霊夢「掃除、手伝ってくれてありがとね」
マスターアルトリア「一泊の恩は返すものですから。鍛練にもなりますし」
はくのん「起床が早い。判断も速い」
アイリ「男性陣はダウンしてるわ。まぁ大立回りだったもの、大目にみましょう?」
霊夢「王様御抱えだもの、文句は言わないわ。じゃ、早速──」
ゴッホ「行ってきまーす!」
デイビッド「すぐ戻る」
霊夢「あ、ちょっと!どこ行くの!?」
「ウフフフ・・・!向日葵畑です・・・!」
霊夢「向日葵畑・・・まさか・・・!?待ちなさい!ヤバイやつがいるのよそこには!」
「「「ヤバイやつ・・・?」」」
「フフフ、エヘヘ・・・!山の神社で見た通り、ここには向日葵がたくさん咲いていました。ゴッホアイは見逃しませんでした、はい・・・!」
『皆の旅路の印象に残るものを描きたい』そんな方針をデイビッドに伝え、一緒にやって来たゴッホ。其処は、太陽の畑と呼ばれる向日葵が咲き誇る幻想郷観光スポット。春がうららかな今ですら、沢山の向日葵が咲き誇っている優美な場所。其処にて、ゴッホはテンション高くマスターと一緒にやって来たのだ。マスターとはもちろん、デイビッドの事である。
「ゴッホといえば向日葵、向日葵と言えばゴッホだろう。画材が足りなければ仕入れよう。思うままに描き上げてくれ、ゴッホ」
「エヘヘ・・・エヘヘへへ・・・理解のあるマスターを得られて、ゴッホ有頂天・・・!描きます描きます!いっぱい描きます!それでは早速・・・!」
そうして、咲き誇る向日葵を見下ろす場所にてゴッホとデイビッドは座り、スケッチブックに描き始める。油絵の独特な筆遣いと、デイビッドの初心者故の筆遣いが共に晴天の幻想郷へと吸い込まれていく。
「ウフフ・・・まさかゴッホが皆に望まれて絵を描く日が来るだなんて驚きです・・・驚き過ぎて咲いちゃいます・・・!ゴッホ、ゴッホ向日葵・・・!咲いちゃいます・・・!」
「そうか。ところで気になっていたんだが。ゴッホは女性だったんだな。意外だった」
ゴッホと言えば、生前は評価を得られず、苦悩のままに世を去った画家であり、自画像はれっきとした男性である。実は女性であった・・・という話も逸話も無い。デイビッドはその凄まじい乖離に、少なからず面食らっているというのだ。ゴッホもまた、首を傾げる。
「そ、そうなんです・・・ゴッホショック・・・ゴッホは間違いなくゴッホなんですが、ゴッホはゴッホであり、それが女性であるのかというと首を傾げなくてはなりません・・・ゴッホシンキング・・・あ、エヘヘ・・・ゴッホゴッホ言っていますが、別に体調不良とかそういうのではありません・・・ウフフ、ゴッホ無問題・・・」
「女体化に近しい逸話にも覚えが無いのか。・・・なら、考えられる理由は一つだろう」
「えっ。マスターは思い当たる、当たる節があるんですか・・・!?ゴッホ聞いてみたいです。ゴッホトレギア(狂おしい好奇心)・・・!」
ゴッホですら思い当たる節が無いという女体化問題に、デイビッドは答えを示せると言う。デイビッド、心なしか自信満々にゴッホに告げる。
「人間は、隣の芝が青く見えるものだ。それと同時に、女性ならではの感受性、観点を知りたくなる時があるだろう。ゴッホは苦悩の果て、こう考えたのかも知れない。『女性になりたい』と。それが恐らく、後世における自らの理想の姿として形になった・・・そう俺は推測する」
「ハウッ・・・!?と、となると今の此処にいるゴッホは、ゴッホがなりたいと思った、『女のゴッホ』・・・!つまり、性転換の理想・・・!?」
ゴッホショックに目を見開くゴッホ、真面目に頷くデイビッド。突っ込み不在の恐怖。
「それが本当なら・・・わ、我ながら非常に気持ち悪い帰結なんですが・・・マスターは平気ですか・・・ゴッホがその、性転換狂いの変な画家であることに最低でもけ、契約破棄とか・・・」
「いや。・・・キリシュタリアが言っていたんだが・・・世の中は『可愛ければいい』らしい。ならば、今のゴッホはきっと『いい』のだろう。マスターとして、咎めることも不満もない。何せ、俺が初めて招いたサーヴァントだ。可愛らしいサーヴァントであるのは喜ばしい」
「ハウッ!?」
「それに、俺は幸運だ。希代の画家の新作を目の当たりに出来る機会に恵まれている。だからこそ、俺はお前を重宝する。自分からお前を冷遇する事も、契約を破棄することも無い。安心しろ」
