人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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境内

リッカ「懐かしいなぁ・・・!こうやって一緒に、境内お掃除したよね!」

早苗「はい!毎日来てくれて、一緒にお泊まりもしましたよね!」

リッカ「一緒にアニメとか見漁ったよねぇ・・・!思えば、私がアニメの技を多用するのもサナちゃんとの影響だったなぁ・・・」



早苗『わぁ・・・!ヒーローってどうして、こんなにカッコいいんでしょう!』

リッカ『うん!でも高校生にもなって、おまけに女の子がウルトラマンに仮面ライダー、ガンダムなんて変だよね、やっぱり』

早苗『変じゃないです!素晴らしいものは、いつまでも素晴らしいんですよ!』

リッカ『えっ』

『誰がなんと言おうと、素晴らしいものは素晴らしく好きなものは好きでいいんです!好きなものを好きでいられるなら、常識になんて囚われなくてもいいんです!』

『サナちゃん・・・』

『忘れないでください。例えリッカちゃんが大人になってもまだヒーローが大好きでも、私はそんなリッカちゃんが大好きです!だから、常識に囚われず!好きなものを好きでいてください!』



早苗「引っ越しの最後の土日のお泊まり会・・・寝ずに見たあの日ですね!」

リッカ「あの言葉があるから、私は自分を貫けたんだ。・・・戦いにヒーローの技を使うのはね・・・」

早苗「?」

「ううん、何でもない!」

(証明したかったんだ。私と、グドーシと、サナちゃんが好きだったヒーロー達が、世界を救う事が出来るんだって──)

早苗「さぁさぁ!掃除はこれくらいにして!お茶にしましょう!沢山沢山お話したいことがあるんです!」

リッカ「うん!」

(──グドーシ、サナちゃん。あの日夢中になってみたヒーロー全員が、私に力をくれたんだよ。ヒーロー、皆がね!)


いつの間にか相手が大統領の養子になっていたレベルの衝撃

「それでね、えっとね!私は守矢の巫女として、新人神様として、妖怪の山に住む妖怪の皆さんから信仰を集める為に日々精進しているんです!今では私も、いっぱしの神様なのです!えへへ、リッカちゃんに誇れる自分である為に!頑張りに頑張り抜きました!誉めてくださいますか・・・!?」

 

「勿論!あの頃からひたむきさと真っ直ぐさ、変わってないね!さすがサナちゃん!私の友達!」

 

再会を果たしたリッカ、そして早苗。彼女は旧友に会えた喜びからか、お茶を片手に十分は捲し立てている。リッカはそれに相槌を返し、頷き、話しやすい様に促しながら聞きに徹していた。

 

(本当、変わってないなぁ・・・それよりサナちゃん、本当に神様やってるんだ・・・!ゲームとまんまだ!)

 

東風谷早苗は、結論から言えば人の身でありながら信仰を集める神である。現人神(あらひとかみ)という、奇跡と神の力を操る新人神様であり、信仰を育むために日夜奮闘しているのだ。

 

彼女が居を構える守矢神社は諏訪大社と酷似した神社の様相の荘厳にして精緻な神社だ。元は外界、現世の神社である。

神秘が暴かれ、世から畏怖と信仰が喪われていった事による弱体化を憂いた祀神は、世から切り離されし妖怪達の楽園に拠点を移し信仰を得る対象を人から妖怪に移した。

幻想郷へとやってきた外来の訪問者であるのだ。転校した時期には、もう幻想郷へとやって来ていたのである。そしてその幻想郷にて早苗は、才能と非常識を開花させ神の力を振るうに至った人間であるのだ。守矢には、三柱の神が存在している。

 

「理由も言えずに、恩にも報いれずに消え去ってしまい、本当に本当にごめんなさい。私の信じる神様があなたを・・・」

 

『『閉じた檻の中では、その魂は腐り落ちる』。・・・あなたの魂は、向かうべき場所へと向かわなければならなかったの。どうか、早苗を恨まないであげて』

 

本殿にて響き渡る荘厳な声。アマテラス、イザナミらが有する神威と似た威風を漂わせる、朱色の神衣に御柱、円の注連縄を背負いし堂々とした女神がリッカの前に至る。

 

「私は八坂神奈子(やさかかなこ)。この神社の祀神をやっている者よ。現世では物理法則が人間側に寄って、あなたの前には姿を現せられなかったの。毎日参拝に来てくれていたわね。改めて、ありがとう」

 

「は、はい!そっか、道理で!」

 

早苗が現世にいた間、毎日リッカは早苗と守矢神社で過ごしていた。毎週お泊まり会などもしていた中、早苗の他に人の姿は見えず、しかし広大な神社は埃一つない神秘を保っていた。それだけではなく絶えず気配もしていたし、誰かの視線を感じてもいた。気のせいかと怪訝に思っていたが・・・見守られていたのだ。早苗が信じる神に。彼女は神であり、武神の側面を持つ荒ぶるものでもある。現世では法則が合わなかったのだ。

