勇儀「ほら、これでいいのかい?」
『萃香メダル』『勇儀メダル』
温羅「助かる!・・・なんだお前、鹿児島の酒か?それ」
勇儀「『島美人』『芋神』『伊佐錦』に『魔王』。貰ったのさ。親切な人間からね。そんなことより、そんなの何に使うんだい?」
温羅「・・・流石に、人間の素の力で対等に戦いたいなんて言うほど朦朧はしちゃいないよな?」
勇儀「そりゃあ当然さ。創意工夫、切磋琢磨、奇想天外が人間の強さだろ?刀に鎧も、鬼退治の為に作られたもんだろうに」
温羅「その刀と鎧なんだよ。アタシ達鬼や鬼神にも、人間は長い年月の果てに寄り添えるようになったのさ」
勇儀「へぇ・・・それは嬉しいじゃないのさ」
温羅「たまげるぜ?酔いも覚めるかも、だ。・・・あれ?萃香はどした?」
「厠、って言って、随分前に引っ込んだきりだ。吐いてるのかねぇ」
温羅「・・・ちょっと行ってくる!」
「行くって・・・」
「するんだよ、嫌な予感がな・・・!」
「鬼と、本気で遊んでほしい・・・!?」
「ちょっと、何を言い出すんですか!?」
時は逢魔刻・・・早苗、文が声を荒げるも無理の無い提案を紫は提示してきた。幻想郷の頂点とも言える力を持つ鬼相手に、人間としてリッカに本気で遊んでほしいとの要望。人間としては規格外の力を持ってはいるものの、その認識と魂は人間である認識を持つリッカに対してのそれは、耳を疑うものでもあり。夕暮れの守矢神社に動揺が走る。
「勿論、純粋な力比べでは無いわ。弾幕勝負でもよし、形式、非想天でも構わない。ただ、鬼の鬱憤を鎮め、生き延びてくれればいいの。霊夢は絶対に面倒臭がってやらないだろうし・・・このままでは、温羅への絡みで彼女が、やむを得ず対応することとなり先のような天変地異が勃発してしまう事態になる。・・・強者との再会で昂ってしまっているのよ。残念だけど・・・」
「だからといって、無茶にも程が無いかしら。リッカはついさっき弾幕に対応した初心者中の初心者なのよ?」
「どうして人間じゃなきゃダメなのさ。弱いものいじめをする程に鬼は堕落したわけ?」
神奈子、諏訪子の反論にも紫は静かに頷く。無理を言い、通してほしいと願っているのはこちらであると痛感、理解している為だ。
「・・・人間との古からの付き合い、ある意味での絆が忘れられないのよ。あなたたちという人間が遊びに来た事により、血が騒いだ・・・といったところかしら。先の地震は、彼女らに温羅が付き合ってくれた為に起きた地震。余興で行った腕相撲の二次災害だと言うのだから、たまらないわね」
鬼が人を拐い、それを命をかけて人間が取り返すために挑み、鬼と戦う。最早遥か昔に行われた両者の『絆』とも言うべき関係を、騒いだ血により郷愁、懐古という形で思い出しているのだ。
「あの地震って鬼の仕業だったんですか!?」
「アリスさん矢も盾もたまらず帰りましたからね・・・相当驚いたと思いますよ・・・」
「・・・幻想郷は残念ながら、温羅や鬼達の全霊を受け止めるには脆きに過ぎる場所なの。彼女らにとっては戯れやじゃれあいでも、それは他者にとっては恐ろしき怪力無双。それでも日々を安穏として過ごす分には問題なかった。しかし今、外来からの刺激が彼女らの心を滾らせている。このままだと・・・温羅、あるいは鬼。どちらかに、何らかの罰則を与えなくてはならなくなるの。幻想郷を騒がせる『異変』として。それは・・・」
「・・・本意じゃ、ない?」
頷く紫。その表情は、いつになく真剣だ。脅威は、どこにも潜んでいる。
「・・・鬼達は重鎮にして恐ろしい種族、温羅は言わずもがな、私の友人にして腹心、切り札であり右腕であり、対等と信じている盟友よ。幻想郷の危機にも手を貸してもらった。・・・そんな人に、『都合が悪くなった』なんて理由で排斥をするほど、恥知らずではないわ。だから・・・」
「そんなの卑怯じゃないですか!どちらかを追い出されたくなかったら要求を飲めだなんて!そんなの取引じゃないです!大体、リッちゃんはレクリエーションでここに来ています!そんな彼女が何故そんな命懸けの無茶ぶりをされなくちゃならないんですか!」
早苗の糾弾に、紫は頭を垂れた。言い訳はしない、という意思表示。どうしても、やってもらいたいが故の陳謝。
「人を息するように利用してきたツケですか?脅しから入る交渉が実にらしいじゃないですか、悪党っぽさがね!」
文もまた、そのやり口に批判を告げる。独占取材相手に手を出す輩に容赦はしない。そうとも言うべき、ジャーナリストの義憤であった。
「・・・私には幻想郷の管理者として、最善を取らなくてはならない。その最善とは、住人を追い出すことでも、盟友を排斥する事でもない。為せる相手に、成すことをしてもらう事よ。・・・一つだけ、言わせてもらうなら。私は・・・」
