人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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日間ランキング一位とか夢でも見ているんでしょうか・・・
新規なる期待も多分にあるとはいえ、身に余る評価を戴き、もはや言葉がありません

本当に、ありがとうございます!「あぁ、あんなのあったなぁ」くらいには皆様の心に残るような作品を、これからも目指していきます!


対峙

「これが聖杯……超抜級の魔術炉心じゃない……なんだってこんなのが島国にあるのよ……」

 

 

『資料によれば、それは400年ほど前にアインツベルン家が手掛けた大聖杯と呼ばれるもののようです』

 

 

「はぇー、すっごい」

「これが、聖杯……」

 

 

この空間に対する所感をそれぞれが述べる中、自分は――いや、器たるギルガメッシュの視線は一点に注がれていた

 

「お話はそこまでだ。来たぜ。アレが原因を護る最後の刺客ってヤツだ」

 

 

 

 

 

「――――」

 

 

死人のような肌色、重苦しい漆黒の鎧。輝く金髪

 

そして、澱んだ黄色の瞳。暗黒を湛えた剣。

 

 

「……」

 

 

圧倒的なオーラを放つ前方の騎士を見ていると、内側から言い様のない苛立ちと不快感が込み上げてくる

 

この感情は、なんだ?意識するまでもなく、器が独りでに言葉を紡ぐ

 

「――なんだその姿は。我が少し見ぬ内にまたも雑念に囚われおって」

 

「――貴様がいるとは驚きだな、英雄王」

 

少し驚く。かの黒い剣士と英雄王は知己なのか?少なくとも、英雄であるならば英雄王を知らぬものなどいないとは思うのだが……

 

 

「なぬ!?テメェ、喋れたのか!?今まで黙ってやがったのか!?」

 

「何をしても見られている故な、案山子に徹していた。――だが」

 

マシュを見やる

 

「!」

 

「面白い宝具を持っているな、娘」

 

「えっ、わ、私ですか?」

 

「嬢ちゃん、油断すんなよ。そいつはかの誉れ高き騎士王、アーサー・ペンドラゴン。携えるのは選定の剣の二振り目。世界一有名と言っても過言じゃねぇ至高の剣……」

 

『エクスカリバー!星の内海により鍛え上げられた究極の宝剣か!』

 

ロマンが感嘆を露にする

 

アーサー・ペンドラゴン……あまり馴染みの無い響きだ。確か、アーサーとは王、男性だった筈だ

 

と言うより、目がおかしくなっていなければ、彼、いや彼女は……

 

 

「女性、だったんですね……」

「男装女子とかブリテン未来に生きてるな~」

 

それだ。少なくとも、アーサー・ペンドラゴンは歴史において女性だった、なんて説は聞いたことがない

 

『女性だと王にはなれなかったんだろう。お家柄、男性として振る舞うしかなかったんじゃない?』

 

「暢気なこと言ってないで!マシュを、あの騎士王は狙ってるのよ!」

 

 

「面白い、実に面白いぞ。――英雄王、貴様の不愉快な面は後回しだ」

 

軽く吐き捨て、マシュに相対し、黒き剣を下段に構える

 

「構えよ、小娘。その護りが真なるものか、我が剣が確かめてやろう――!!」

 

 

――ますます不快感が募っていく。なんだ?この苛立ちは、この感覚は

 

まるで――焦がれていた尊いものに、汚物をぶちまけられたような、殺意に近い感覚

 

「我は後回しとはよくぞほざいた。――マシュ!」

 

「は、はい!」

 

「アレは貴様を所望のようだ。丹田に力を入れよ。汚濁にまみれているが紛れもない星の輝きだ」

 

 

「盾から手を離せば、たちまち消え失せるぞ。後ろのマスターごとな」

 

「――!」

 

器が制御不能の不調な以上、マシュにマスターの護りを託すしかない

 

短い交流ではあるものの、マシュが如何に自分の力を発揮できるような檄を飛ばせるかは感覚で掴めた

 

 

自分が死ぬことではなく、自分の大切な人が傷付くことを恐れ、奮起する

 

マシュは、そんな心優しい、ただの女の子なのだ。

むしろ、英雄王という極大の特権を与えられている自分より遥かに立派で、強い女の子だ

 

 

――頼む、マシュ。絶対に死なないでくれ

 

 

「――解りました!マスターは私が護ります!」

 

「無茶よ!まだ真名も解らない宝具で!相手はエクスカリバー!最強の聖剣なのよ!?」

 

