人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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パチュリー「えっと、呼び出せばいいのね?」

カドック「あぁ。グランドマスターズは位置に。メイド妖精の指揮は咲夜さんに頼む。あと、〆は門番にだ」

キリシュタリア「やる気だね?カドック」

「圧倒し、鮮烈に勝つのはリッカの担当だ。脇を固める僕たちは、地道でも各自に・・・さ」

レミィ「咲夜!美鈴を起こすのよ!」

「はっ」

カドック「頼むぞ、皆。パチュリー!」



パチュリー「来たわね、魔理沙」

魔理沙「なんだよ急に、改まって?告白か?」

彼女は霧雨魔理沙。魔法の森に住み着く人間であり、我流の魔法を操る強めの人間だ。パチュリーとは腐れ縁かつ茶飲み仲間。手癖が悪く、本や経験、技などをよく盗み返さない。

『死ぬまで借りる』とは、人間の寿命である80年くらい借りるから死んだら返すからなという意味らしい。

パチュリー「そ、それはないわ。・・・返しなさい、本。溜まっているわよね」

魔理沙「なんだよー。借りるって言ったろー」

「状況が変わったの。私がむっきゅんぷちんする前に返しなさい」

「・・・嫌っていったらなんかあるか?」

パチュリー「痛い目を見るわ」

「ほー、じゃあ試してみる、か!」

パチュリー「あっ、こら!」

魔理沙「死んだら受け取りに来てくれ!じゃーな!」

パチュリー「もう・・・!頼んだわよ、カドック!」

カドック【了解、追い込む!】

(リッカ、勇気をくれ・・・行くぞ!)




魔法使いを追いかけろ!

「なんだなんだぁ・・・?パチュリーのヤツ、今日は随分とケチ臭いじゃないか。取り立てまでしてくるとはな。悪いものでも食べたか?」

 

あっけらかんと屋敷を飛ぶ白黒の魔法使い・・・この場合はただ、魔法らしいものを使うという意味の魔法使い。魔術使いと同義の意味を持つ少女、霧雨魔理沙が不思議そうに首を傾げる。いつもなら怒ることはあっても、ここまで追い立てる様な事態にはならないと記憶している彼女。なにせ今までの本を全て返却しろと来た。それはちょっと無理だなと頭をかく。物理的に多すぎるからである。

 

「だからってトンズラは悪いことしたかな?まぁいつも通りなんか買ってお土産渡せば機嫌直るだろうし。じゃあ─」

 

そう、いつものようにうやむやにしようと画策し広大な紅魔館を、自前の箒で飛ぶ魔理沙。

 

──しかし、今回は幻想郷の小さな日常ではなく、王の威信を懸けた研鑽。文字通り、灰色の結末では許されなかった。

 

「逃がすか・・・!」

 

「おっ?」

 

後方、声と共に駆ける影がある。聞きなれない男の声に振り向くと、そこにいたのは銀髪の少年。見慣れない顔が自分を追っている。そう気付いた魔理沙はニヤリと笑う。

 

「こいつは驚いた!なんだアンタ、レミィの餌か?」

 

「研修生だよ。幻想郷のな!パチュリーの為、本は返してもらう!」

 

どうやら、自分を捕まえるために汗水垂らしているようだ。そう気付いた魔理沙、彼女は派手好き、勝負好きな一面があり舌を巻く。

 

「そうかい!だが私はまだ返すつもりないと言ったら!?」

 

「意見は聞いてない。延滞したもの含め、何がなんでも返してもらう!」

 

「話が早いぜ!なら──捕まえてみるんだな!」

 

気合いを込め、箒に力を込める。瞬間、遊泳程度だった浮遊にブーストがかかり、優に60㎞を越える速度にて加速する魔法使い。選択したのだ。ズラかりという選択肢を。

 

「お互い様だ。逃げずに頷くような性格の子はそもそも延滞しないだろうしな・・・!行くぞ、『アタランテ』!」

 

カドックもまた、当然それは織り込み済み。ならばチェイスで追い掛けるまで。彼が頼みにするサーヴァント、その力が封された『クラスカード』を銃型の召喚機にリードし、魔理沙へと真っ直ぐ撃ち込む。

 

「うぉっ!?」

 

