人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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紫『どうやら、悪酔いついでにリッカに絡み酒をしにいったみたいね。彼女、源頼光さんの娘さんとなったんでしょう?酔った頭では彼女の事は見れないでしょう』

温羅「あのバカ・・・」

勇儀「確かに、人間のずるさに何より失望してたのはあいつか・・・嘆いてる暇はないよ、温羅。鬼が過去の恨みをぶつけるなんて最大の失態だ。好き勝手やってきて自分がやられるのは嫌なんて、筋が通らないだろ?」

温羅「あぁ・・・!だが止めるにも決闘は始まっちまった。横入りなんてしたら例外を認める事になる。どうしたもんか・・・!」

紫『ボムなら問題ないわ』

「は?」

『ボムを提供するなら問題は無いの。メダル三つがボムよ。完成、急いでね!』

「・・・お前なぁ、そういうとこだぞ。胡散臭いって言われるの・・・」

勇儀「迷ってる暇はないだろ、温羅。鬼の面子と未来・・・で、人間どもの未来がかかってるんだ。私達の力と人の力、束ねて酔いを覚ましてやろうじゃないか」

温羅「おう!・・・」

『ブランクメダル』

「──リッカ。迷惑ばっかりかけて、本当にごめんな・・・!!」

勇儀「温羅、あんた・・・」

『温羅メダル』

温羅「力に溺れる、なんて結末にはならないさ。なんせリッカは──とびきりの乙女だからなっ!」

勇儀「・・・酌み交わしたいね。あんたがそこまで言う人間とさ」

温羅「未成年だ。もう少し待て。──必ず来る、未来をな!」

勇儀「ふふっ。──行ってきな!」

温羅「おう!!」





人間は強きものを恐れた。

鬼は人の世を儚んだ

人は知恵を付けた。

鬼は人の勇気と力を信じた。

人は知恵で、鬼を欺いた。

鬼は欺かれ、強さを奪われた。

人は鬼を、知恵で退治した。

鬼は、人に全てを奪われた。

人は鬼を畏れ、語り継いだ。

鬼は──

人と袂を別った。


ただ強く在り、故に遠く在り

『リッカ!アクセス認証!早苗!文!アリス!藤丸リッカ!ミラクルスポイラーッ!!』

 

素早くニトライザーにメダルを認識し、普段のリッカからミラクルスポイラー・・・特攻服を纏いし奇跡の具現へと姿を変える。

 

『はあぁあぁあっ!!』

 

そのまま服を鎧へと転じさせ、翼を拡げ一直線に萃香へと突進、ユニット・ティターニアを使い自身を弾幕へと変え鬼へ真正面から突撃を慣行する。それは鬼と言う強者から逃げも隠れもしない、勇気の突撃。リッカ自身が備えた心の原動力。

 

「ぬぅうぅ~!!」

『くっ・・・!』

 

しかし当然と言うべきか、奇跡の力を借りたリッカ渾身の突撃を、両腕の豪腕のみで受け止めてみせる萃香。酔っていようと、その力は些かも衰えていない。人間一人の質量など舞い散る花弁に等しい。

 

「その小賢しい姿と力・・・!お前達人間は小賢しい事ばかりをするな!昔も、今も!」

 

『えっ・・・!』

 

「お前達は伊吹童子を・・・酒呑童子を退治した!その時にした事!お前達人間は忘れようとも、私は忘れるものか~!」

 

そのまま力の限りに放り投げる。リッカは猛烈に投げ出されながらも、ティターニアを分離解放し、萃香に向けて高速の弾幕ユニットを射出する。しかし──

 

「お前達は鬼に取り入る為もてなされた人の肉を喰らい、酒に毒を仕込み!首を跳ねた!盃を交わし仲間の、同族の契りを!鬼の誓いを利用し、踏みにじった!それが私は──許せない~!!」

 

力の限りに大地に叩き付けた両腕の剛力が、大地を隆起させ無数の巌弾となり、ティターニアを迎撃墜落させていく。正確かつ、強力無比な怪力の弾幕。技や小細工を踏みにじる、絶対強者の暴虐。

 

(シュテン・・・これ、母上達が討伐した時の事を言ってるんだ・・・!)