「何言ってるの、所長」

 

「え……!?」

 

マスター、藤丸リッカが快活に笑う

 

「私のマシュは、最強の盾なんだよ!」

 

「あなた……!」

 

「やろうマシュ!貴女の力を!」

 

「はい!――所長が下さった、私の宝具の名前――!」

 

 

 

 

「――卑王鉄槌。極光は反転する――光を呑め!」

纏う魔力が剣に集まり、莫大な暗黒の束が光を為す

 

其は、闇に堕ちた星の聖剣。あらゆる輝きを飲み干し喰らい尽くす邪竜がごとき怒濤なる暴虐の極み

 

 

 

「――宝具、展開します!!」

 

其は、人理を見守る礎。人が為し、人が紡ぐ歴史を見守る天文台の、銘を冠す不壊の壁

 

 

 

 

約束された(エクスカリバー)――――勝利の剣(モルガン)――――!!!」

 

放たれる。竜が吐き出す吐息を遥かに上回る絶望と破滅の津波

 

莫大な魔力を放出し、生み出し束ね勢いを増す。凄まじい勢いは微塵も衰えず外敵を滅する鉄槌となりて審判を下す

 

「仮想宝具・疑似展開(ロード)/人理の礎(カルデアス)――――!!!」

 

築かれる。人理を見守り、人理を観測する天文台の名を冠す儚くも無窮なりし不動の城壁

 

想いを力に、願いが不動に。背中にある確かなものを護るため聳え立つ雪花の壁

 

 

矛盾の逸話、ここに再演。黒き暴威と白き雪花が空間のあらゆる物体を震わせ揺るがせ、蹴散らさんと猛り狂う

 

「神様――!」

 

「神などに祈るな、たわけ」

 

「!」

 

「虚ろに消えた者に何を為せよう。貴様が祈るは――友の健在のみだ」 

 

そうだ、何かにすがって眼を閉じないでくれ

 

しかと見るんだ。あの柔らかくも決して砕けぬ決意を

 

それに応える――あの円卓を

 

「くっ、ぅうぅう!あぁあ――!!」

「大丈夫!私がいる!皆がいる!マシュは一人じゃない!」

 

「――消えろ――!」

 

一段と破滅の光が勢いを増す。いよいよ以てその腹に獲物を呑み込まんとする竜の雄叫びだ

 

「護られてばかりじゃない!私は――マシュの――!」

はっ、とマシュがマスターを見やる

 

「――――」

 

「リッカァッ!!」

 

「ギルの――マスターだぁあぁあぁあっ!!!!」

 

右手の甲に刻まれた赤い紋様が輝き、一画が消え失せる

 

同時に、マシュの全身に力が沸き上がり、盾はより力と硬さを磨きあげる――!

 

 

「ぉおおぉおぉおぉおぉおぉお――――ッ!!!!!」

 

 

―――――――

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――加減など微塵もしたつもりは無いのだがな。全く呆れた堅牢さだ」

 

 

此度は、盾が勝った。エクスカリバーの光をすべて受け止め、それでもマシュは、マスターは生きている

 

 

『やったぞ!マシュがやった!藤丸君がやったんだ!あの聖剣を受け止めるなんて!やっぱりマシュは一流の英霊にひけをとらない!』

 

「褒める箇所が違うわ。たわけ」

 

 

『えっ?』

 

そうだ。褒める箇所はそこじゃない

 

英雄とか、宝具とか。そんなのはどうでもいい

 

 

ただ、その心の在り方に、惜しみの無い称賛を

 

彼女達こそ、肩を並べて歩くに相応しい者達だ

 

 

「――さて、盾の硬さはよく掴んだ。次は此方だな――英雄王」

 

黄色の瞳が、こちらに向けられる

 

 

――望むところだ。あれだけの意地を、気合いを見せられて黙ってはいられない

 

 

――ここで、自らを定める

 

「手を出すなよ、狗」

 

「――ハッ、誰が出すかよ」

 

 

無銘の魂に裁定が下る。ここが転生した自分の、最初の正念場だ

 

 

「我を添え物と扱うその無礼、マシュめの奮闘に免じて許す」

 

さぁ――行くぞ、万夫不当の英雄王

 

「――我の舞台の幕開けといこうではないか――!!」

 

武器の貯蔵は――充分だ――!!




マシュ、お疲れ様


次の戦いは無銘を定める裁定の決戦です

どうか、生暖かく御覧ください

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