間一髪かわした弾丸はそのままカドックの下へ。そして、その銃弾をカドックは掴み、握りつぶす。

 

『駆けろ、アタランテ!』

 

掛け声と共に、カドックの身体に変化が起きる。黒い軽鎧に、禍々しき猪の黒き頭。漆黒の獣人と化したカドックが、先の何倍ものスピードにて魔理沙へと並走する。

 

「何ぃ!?」

 

【選べ!素直に従うか、怪我をしてから返すか!】

 

「面白い事するじゃないか!だが生憎私はな、やれと言われると逆らいたくなるタイプなんだぜ!」

 

笑いと共に、カドックの攻撃と威嚇をかわしながら高速で飛び回る魔理沙。幻想郷の住人の攻撃をかわす、避けることに関するスキルの高さをカドックは垣間見る。

 

(動きのキレが尋常じゃない。紙一重でかわす訓練を積んだ兵士のようなものだな、これは・・・!)

 

「あーばよっ!」

 

瞬間、ドリフトの要領にてカドックに星のエネルギー弾をぶちまける。それらは幻想郷の『スペルカードルール』に則った非殺傷の弾幕、きらびやかなエネルギーである。カドックは真正面から天の川に突っ込み──

 

【ふんっ──!】

 

「なにっ!?」

 

否、突っ込まない。カドックは素早く弾幕に対応してみせた。スライディングで掻い潜り、壁を三角蹴りで跳躍し、そのまま【天井】を疾走してみせる。アタランテの力、絆を結んだカドックならではのアルカディア越え。

 

「面白い・・・というか無茶するなぁ!そういうの、嫌いじゃないぜ!」

【僕で驚いていたらもたないぞ。本を返せ!】

 

「捕まえられたら、考えてやるよ!お先ー!」

 

天井を走るカドックの爪の一撃をかわし、置き去りにする速さで廊下の向こうへと駆け抜ける魔理沙。最早追い付けない程に距離を離されたカドックは──

 

【グランドマスターズ、第二フェイズ!咲夜さん、頼む!】

『こちら咲夜、了解。メイド妖精、所定の位置に』

『キリシュタリア、一同了解!バトンは受け取った!』

 

頼むぞ、皆。そっと祈り、自らの戦闘態勢を解く──

 

~大回廊→エントランス通路

 

「くそっ、どうなってる!今日は随分厳重じゃないか!」

 

魔理沙がうんざりげに吐き捨てる通り、今回はいつもと警備が段違いであった。いつもならサボり、歯向かっても蹴散らすだけのメイド妖精が妙に鬱陶しい。動きにキレがあり、通りたい場所を絶妙に邪魔してくる。最高速になる前に妨害、通行止め・・・厄介な動きばかりをしてくるのだ。

 

「なんか悪いものでも食ったのか・・・?ともかく、さっさと帰らないとなんとなくヤバイ感じがするな!」

 

「「「いたー!やれー!」」」

 

「くっそ!」

 

四方八方から囲んで来る妖精達に、よりによって翻弄されている事実に困惑を隠せない。いつの間にこんなにマシになったのか。こっそり特訓でもしていたのか?

 

「「「通すな~!」」」

 

そうこうしている内に、後ろに大量、眼前にスクラムを組んだ妖精の障壁が立ち塞がる。最大速度なら問題なく蹴散らせるが・・・魔理沙は判断を切り替えた。

 

「妖精なんぞに本気を出してちゃいい笑い者だ。悪いが──帰らせてもらう!」

 

「「「「あーっ!?」」」」

 

魔理沙は廊下の『窓』に狙いをつける。カーテン付きのステンドグラス。メイド妖精達からの追撃を、無理矢理脱出に繋げた逆転の一手だ。

 

「ボンクラは何匹集まってもボンクラってこった!じゃーな!また来るぜー!」

 

「「「「弁償しろー!!」」」」

 

妖精達をついに振り切り、窓を叩き割り脱出する魔理沙。冷や汗をかく鬼ごっこの終わりに、ほっと一息をつく。

 

「ふぅ。なんとかなったな。全くおとなげな──」

 

──だが、その油断、安心こそが。彼女の運命を定まらせたのだ。そこはまだ紅魔館。敵地に他ならない。

 