「・・・」
「出来ない者に出来ないことをやれ、と言う事はないわ。霊夢を除く人間で、私が信頼をおけると感じた・・・リッカ。あなたにならできると確信した『依頼』であるということをどうか、解ってはもらえないかしら」
楽園に、いや温羅と出会った紫は、いつもの紫とは変わっているのやもしれない。少なくとも、こうして真正面から胸中を告げる、という事はしなかっただろう。他者に対する評価や交流が、人当たりよいものへとなっている。それはやはり、親身になってもらえることの喜びを知ったが故かも知れない。
「勿論、手助けもフォローもさせていただくわ。・・・私を、いいえ。・・・何より温羅を助けると思って、どうか協力をしてもらえないかしら」
「うん!解りました、私に出来る事なら!」
紫の願いを聞いたリッカは、迷うまでもなく即答を返す。彼女にとって、こんなものは迷うまでもない。
「あやや!?即答ですか!?鬼ですよ!?流石に温羅さん程じゃなくても剛力無双の相手と本気ですよ!?」
「無茶です!無茶ですよリッちゃん!確かにリッちゃんはとんでもスペックですが、それでも・・・!」
二人の言葉と心配を得難く想いながら、リッカは大丈夫と断言する。そこには、確固たる信頼と確信・・・何より。
「大丈夫!幻想郷にいる時の私は、大丈夫って言える確信と根拠がある!サナちゃん、文さん、アリスさんが力を貸してくれるし、紫さんもサポートしてくれる。本気で危なかったら、温羅ネキや皆が止めてくれるって信じてるしね!それに──」
「それに・・・?」
「困っている人や、私を頼ってくれた人を助けるのに理由はいらないよ!私が出来る事、やれることがあって。それが誰かの為になるのなら!迷う時間が勿体無い!そう!最速最短、真っ直ぐ一直線にってやつ!」
そう。幻想郷で美しいものが理念、思念と言うのならば。それはリッカの中にある矜持もまた思念にして理念。
「アリスさんや魔理沙ちゃんっぽく言うなら・・・私の弾幕は『人助け』でありたいんです!だから紫さんのお願いの手助けは、私が幸せになるためのものでもあるんですから!うぃんうぃんですよ!うぃんうぃん!」
己の信念を貫き誰かの力になることこそが。彼女が幻想郷で行う『弾幕』なのだと。彼女は笑ってみせる。例えそれが休暇の最中でも、彼女は自らの心の赴くままに駆けるのだ。
誰かの為に、自分の為に助ける。それが、リッカが誰かの理由であるというだけの話なのだから
「・・・・・・本当、一年前が嘘のようね」
「外の世界も、まだ捨てたものじゃなかったんだねぇ」
神奈子、諏訪子もまた静かに頷く。ただ、笑顔や絆が尊いものだと憧れていたから求め真似していた頃とは違う。彼女は立派に、自身を確立させていたのだ。
「──心から、感謝するわ。早苗ちゃんも、文も。どうか納得してはもらえないかしら」
「・・・・・・リッちゃんは、そうしたいんですね?」
「うん!信じて、サナちゃん。私は絶対、親友を哀しませたりしないよ!」
「・・・解り、ました!なら、リッちゃんのやりたい事が私のやりたい事です!女は度胸!覚悟決めるぞーっ!!」
「うぅん・・・出来る記事とリッカさんの身の安全が極めてトントンなんで私としては決めあぐねますが・・・たまにはバカになるのもいいでしょう!とことんリッカさんに付いていきます!」
「決まり、ね。心から感謝するわ。リッカ」
「いいんですよ!温羅ネキの事、これからもよろしくお願いいたします!」
深々と頭を下げた、その時──
「おぉーい!!リッカとか言うのー!でーてこーい!!」
酔っぱらいのようなふにゃふにゃした怒号が、一行に風雲急を告げる。
「今の声は!?」
「もしかしなくても・・・!」
「──行ってみよう!」
萃香「出てこい!温羅が見込んだ人間~!出てこないとこの神社、ぶっ壊すぞぉ~!」
リッカ「はいっ!それは多分私ですので、私の大事な友達のおうちを壊さないでください!」
早苗「あれは・・・伊吹萃香さん!?」
文「件の当事者、乗り込んで来ましたけど!?」
「おまえかぁ~!鬼と同じ土俵で戦おうとかいう、生意気なやつはぁ!」
紫「ちょっと・・・悪酔いが過ぎるわよ。それがあなたの望みでしょう?」
萃香「鬼が人間に『頼む』なんてするものかよぉ!強く、遠く在るのが私達鬼だ!疎み、蔑み、卑怯な手を使った人間がぁ・・・」
リッカ「──!」
萃香「今さら虫のいいことを言うな~っ!!」
リッカに向けて、千鳥足のままに猛然と萃香が襲い来る──!
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