ギル「うむ。善良な妖精という輩に欠片が渡されたのは奴等にも幸運であったな。これが悪辣であったなら、一人二人は死んでいたやも知れぬ。自然現象の当たりを引くとは、運のいい奴等よ」
「本当ですよねぇ。では、このまま彼等のフォロー、手助けを行う形でいいですね?」
ギル「手間をかけてすまぬが、暫し面倒を見てやれ。土地勘に長けているという他、それがクロスオーバーの醍醐味、というヤツだからな」
霊夢「お任せください!ですからその~・・・」
「賽銭であろう?明日の箱を楽しみにしておくがいい」
「ありがとうございます!じゃ!」
──皆様、順調なようです!何よりですね!
《リッカの添え物という評価を覆さんとする気概は見た。退屈はせぬようだな。引き続き見てやるとして、我等がマスターは今何をしているのやら──》
「凍結部分、氷解を確認。捕らわれていた者達も解放され、二人はやってくれたようだ。これにて、当方が提案した作戦は終了と判断する。無論、大成功で、だ」
博麗神社に戻った救出組、説得組は互いの無事を確認し、そして凍り付いていた幻想郷の一角が元に戻っていることを視覚的に判断し作戦の完了を知る。チルノ自身が自らの手で、自らの暴走にケリをつけたのだ。これで、無闇に凍らされるものはいなくなるだろう。聖杯の欠片とチルノ本人は無事であり、何も失わぬ勝利と判断されるに相違ない結果だ。
「当方の予測は当たっていた。妖精が招き入れた英霊が我が愛・・・ブリュンヒルデであるならば、必ずやチルノは我々に聖杯の欠片を譲渡、返還を行うと断定する。時間の問題、心配は無用である」
「ブリュンヒルデ・・・シグルドの妻であり、オーディンが鋳造したワルキューレの一人。チルノが聖杯の力を使って召喚したと言うのね、シグルド」
シグルドは頷く。故にこそ、自身はその結果と因果を見据え、速やかなる撤退を選んだのだと告げる。そう、自身の半身といってもいい程に愛している妻が、善のマスターに喚ばれたならば必ずや行動は最適なものにとられる筈だと。だからこそ、撤退しても構わないのだとシグルドの叡智は導き出したのだと言うのだ。
「まさに夫婦だからこそ解る絆の力だね!でも何故だい?夫婦だというならば協力関係も築けた筈だ、どうして撤退を選んだのか訪ねても構わないかな?」
キリシュタリアの問いにシグルドは面を伏せ、眼鏡を押し上げる。そこには、サーヴァント故の悲哀が存在していたのだ。
「我が愛、ブリュンヒルデは生前に愛憎の果てに当方を殺害し、自らも焔に消え去った。無機質な戦乙女が、感情の機微というエラーを起こした。そしてそれは、現界した状態においても宿業、因果として残っている。即ち・・・当方を認識した瞬間、彼女は意識とは無関係に当方の殺害に移るものと推測される。皆に撤退を進言したのは、マスターを無視し、皆に被害を与える我が愛の暴走を引き起こさない為のものだった。そればかりは、我々の判断ではどうしようも無いものであるが故の苦渋の判断と断定した上での選択である」
サーヴァントは生前の英雄の再現にして影法師。余程の運命との出逢いや特訓をしない限り、生前の因果や弱点は決して無くならず、また消えない。誰よりも愛し合いながら、運命に弄ばれ憎しみのままにシグルドを殺害したブリュンヒルデは生前の通り、自動的にシグルドの殺害に乗り出すのだという。
「万能、ってわけじゃないのね。サーヴァントも。というか生前と比べたらずっとずっと窮屈じゃない」
「愛しているから殺します、って理解できない世界だよなぁ。可愛さ余って憎さ100倍ってやつか。難儀だぜ・・・」
「私なら堪えられないわね・・・項羽様に刃を向けるのも向けられるのも。そんな事になったら即座に身を爆ぜるわ、私」
「投げても無くならないから爆発する辺り、本当に一途よねぇ・・・でも、それでも心は繋がっているのが救いと思いたいわね、オフェリア?」
「・・・えぇ。シグルド、良かったら教えて貰いたいのだけれど・・・その殺しあいは、不可避のもの?なんとか抑える事も、不可能なのかしら」
オフェリアの問いに、シグルドは頷く。それは、霊基に刻まれた情念であり決して取り外せないもの。それを無くしたいならば、ブリュンヒルデから意識を剥奪するより他は無いとの答えが帰ってくる。
「気遣い、感謝する。だが皆の心配と懸念は杞憂となる事を宣言、断言しよう。当方は万が一に備え、我が愛の暴走を受け止める備えを既に有している」
「それは素晴らしいわ!サーヴァントとして、彼女と愛し合う手段を見出だしたのね!それは一体どんなものか、聞いてもいいかしら?」
「死なない事である」
「・・・え?」