【今だ皆!撃て!!】

 

カドックの号令と共に──

 

「「「「「「「──ガンド!!」」」」」」」

 

「なっ!?」

 

魔理沙に向け、7色の光弾が放たれる。それは魔理沙に直撃した瞬間、彼女からあらゆる自由を奪い取る。

 

「指向性の、呪いかコレ・・・!?なんだこの強さ・・・っ!」

 

指一本動かせなくなる魔理沙。見れば、庭の各地に戦闘服を着た男女がこちらに何かを撃ったと理解するのに一拍を要する。

 

(もしかして、私・・・ハメられたのか・・・!?)

 

メイド妖精は誘導、最初の男は発破に挑発。それら全てが自身の『庭』への離脱を誘うための布石なのだとしたら。これが、作戦だったのだとしたら。──猛烈な勢いで走る、紅髪の門番が見える。

 

『殺してはダメよ、美鈴。半殺しになさい』

 

「了解ですお嬢様!魔理沙さん!正面突破の屈辱!御返ししましょう!」

 

「くっ・・・!なんて、大人気ないやり方だ・・・!」

 

【犯罪者に情けなんてかけるか。決めてくれ!美鈴!】

 

美鈴はそのまま、屋敷の壁を垂直に駆け上がり、回転きりもみの勢いを付け、オーラを纏ったムーンサルトキックにて──魔理沙を打ち据える!

 

「ほわちゃあぁあぁあぁあぁあぁあっ!!!」

 

「ぎゃあーーーーっ!!?」

 

三カメリプレイが入るような渾身の一撃を受け、地面へと叩きつけられし──白黒の魔法使い。

 

「ターゲット、確保だ!皆!」

 

「神妙に、神妙に致せ」

 

素早く、グランドマスターズが魔理沙の身柄を確保する。その様子を、割れた窓より見つめるカドック。

 

「上手くいったな。皆でのチームプレー・・・!」

「大したものね。私達が手を焼いた彼女を、あっさりと」

 

「優秀なスタッフにマスター達だ。結果を出せない方がおかしいさ。──多分リッカだったら、初手で追い付き、箒を斬って無力化で終わってただろうし」

 

彼女とは違う、彼女がやるような、彼女だけでは出来ない楽園の勝ち方。皆の力を合わせること。

 

『任務完了!流石だよ、カドック!』

 

『リッカにも聞かせよ。大戦果』

 

「あぁ。彼女も、きっと理解してくれる勝ち方じゃないかな」

 

「・・・興味があるわね」

 

皆が指針にする、その少女とはどんな子なのか。笑いながら、咲夜は魔理沙の身柄を受け取った──




パチュリー「次に借りたい人がいるの。返してもらえるわね?」

魔理沙「解ったよ。こんなにぼろ敗けじゃぐうの音もでないしな・・・」

レミィ「ガラス直してくるのよ」

はくのん「レミィ直々にっ」

レミィ「たまに爆発したら、私がレンガを組んで直すのよ!」

オフェリア「爆発・・・!?」
ぺぺ「とんでもない手作業よそれ!?」

魔理沙「あんたらがアレか?外の連中ってやつらか?新聞で見たぜ。強いんだな!」

カドック「あぁ。皆が皆、エースだからな」

魔理沙「負けた身だ。言うことは聞く。・・・それで、頼みなんだけどさ・・・」

カドック「?」

魔理沙「実はさ・・・借りてたやつ、私の家を埋め尽くしててさぁ・・・一人じゃ出せない汚部屋なわけだ!だから手を貸してくれたらなーって」

パチュリー「はぁ・・・皆、申し訳ないけれど・・・」

オフェリア「えぇ、片付けにいきましょう。・・・適当なのね、幻想郷の人は」

美鈴「全くです!」
メイド妖精「「「「そうだそうだー!」」」」

咲夜「あなたたちが」
パチュリー「言わない」

キリシュタリア「これがカルデア戦闘服!技術班凄いなぁ!」
デイビッド「久しぶりに着たな」

カドック「・・・少しは、楽園らしく戦えたか・・・な」

ライン♪

『マスターから 流石グランドマスターズ! 良かったわね アナスタシア』

「・・・ははっ・・・良かった」

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