人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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「おねーさん。あまいおかしちょうだい」


「うんと甘いの!現実を忘れる素敵な味をよ?」


「子供特有のふわっとした注文ね・・・いいわ。大量に仕入れた林檎を使ったアップルパイをこさえてあげる」

「「わーい!」」


「・・・いいのか?」

「いいのよ。そーゆうときもあるって話」

「・・・すまない、ジャンヌオルタ」

「フン。美味しい以外聞きたくないわ」

「あぁ・・・!」


決戦

「おーい船長。やっこさんら、またむかって来るぜ」

 

 

黒髭の駆る『アン女王の復讐号』にて、緑のランサー、ヘクトールが声をあげる

 

 

「むむぅ?あれだけコテンパンにされておきながら懲りませんなぁwまぁ、エウリュアレ氏を連れてきたのは感謝ですぞ!ナイスBBA!」

 

 

「・・・あのフランシス・ドレイクと、ギルガメッシュがいる船が、勝算のない特攻だって・・・?」

 

「船底に穴を空けられながら元気ですわね。手を抜きまして?ヘクトールおじさま?」

 

「まさか。オジサン気は抜くが手は抜かないよ?」

 

(・・・まぁ問題はそれよりも『何故海路を選んできたか』だが・・・こりゃあ、なんか策があるな)

 

 

「おーい!エウリュアレ氏ー!はやく拙者の胸に飛び込んでおいでよー!そんでもって甲板で腕広げるアレを――」

 

刹那。黒髭の顔面スレスレを、弓矢が掠める

 

 

「へ?」

 

次いで――

 

 

「ほわぁあぁあぁあぁあぁ!!?」

 

爆音、そして水柱。怒濤にして凄まじい威力のソレが絶え間なく船の回りに降り注ぎ爆音と大震動が船に襲い掛かる――!

 

 

「なんだ!?なにが起きてる!?」

 

「おおおおちつけ!もちつけ!素数を数えるでござる素数を!」

 

「ヘクトールおじさま!」

 

「・・・信じらんねぇ」

 

呆然とヘクトールが呟く

 

「こいつぁ・・・『弓矢』だ・・・!」

 

 

 

 

 

 

「・・・外してしまったわ。いえ、外したのかも。無意識のうちに」

 

安堵したようにエウリュアレが呟く

 

「矢が汚れるというか・・・」

 

「手抜きか貴様!我の堪忍にも限度があるぞ!女神像の代わりになるか!?」

 

――ま、真面目にやっていただけないでしょうか!大事な場面なのだから!

 

「うるさいわね!これでいいのよ!私の弓矢は周りの奴に当てたほうがいいの!」

 

 

「何・・・?」

 

「ほら、見てなさいよ!」

 

「ごめんね、アーラシュさん。『矢を外せ』なんて・・・」

 

「いいや、無慈悲に一方的に潰せ、なんて命令されるよりずっと気持ちがいいさ。任せときな」

 

 

赤き剛弓を、大英雄が引き絞る

 

「三流は三流なりに・・・役に立つとこ見せねぇとな!」

 

「フッ、過ぎた謙遜は嫌味になるぞ、勇者よ!」

 

「そりゃ失敬、と!」

 

 

大砲、いやミサイルを上回る破壊力の弓矢が、雨霰の如く船の回りを打ち据える。一発でも当たれば、容易く船を消し飛ばせるレベルの弓の常識を覆す射撃が黒髭の海賊船を撃ち据える!

 

「よぉし取り舵だ!狙うは奴等のどてっぱら!覚悟を決めな野郎ども!!」

 

 

「おぉう!!」

 

「リッカ!船首でエウリュアレを護りな!大一番だよ!」

 

「へいっ!――大丈夫だよ、エウリュアレ!」

 

「――ふん!アステリオスと一緒に、私をちゃんと護りなさいよね!」

 

 

魅惑の弓と赤き剛弓が、完膚なきまでに混乱を引き起こす・・・!

