人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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魔法の森

アルトリア「妖精達でもいそうな光景ですね・・・」

はくのん「女子だけの方がいいとは、なぜゆえ?」

魔理沙「やーほら、私の部屋って下着とかも脱ぎっぱだったりするから、あれだ、ほら、うん・・・」

はくのん「恥ずかし?」

「はっきり言うなぁ・・・!まぁそんなとこだ。わがまま付き合ってもらって、ありがとさん。・・・見えてきたぜ?」

霧雨魔法店

『なんかします』

「なんかします・・・」

魔理沙「何でも屋なんでな!さ、入った入った!」

アルトリア(もし何か盗まれたら、手筈通りに)

はくのん(一応非力組のほうが警戒されにくい。・・・いざ)

魔理沙「うぉおぉおぉ!?」

扉を開けた魔理沙を飲み込んだもの。それは、『本』であった──

大図書館

オフェリア「こちらになるわ」

パチュリー「ありがとう。あなたは参加しなかったの?掃除」

「妖精達がイタズラすると聞いて、リアカーを守っていたけれど・・・」

「取り越し苦労?」

「・・・そういう事です」


魔法使いの部屋掃除

「なぁにこれぇ」

 

魔法の森・・・魔力や障気に満ちた不明不足の森。一般の人間は近づく由も無い、未知の森。その少し行った先にある、小さな屋敷。『なんかします』との看板が飾られた自称何でも屋の霧雨魔法店。其処に返却本を回収しに来た女性陣のひとり、はくのんがそう声をあげるのも無理もない惨状が扉一枚を開けた向こうに拡がっていた。

 

「足の、踏み場が・・・」

「いてて・・・いや~悪い悪い!実験、研究、フィールドワークで全然片付ける暇がなくって散らかるばっかりでさ~!何が返すもので何が借りたものかさっぱりだったんだよな~!」

 

あっけらかんと宣う魔理沙。どうやら可愛らしい魔法使いの見た目に似合わず・・・相当ズボラでガサツな様である。或いは、研究に没頭する学者とはこんなものなのかも知れない。

 

「ちょうど良かった!お前さんら、本を取りに来たんだろ?遠慮なく持っていってくれ!まぁそれはそれとして・・・」

 

お片付け、手伝ってくれな?とウィンクしてくる白黒魔法使いに、顔を見合わせるアルトリア、アイリスフィール、はくのん。ペペはリアカー引きに抜擢され、ぐっちゃんは掃除に致命的に見合わないので留守番となった。

 

「これが本当の、女子力少なめのお部屋なんですか・・・リッカのお部屋、散らかったところ、見たこと無いですし」

 

「女子力というより、これは性格や性分の問題」

 

「とにかく、リストと合わせて徹底的にやるしか無いわ!気合い入れて頑張りましょう、皆!」

 

貸し出したリストに乗る本の量の圧倒的な多さに辟易しつつも、頷き合う一同。女子の戦い・・・或いは女子の力を見せる為の戦いが今、幕を開ける──

 

~少女清掃中・・・

 

「あった!タロットの起源!」

 

「こっちにもあった。貸し出し禁止シリーズって書いてあるヤツ。たくさん眠ってるからどんどん搬出してこ」

 

宝の山の如くに積み上げられた本の山。脚の踏み場を捌きつつ活動範囲を増やしながら、目当ての本を回収していく。

 

「いやぁ助かったぜ!紅魔館は出張メイドサービスも始めたんだなぁ!」

 

「そ、そういう訳じゃ無いのだけど・・・私達としても、本を回収するのは課題の一環なのよね・・・」

 

当の本人たる魔理沙は楽しげに、愉快に掃除を行っている。文句を言わず負けた事を認める潔さ、引き摺らない素直さを持つ悪人ではないことを、一同に示している。

 

「それにしてもきったないなぁ~!誰だよこんなんなるまでほっといたやつ!」

 

「あなたじゃい」

 

「あ、そっか!私だったな!ごめんな手間かけてな~、そんで、ありがとな!やっぱ掃除は、皆でやるに限る!」

 

ジョークも飛ばしつつ、楽しげに本を片付ける魔理沙と共に掃除を行う一同。とても、本を強奪した犯人像とは思えない。見たところ、楽しんでいる様子すらある。

 

「お前さんたち、紅魔館に出入り出来るんだよな?そりゃぁ良かった。あいつら、吸血鬼と愉快な仲間達だろ?普通の人間は怖がってあんまり近付かなくてなぁ~。たまにやるパーティーも、顔馴染みばっかりな訳さ。あいつら的にはどうでもいいのかも知れないが、外界に触れない生活って不健全だろ?パチュリーも、体力無くて外に出てこないしなぁ~・・・」

 

「だから、図書館に顔を出してあげていた?」

 

