエストだなんて、珍しいですものね。本当にアルトリアさんの要望だったのでしょうか・・・?


やっぱり遠き理想郷

「るんたった♪るんたった♪るんたった♪」

 

うららかな昼下がり、楽園のお昼上がり。そんな最中、エアを想い散歩していたフォウは彼女を見つける。

 

「フォウ?」

 

それは、白き動きやすげな服装に身を包んだアルトリア。杖持つ可能性の最近の新入り。そんな彼女が鼻唄とスキップで、自身の部屋とされる方角に駆け抜けて行く春風のような歩みに、フォウを興味をそそられるフォウ。

 

(可愛らしいアルトリア、というのもリリィに次いで二人めかな?随分と上機嫌じゃないか。何か良いことあったのかな)

 

「ふんふーん♪あ!可愛らしいけものを見つけちゃいました!こんにちは、白いあなた!」

 

「ファウ?」

 

「実はですね、王様が私のお部屋を作ってくださって、今出来たとの報告があり見に行くのです!いつの間にか注文を聞いてくれるなんて、ビックリです!魔術なんかよりよっぽど素晴らしいサプライズ!見に行きましょう、そうしましょう!ささ、ポーチに入ってください!ささ!」

 

(わ、ちょっと待って!ボクには優雅なランチタイムが・・・!)

 

ワクワクに満ちるキャスター・アルトリア。その楽しげな少女の前には理屈は通用せず、無事にその身柄を確保されるフォウくん。

 

「マーリンに似ている色合いですね?まぁいいや、一緒に見に行きましょう!レッツゴー!」

 

(やれやれ・・・この落ち着きのなさは心配だ、ついていってあげよう・・・)

 

ポーチに揺られ、運ばれゆくフォウ。キャスター・アルトリアの無邪気さに揺られ、向かう先は彼女の部屋──

 

~むまなんぞ ひきさきたいぞ けものかな

 

「実は、あなたにだけの秘密なのですが・・・こう見えて私は、サボり魔なのです。練習や訓練よりも、のんびりごろごろするのが大好きなんです!」

 

(ほうほう。もしかしたら、アルトリアが聖剣を抜かなかった可能性なのかな君は?)

 

「だから楽園は、望みを叶えてくれる場所と聞きまして楽しみにしていました!宿題も課題もない、毎日が日曜日、学校の中に遊園地!素敵な素敵なおさぼりライフが待っているんです!お部屋もきっと、おさぼりライフが約束されている筈・・・!」

 

(・・・・・・)

 

キャスター・アルトリアの弾みように不安を覚えるフォウ。そんな一から十までゴロゴロしたいという悩み、すんなりとギルが通すのだろうか?

 

「おや、新入りのアルトリアにキャスパリーグじゃないか。こんにちは、私はマーリン。アルトリアならご存知だ」

 

「マーリンシスベシフォーウ!!!!」

 

反射的に蹴りに行くフォウ。因果や結果など関係ない、マーリンを見つけたら牙を剥くけもの戦記なのだ。

 

「おっとぉ、お前が一人でお散歩だなんて珍しいと思ったら新しいアルトリアに粉をかけていたとは!隅におけないなぁ!」

 

(お前と一緒にするな!ボクはアルトリアに寄り添って騙されないように見守っていただけだ!お前のようなクズの手から!)

 

「あ、あの、あの、その・・・」

 

シームレスに始まったファイトに困惑しきりのアルトリアに気付き、ひとまず収まる二人。彼女の楽しみを無下にはしない配慮である。

 

「おっと、仲良しの戯れを見せてしまったね。こんにちは、我々の知らない可能性のアルトリア。御機嫌王が作ったお部屋を見に来たんだろう?」

 

「はい!私の素敵なおサボり部屋・・・じゃなくて!自己鍛練に励む為のお部屋を作ってもらいましたから!今から確かめます!」

 

その溌剌な様子を、花のような笑顔で見つめるマーリン。その笑顔は華々しく、また非常に──

 

「そうかそうか。ならその喜び、主に自己研鑽への願いはきっと叶うだろう。その扉の先に広がる部屋を見てきなさい。御機嫌王はその期待を決して裏切らないだろうからね!御機嫌王は!」

 

「はい!あぁ、楽しみだなぁ!それでは早速!行こう、けものさん!」

 

(・・・・・・なんだか、妙だな・・・)

 

マーリンの態度から、きな臭いものを感じるフォウ。真っ当に誰かを導くだと?お前が?なんの風の吹き回しだ?

