リッカ『うん。カルデアの旅路が知りたいんだって。勿論話してあげたいけど・・・どうしよう?所長的には、秘匿した方がいいのかな?』
ゴルドルフ「いいよね・・・どんなに強くなっても、真っ先に報連相してくれるの本当にいい子だよね藤丸リッカ・・・どうするのかね所長?本来なら取材など言語道断だが・・・」
オルガマリー「・・・解ったわ。そちらにカルデア大冒険日記を転送する。それも含め、包み隠さず教えてあげて」
シオン「おや!?」
ゴルドルフ「大胆だね君ィ!?」
リッカ『オッケー!任せて!』
ロマン「・・・マスコミは味方につけるもの、だね?マリー」
オルガマリー「そういう事よ。記者は誰よりも情報通な筈。ここはリッカを信じ、抱き込み味方にしてカルデアの活動を有利にしましょう」
ゴルドルフ「し、しかし部員諸君が言うには中々誠実な記者とは言えんタイプらしいが・・・大丈夫かね・・・?」
オルガマリー「リッカに真っ先にコンタクトした嗅覚と観察眼、勘は本物です。心配ありません。私達の旅路に・・・」
ロマン「ふふっ・・・ゴルドルフさん、何故なら!」
「──脚色の挟まる余地など、ありませんもの」
「人理焼却、英霊召喚、人理を取り戻す為の偉大なる旅路・・・これが結界の外で起こった、大異変の真実・・・成る程・・・」
リッカとの対談という形で行われた取材、天狗たる射命丸文は外来よりやって来た鬼神の朋友、賢者の同盟相手たるリッカ達カルデアの事実と真実を求めて、勘を頼りにその中心人物と思われるリッカに突撃を敢行した。そして聞かされた情報に、一切の戯れを消し去った。
天狗とは幻想郷に在住する妖怪の一種。徹底的な縦社会にて統率される妖怪の山を拠点とする種族であり、黒き翼を有する白黒の少女、射命丸文もまたその天狗である。彼女は自身の出版した『文々。新聞』を発行しており、れっきとした記者である。彼女の新聞は妖怪達、住人達に親しまれている。冗談半分の暇潰しとして。・・・そんな彼女ですら、にわかには信じがたい程にリッカの語る真実は衝撃的であった。いつもの陽気かつ鬱陶しげな態度が消え去っていることから、それは明白である。
「そんな、そんな凄まじい旅路を歩んでいたんですか!?グドーシさんに導かれ、私達と別れた際に、そんなにも・・・!」
「うん。でも、辛いことなんてちょっとだけだったよ。私はこの旅路で自分が大好きになれたし、数えきれない宝物を皆から貰えたから。・・・今話した事は、此処に全部書いてあるよ。目を通してくれると嬉しいな」
リッカはカルデアが編纂している旅路の記録の書物を文へと渡す。そこには、カルデアの戦いが記された叙事詩の出版物。それを、記者たる文に託したのだ。その堂々とした対応に、文は驚きを隠さない。
「あややや・・・自分から聞いておいてなんですが、これは極秘中の極秘資料なのではないですか?これまた自分が言うのもなんですが、私に託して大丈夫ですかね?記者ですので、面白おかしく改竄しちゃうかもですよ?」
「全然構わないよ。『私達の旅路を、これ以上楽しくできるなら』」
リッカの発言は、揺るぎない確信。そして、不動の自信。どれだけ虚飾を並べ立て、どれだけ歪めようと、自分達の旅路は決して輝きを失うことはない。
「何も恥ずかしいものなんてないよ、文さん。私達の旅路を知りたいと言ってくださったあなたに、私達の軌跡を託すね!だから代わり・・・というのもなんだけど!」
この幻想郷で、仲良くしてください!お願いと共にカルデア大冒険日記を託す。文は感じる。自身への信頼と、記者としての期待を。裏表ない、真実の譲渡。自身への誠実な扱いに、記者としてのプライドと共に息を吐いた。
「・・・後ろめたいものとは隠すもの。嘘の逸話は言葉が軽くなるもの。ですがあなたは、堂々と揺るぎなくこれを開示してくれました。その行為がどんな意味を持つか、記者の端くれとして理解できるつもりです」
「文さん、それでは・・・!」
「えぇ。カルデアの皆様の真実、私がお預かりしましょう。保護としての独占を。嘘や戯れ言が幻想郷にばら蒔かれない為の真実の確保をお約束致します。──記者として、天狗として。あなたの誠実さに報わせていただきますね」
文はカルデアの旅路を信じた。そして真っ先に手に入れたであろう情報を、その証拠である叙事詩を受け取り、他の天狗達のゴシップを見破る真実として使用する事を誓った。これで一人の記者を、楽園の側に引き入れる事に成功したことになる。魔術の秘匿を破り、剣より強い筆を手に入れる。オルガマリーの作戦勝ちだ。
「やったぁ!リッカちゃん!文さんは敵に回すと恐ろしく味方にすると頼りないお方!あることないこと書かれなくなったのはとても大きいですよ!更にはカルデアの皆様に都合のいい記事も書いてもらえます!」
「酷い評価ですね!?まぁ元々『刺客か同胞か!?外から謎の団体さん来る!』という見出しで書くつもりでしたので、思い切りリッカさんびいきで新聞をばらまくつもりです。少なくとも、誤解やイタズラの襲撃はぐっと減るはずですよ」
早苗がリッカに抱きつき喜び、文は咳払いにて確認を取る。誠実には誠実で返す。彼女は今時珍しい、情報提供者に真摯な記者であった。幻想郷で起こる日々は穏やかなので、ウケ狙いで脚色を入れていた為にトンチキ雑誌が生まれていた。豪華絢爛の真実の前には、真摯に告げることを選んだのである。