まぁな、と魔理沙は笑う。どうやら気に入った相手にはちょっかいをかけたくなる性分であり、それが図書館に対する騒動の発端であったようだ。

 

「まぁ私、こう見えて結構テキトーだからな。良さげ!と思った本はついつい持っていっちゃってな?それで読み終わったりしたヤツを返そうとすると、また新しい本に興味が・・・ってなってまた取ってっての繰り返しだ。我ながら手癖の悪い事だよなぁ・・・」

 

「・・・、?」

 

はくのんはふと、ノートを見つける。手にとって見てみると、そこに書いてあったものは・・・『実験成果』であった。

 

「おぉ・・・」

 

そこには、あらゆる魔術素材を様々な方法で研究、実験し、それらの成果を事細かに記しているノート。焼く、煮る、浸す、浸ける。砕く、まぶす・・・それらの全ての手段と、成功と失敗の結果が委細詳しく。図解等も込めて、だ。

 

「パチュリーの図書館にはいい本がいっぱいあってなぁ・・・ついつい借りるのはいいんだが、読み終わったらもっと他には無いのか!?ってなって興味が移っちゃってさぁ・・・だから、お前さんらが来てくれて助かった!いやまぁ、部屋の事もそうだし、本の返却もそうなんだが・・・」

 

畏まり、魔理沙は頭を下げた。彼女は決して、嫌がらせや悪意を以て接していた訳では無いのだ。それはきっと、彼女なりの友好の証を以て行っていた事。

 

「パチュリーの事、ありがとさん。ほら、幻想郷の連中はあんまり他人に関心が無さげでな。真っ当な人間って言うのは少ないしな。だから・・・礼を言わせてくれ。そんで、良かったら・・・」

 

これからも、あいつらと、仲良くしてやってくれ!そう告げる魔理沙は朗らかで、真っ直ぐだった。触れ合い、接さなければ見えてこなかった一面だ。

 

「・・・想像していたより、ずっといい子だった。霧雨魔理沙。嬉しい誤算」

 

「おぉ?よせよテレるだろぉ?」

 

「あなたはいい人。だからこそ、言わせてもらう。・・・気を引く為でも、相手を傷付ける恐れのある行為は止めた方がいい」

 

言葉や行動の齟齬が、取り返しのつかない決裂になるかもしれない。仲良しの者達が、仲良しだからこそ乗り越えてはならない領域がある。月の王として、それだけは伝えねばならぬとはくのんは口を開いた。

 

「その通りね。あなたにとっては軽いイタズラでも、相手がそう思うとは限らない。知らず知らずの内に、傷付いているかもしれない」

 

「私には関係ありませんが、アーサー王はコミュニケーション失敗で円卓を割りました。互いのすれ違いというのは予想より遥かに響きますよ。・・・特に、自覚無い一言は傷付くものです。私には全く関係ありませんが」

 

アイリスフィール、そしてアルトリア。はくのんに続く彼女への言葉に、魔理沙はキョトンとした後、笑顔にて頷く。

 

「・・・だな。そうだな!これもいい機会だ!やるぜ!」

 

「何を」

 

「謝るんだ。今まで悪かったってな!非を認めたらまずはごめんなさいだもんな。よし、私は謝るぞ!本を持っていくのと一緒にな!最後まで、付き合ってくれな!」

 

魔理沙の言葉に同調し、頷く一同。どうやら偶然の産物だが、魔理沙の意識改革に繋がったらしい。

 

「良かった、素直で」

 

「盗人だから、聞く耳もたぬと思いましたが・・・」

 

「気を引きたいから意地悪する。いいね、凄く青春。年頃女性の心持ち」

 

おっさんめいた解説を行うはくのんに苦笑いしつつ。一同はリアカーにいっぱいの本を詰め込むのだった──

 

 




大図書館

魔理沙「こいつが、借りてた本とそのリストだ。照会してくれ」

パチュリー「・・・しっかり返したわね。受けとります。もう二度としないようにね」

魔理沙「約束はできんなぁ。借りるのと盗むの区別が曖昧になるかもだし」

パチュリー「あなたという人は・・・」

魔理沙「だけど、お前さんを哀しませたくないからな。自重はするよ。私にとっては悪ふざけでも、そっちには死活問題なんだし」

パチュリー「えっ・・・?」

「今まで悪かった。またなんか借りさせてくれ!」

パチュリー「・・・・・・素直じゃない。どうかした?」

魔理沙「掃除したんだ。心も、部屋もな!」

「・・・そう。・・・盗まないなら・・・また、来てもいいわ」

「おう!よろしく!」


キリシュタリア「・・・これが、てぇてぇの輪、かな?」

はくのん「やっぱ・・・仲良しは・・・最高やな」

カドック「・・・あとは・・・」

『妹から生還せよ』

「どういう事だ・・・?」

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