 

 

 

 

 

 

「へい!同士諸君!エウリュアレ氏の弓矢に当たったら即座にぶち殺すからヨロシクゥ!」

 

アーラシュの剛弓に船体を揺るがされながら黒髭が叫ぶ

 

「船長何言って・・・いでっ!」

 

瞬間、船員にエウリュアレの弓矢が突き刺さる

 

「――あ、ぁあぁあ!!お前ら!エウリュアレ様のために死ね!!」

 

魅了にて意志を奪われた船員が――

 

 

「はいモブ船員、アウトー!射殺ー!」

 

黒髭の銃弾にて即座に粛清される。返り血で染まる黒髭の笑顔

 

 

「え、なんで・・・船長・・・」

 

「ほら返り血で汚れちゃったじゃん!拙者の部下ならノーダメクリアくらいやってくだされよぉ!で、次誰?」

 

「あ、当たりません!!絶対!!」

 

「アン氏!あいつら撃てる!?」

 

「無理ですわ!こんな激震ではまともに射撃など出来ません!」

 

「抜かった!アーチャーにこんな滅茶苦茶なヤツがいたなんて・・・!」 

 

「大砲上回る矢とかヤバすぎィ!BBAおこなの?本気でおこなの?」

 

 

「はいはーい!立て続けにバッドニュース!」

 

 

「上かっ!?何奴!?」

 

「はーいアルテミスでーす!全員射殺しちゃうぞ♥」

 

光の弓矢がやたらめったら意味不明にばら蒔かれ、船員を貫き無力化していく

 

 

「うぎゃあ!」

 

「うげぇ!」

 

「ぐわぁあ!」

 

 

「くっ、メアリー氏!」

 

「解ってる!アーチャーなんて近付いてしまえば!」

 

 

駆け抜け迫るメアリー

 

 

「あらら、確かにそれは嫌ねぇ。だからぁ~」

 

――瞬間

 

 

『船』から『船』より。麗しき魔獣が飛来し乗り込む!

 

「メアリー!!」

 

「くっ――!!?」

 

「よろしくアタランテ!あなたたちの攻撃アタランテ!なんちて!あははははは!」

 

 

――其処にいたのは、麗しの狩人ではなく

 

「――我が真名はアタランテ。ギリシャにて弓を誇りし狩人・・・だが今は弓矢をつがえぬ魔獣」

 

 

――かつて神罰として、都市国家を襲った猪の皮を纏い、おぞましき姿へと変貌した、黒い霧に包まれし魔人だった

 

――アタランテのもう1つの宝具『神罰の野猪(アグリオス・メタモローゼ)』を解放した、バーサーカーに迫るサーヴァントとなった狩人が吠え猛る

 

「神罰の化身、アタランテ!若干信仰を見失いかけた嘆きと衝撃、余さず貴様らにぶつけてくれる――!!!」

 

それは、かなりの八つ当たりも含まれていた――!

 

 

 

 

 

場所は変わり、黒髭の船の火薬庫にて二匹が細工を行う

 

「フォウ!(これでよし。できれば黒髭もろとも木っ端微塵に消し飛ぶがイイや)」

 

「アンタそんなキャラ?可愛いのは見た目だけ?」

 

「(醜い相手が嫌いなだけさ。そーいう生き物だし。ろくなことにならないし。イメージアップもしたいしね。――まぁ)」

 

「?」

 

「(――そんなのは建前でさ。ボクだって、何かしてあげたいじゃないか。皆の仲間としてさ。最期に何が待っていようと)」

 

「・・・アンタ・・・そーいう話は導火線に火を着ける前にやらない?」

 

 

「ファッ!?(やっべ!爆発オチなんて最低だ!にっげろー――!!!)」

 

「はやッ!?ちょっと待って見捨てないで置いてかないで待って――――!!」

 

 

 

 

「私は負けない!!」

 

 

メアリーを弾き飛ばす

 

「くうっ!」

 

「例え信仰していた女神が恋愛脳(すいーつ)だったとしても!」

 

アンの銃撃を弾き落とす

 

「ちぃ!」

 

「アルテミス様とマスターが似ていてしまったとしても!意気投合してしまったとしても!」

 

咆哮が船を揺るがす――!

 

「――私の信仰に揺らぎなし!!理不尽で残酷な現実に負けるものか――!!」

 

「何言ってるでござるかこの人!?」

 

 

「きゃー!アタランテちゃんかっこいー!素敵~!オリオンと同じ、ちょっと下くらい素敵~!」

 

「がっはっ――――!!!」

 

アタランテが血へどを吐き膝をつく

 

 

「あのオリオン以下――!?」

 

「どしたのアタランテちゃん!?」

 

「今だ――!」

 

 

すかさず襲い掛かるアンとメアリー、だが!

