ラマッス仮面『大事な人に貰った仮面ラマッス。つけていても、まるで重さを感じない素敵仮面ラマッス』
セイバー「そのデザイン、かつて私が使っていたものに酷似しているのです。これは偶然でしょうか?」
『それは必然ラマッス。だってこれをくれたのは──』
セイバー「解りました。つまりあなたは・・・アーサー王のファンだったのですね」
『ファン』
「なるほど、それなら頷ける。獅子と言えば私、私と言えば獅子。力強い意匠と言えばライオンてます。もっと早く言ってくれれば・・・あ、よかったらサインなんてどうです?」
『サイン・・・ではこの色紙に・・・』
《・・・平和に惚けおって。我が至宝が我以外の王に執心などする筈が無かろうが、たわけ》
士郎「桜とライダー、イリヤに藤ねぇのも用意しなくちゃな。あ、ラマッス仮面。お代を受け取ってくれ」
『五万円』
『大金ラマッスよこれは・・・』
「いいんだ。わざわざ作ってもらえるんだ。宜しく頼むよ」
『これが・・・原初の主人公・・・』
《なんだこのはした金は。貴様ごとき雑種が我が至宝に献上など万年早いわ!本来貴様など、エアを拝謁する権利も》
(黙れぃ!!)
士郎「?どうかしたか?」
『脳内サミットでラマッス』
「脳内サミット・・・!?」
『それでは早速始めて行くラマッスよ。これはワタシがギ・・・何よりも誰よりも尊敬し愛する方に捧げるワタシの十八番。その名も古代メソポタミア、古代麦とラム肉のシチューラマッス。あ、古代麦は日本では売っていないのでインターネットで仕入れてほしいラマッス。レシピはこちらラマッス』
~古代小麦とラム肉のシチュー~
【材料】(4人分)
ラム肉 200g
エンマー小麦 50g
セモリナ粉 50g
にんじん 80g
クミン粉 大さじ4
コリアンダー粉 大さじ4
ミント 1枝
にんにく 1片
水 600ml
「聞きなれない食材がありますね。ラマッス仮面、このセモリナ粉、クミン粉、コリアンダー粉と言うものは一体?」
『順番に、パスタ等に使用する小麦粉の一種、カレーに使用されるスパイス、パクチーのスパイスでラマッス。パクチーは柑橘系の香りがグッドラマッスよ。それでは・・・シチューを作る前に作るものを用意するラマッス』
「作るもの?・・・もしかして、メソポタミア風のだし、とかか?」
『ご明察ラマッス。流石はいつか究極の一に至る彼の宿敵ラマッスね・・・(ズモモモ)』
(な、なんだか妙な決意を感じる・・・)
『そう、メソポタミアの文化とシチューの合一・・・生半可ではいけないラマッス。ワタシは毎日、これから始めるラマッスよ。レシピはこちらラマッス』
~メソポタミア風だし
水 1.2リットル
クレソン 50g
きゅうり 100g
フェンネル粉 大さじ1
クミン粉 大さじ1
『フェンネル粉はセリ科の多年草スパイス。甘い香りラマッスが特徴ラマッスよ。早速行くラマッス。───』
「ど、どうしました?」
『──ついてこれラマッスか(何故か見せる背中)』
「あ、あぁ!」
(・・・敵な筈がありませんね。こんな天然な御方が。私の直感もショウジキナイワーと告げています・・・)
~
『それでは行くラマッスよ。 まずはメソポタミア風だしを作るラマッス。鍋に水を入れて、ざく切りにしたクレソン、きゅうり、フェンネル粉、クミン粉を入れて水が半量になるまで弱火で煮込むラマッス』
士郎「何度も思うんだけど、この手順が何百年前にもうあったんだよなぁ・・・」
ラマッス仮面「何千年前、ラマッス。ここ大事ラマッスよ」
セイバー「ブリテンにはありませんね。ブリテンには」
『 だし完成ラマッス。では次はいよいよシチューラマッスよ。ラム肉、にんじんを一口サイズに切り、にんにくをすりつぶすラマッス。鍋に水を入れてラム肉、クミン粉、コリアンダー粉、セモリナ粉、エンマー小麦、にんにく、にんじん、ミントを入れて火にかけラマッス。火傷に気を付けるラマッスよ。ギ・・・敬愛の御方が常に傍で見てくれるラマッスが、今回はいないラマッスので』