 

「改めて!私に力を貸してくださる神、神奈子様です!大事な大事な、お父さん代わりの!」

「おとうさ・・・早苗、そこはお母さんで・・・」

 

「お久しぶりです!サナちゃんには、大変よくしていただきました!神奈子様!」

 

神への敬い方は承知している。最敬礼を行うリッカに、神奈子は優しく肩に手を置いた。

 

「よくぞ、御祓を果たしたわ。あなたの魂は、仏の導きに護られていた。私達が導く必要が無いほどに。だから信じたのだけれど・・・見捨てるような真似をしてしまい、ごめんなさい。早苗も最初は、毎日泣き腫らしていて大変だったわ。『私から友達を奪った方なんて大嫌いです!』ってね」

 

「か、神奈子様!」

 

「でも、今のあなたは輝いている。沢山の縁が、絆が、奇跡があなたを輝かせている。──本当に見違えたわ。立派に、なったわね。リッカ」

 

神奈子は見据えていた。未だ龍がごとき魂は飛翔の刻を待っていると。信仰失われし世界の希望となるか、絶望となるか。可能性を秘めていた。──世界を見限らせるには、早い魂だと信じたのだ。故に神奈子は、心を鬼にしてリッカを置き去ったのだ

 

「えへへ・・・サナちゃんに恥じない私に、ですからね!」

 

「えぇ。今のあなたなら早苗にふさわ──」

 

『あーうー。神奈子、神様がそう頭を下げるものじゃないよ。神様がへりくだるなんてこと、あっちゃいけないよ』

 

更に威厳ある声が響く。今度は神奈子とは対象的に、下。床からちゃぷんと顔を出す蛙がごとき帽子、紫の神衣を纏った金髪の神が現れる。

 

「あなたは可能性と同時に、世界を滅ぼす爆弾めいていた。そんなものを抱えては敵対勢力として警戒され、信仰も何もあったものじゃない。だから連れていける筈もなかった。業が深すぎたんだよね。神と歩むには」

 

「こ、こちらは洩矢諏訪子様で・・・!私の友人に、なんてことを言うのですか!」

 

洩矢諏訪子。小柄な少女な見目に似合わず、彼女は土着神の頂点たる神である。早苗はリッカの人間としての美徳を、神奈子はその魂の運命を、諏訪子は彼女の持った業と危険さを見ていたのだ。だからこそ、彼女はリッカの同伴を拒んだ。

 

「まぁまぁ最後まで聞いて。・・・予想外だったよ。今じゃ心身ともに健康、眩しいくらい。よっぽど素敵な奇跡に巡り会えたんだね」

 

「はい!グドーシから始まった奇跡は、今もずっと私に起きています。サナちゃんに、皆に会えましたから!」

 

「リッカちゃん!!」「ふぉっ!!!」

 

「あーう・・・。うん。憎まれ役のつもりが空回り。私、どうやらピエロみたい」

 

「リッカを置いていったのは私と決めた事でしょう。守矢のヘイト管理なんて見栄を張ってるんじゃないわよ」

 

諏訪子は彼女の危険性と、リッカが懐くであろう憎しみを受け止める覚悟をしていた。彼女はシビアな考えを持つと同時に、神としての益ももたらす土着神。円滑な関係の為、憎まれ役を買ったのだ。善意の翼で羽ばたいたリッカには、微塵も恨まれなかったが。

 

「リッカちゃん!これが私達、守矢一家です!改めまして!リッカちゃんの幻想郷への来訪、心より歓迎致します!どうか此処を、リッカちゃんのおうちだと思って拠点になさってください!」

 

「本当!?いいんですか!?」

 

「勿論よ。早苗と出来なかった話を、沢山してあげて」

「確か紫ばばぁの催しがあったんだっけ。守矢神社がガイドを担当したげるよ。早苗をリッカに預けるからね」

「はい!行きたいところに導きますよリッカちゃん!このサナちゃんにどーんとお任せを!」

 

「わぁ・・・!ありがとうございます!やったぁ!サナちゃん一家と仲良くなれたー!」

 

意志があれば、神とも仲良くなる。それを、旧き友の家族と成し遂げた。喜びに跳ねた際、首の勾玉が跳ねる。

 

「?リッカ、あなたから凄い高位な神の気配がするけれど・・・その勾玉は・・・」

 

「あ、これは将門公の勾玉です!あまこーからもらったコンパクト手鏡とか、イザナミおばあちゃんから託された天沼矛も槍として持ってます!」

 