「ありがとう、文さん!」
「あやや、こちらこそ!これで鞍馬天狗上司が危惧していた真実、真っ先にゲット出来ましたから!」
天狗が危惧していた真実、その単語に神の二柱は怪訝を返す。
「天狗社会はカルデアの何を嗅ぎ回っていたのかしら?」
「どうせトンチキなものだろうけどさー」
「・・・妖怪の賢者さんは気付いており、私達は知る由も無いのでしたが。並外れし神通力を持つ天狗の頂点、鞍馬天狗は去年の結界の外の状態を見たそうなのです。それは、恐ろしい光景であったと」
天狗社会の頂点、鞍馬天狗。文の上司であるその天狗は彼女に伝えていたのだ。『世が燃えている』と。それを、最速の記者たる文に伝えていた。神通力にて垣間見た、世界の終わりを。
「初めは意味が解りませんでしたが、妙に気にかかった私は今年になって迷い込んで来た人間に、取材したのです。『去年の出来事で、違和感は無かったか』と。そうしたら・・・」
『解らない、半年ほどの記憶が無い』と返ってきたのだと文は語る。去年の最中、外界の人間が観測できない、幻想郷すら感知できない『何か』があったのだと確信するに至った。そうして文は独自に、迷い人に取材し続けた。しかし・・・
「皆答えは同じでした。半年間、外の人間は何をしていたのかどころか『経過した事すら忘れていた』。その謎を、私はずっと追っていました。・・・そして今、それが報われました。藤丸リッカさん」
彼女に真実をもたらされた事で、文は真実に辿り着いた。今の今まで、知りたいことが知れない、真実に至れぬ記者であり忸怩たる思いをしていた文は立ち上がり、リッカに頭を下げる。
「私がずっと知りたかった真実、私を信じ明かしてくれてありがとうございました。そして、皆様の勝ち取った未来に生きる者として、深い感謝を。天狗を代表して、御礼を申し上げます」
世界を救うという真実を掴み取った人間達に、深い感謝を示す。それは自身に真実を託してくれた者への、種族を越えた最大の感謝だった。
「そうそうたる神達の加護があったのも納得したわ。・・・本当に、頑張ったのね」
「良かったよー。リッカや皆がいなかったら、幻想郷も遠からず燃え尽きてた筈だから」
「リッカちゃん!あなたは・・・あなたは・・・なったんですね!グドーシさんとの約束を胸に!自分を曲げる事なく!」
「うんっ!」
「世界を救う!最高の!ヒーローに!!」
「・・・そうだけど・・・サナちゃん・・・私はね・・・ホントはヒロインになりたかったんだ・・・」
感激のままにリッカの腕を振りまくる早苗に、遠い目なリッカ。仕方無い。誰がどう見ても、リッカは人類最後のマスターとして戦い抜いた女傑、ヒーローなのだから。
「それならば幻想郷に至ったのも納得かつ光栄ですね!お任せくださいリッカさん!私も早苗さんと共に、リッカさんの課題の挑戦をお助けします!具体的には、妖怪の山の御案内を!」
「いいの!?」
「勿論ですとも!むしろリッカさんが妖怪の山びいきになっていただけたなら頼もしい事この上無し!さぁさぁ参りましょう!河童、私の同僚、厄受け神、豊穣の双子神、ポンコツ白狼天狗!全てご紹介致しますので課題を攻略攻略!さぁさぁ!」
「ふぁー!?」
「ま、待ってください!今回のリッカちゃんのパートナーは私!私ですよーっ!」
両腕を引かれ、慌ただしく駆けていくリッカの背中を見守りながら、二柱が呟く。
「・・・あれだけ逞しく、愛されていたならば、悪い虫なんて付く筈が無いものね」
「神奈子、私は心配だよ。リッカに影響されて早苗が身体を鍛え始めないか」
あらゆる意味でオンリーワンなリッカが、愛娘に与える影響を憂い、そして輝く旅路を歩んできた事を祝い、早苗に背中を押され文に手を引かれながら笑う彼女の姿を慈しみ続けた──
リッカ『と、という訳で!妖怪の山の課題は任せて!サナちゃんと文さんと一緒にやっていくから!』
早苗『お任せください!どんな奇跡も起こしちゃいます!』
文『最速で駆け抜け、温羅さんの朋友をあらゆるデマから御守りします!射命丸文!射命丸文をどうぞよろしく!』
オルガマリー「よし。これで風評と神々を味方に出来たわ。流石ね」
ゴルドルフ「マスコミをまず抱き込むとは、流石の君主だねマリー君・・・ホント、あることないこと書かれる事ほど厄介なものはないったらもう!」
シオン「現地の協力、それも強者たる妖怪とコネクションを繋げるには真実で殴る!改竄できるならやってみろってパワープレイ、最高です!」
オルガマリー「この手に限るわ。・・・旧友との時間も兼ねて、リッカは侵入困難な妖怪の山を担当してもらいましょう。となると・・・」
紅白の巫女『豪華絢爛御大尽さまっ♪誠心誠意、あなた様の有するカルデアの皆々様に御奉仕させていただきます♪肩を揉ませてくださいっ♪』
黄金の王『うむ、生半可な整体では満足せぬぞ?善きに計らえ!ふはははは!』
オルガマリー「あちらは特に心配無さそうね」
巫女(にへらぁ~)
ゴルドルフ「見たまえシオン君。あれが目の前で御利益ガン無視して500円玉をお賽銭箱いっぱいに入れてくれた客に奉仕する巫女の姿だよ君ィ」
シオン「いやぁ~、資金が無限って本当に素晴らしいですね!」
ロマン「いないと思ったら何してるんだい彼はー!?」
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