 

「あぁ、君の期待は裏切られないよ。うん、本心はどうあれ君の期待はね、裏切られないだろうからね。うん。思い切り素敵な時間を過ごすといい!」

 

(何を考えている?・・・嫌な予感がする・・・)

 

「どうしたの?ほら、早く早く!」

 

フォウの予感と懸念を、キャスター・アルトリアが急かす。アルトリアはその期待のままに、扉に手を掛ける。

 

「これが夢にまで見たおサボり個室!お邪魔しまーす!」

 

ワクワクとドキドキのアルトリアの目の前に、広がっていたもの。それは──

 

 

~愉悦と言うものにも鮮度があります~

 

「やぁやぁ!魔術を修めるアルトリアの卵、待っていたよ!今日から相部屋になる花の魔術師、マーリンだよ。君の魔術の師匠、お馴染みかな?まぁともかくよろしくね!」

 

「えっ・・・?ま、マーリン?相部屋?」

 

待ち受けていたのは、これまた花のように笑う女性、メスの方のマーリンであった。師匠と宣い、笑顔で迎えるその場所は、おサボりのおの字も見れない様相を見せている。

 

「いやぁ、御機嫌王に頼んで作ってもらった君だけの学院はどうかな?グランドキャスターの私とマンツーマンだなんて役得だなぁ~。幸せもの~!」

 

そこはハンモックに揺られるお昼寝の丘・・・などではなく。数多の魔術の書物が置かれた図書館、魔術を披露する特殊フィールド、そして寝食を共にする寮。扉を隔てた向こうに広がる、アルトリアだけの大学院。それら全てが、彼女を鍛える為に用意されたものである。寝かせる為でも、サボらせる為でもない。愕然とするアルトリア。この状況、まさか・・・

 

「も、もしかして・・・修行ですか!?毎日!?」

 

「もちろん!君だって聖剣を握ったリリィと同じ、成長する英雄なのさ!私が監修すれば、必ずきっと素敵なキャスターになれる!そう!眠る暇もサボる暇も惜しめば素敵なキャスターに、ね!」

 

「あわ、あわわわ・・・あわわわ・・・!」

 

「さぁ頑張ろうアルトリア!君なら出来る!寝食を惜しんで!楽園に誇るキャスターになろうじゃないか!私には、君を招いたものとして君を導く責任があるのだから!さぁのんきにしている場合じゃないぞ~!早速魔術の訓練だ!君は磨けば光るんだ!四六時中磨き倒してみせるからねアルトリア!」

 

「や・・・」

 

(や?)

 

「やだーーーー!!!」

 

夢見た理想郷、儚くも霧散。理想郷はいつまでも遥か遠いまま。あまりにもありがた迷惑極まるマーリンのリクエストに染まってしまった事実を受け止めきれずにダッシュで逃亡するキャスターアルトリア。彼女はサボり魔であるが故に、楽園にまで来て修行なんてしたくないのである。

 

「あっ何処に行くんだい!戻っておいでアルトリア!アルトリアー!」

 

(なんでマーリンっていうのはロクな事をしないんだ!メスもオスもどっちもどうしようもないのはどういう事なんだッ!!!)

 

「え!?キャスパリーグ!?どうしてここにとぅはぁっ──!?」

 

相部屋にしてもらい、ありがた迷惑の極みの修行場所を手掛けた悪辣なマーリンに、キャスパリーグ怒りの跳び蹴りが炸裂したのだった。

 

・・・後にアルトリアの要望を聞き届けた御機嫌王が、ハンモックと大樹を追加したのは言うまでもない──




マーリン(♀)「おかしいなぁ~、私なりに素敵な提案だと思ったんだけどなぁ~(宙吊り)」

マーリン(♂)「全く酷い輩もいたものだ。御機嫌王に先んじて要望を伝えておくなんて。アルトリアを苛めるのも程々にしておきなさい?(宙吊り)」

ギル「アルトリアの益になるが故、その程度で罰は勘弁してやろう。ふむ・・・」

キャストリア「成る程、聖剣を握って修行中・・・!仲良くなれそうですね!私達!」

セイバーリリィ「はい!共にこれから修行し、たくさん頑張って参りましょうね!」

キャストリア「えっ、あっ、そのそれは・・・」

「切磋琢磨・・・楽園の財、更に輝きを増すであろうよ。ふはははは!」

──マーリンさんもアルトリアさんも・・・色んな方がいらっしゃるんですね!

(同一人物なんだよ、エア・・・)

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