「当方は真正面から彼女の愛の槍を受け止め、そして受け止め続ける。当方が死なない限り我が愛が他者を巻き込む事はなく、誰も傷付く事はない。それこそが当方が導き出した結論・・・我が愛を、我が愛のまま受け止める。それが当方の導き出した愛である。先の場合は、チルノや説明をしていない皆がいたために撤退を選んだが・・・次こそは披露しよう。我が愛を制する、我が愛を」
自信満々に頷くシグルドに一行は壮絶さを感じながら、現状把握に戻る。北欧の大英雄は愛のスケールもとんでもないものだった・・・そう納得せざるを得ない凄味と迫力に満ちていたからである。きっとあらゆる突っ込みは無粋なのだろう、多分。
「と、ともかく。さっきチルノの会話を盗み聞きしていたのだけれど、彼女は各方面に謝罪し終わった後は、私達に聖杯を返還する方針を決めていたわ。単純で無邪気だからこそ、自身の間違いは認められる。悪辣な存在ではないことが彼女の保護にも繋がったわね」
「じゃあ何?課題と収集は、ひとまず達成って事でいいわけ?」
「えぇ、問題無いわ。スタンプも私が押しましょう。立派に課題、クリアとさせていただくわ。皆様、今日は本当にお疲れ様」
一つめの聖杯のカケラの確保は成功という結果を残した。グランドマスターズは自身に課せられた課題と役割を一つ果たせた事となる。これは、小さくとも立派で大きな前進と言えるだろう。
「やったじゃねぇかオイ!もうちょいで氷ブッ壊してたからタイミングにも恵まれたなぁ!日頃の行いってやつじゃあねぇかこいつはよぉ!」
「ウフ、エヘヘ・・・実はさっき、青い焔が氷を溶かすところのスケッチしてました・・・きっと皆様の旅の一頁に残していただけるかと・・・エヘヘ・・・」
「我々の方も氷の強度に難儀していたからね、あそこで最適解を選んでくれたのはお手柄だ、カドック、オフェリア!」
「・・・そういえば僕、とんでもない事を口走っていたような・・・い、いや・・・本心である、本心ではあるんだがそれはあくまで親愛、親愛として・・・」
「それもまた、愛!よねェ!」
「赤飯炊こう」
「茶化さないでくれ・・・!あぁ、見えるぞ・・・弱味を握ってにんまり笑うアナスタシアの姿が・・・!」
「ほー?テメェ絵を描くのか。芸達者だなオイ。此方はダンスやらなにやらが盛んなんだがよ、絵ってのは中々馴染みがねぇやなぁ」
「ハウっ・・・で、でしたら・・・ドドドードさんも一緒にいかがです・・・?きっと楽しいですよ、ゴッホもさりげなく教えちゃったりします、はい・・・」
「ハッ、暇ができたらな!・・・ってドドドードってなんだコラァ!!」
「アタシが教えたの!ピッタリじゃない!?怒濤って感じて熱いわぁー!」
「誰の事だかわかんねぇだろコラァ!!」
「ふぅ・・・こんな調子であと何個もこなさなきゃいけないわけかぁ。前途多難ってレベルじゃないわね本当・・・」
「はは、確かに!だけどもしかしたら、新しいマスターとかも生まれるかも知れないぜ?それはそれで楽しみだよな!」
「まぁ、新たな変化は望むところだけれど・・・お手柔らかにお願いしたいわね、幻想郷にも私達にも・・・」
ミッションの課題を達成し、沸き立つ一同。これはこれから起こる長いレクリエーションの一環に過ぎずとも、自身らの力を合わせて乗り越えたという結果には間違いなく繋がっていると確信が満ちているのであった──
チルノ「うぅ・・・大ちゃんたちにめちゃくちゃ怒られた・・・これが、じごーじとくというやつか・・・勉強になったぞ・・・」
ブリュンヒルデ「うふふ・・・」
チルノ「何がおかしい!」
「いえ、ごめんなさい。私も・・・あなたたちのような仲良しの妹がいたもので、つい」
「妹か!なかよしなのか!よかったな!」
「えぇ。またいつか、どこかで会いたいものですが・・・」
「会える!きっと会えるぞ、何せぶりはあたいのさいきょーの子分だからな!なら絶対大丈夫!保証してやる!願いは叶うぞ!絶対だ!」
ブリュンヒルデ「・・・はい。あなたがそう仰るのであれば。ふふ・・・では、次の謝罪先はどこでしょう?」
「赤い館だ・・・りょーどしんがいでくれーむ、だそうだ・・・さいきょーすぎてつらいな・・・」
「えぇ、でも決して投げ出さない。そんなあなただから、さいきょー・・・なんだと思います。ね?一緒に、頑張りましょう?」
「そうだ!あたいたちはやるぞ!そして終わったらおまえを会わせてやる!おまえが好きな・・・えと・・・」
ブリュンヒルデ「?」
「・・・あおじそだ!あおじそに会わせてやるからな!行くぞー!」
ブリュンヒルデ「あおじそ・・・?」
『妖精の暴走を止めろ!』──クリア!
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