「ミトンとか使うかい?」
『大丈夫ラマッス。ワタシは親友にいつも護られているラマッス。沸騰したらアクをとり、弱火で30分煮込む。適度にとろみが出てたら完成ラマッスよ。メソポタミアシチュー・・・彼が好きと言ってくださるシチューラマッス』
セイバー「おぉ・・・やりますねラマッス仮面。繊細ながらも、てきぱきとした手順。あなたは素敵な料理人だ」
『えへへ・・・はっ。い、いけませんラマッス。ラマッス仮面は褒められると嬉しくなってしまうラマッス』
士郎「よし、じゃあいただきますしようか。君も食べていくだろ?」
『もちろんラマッス。自分で味見しないものを出すのはメシマズの一歩・・・彼の友達が据わった目で言っていたラマッス』
「では、準備はお任せください。即座にやってみせましょう!」
「頼むな、セイバー」
~
『それでは・・・お手々を合わせて。いただきラマッス』
「「いただきラマッス!」」
完成させ、出来たメソポタミアシチューを口にする。ラマッス仮面は器用に口の部分を開閉し、シチューを運んでいる。
「おぉ・・・これはっ・・・!」
セイバーの目が感激に煌めく。とろりとした風味に彩られたシチューが口に運ばれた瞬間。自己主張し過ぎないながらも確かな暖かさと、優しく柔らかな風味が口いっぱいに広がる。かつて在った世界、文明に触れる実感を、適度な柔らかさのラム肉と野菜が口に運んでくる。気がついたら瞬く間に咀嚼し、幸福感に満たされながらスプーンを持つ手が勝手に二口目を運んでくる。味は濃いわけでなく、むしろ風味のみのやや薄味であるが、それが逆に食欲と食の堪能を狂おしく勧めてくる。食べる口と、よそるスプーンが止まらない。まさに、絶対食欲戦線バビロニアである。
「うん、とんでもない美味さだ!ラマッス仮面、君はこれを毎日誰かに作ってるのか?」
それに加え、毎日改良を加え、エアが見出だしたかつてのメソポタミアには無かった『胡椒』。これがこのシチューの旨味を何倍にも引き立てている。最古と最新の合体は、二人の舌をフルコンボしたのだ。
「もぐもぐ、もぐもぐ。はむはむ」
「はい。ギル・・・いえ、誰よりも敬愛する御方はこのシチューを毎日晩御飯の一品に選んでくれていラマッス。竜の肉を食べた日も・・・極上の魚を口にした日も・・・ワタシのシチューを食べてくれるラマッス。そして毎日言うラマッス。『遥かウルクを思い出す。こうでなくてはな』と。その言葉が、何よりも嬉しいラマッスよ」
「もっきゅもっきゅ、もっきゅもっきゅもっきゅ」
「その人、幸せものだな。毎日こんな美味しいシチューを作ってもらえるなんて。・・・いや、きっと違うな」
「?」
「あんたが作ったシチューが好きなんだよ、きっと。料理の最高の調味料は、『誰かに美味しく食べてほしい』っていう気持ちだからな。一口食べれば解る。このシチューは・・・食べる人を幸せにしたいって気持ちに溢れてるから」
「私もっきゅもっきゅそうおもっきゅもっきゅます。シロウのシチューに勝るとも劣らないシチューでもっきゅもっきゅこのシチューを振る舞えたなら、私も人の心わかりまくりの王の座をもっきゅもっきゅ」
「・・・最高の誉め言葉ラマッス。ギルはいつも、食べ終わったあと、ワタシを抱き寄せてくれるラマッス。その温もりがあったかくて・・・明日ももっと美味しく作りたいと思うラマッス。あ、アンデルセンさんもお気に入りラマッスよ」
「ギルにアンデルセン・・・外国の方なのかな?・・・いやまさか、ギルガメッシュの事じゃないよなまさか・・・」
「?」
「あ、ごめんごめん。こっちの話だ。凄く美味しいシチュー、ありがとう。今度ネットで食材、仕入れてみるよ」
「是非お願いするラマッス。・・・あ、セイバーさん、士郎さん。少しよろしいラマッスか?」
