リッカ『えっ・・・』
『神社の主の両親が仰有れたのです。もう世界には信仰が無くなりつつある。だから、それが根付く場所に行くのだと』
リッカ『・・・会えないのかな?もう・・・』
『とても、不思議で遠い場所みたいで。・・・きっと、二度と・・・会えないから。お別れを言いなさい、って・・・』
リッカ『そっか・・・』
『リッカちゃん、本当に、本当にありがとうございました。私の言うこと、信じてくれて。私の言うこと、きちんと聞いてくれて。私の友達は、あなただけでした』
リッカ『サナちゃん・・・』
『・・・・・・本当は、一緒に行きたいけれど・・・リッカちゃんはここにいるべきだと、神様が仰有れたのです。別れなくてはならないと・・・だから、だから・・・』
リッカ『──大丈夫!』
『え・・・?』
『会いに行く!友達だってこと、ずっと忘れない!いつかサナちゃんに、会いに行くから!どんなに遠くても、どんなに離れても!神様への敬いかた、教えてくれたサナちゃんに絶対!』
サナちゃん『ずっと・・・友達でいてくれますか?』
『うん!約束!ずっとずっと、私はサナちゃんの友達だよ!』
サナちゃん『・・・うん!じゃあ私!祈ります!あなたに、新人神様としてのお祈りを!』
リッカ『ホント?』
『はい!リッカちゃんに、沢山の縁と幸せが──』
~
カドック「リッカ、リッカ。起きなよ、ブリーフィングだ」
リッカ「ふぁ?」
「机に突っ伏しても疲れは取れないぞ。欠席するなら伝えるが、どうする?」
リッカ「・・・夢、見てた」
カドック「夢?」
リッカ「昔の、友達・・・ううん、何でもない。行こっか、カドック」
カドック「・・・あぁ。キリシュタリアとぺぺも、ダンスを終わったら来るみたいだからな。グランドマスター、揃い踏みだぞ」
リッカ「ダンス!?・・・」
(・・・元気にしてるかな。サナちゃん・・・)
「マスター各員、全員揃ったわね。では早速ブリーフィングを始めましょう。人員が多いから前フリは抜き。校長先生のお話はあまり好きじゃないでしょう?」
会議室にて集められたグランドマスター達に声を掛ける所長、オルガマリー。Aチーム、特異点にて勧誘したアイリスフィール、召喚したマスター・アルトリア、ウィンドウはくのん、そして最悪のマスター藤丸リッカが第二種警戒態勢にて言葉を聞き及ぶ。
「これよりマスター各位に、慰安旅行を通達します。世界を救い、これからも励む中核戦力の皆に対する特別休暇・・・トレーニングも兼ねたレクリエーションを行う、と言った方がいいかしら」
「待ってくれ、休むべきはリッカだけじゃないか?彼女が解決してきた特異点の量、質共に他の追随を許さない。カルデアから離れる様な休息は彼女こそが・・・」
「皆!有給だーー!!おっやすみだぁー!!」
「カドック!決着をつけよう!バナナはおやつに!入るのかな談義に!!」
カドックの意見を当のヒロイン志望リッカと復活してテンションがバグった疑惑のキリシュタリアが口火を切り、それに続くようにマスター達が和気藹々と想いを馳せ始める。
「オフェリア!早速旅行ですってよやだアタシ楽しみすぎー!だってこんなのアレじゃない!修学旅行的なアレ!枕投げしちゃったり寝起きの恋バナ捗っちゃうヤツぅー!」
「それはよくわからないけど・・・マシュやコンちゃん同伴は許してもらえるわねきっと」
「レクリエーションですか・・・学校行事は自由度が低いんですよね・・・」
「アルトリアは学生だものね。私も楽しみなの。城の中じゃ味わえないイベントですもの!」
「項羽様と!項羽様と一時を過ごすプライバシーを求めるわ!何でもするからお願いオルガマリー!!」
「カドック、キリシュタリア。しおりを作らないか。お土産は木刀で決まりだな」
『大丈夫?シンジがバグに飲まれたりしない?』
(全員かつてない程ノリノリだった・・・!まともなのは僕だけだったのか・・・!)
