人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ギル『成る程。旧き日本の神、その神霊の戯れであったか。これだから・・・と神を詰るには、いささか深く日本を知りすぎたな』

──これが、暇を持て余した神の遊び!?

温羅「すぐに紫に伝える!回収しないと偉いことになりかねん!」

『いや待て。──奴等の研鑽にはよい機会だ』

「研鑽?・・・もしかして、回収を彼等に、か?」

『賢しい者は話が早い。我がマスターと我等のみに情報を共有し、奴等には未知の事件として当たらせよ。楽園のマスターとしての、よき経験となろう』

「わ、解った。イブキのヤツも神の一柱、無粋に遊びを潰したなんて言ったら暴れかねん。・・・終わった後に、皆には私から説明させてくれ。王様」

『無論だ。さて、賢者めはどういった対処を取るか・・・人は窮地に地金を見せるものだが、さて・・・』


聖杯探索譚~開幕~

「ちょっとあんた!どういう事よ!フランが持ってたあの欠片は何!?またあんたがばら蒔いたりした変なヤツじゃないでしょうね!?」

 

「うふふ・・・うふふ・・・」

 

「何笑ってごまかしてんのよあんたぁ!清く正しい幻想郷に今大事な大事な上客がやって来てるのよ!?責任問題よ責任問題!果たしなさいよ説明責任を紫ぃ!」

 

フランより受け取った金色のギター、拾ったとされるそれを確認してみればそれは非常に馴染み深く覚え易いものであった。トカゲドラゴンガールがしょっちゅう拾ってくる事に定評のある・・・

 

「手頃な聖杯」

 

「手頃なのかよ?外の世界ではいつもの事なのか、すごいな現世」

 

「そ、そうなの。聖杯・・・万能の願望機たる器、の・・・細かく砕かれた欠片。それらがいくつか、幻想郷各地に散らばっている、みたいなのよ」

 

はくのんの予想、無事的中。魔理沙がよくあることと驚くが、そんな事はない。楽園時空の周辺にのみ起きる現象である。慣れてはいけない。霊夢は真っ先に紫の関与を疑ってかかるものの、当の本人は非常に歯切れが悪く煮え切らない。

 

「え?何よその反応。あんたが犯人じゃないの?いつもみたいにあんたが企んだ悪ふざけでしょ」

 

「カツ丼買ってくるか?吐いて楽になれよ紫。どうせお前さんなんだ。楽園や鬼神さま、敵に回すのか~?」

 

「故郷の家族、きっと泣いているだろう。だが安心してほしい!私達は告解を受け止め、共に償いを行うと誓う!それが美人、美女であるなら尚更だ。私達、いや私の魂が告げるんだ。美しき者には全霊を尽くし接するのだと!」

 

「・・・薄々思ったんだけど、キリシュタリア・・・アンタ、ゼウスの影響を微妙に受けてないか・・・?」

 

「男としては正常な反応だろう。美人はそれだけで宝だ」

 

「あら、デイビッドアナタも男の子なのねぇ・・・」

 

「ミョウレンジ、お前も美人だな。顔をよく見せてほしい」

 

「あらぁ~・・・!」

 

博麗神社にて帰還した一行は情報を整理する。どうやら金色の欠片は突発的に発生したものであり、紫は無干渉にして想定外であった様子であったらしく、申し訳なさげに頭を下げる。

 

「ごめんなさい・・・皆様のレクリエーションを邪魔するつもりではなかったの。でも現実問題として、あなたたちの世界で言う聖杯・・・その欠片は幻想郷の各地に散らばっていて、幻想郷の住人達が拾っている可能性が極めて高いわ。今ではただの綺麗な器になっているか、使い方を理解していない者達が所有してしまっている可能性が高い・・・」

 

心底遺憾げに目を伏せる紫に、霊夢は態度を変えることなく糾弾する。彼女は情や絆で、態度を変えることはないのだ。

 

「何よ、まさかアンタ・・・楽園カルデア、王様の宝物の皆様に回収させるつもりじゃあないでしょうね?」

 

「おいおい、流石に尻拭いをお客様にやらせるとか幹事としてちょっとどうかと思うぜ?ここは誠意を見せるところだぞ紫~」

 

「解っているわ。これよりすぐに欠片を回収、補填として皆様に更なる対応を考え、誠意ある対応を行う事を誓います。我等幻想郷は、皆様楽園への敵対行為、欺瞞の意志を有していることは断じてあり得ないと言うことをこの場を借りてお伝えさせていただきます。・・・本当に、申し訳ありません」

 

紫の謝罪は即座に行われ、潔白と誠意を込めた態度を楽園に見せる。それだけこれまでの事は想定外であり、同時に不本意であったことであるという苦悩が、美貌を曇らせていることからも伺える。

 

「これは、こちらの落ち度です。皆様を招いたのは、心からの慰安を願ったものであり、他意は決して・・・」

 