「?」
「はい、チーズラマッス」
パシャリ、とシチューを頬張るセイバーを写真に移すラマッス仮面。そしてそのまま、マスターたる士郎にもレンズを向ける。
「士郎さんも、はいチーズ、ラマッス」
「あ、あぁ」
「今度は二人一緒にお願いラマッス。はいチーズ」
ばしゃり、と撮られた写真を現像し、ごそごそと仕舞うラマッス仮面。不思議そうに、セイバーは尋ねる。
「シロウとのツーショットを・・・。いきなりどうしたのです、ラマッス仮面」
「メソポタミアの文化が誰かを幸せにした証が欲しかったラマッス。素敵な笑顔・・・一生の誇りにするラマッス。今度は家族全員で、食べてほしいラマッスよ」
「あぁ。絶対挑戦するって約束するよラマッス仮面。じゃ、最後は一緒に・・・」
「「「ご馳走様でした──!」」」
三人一緒に堪能した古代メソポタミアシチュー。皿洗いと、食材を扱っているメソポタミアサイトを紹介し、やがてラマッス仮面は旅立つ。
『今日は不躾にも関わらず、快く受け入れてくださりありがとうございラマッス。二人の間にある絆、とても素晴らしい事ラマッス』
「えぇ。シロウと私の前に敵はいません。ラマッス仮面、何か困った事があったならば相談を。ブリテンの王の名の下、必ずや力になりましょう」
「今度は俺にも御馳走させてくれ。気を付けて帰ってくれよな」
『ありがとうございました。・・・・・』
「?」
『──『ワタシ達は負けません』。それでは』
「えっ──」
瞬間、まるではじめから何も無かったかのように、何処にもいなかったかのように。ラマッス仮面の姿は消えていた。狐につままれたような気持ちで、士郎は首を傾げる。
「謎の多い人だったな・・・」
「ですが、悪人ではありませんでした。また、メソポタミア料理を振る舞ってもらいたいものです。・・・そして」
「そして?」
「彼女のメソポタミア料理をアレンジした、シロウの料理を・・・期待していますね」
「・・・あぁ。任せてくれ、セイバー!」
突然やって来て極上の料理を振る舞った謎の獅子仮面のシチューにより、より一層絆が深まった二人であった──。
「それでは、更におかわりを!」
「まだ食べるのか・・・!?」
富士山頂付近・ヴィマーナ乾板
エア「──ふぅ。確保しました!ギル!」
『幸せそうにメソポタミアシチューを頬張るセイバー』
ギル《でかした!実にでかしたぞエア!フッ、ブリテンのしみったれた食文化ではメソポタミアの素朴かつ雄大な味わいは堪えきれなかった様だな。我が至宝に胃袋を掴まれた貴様の姿、我がセイバーコレクションに加えてくれる!》
フォウ(コイツの願いはともかく・・・お疲れ様、エア!当然だけど大好評だったね!)
エア「うん!ギルと不倶戴天なのは運命なのかもしれないけれど、ギルも、彼女も、王として遺したものに優劣は決して無い。あなたが遺した文化は素晴らしい・・・そう言ってもらえて、良かったなぁ・・・」
ギル《我や友、獣専属であったエアのシチューを振る舞う栄誉を与えたのだ。雑種めは感涙に咽ぶが礼儀だが、贅沢は言うまい。この一枚スチルの笑顔の前に全て流してやろう。エアだからこそ引き出せた一枚故な。流石我が至宝よ!よくやった、エア!》
「お役に立てて良かったです!」
《──そして、だ》
「?」
《今日作ったものより、美味なるものを期待するぞ。我しか味わえぬ至高の味!至純の敬愛と共に我だけに捧げるがいい!よいな!》
「──はいっ!喜んで!」
フォウ(よぉし!じゃあ戻ろう!ボク達の時空へ!)
「うんっ!・・・」
『衛宮士郎の写真』
「──絶対、御機嫌王は・・・ワタシ達は負けませんから!」
決意と笑顔と共に、王達はガス爆発名物地、冬木市を後にした──。
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