「カドック、あなたは正常よ。だけどランチキ騒ぎの中では、正常こそが異常であるだけ・・・」
「君もヒステリックが無くなった代わりに、諦めが良くなったな・・・」
バナナって栄養食じゃない?着替えとかいるのでしょうか?場所どこ場所どこ?テナント作るわぁー!当地Tシャツは外せんな。そんな歓談の響く最中、オルガマリーが笑いながら意見を纏める。
「みんな静かに。これはマスター同士の絆を深め、円滑な連携を行う為の訓練でもあるの。遊びばかりではダメよ」
「オルガマリー、着替えは何着か教えてほしい」
「キリシュタリア、代えのパンツはしまって。・・・場所は日本の山奥、人里離れた独自の文化を作り上げた都。そこは・・・」
『幻想郷。私達を題材にしたゲームもプレイなさった方もいるかしら?その舞台に、皆様をお招き致しますわ。グランドマスターの皆様方』
空間を引き裂き、ブリーフィングルームに現れた金髪の美女。紫の衣服を纏う、聡明にして胡散臭げな賢者・・・八雲紫が現れたのだ。
「八雲紫・・・禍肚で御世話になった方だな」
「ゆかりんだー!冬眠明け?今4月終わりくらいだもんね確か!」
「こんにちは、カドック君、リッカちゃん。そしてはじめましてな方ははじめまして。ゆかりんと呼んでくださって結構よ♪」
「賢者の自覚あるのかお前さんは~。よう皆!温羅もおまけで付いてきた!」
紫の空間の隙間から、四本角の鬼神・・・温羅も現れる。二人は、王らに代わり向かう場所の説明を果たしにやってきたのだ。
「幻想郷、そこは一息に言えば神々や妖怪の楽園・・・魔術的観点で仰有るなら妖精郷に近しい在り方を成す秘密の園。巨大な結界で外界から仕切られた場所にへと、私が皆様を御案内致しますわ」
「リッカの故郷であり、私の通い先である日本ですね。馴染み深くて助かります」
「そう、マスター・アルトリア。そこで皆様には、絆や現地交流の精度、連携を高める為に色んな場所にて課題を済ませていただくわ。簡単なものから、住民と仲良くならなくてはならないやりごたえのあるミッションを、皆様で攻略していただきたいの。温羅?」
「ほいほい。こいつが皆のスタンプカードと課題カード。課題をクリアしたら判子押してやるからな!」
そうして渡される、陰陽印が書かれた課題カード、スタンプカードが全員に託される。最低一人が取り組むべき課題が、記されているのだ。
「一癖も二癖もある妖怪、妖精、或いは傍迷惑な人間達と触れあい、学び、時にはぶつかり、幻想郷を堪能していただきたいの。皆がもっと仲良くなる為にもね。課題をたくさんクリアできたら・・・」
「数に応じて紫が御褒美を用意しているそうだ!これからのマスター生活に役立つイイモノ、ゲットするチャンスだよな!・・・(こんな感じか?)」
(ウラネキ言わされてる・・・)
「成る程、神秘の残る地でレクリエーションする事で、記録に在ったバビロニアのような神代の神秘を想定した特異点の経験を積む・・・理には叶っているな」
「えっ!?日本の素晴らしき文化をこころゆくまで!?最高じゃないか!グランドマスターが挑戦するにうってつけだ!美少女たくさんなら尚更、だね!」
「うん!あとそろそろキリさん上着着よう!?」
一同はやる気を見せる。レクリエーションでなくても、これはマスター達が肩を並べる大事なイベントでもある。ダンスのまま上着を着ていないキリシュタリアを始め、非常にやる気と決意に満ちていた。
「マスター達の意見はこの通り。ギルに認可されたのなら、カルデアは全面的に協力かつ堪能する所存です」
「ありがとうね、オルガマリー。皆さんくれぐれも、魔術やサーヴァントのお力で妖精や妖怪を退治なさらないように。問答無用で攻撃してきた際の自衛を除いて。温羅の朋友、そう言えば大抵収まりますので」
「お前様らみたいに一癖二癖ある奴らばっかりだからな。それに鬼やカッパ、天狗を見られる稀少な機会を暴力で潰すにゃもったいない。引率はアタシがやる。任せとけ!」