 

酒呑童子討伐。リッカの運命の母たる頼光、そしてその四天王が行った災厄の鬼の誅罰。それは神の力と祝福がもたらした神酒を飲ませ、力を奪う・・・騙し討ちに近いものであった。

 

「他者の信じているものを利用し、悪用し、騙し、踏みにじる!そんな真似は、鬼だってしない!お前達を仲間と、同胞だと信じ首を斬られた仲間達の怒りと無念・・・存分に思いだせーっ!」

 

『ッ!!』

 

そのまま、全身の骨を砕かんばかりに拳を振るう萃香の突進に反応するより速く、リッカの腰に帯刀されていた護り刀──童子切安綱が、萃香の突進を阻む。

 

「何故かお前を見ると自分でもよくわからないくらい!自身でも抑えきれないくらいの力が、恨みが!憎しみが!どんどん湧いてくるんだーっ!」

 

素早くティターニアが童子切安綱に連結合体し、翡翠色の大剣となり彼女の突撃を真っ向から受け止める。リッカの力は殆ど込められていない。リッカを護るため、童子切が雷の魔力放出にて拮抗しているのだ。

 

『ぉおぉおぉお!!』

「りゃあぁあぁあ!!」

 

それは、リッカが持っている・・・託されたもの。それをもたらしてくれた彼女──源頼光の存在。そしてリッカの内にて彼女の武勇を支える彼女の神性・・・丑御前の力が、彼女を滾らせているのだろう。悪酔いさせているのは、彼女との生来の相性の悪さ。

 

「私の知る、鬼達の知る彼女だってそう思っているに決まってる!海より深く、山より高く!お前達人間を恨んでいるに決まってるんだーっ!」

 

(・・・伊吹萃香さん、だもんね・・・!それはそうだよ、母上と相性いい筈ない!私の中の母上の一面が萃香さんを猛らせているんだとしたら、そもそも酒の酔いが悪酔いになっているのだとしたら・・・!)

 

初めて見た瞬間から気に入らない、気にくわないという存在はいる。萃香にとってそれが、頼光と丑御前に愛されたリッカであったという事。だが──

 

(だけど、シュテンは・・・彼女は・・・!)

 

そう。殺した当の本人の愛を受けているのなら、楽園には『殺された当の本人』も確かにいる。酒の席にて酌をしていた際、聞いてみたのだ。

 

──あの結末を、どう思っているのかを。そして彼女は、笑みと共に教えてくれた。

 

 

恨んどらんよ?全然。散々殺して、喰らって。好き勝手やってきたんやもん。そりゃあ殺されるわぁ。だから、ぜーんぜん恨んどらんよ?

 

というか、あんな美味い酒振る舞われたらそりゃ飲むわぁ!死ぬ程美味い、ってあぁいう事なんやねぇ・・・

 

 

『・・・確かに、人間はあなた達の隙を衝き、騙し、欺いて・・・あなた達を退治しました。でも・・・、でも!』

 

そう。鬼を、その気質を知っているからこそ。断言出来る。何より、その生きざまと、格好良さを知っているから。楽園のマスターとして、鬼という種族の素晴らしさを知っているからこそ、彼女は真っ向から跳ね返す。その憎悪と糾弾は──的外れだと。

 

『──鬼は!過ぎた事をいつまでも恨んだりしない!痛快で、豪快で、嘘をつかない!!』

 

「なんだとぉ・・・!」

 

『そんな、誰も真似できない強さを持つ鬼だから!私達人間はあなた達を恐れて!畏怖して!──何より、素晴らしい存在だと語り継いだんだから!酒呑童子は、誰かを恨み根に持つような小物じゃない!鬼神すら憧れさせた・・・!鬼の中の鬼だから!!