 

 

「待たせたなアルテミス!伝えろ!!」

 

「フォウ!(帰還したい!!)」

 

二匹の珍獣が甲板に飛び込んでくる

 

「はーい!船長!リッカ!やっちゃってー!」

 

 

「なんでござるかあの小さいの・・・小さいの・・・?」

 

瞬間、総てを悟った黒髭とヘクトールが同時に叫ぶ

 

「あぁ、そういうことかチクショウ!!」

 

「全員伏せろ!!爆発しますぞ――――!!!!」

 

「え――」

 

「爆発・・・!?」

 

瞬間轟く大轟音、吹き飛ぶ船室の数々、沸き上がる黒煙

 

「キャウ!」

 

「よしよし!フォウくんおつかれー!」

 

「キャウ!キャウ!キャ――ウ!!(女神おっぱい!ボクは生きてる!生きているんだ――!!)」

 

「アホやってる場合か!伏せろ!!『本命』が来るぞ――!!」

 

「本命――!?」

 

「デュフフフ!一度言ってみたかったんだよね!総員対ショック姿勢をとれー!!」

 

――唸りを上げ孟進し、土手っ腹目掛け突っ込んでくる黄金の鹿――!!

 

「『BBA』が来ますぞ――!!」

 

船を粉砕しかねない衝撃と轟音が再び鳴り響き、木々がへし折れる嫌な音が響き渡る

 

「突っ込んで来やがったか・・・――!派手だねぇまったく!」

 

 

「ドーモ!エドワード・ティーチ=サン!藤丸立香です!!」

 

船首に立ち、手を合わせ深々と御辞儀をするマスター、リッカ

 

「ドーモ!藤丸立香=サン!黒髭です!デュフフフ!やって来ましたな!BBAとはまた違った我がライバルにして同士!」

 

「来たよ!大海賊にして世界一有名な黒髭!今こそ私達のカルデア=ジツにて、貴方をジゴクに叩き落とす!」

 

「ウカツ!やってみるでござるよ!このヤバイカイゾク=クランに、リッカたんの実際貧相な攻撃が通じるならば!」

 

 

「ウカツは貴方!私は一人ではなし!」

 

「なぬ!?」

 

「アタシを忘れるとはイイ度胸だ黒髭!リベンジ!果たしに来たよ――!!」

 

「げぇ、BBA――!!」

 

 

「今こそセキガハラ!黒髭!ハイクを詠むがいい――!」

 

「先輩!?先輩!?」

 

 

 

 

 

「ふっ。マスターめ、はしゃぎおって」

 

「アンタは行かないの?偉そうにしておいて」

 

「フッ。我は行かぬ、向こうが来るのよ・・・そら」

 

――エウリュアレのほっぺをむにーとつねる

 

「ふぁっ!?なにふるのふぉー!」

 

「まじないだ。・・・よし、これでよい」

 

パチン!と元に戻る

 

――仕込みは済んだ。ならば

 

「来るがよい。女海賊」

 

降り立つ二人で一人の海賊達

 

 

「ごきげんよう、英雄王」

 

「早い再会よ。賊の分際で我が前に姿を晒した意味、当然理解していような?」

 

「もちろん!さぁ覚悟しなよ英雄王。お前がいちゃ僕達に勝ち目はないんだ。なら切り刻んで!」

 

「撃ち抜いて差し上げます――!!」

 

「よい。貴様らの曲芸、我に見せてみよ――!!」

 

――財を選別する

 

――最終決戦が、始まった!

 

 




「おかえり!あたらんて!」

「あぁ・・・」

「頑張ったの!素敵だったわ!なでなでしてあげるのだわ!」

「・・・あぁ・・・」


「はい、アップルパイ。カモミールティーは私からのオマケよ。・・・お疲れ様」

「あぁ・・・!」

「ちょっと、何で泣くのよ!?」

「なかしたー」

「いけないのだわー」

「なんで!?ちょっと!どうしたのよ!ハンカチ、いる・・・?」

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