ギル「ふはは、流石は我がマスターよな!こちらはまだ方向を定めている最中だ、そちらもゆるりとやるがいい」
はくのん「ひぃ、ひぃ・・・メルトかけっこを思い出す」
霊夢「こらー!サボるなはくのー!あんた王様なんでしょシャキッとなさーい!」
はくのん「うぐぅ。マスター能力全振りしたNPCに無茶を申さないでいただきたい」
「あんたはここにいるあんたが全てでしょーが!生まれなんてどうでもいいのよ!どう生きるかよどう生きるか!」
はくのん「霊夢△・・・」
ギル「こちらも初対面は悪くない。お前がいなければ何もできぬ烏合の衆、というわけでも無いようだ。そちらも久方ぶりの休暇と思い、ゆるりとやるがいい」
『うん!あれ?そういえばギルがこなした課題って・・・』
──これです!
『博霊神社の賽銭をいっぱいにしろ!』
リッカ「あっ、それは確かに・・・」
ギル「我にしか出来ないものであろう?適役というヤツよな!ふふはははは──!!」
「よう、頑張ったな!じゃあこっからは労いと腹拵えだ!この温羅サマの特製寿司!振る舞ってやっから座れ座れぃ!」
時は夜、博麗神社の中──に作られた大広間の寿司カウンター。ギルの空間歪曲宝具を利用し儲けられた空間には、鬼神にして幻想郷と桃源郷の架け橋である温羅が待っていた。埃一つ残さない掃除を行った皆は課題を果たした。それの報奨が、温羅の手製料理(三食日替わり)である。
「温羅さんは幻想郷にいるとき、私に料理を作ってくれるのよ。幻想郷の顔の巫女にはこれくらいの役得が無くちゃ、って!口うるさいだけの仙人や胡散臭いマッチポンプ紫とは器が違うわよね~器が!温羅さん、今日も美味しいお寿司よろしくぅ!」
「あいよ、任せときな!幻想郷には海がねぇから、寿司や海鮮は鉄板チョイスなワケよ!楽園では数多の料理上手がいるから譲ってるが、日本食なら誰にも負けんぜ?はっはっは!」
「スシ・・・回らないんだな」
「知らないのかいデイビッド?寿司と言うものはその者の格に応じて回るか回らないかを決める格式高きジャパンシーフード。資格なきものには店にも上がれず、塩すら撒かれてしまうらしい・・・一説にはこれは、イザナギとイザナミの契りを模した」
「そんな訳ないだろ・・・。一見御断りと高級店と神話をミックスし過ぎだって。回転寿司はリーズナブル、高級寿司はイタマエが握るんだよ」
「私はブリ、マグロ、エビ、カニ、タマゴ、軍艦、ウニ、ハマチ、ビントロを予約します」
「私はかっぱ巻きで!」
「退きなさい人間!大トロは譲らないわっ!!」
「別に争奪戦じゃないから落ち着いて座らないか!胃痛に耐える高級寿司だなんてあんまりなんだから!」
「マシュ、霊夢!おしぼりと水配ってくれぃ!」
「はーい!皆さん、お疲れ様でした!」
「ガリはここ、醤油はこっちね。あ、服にかけても知らないわよ?」
先輩に置いていかれたマシュ、そして手伝いの霊夢がアシスタントを務め、ネタを捌きシャリを握る鬼神に驚嘆の声を上げる一同。
「見ろ、ライスから湯気と神気が立ち上っている」
「板前になるには最低十年の修行がいるってきくけど、そりゃあ鬼神さんは十年なんてあっという間よねぇ・・・銀座の寿司屋ですら至れない領域よ、アレ」
「ははっ、文字通り年季が違わぁ!ネタは出来たら出してやるから、明日から挑む場所でも話し合っときな!霊夢、パンフレット頼む!」
はい、これねと渡されたものは幻想郷の地図。これより挑戦する場所も細かに記された、博麗の巫女式旅行計画書である。
「今のあんたらは博麗神社、つまりここ。よく口に出すリッカとかいうのはここの妖怪の山の天辺にいる訳ね。それで、めぼしいスポットは・・・紅魔館、白玉楼、人里、彼岸、魔法の森、迷いの竹林・・・そんなところかしら。課題もこなすといったら人がいるところよ」
説明をしながらもお茶を淹れる霊夢。一同がそれぞれのスポットに、質問を投げ掛ける。
「紅魔館、っていうのは登った屋根から見えた、湖の近くにあった屋敷の事か?」
「そうよ白髪頭。ここは吸血鬼姉妹が頭を務める夜の支配者の館。危険度でいったら大分なトンでもスポットよ。魔法使い、妖精、時を止める人間、役立たずの門番がひしめく化け物スポット。まぁロクなところじゃないわね」
「魔法使いだって!?・・・い、いや。魔術観点とは違う、現代では再現できない奇跡を使う者の呼称じゃないか、流石に。あと白髪じゃないからな。銀髪だ銀髪!」
「このスイーツ楼というのは?」
「そこは亡霊の姫が治める屋敷よ面白金髪。辻斬り庭師と、閻魔勅令で冥界を任命されたバキュームピンクが住む、咲かない桜がある辺鄙な場所。まぁロクなところじゃないわね。彼岸も以下同文。死神がいるくらいよ」
「ピンク!つまるところ戦士カービィがいると言うことかな?幻想郷、懐が深い・・・!」
