人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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三人の女子がいた



仲良しで、いつも一緒にいて、どこに行くにも一緒でずっとずっと一緒が口癖でもあった

私もそう思ってたし、そう信じていた


ある時、クラスの人気者に二人が恋をした

二人は大層彼に入れ込んでいて、事あるごとに私に助力を求めてきた

私は別に興味は無かったので、さらりと男子に色々な話を聞いて、二人に教えた

私は応援していた。『どっちが勝っても恨みっこなしだよ』と笑っていた

――二人は仲が悪くなっていった

アイツより私の方が可愛い、アイツより私の方がお金持ってる。アイツより私の方が背が高い、アイツより私の方がスタイルがいい


アイツよりアイツよりアイツよりアイツよりアイツよりアイツよりアイツよりアイツよりアイツより

おかしいな、と私は思った。皆仲良しだったのに。どうして、と

なんとか懸命に取り持った。なだめ、すかし、向き合いながら二人を取り持った

二人が一緒の時は笑っている。いつもの皆だ

だけど別れると、アイツより私の方がという自慢が始まる


私は困った。どうすれば元通りになるんだろう?と

――そんな中、クラスの人気者が

私に告白してきた。オマエの方が可愛いから付き合ってやる、と

私にそんなつもりはなかった。二人が彼を好きなことは知っていたし、私なんかが彼みたいな人気者には相応しくないと思ったから

私より、二人の方が可愛い。だから私は断った

「ごめんね。私より素敵な人を見つけて?きっと近くにいるから!」

――その日から

その日から私は『男で遊ぶクソビッチ』として男の子達に指を指されバカにされ

その日から私は『抜け駆けした泥棒猫の性格ブス』として女の子に気持ち悪がられた


スポーツ万能、性格イケメンの逆恨みのやり返しだった

仲良くしていた筈の二人が流した噂だった


中学の学校生活

――私は、人間なんてそんなものだと思うことにした

生きるのが、面倒くさかった時代


黒髭、死す!グランドバトルスタンバイ!

「ぬふぅうぅう!しかしその時!黒髭の髭が金色とか銀色とかに輝き真なる力に目覚めるのであった!気分的に!!」

 

 

 

「黒髭、アレ身体に負担がかかるらしいよ?ヤバレカバレは死ぬよ?」

 

 

「マジでござるか!?じゃあフュージョン、ポタラ的なマジックチートがよろしい?リッカたん、黒髭とフュージョンする?」

 

「別にいいよ?私達が負けたらお好きにどーぞ」

 

 

「マジで!?マジで!!?天使!天使がおりますぞぉ!!ん!今なんでもするって言ったよね?」

 

「言ってないけどそれっぽいことは言った!うちの姉御に勝てるもんなら勝ってみせなよ!そしてマシュを突破できるならね!その後なら、煮るなり焼くなり抱くなり好きにしていいよ!」

 

 

「デュフフフwww大天使リッカたんの願い(ギアス)!確かに受け取りましたぞ――!!!」

 

 

 

 

「せ、先輩と黒髭氏が完全に意気投合しています・・・」

「見た目は可愛らしいのに、何がどうしてああなっちまったのかねリッカは・・・いや、アタシとしてはリッカは大好きだけどね。・・・玉に瑕ってこう言うのかぁ・・・」

 

 

盛り上がる二人と、呆気にとられる二人

 

 

 

「まさに絶対絶命、色即是空南無妙法蓮華経!ユリップルたちは倒れ!黒髭四天王はもはや二人を残すのみ!だがしかぁああし!!」

 

どっしりと胸を張り、m9ポーズを張る黒髭

 

 

「この黒髭、自慢ですが自分が負けることなぞ考えたことがないのですから!!」

 

「その心は!」

 

 

「だってそれが海賊!明日も知れぬ今日を懸命に生きる生き物であるからして!今が楽しければそれで万事よし!明日の事は、明日の自分に丸投げですぞ!」

 

「なるほど!」

 

「リッカたんも覚えておくでござるよ!『面白おかしく生きる』事に勝る宝はこの世にありませぬゆえ!ん?『覚悟』は『絶望』を吹き飛ばすだったカナ?デュフフフフフwww」

 

 

「うん!ありがとう、黒髭!」

 

「あっ・・・――尊い・・・」

 

 

黄金の粒子に還元されていく黒髭

 

 

「じゃあ・・・」

 

「うむ!」

 

 

「「グランドバトル!BGMスタート!!」」

 

『よぅし!行くよリッカくん!』

 

手動で流される荘厳なBGMが、決戦の雰囲気を盛り上げていく――!