 

そう、鬼は強く、何より遠い。だから人は畏れ、敬い、語り継ぎ。その伝説を永遠のものとした。そんな痛快無比な鬼の中の鬼は、自身の選択に後悔も、憎悪も懐いてなどいないのだ。それを何より、彼女と話した自身が知っている。彼女を尊敬している鬼神が知っている。

 

『だから、私は受け止める・・・!誰の憎しみでもない、誰の哀しみでもない!あなた自身の抱える無念と嫌悪を!あなたたちの矜持を、あなたたちの信頼を裏切った『人間』として!私が!真っ正面から受け止めるッ!!』

 

鬼の前にて──一歩も引かずに仁王立つ。退かず、逃げず。歴史の産み出した軋轢を、悔恨。此処に真っ向から受けて立つ。

 

『鬼の懐いた失望、鬼の抱いた嫌悪!全部私にぶつけてきてください!その上で──鬼と人がもう一度!笑い合える未来を繋いでみせるッ!!』

 

「お前・・・」

 

『さぁかかってこいっ!!私の弾幕は人助け・・・!あなたの悪酔い!『私達』が覚まさせるッ!!』

 

幻想郷の住人達の力を借りて、鬼の全力を此処に弾幕にて受けて立つ。本来なら土俵にすら立てない両者を、賢者達の知恵が繋ぐ。

 

「何を・・・解ったような事をーっ!」

 

頼光への、人間への嫌悪にて普段の魅力を、快活さを曇らせている彼女をもまた、目覚めさせる為に。その技を以て──。

 

「ぬぁあぁあぁあぁ!!」

『だあぁあぁあぁぁっ!!』

 

「真正面から!?」

「無茶ですリッちゃんっ!?」

 

「──いえ、見てみなさい。彼女に力を貸した、人形使いの技術ね。あれは」

 

そう。その『業』を以て彼女に、人間が一矢報いる。決して力で勝てずとも、人は技術を、研磨を重ねた。

 

「ぶわはぁあ!?」

『──っっっ!!』

 

腕を交差させ、カウンターで打ち込む右拳。鬼の力を利用して放った、逆転の一打にして形勢の逆転の狼煙。

 

「ク、クロスカウンターだーっ!!」

 

「お見事お見事!お見事ですよーっ!!」

 

「ふふっ。見ている他者を湧かせる戦い。れっきとした──弾幕ね」

 

ミラクルスポイラー、力の中核。それは奇跡を、速さを、頭脳を奮う無尽蔵にて畏れを捩じ伏せる『勇気』──




萃香「解ったような事を・・・解ったような事を言って・・・!お前達人間の綺麗事にはうんざりだ!またそうやって、騙すつもりなんだろう・・・!」

リッカ『・・・疑心暗鬼・・・』

「もう騙されないぞ・・・!お前達人間は、弱さを盾にする卑怯ものだ!!」

『──なら、解ってもらうまでとことん付き合います!私達人間を、あなたに認めてもらうまで!!』



文「幻想郷にいないタイプの人間ですよね、彼女・・・なんだか、見ていて熱くなってきます!でも力勝負じゃ勝ち目は無いですよ常識的に考えて!どうしましょう!?」

早苗「力の限りに応援ですよっ!頑張れー!!頑張れー!!リッちゃーん!!」

温羅の声『紫!渡されたメダル、仕上がったぞ!』

「いいタイミング。残り一つの当てはある?」

『おう!悪酔いしたバカに効く、とびきりのヤツをリッカに渡してやってくれっ!頼んだぜ!』

紫「頼まれましたわ・・・失礼!」

早苗「あ、ちょっ!紫さん!?」



萃香「お前だけは、お前だけは絶対にぃ・・・!」

紫「お取り込み中に失礼。リッカ、技ではいずれ押しきられるわ。たまには力任せも大切。力には力よ!」

リッカ『無茶言わないでください!?か弱い乙女が鬼と力比べで勝てるわけないでしょ!?』

紫「勝てるのよ。その為の発明、その為の叡智。その為の絆なのだから」

『萃香メダル』『勇儀メダル』

「さぁリッカ。あなたの『力』で。あの鬼の悪夢を醒まさせてあげて。私の知る最強の『力』と一緒に!」

『温羅メダル』

『──!・・・はいっ!!』



『萃香メダル』『勇儀メダル』『温羅メダル』

リッカ『怪力乱神、此処に在り!!萃香ちゃん!勇儀さん!温羅ネキ!!』

『つるぺったん!』『体操着!』『我等の鬼神!!』

リッカ『行くぞォ!!えい!えい!応ぉおぉーーーっ!!

萃香『まかせろぉ!』勇儀『やるよ!』温羅『おぉっ!!』

ニトライザー『藤丸リッカ!グランド・レッキング・パワーッ!!

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