「人里は人間が住んでて人を護る変わり者の先生がいる場所、魔法の森は私の知り合いと人形使いがいる場所、迷いの竹林はウサギと月の住人がいる場所・・・説明漏れはない?まぁ大体ロクなところじゃない事だって覚えておけばあってるわよ。人間には住みにくい場所だしね、ここ」
説明が面倒臭くなったのか、ささっと説明し布団の準備に引っ込む霊夢。賽銭の分だけもてなしに励むという律儀かがめついか微妙なラインを行く紅白を見送り、作戦を一同はたてる。
「どこから行くべきだろうな、これ。歩くにしても結構距離があるけど・・・」
「歩いていくしか無いわね。これも訓練、特訓と考えましょう。地力の体力は上げなくちゃ」
「クラスカードを使える組や、礼装を使う者は躊躇いなく使うべきだ。サブ部隊として、俺達は個別行動を取らなくてはならない場合も出てくるだろう」
「吸血鬼、と言いますと・・・ヴラド三世やカーミラさんのような成熟した吸血鬼が群生しているんですね」
「あ、アルトリア?そんな野生生物みたいな・・・」
「スタンプカードの量からして、危険な場所ほど難関なミッションがあるんだろうな。そして、稼げるスタンプも幅広い・・・どのみち僕達に、スルーや見逃しなんて選択肢は無いのかもだけど」
「気を付けろよ皆~。アタシか紫の名前を出せば大抵のトラブルはかわせるが、中には鳥頭やそもそもアタシらの名前を覚えてない妖精や妖怪もいる。妖怪は人を襲うもんだ、そいつらは悪気なく襲ってくるだろう。そういう奴等に備えた集中力も必要になるからな。抜かるんじゃないぜ?」
「だが、我々はやらねばならない。このレクリエーションを通じて、皆の絆と力をより高みへと導く為にも!カドック、君にプランニングは任せよう。なるべく楽しい場所に私達を連れていってくれ!」
「・・・楽しいかどうかは個人差だが、少しでも縁や出逢いを求めるなら危険な場所もやむなしか・・・それなら──」
皆の意見を纏め、カドックが行き先を指し示そうとした、同時に──
「へいお待ち!それぞれの注目の寿司、戴いてくれよな!」
「出来た!?」
「待ってました」
「うぉっ!?」
カドック、月の新王と博麗の巫女に蹴散らされる。食欲の反射には流石のカドックも対処できない迅速さが介する。転ばなかっただけ有情だ。
「では細かい話は寝る前のコイバナと一緒にむっ!?な、なんだこの口にした瞬間舌に蕩けるような凄まじい鮮度のトロは!?これが、スシ・・・!?」
「っ・・・美味しい・・・!シャリが固すぎず、柔らか過ぎず、口の中で絶妙な酸味と一緒にほどけて・・・」
「あぁ。ザギンのシースーとはこういったものなんだろうな」
「ヤダアタシペペロンチーノなのに寿司めっちゃ食べてるわー!でもしょうがないわね日本人だものー!!」
「うめ、うめ、うめ、うめ、うめ」
「店主、大トロもっとください」
「ちょっと岸波!アルトリア!私の分まで食べるんじゃないわよトロは私のよ私の!」
「落ち着いてください!ギルガメッシュ王と俵さんの影響で、食材は無限にありますから!」
「カドック、お前さんも食え食え!なんなら寿司折も用意してやる、小難しい吸血鬼や妖怪にてきめんだぞぉ!わっはっは!」
「あぁもう──イカ!ハマチ!かっぱ巻きで!」
((((玄人・・・!))))
「この寿司折は、リッカ先輩に、と・・・」
「マシュ!君も食べてみるんだトロ!私はね、舌が蕩ける感覚を心で理解したんだ!」
「はい!むふふ、先輩・・・お先にいただきます!」
ミーティングにつき、喧しい食事の時は過ぎていく。どこに行くかは、喧騒と美食の果てに──
寝室 男
ペペロンチーノ「ねぇ、カルデアでどんな子がタイプぅ?アタシはねぇ・・・」
キリシュタリア「そうだなぁ・・・私は結婚した先も見据えると・・・」
カドック「学生かこのノリは・・・ま、まぁ気を張りすぎるのも良くないのは解るけど・・・」
デイビッド「各地を回り、よいテナントを作ろう。出来れば全ての場所に顔を出したいものだ」
カドック「・・・リッカはもう、妖怪の山で頑張っているんだろうな。なら、モタモタしている訳にもいかない。デイビッド、行き先は・・・」
キリシュタリア「いいよね、カドック・・・一人で神社を切り盛りする大和撫子・・・」
ペペロンチーノ「やだ寺あるの!?皆で座禅しない!?バチーンってやられたいわー!」
カドック「・・・本当・・・濃いな・・・解ってたけど・・・」
博麗神社
コソコソ
「そ~・・・」
カコン
霊夢「・・・何やってんの?」
「(ビクッ)あ、あら。起きていたのね。このカリスマ☆スニーキングを破るなんて・・・流石よ」
霊夢(ごそごそ)
「まぁ、中々に面白そうな事をやってるみたいだから、私も参加を助けてあげようと思ってね?ありがたく思いなさい?私の屋敷に招」
霊夢「せいっ!(塩)」
「うー!?」
騒がしい初日の夜は、過ぎていく──
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