デイビッドの迷い無い言葉に、わなわなと震えているゴッホ。無論動揺である。誉め殺しによる動揺・・・ゴッホカルチャーショックである。
「き、希代の希代の画家だなんてゴッホ持ち上げられ過ぎだって最後の絵も評価されるまでに一体何年そんなとんでもない評価をしてもらえるだなんてウフフフ、エヘヘ、ウフフフフ・・・」
「大丈夫か。笑いが漏れているが」
「大丈夫でっす!ゴッホ嬉しみによる大丈夫な大丈夫でないようなでも嬉しい・・・ウフフフ・・・!デイビッドさま!あなたの事を、マスターさまと呼んでよいでしょうか!よしとしてくれないと、ゴッホパッション・・・抑えきれないかもしれません・・・!」
「構わない。代わりに、お前の作品を傍で見せてくれ。だれよりも先に」
「ウフ、ウフフ、ウフフフ。エヘッ、エヘヘ、エヘヘへへへへへへへへこんなしょうもない画家の作品を真っ先に見たいだなんてウフフフこんな素晴らしい言葉と信頼に応えずして何がサーヴァントでしょうかお任せくださいお任せくださいゴッホはやりますやってみせますはい!はい!やります、やりますから・・・はい・・・!」
真っ当な信頼を捧げられ、若干ゴッホのテンションがおかしくなっていながらも、筆が乗りに乗りキャンパスに美しい向日葵の絵が描き上げられる。それは、歴史に名を残す稀代の名作家の一枚。そこには、青空に白い雲、虹のかかった向日葵畑。
「でで、出来ました!タイトルは、楽園の向日葵畑・・・!ウフフフ、デイビッドさまがわたし、ゴッホの尻を叩いてくださったおかげ・・・!どうぞ、どうぞ・・・お納めください我がマスターさま・・・!」
「ふむ。・・・俺の語彙力で言うなれば・・・俺には描けないという事だけだな。それほど素晴らしいものだ」
油絵で見事に描き上げられたそれは、鮮やかな黄色と青、七色と白の突き抜けるような清涼さを再現している。素人目から見ても、美しく素晴らしいとしか断ぜない秀麗な一枚だ。
「ウフフフ、エヘヘ・・・テオ見てますか、ゴッホは素晴らしい理解者に恵まれました・・・!もっともっと皆様にアピールします。戦闘以外でアピールします・・・!わたしにできることは、確かにあるのだと頑張ります・・・!」
ゴッホは嬉しげに筆を掲げる。一生分の肯定を受け、テンションがMAXになっているのだ。それは、彼との主従関係が良好になったことを如実に表している。デイビッドは余計な意志疎通を必要としていないが故に、意志疎通方法に若干問題あるゴッホとも良好な関係を築けたのである。
「よい絵だ。早速持ち帰って皆に見せよう」
「ハウッ・・・!ゴッホ展覧会・・・作品を増やしていけば夢にまで見た展覧会ワンチャンありなのかも・・・!ますますテンションゴッホMAX!ささ、早く次を描きましょう・・・!」
ハイテンションにデイビッドの腕を引っ張るゴッホ。それに頷き、立ち上がるデイビッド。博麗神社に向かわんとした二人の前に・・・
「──あら、こんにちは。一年中向日葵が咲く不思議な畑へようこそ。理性ある客人は歓迎するわ」
傘を差し、真紅の瞳を有し笑う、短き緑髪の美女。その笑顔を、二人に向ける。
「花を見れば散らしたくなる奴と、愛でる方。あなたたちは一体、どちらかしら」
その笑顔は柔和でありながら、笑顔が持つ本来の意味──威嚇。それらが醸し出すものと、なんら相違の無いものであり──
デイビッド「この地の管理者か?俺はデイビッド・ゼム・ヴォイド。マスターをやっている」
幽香「御丁寧に。私は風見幽香・・・妖怪で、この地に住むものよ。そっちは?」
ゴッホ「ゴッホです!・・・、・・・・・・」
幽香「ゴッホ・・・偉人の名前ね。先日から幻想郷が騒がしいのよ。だから此処にいる輩はまず疑っている訳。あなたたちも・・・」
「精霊・・・!」
「は?」
「あ、あなたは向日葵の妖精!なんてビューティー!ゴッホショック!あの、一枚、一枚絵を描かせてください!ぜひぜひ!是非とも!」
幽香「な、何よいきなり・・・いいけど、別に・・・」
デイビッド「助かる。何故ここにいたか、順に説明する」
ゴッホ「これは名作が増えてしまいます・・・ゴッホチャンス、エヘヘ・・・!」
ペースに呑まれ、威嚇のつもりがモデルにされた妖怪、風見幽香
幽香「・・・美麗に描きなさいね?」
「それはもう!」
身に置かれた絶体絶命の危機を回避した事に気付かぬ二人に、まんざらでもない幽香であった
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