 

 

「せ、先輩・・・」

 

「?」

 

「あ、あの黒髭氏に、とても仲良くできるのは、尊敬します・・・」

 

「?そう?・・・あー」

 

ポン、と手を叩く

 

「見た目とかで人の価値は解らないよ?生理的に無理とか、異星人とかじゃない限り、仲良くなるきっかけはどこにだって転がってる」

 

「先輩・・・」

 

「これ、オタク友達が私に教えてくれた生き方なんだ。この世にはたくさん楽しい事が広がってる。それをちっぽけな人間の感性で食わず嫌いするのは愚の骨頂、ってね」

 

そういうリッカの眼は、希望に満ちて空を眺めていた

 

「意思が通じるなら、神様とだって仲良くなってみせるよ!まぁそのせいで『泥棒猫』とか『八方美人』『偽善者』とか言われてきたけど気にしない!あと――彼氏はいませんでした」

 

澱んだ目で遠くをみるリッカ

 

 

「『お前は眩しくてそーいう目でみれない』とか・・・生暖かい目で『リッカは高嶺の華だよね』って言われてました。『お前は性別リッカだから』とか・・・」

 

 

「先輩!しっかりしてください先輩!」

 

 

「さぁてと!じゃあ殺し合うかBBA!」

 

「おうともさ!リッカに海賊の在り方を語るとは気に入った!相当気に入ったみたいだね!」

 

「いや当たり前でござろ?『オタクに分け隔てなく接する美少女』とか聖杯に願って作り出すレベルの竜種よりレアな生き物ですぞ?夢ですぞ?」

 

「ハッ!そうかい!だがアイツは今アタシの船の船員だ!奪い取りたきゃ、解ってるだろうね!?」

 

「無論ですぞ!BBAぶっちめて略奪!男は基本皆殺し!女は犯して慰みものに飽きたら部下にポイーの海賊道!誰かが持ってるお宝は力づくで根こそぎ奪うが黒髭道!!や、まぁ実際は殺しまくっちゃ市場成り立たなくなるからリクルートしたりしてましたけどね?」

 

「その通りさドサンピン!人助けも人殺しもどっちも同じロクデナシ!勝ったもんが偉いってのが海のルールさ!」

 

2丁拳銃を回し、高らかに歌い上げる星の開拓者

 

 

 

「来な!アタシの100年後に生まれる大海賊!あんたの正義、悪魔のヒールで踏みにじってやるよ!!」

 

「~やだ。BBAカッコいい・・・拙者が女だったら股びしょびしょにしてCG解放されたに違いない・・・地味に差分作るの面倒くさいよねアレ!」

 

 

「断面図差分と台詞差分は絶対必要!!エロさが8割違う!!」

 

 

「わ か り み !!もうぶっちゃけ何がなんでもリッカたんが欲しいですぞ――!!」

 

 

『マシュ!リッカの口をふさいで!なんというか、もうダメ!ギルがくるまえに早く!』

「先輩ステイ!ステイです!」

 

「むぐぐ(恐ろしくはやい口封じ。私じゃなきゃ見逃しちゃうね)」

 

『リッカくん・・・残念美少女とか最高じゃないか・・・』

 

 

「ほしけりゃ奪いな!この海の宝に所有者はいない!全てが全て早い者勝ちさね!!」

 

「ヘッ、そうでなくちゃそうこなくちゃ!海賊らしい理論結論!やっぱりBBAはそうでなきゃ――」

 

 

――これより始まるは略奪と略奪。意地と誇りをかけた大一番――

 

「――とは、ならないんだよねぇ残念な事に」

 

刹那

 

 

「――えっ?」

 

 

貫く、けして刃こぼれせぬ無双の槍が

 

 

「な――」

 

 

「ゴガッ――!?」

 

 

――黒髭の胸板を、完璧に貫通していた

 

 

「エドワード!!」

 

 

「ありがとよ、マスターの嬢ちゃん。お前さんのおかげで漸く隙ができた」

 

「――く」

 

 

「いやぁ、よっぽど相性が良かったのかな?だがオジサン的忠告させてもらうなら・・・やめといた方がいいよ?」

 

吹き出る鮮血

 

 

「テメェ、仲間を――!!」

 

 

「黒髭――!?」

 

 

――トロイアの大英雄が、牙を剥いた瞬間だった




色んな習い事をした



プール、書道、ピアノ、英会話


色んな花丸をもらった

体育、テスト、勉強、通信簿


そうすると、父さんと母さんが誉めてくれたから

「お前は自慢の娘だ」
「⬛⬛⬛は天才ね」

そんな二人を見るのが嬉しくて、一生懸命頑張った

なんでも出来たから、なんでもやった

習い事は増えてくし、内容もハードになっていくし、どんどんどんどん大変になってくどんどんどんどんどんどん大変に大変に大変に大変に大変に大変に


当然身体を壊した。熱を出してうなされた


二人はつきっきりで看病してくれた

「なおったらまた頑張れ」
「あなたならできるから」

治ったらすぐに、習い事が再開された

たくさんの習い事、たくさんの勉強、たくさんの習い事、たくさんのたくさんのたくさんのたくさんの

「お父さん、おかあさん。ごめんなさい。もう、私にはできません」

そんな弱音を、吐いてしまった

――習い事は全部辞めた。勉強も体育も、お父さんとおかあさんは私に何も望まなくなった


「そうか、できないならしょうがないな」

「あなたに期待してごめんなさい」


お父さんとおかあさんは、口をきいてくれなくなり、私を『大切』に育ててくれた

――小学生の記憶


私は、絶対に弱音は吐かないと決めた

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