「無闇な破壊や、無為な虐殺を諌める道徳心や人徳、自制心を育む意味もあるんだな。さすがは楽園の所長。思い付きに思えて入念だ」
「えっ・・・」
『ファッ?』
声をあげたのは、はくのんと、オルガマリー。『そうなの?』みたいな声と、『マジで?』といった様子である。
「えっ。・・・僕、変なこと言ったか?」
「い、いえ、そうよ。計算済み。何から何までオルガマリーは計算済みよ間違いないわ。心配しないで?」
(めちゃくちゃ怪しい・・・)
「ホラホラ、アタシ達女子の前で喧嘩は止めてよね~?女の子にアレコレ言うのはやぼ!野暮野暮だから!肩の力、抜いてきましょ?」
「ミョウレンジの言う通りだ。土産の情報の開示を是非頼む。楽園に俺達が持って帰ろう」
「本名は止めてデイビッドアタシはずかしー!!」
「そうそう!皆で騒いで、楽しんで!課題をクリアしてもっともっと成長しよう!グランドマスター!ファイトー!!」
「「「「「「おーっ!!」」」」」」
リッカの言葉に、一つになるマスター達。紫はその様子を見て、満足げに微笑む。
「それでは善は急げ。私がスタッフとなりレイシフト先を指定いたします。皆様の身柄、寂れた神社の前にお送りいたしましょう──」
マスター達のターンであり、レクリエーション。各員に設けられたコフィン装置へ、マスター達は入り込む。
(幻想郷・・・もしかしたら・・・ううん。幻想郷は平行世界にたくさんあるんだし、サナちゃんと再会だなんて難しいよね・・・)
リッカはそれでも思う。ほんの数ヶ月だが、共に高校にて過ごした緑髪の少女、早苗の事を。
(平行世界の別人だったら気まずいし、改めて初対面な感じで挨拶しよう!きっと、仲良くなれるよね!サナちゃんとなら!)
溌剌にして愉快なかつての友の思い出を胸に、リッカは最後のコフィンに入る。レイシフト、幻想郷に向けて行われるそれが完遂される。
「リッカちゃん」
「?ゆかりん?」
「会えるといいわね、かつての友に・・・ね?」
ウインクをコフィンの向こうより受け取り──
「レイシフト!スタート!目的地は、博麗神社前!」
オルガマリーの声と同時に、マスター達の存在は幻想郷へと運ばれる──
博麗神社?
リッカ「──あれ?博麗神社・・・じゃない!?」
幻想郷を現世から隔てる大結界、それを護る巫女がいる神社・・・ランデブーポイントではない場所である事を、リッカは見抜く。
「ここ、守矢神社・・・?」
守矢神社。二柱の神が祀られし、外の世界より引っ越してきたとされる山の天辺にあるもう一つの神社。──かつての、リッカの友が巫女をしていた神社の前に、彼女は一人立っていた。
「もしかして、縁で招かれた?・・・そんな、昔のだしここのサナちゃんは私の知るサナちゃんじゃきっと・・・」
?「──リッカ、ちゃん?」
きっと、何かの間違い。友と会えぬ寂しさを紛らわす虚勢を蹴散らす声が掛けられる。
緑髪の巫女「リッカちゃん!藤丸リッカちゃんですか!?その金色の瞳!オレンジの髪色!ほ、ほら私です!覚えていませんか!?私は、私は忘れた事はありません!」
緑髪の長い髪に、リッカより低い身長、紺の長スカートに白のノースリーブ巫女服、Fカップはある高校生離れした発育の巫女が、目を潤ませリッカに問う。
早苗「私です!東風谷早苗です!私の事、解りますか!?二ヶ月くらいの短い間、ずっと一緒にいてくれたリッカちゃん!リッカちゃんでしょう!?私の事・・・覚えていませんか!?」
リッカ「・・・・・・うそ・・・早苗ちゃん・・・サナちゃん・・・!?」
早苗「あぁ──お会いしとうございました~~っ!!リッカちゃーーん!!」
平行世界数多無数の幻想郷の中で、出会えたかつての友。感極まる早苗と名乗る巫女、かつての友人に、歓喜のタックルを受け──
リッカ「むふぉい!!」
豊かに育った胸に押し潰されながらリッカは叫び──
『かつての友と再会せよ!』
──そう書かれた課題の紙が、ひらりと幻想郷の空へと舞った──
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