「将門公って・・・かの守護神の事・・・!?」

「あまこー?・・・この神威!天照大御神!?」

「い、イザナミ・・・イザナミノミコトですか!?え!?リッカちゃんはイザナミ様のお孫さんだったのですか!?」

 

神三柱、驚天動地。将門公は信仰喪われし現世において全く影響を受けぬ畏怖と威風を保ちし守護神。天照大御神は日本における最高神、イザナミは全ての神の産みの親。早苗は勿論、神奈子、諏訪子すら出逢うことなど有り得ぬ原初の神である。目の前の早苗の友人は、それら最高位の神の祝福を一身に受けているのだ。その事実に気付いた守矢一家、雷に打たれた如く。

 

(凄いです!そんな素晴らしい神様達に祝福を受けるリッカちゃん!私の友達は凄いでしょう!えへん!)

(神奈子、これ私達とんでもないやらかししてない・・・?イザナミ様と天照様の寵児に上から目線で・・・)

(将門公の信者にあなた、穢れたとか言ったわね諏訪子)

(あうあうあーうあーうあーう・・・(゜ロ゜;)

(バグってる場合じゃないわ!知っているでしょう、将門公の祟りの恐ろしさを!下手をすると守矢神社・・・お取り潰しの危機よ!)

(あり得るあり得る、大いにあり得る・・・!将門公の祟りはがち!ガチすぎる!)

 

「他にもねぇ、カーマやアルテミス、源頼光ママや金時兄ぃ、ウルトラマンゼロやニャル、沢山の人が私を支えてくれてるんだぁ」

「リッカちゃんは高校生皆から慕われていました!全然、変わってないんですね!優しく強い生き方!」

 

(頼光・・・ママ???金時兄???)

(カーマ?アルテミス?ウルトラマン?)

 

「そしてなんとなんと!超ド級スーパーロボット!黄金の英雄神マルドゥークにも会えちゃったんだぁ~!変形、合体、何でもござれなんだよ~!」

 

「スーパーロボットーー!?凄いです凄いです!聞かせてください!別れた後何があったんですかリッカちゃ~ん!すごぉーい!」

 

目の前の存在が、天満宮に仕える巫女めいた祝福を抱える存在になっていた事に気付く二柱。無邪気にスーパーロボット談義に勤しむ早苗、リッカにやがて・・・

 

「あ、二人とも!リッカちゃんにお付き合いしても・・・」

 

「「無礼な物言い、平に御容赦を・・・!」」

 

「ファッ!?ど、どうしたんですか二柱とも!?」

 

軽々しく無下に扱っていい存在ではない。神奈子と諏訪子は、早苗との善き交流をリッカに強く強く願う姿勢を選択したのであった──。




リッカ「聞いてみたら、私に力を貸してくれる神様に恐縮しちゃってたみたい。気にしないでって言っておいたよ!頭を下げられるべきは、私じゃないもんね!」

早苗「あぁ・・・。私に話し掛けてくれた頃のリッカちゃんと、素晴らしいところは何も変わってない・・・!」

リッカ「えへへ、良いところは伸ばさなくちゃ!じゃ、皆に会いに行こっか!えっと、確か博麗神社に・・・飛んでいいかな?」

早苗「勿論!幻想郷は非常識こそ常識!人間は飛べないなんて常識に囚われない事が大切です!リッカちゃんも私も、飛べます!シュワッチ!」

リッカ「よぉーし!じゃあ飛ぶぞぉ!せーの!」

?「ちょおぉおーっとお待ちを祝福ごった煮少女さーーん!!」

飛び立とうとした瞬間、風が巻き起こり嵐がリッカの前に降り立つ。──それは、人型のつむじ風。

「温羅様が知己を連れやってくると聞き、風を頼りに飛んでみればそこにおわすは見慣れぬ可愛い美少女!」

リッカ「ヌッッッ!!」
早苗「わぁ!?リッカちゃん粒子が!?」

リッカ「ふ、ふふふ・・・私の弱点が誉め殺しと何故わかった・・・?」
早苗「そうだったの!?」

「どうやら幻想郷では絶対出来ない体験があなたを全身祝福に変えた御様子!これはまさに!スクープ!私の盛大なる出世の為に・・・!」

そこには、白黒衣装に羽根の生えた好奇心旺盛な黒短髪の少女。興味津々な目を輝かせ、リッカに向け──

文「アラジン神に旧き友!筋肉モリモリウーマンの正体に迫る!──この清く正しいカラス天狗!射命丸文(しゃめいまるあや)の取材に付き合っていただけませんか!?」

リッカ「文さんだぁ~!生文さんだ~!」

早苗「ちょっと!リッカちゃんのプライバシーは守矢預かりなんですよ!まずはこちらと話してくださいよ~!」

神の次は、ゴシップ記者天狗がリッカの前に現れる。果たして、リッカは合流できるのか──?

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