「そうよ!すみませんうちのうさんくさい紫が大変な御無礼を!責任は全部この紫にあって幻想郷や私は無関係なんです!どうかまだいなくならないで!機嫌を悪くしないでもらいたいわ!私からも謝るわ、ごめんなさい本当に忙しなくて!」

 

「上客を絶対逃がさないって意志を感じるなぁ・・・私も謝っとくか!いやぁ、皆ごめんな!悪かった!」

 

紫、霊夢、魔理沙からの謝罪を受ける楽園一同・・・グランドマスターズは頷き合う。

 

「カドック。私達の言いたい事は・・・言葉にせずとも、だね」

 

「あぁ。──だけど、これは僕達だけの答えじゃない。彼女にも訪ねなくちゃな」

 

一同と頷き合い、カドックはリッカに通信を送る。──モニターの向こうにいる少女は何も語ること無く、静かに。厳かに頷いた。

 

「ありがとう。──顔を上げてくれ、三人とも。そして、提案なんだけど・・・その欠片の回収、僕たちに任せてはもらえないかな?」

 

「えっ・・・?」

 

「僕達が聖杯の欠片を集めるよ。レクリエーションの一環としての催しとして用意されたイベントとしてなら、そっちの落ち度にもならない筈だ」

 

その提案は、一行にとっても幻想郷としても波風の立たぬ提案であり研鑽の場を確保する有益なもの。困難を困難なまま終わらせず、それでいて自身の力とするある意味で貪欲極まる試み。それを、躊躇いなく提案する。

 

「旅は道連れ世は情けって言うじゃない?そっちもこっちも困っているっていうなら、もう助け合いするしかないでしょ?人助け・・・妖怪助け?まぁともかく!そういうの、私達のキュートなリーダーの方針なわけ!」

 

「リッカはスーパー系女主人公。カドックはリアル系男主人公。どっちも可愛いのは一緒」

 

『よく解っているわ、月の王様。後でイースターエッグを差し上げます』

 

「初めの交友でつまづいた関係は長く続かん。それは、互いに望むところではない筈だ。まだテナントを作っていない内に退去は困る」

 

「・・・実を言うと、皆で旅行・・・そういうのは初めてなの。こんな不本意な形で終わらせたくないの。私達は、始まったばかりだもの」

 

「・・・これが、僕達の総意だ。幻想郷の・・・君たち風に言うなら、異変か。解決する手伝いをさせてくれないか?」

 

カドック達の言葉に、対する反応は三種三様であった。霊夢はキョトンと呆け、魔理沙は膝を叩き笑い、紫はもう一度、頭を下げる。

 

「・・・ありがとう。よろしく・・・お願いさせてもらえるかしら」

 

「あっははっ!お人好しな奴等だなぁ!・・・うん!気に入った!私も首を突っ込ませてもらおうか!な、いいだろ?霊夢!」

 

「う、うぅん・・・なんだかこっちの不手際をフォローさせるみたいで気が引けるけど・・・まぁ、何事も経験・・・そっちの修行になる、って認識で構わないかしら?」

 

「そういう事だとも!だから曇ってはいけない。私達が全力であなたたちをお助けしよう、古今東西の美女、美少女の為に男性は命を懸けるものだからね!」

 

「・・・頭ゼウスって言っていいものなんでしょうか。罵倒なのか賛辞になるのか非常に判断に困ります」

 

「ど、どうかしら・・・キリシュタリア自身は紳士的なんだけど・・・うぅん・・・?」

 

「──解りました。それでは八雲の名に懸け、楽園の皆様に救援を申請します。マスターの皆様は、幻想郷に散らばった聖杯の欠片を回収していただきます。基本的には会話と対話の交渉を。──万が一に、フランドールのように聖杯を私有化していた場合は・・・」

 

「・・・・・・」

 

「・・・マスターとしての皆様の判断にお任せします。霊夢達と協力して・・・頼むわね、楽園のマスター達」

 

「「「「了解!」」」」

 

そうして、一同の研鑽が始まる。それはマスターとして、財としての彼等の第一歩──




温羅「紫のヤツ、カドック達に協力を申し出たな。どうやら協同で事にあたるみたいだ。・・・伝えなくていいのか?王様」

ギル「よい。悪意の介在するものではなく、また最終的に益になるというものであるならば止める理由もない。奴等には研鑽を、我等には漫遊を滞りなく行うまでよ。さてリッカ、お前はどうする?」

リッカ「もちろんやる!・・・と、言いたいけど、皆の成長の機会を奪うのは良くないよね。皆が頑張るのを見つつ、聖杯の状態をサナちゃんや文さんと観察するよ!」

ギル「うむ。手に負えぬ輩に渡らぬよう、全体の様子を俯瞰せよ」

──一段上の視点、観の眼を鍛える!リッカちゃんの、新たな課題ですね!

温羅「紫、ゴメンな・・・種明かしは必ずする。今はイブキに・・・付き合ってやってくれな・・・」

ギル「・・・」

「イブキのヤツも、一緒に・・・酒を飲めるようになるためにも・・・だ」

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