慧音「いいか?きっちり一緒に行動するんだ。先走ってはならないぞ。いいな?」
チルノ「わかってる!任せろ!」
キリシュタリア「というわけだ。所長、そして王であるあなた達だけには、報告を」
オルガマリー『把握したわ。リッカも今、別件で手が離せないから・・・気を付けてね、キリシュタリア』
ギル『オルガマリーと志を同じくする当主の力、存分に振るうがいい。──』
「御機嫌王、何か?」
『いや、恐らくこの騒動・・・根は恐らく今から対峙する者が終着となろう。今、我等がマスターが挑んでいる騒動は、その枝葉だ』
「こちらが本命であると?」
『確証は未だ持てんが、この手の勘は当たるものだ。──精々呑まれぬ様気を付けよ。深淵、虚無といったものを迂闊に覗き込めばどうなるか、思い知りたくなければな』
「・・・最大限に注意しましょう。いいかい、イニス?」
イニス「は、はい!」
キリシュタリア(・・・一体、何が待つと言うのだろう。御機嫌王に其処まで言わせるものとは、一体・・・)
「此処が、協力者達が見出だした天邪鬼の住処、か。どうせなら、もっと穏やかな時分に訪れたかったものだね」
イニスと共に、キリシュタリアは件の天の邪鬼、正邪のアジトの前に立つ。そこは幻想郷に聳え立つ山々の麓、人は勿論妖怪も易々と寄り付かない無銘の地。其処に、幻想郷転覆を企む少女がいると言うのだ。
「います・・・。探知のルーンに該当。シャドウ・サーヴァントの気配が多数・・・」
「くるまのみち?関係無いな!あたいの進むべき道はあたいが決める!悪いやつはぶっ飛ばすぞぉ!」
サーヴァントを有するチルノと協力し、キリシュタリアはイニスと共に単独で制圧、攻略に臨んでいる。無闇に討伐チームを結成すれば、それを嗅ぎ付け素早く雲隠れしてしまうが故の少数精鋭、電撃作戦。朝飯前ならぬ昼飯前に終わらせなくてはならない。
「では、行くとしよう。私のイニスに、君のブリュンヒルデ。遅れなど取る筈もない。──では」
「おぉ!さいきょーの力!見せてやる!!いけー!ぶりー!」
「はい、マスター・・・焼き尽くしますので、私の後ろに。溶けてしまいますから・・・」
「トライデント・・・与えられた祝福に偽りは無い。海神の力があれば、少しは・・・!」
【【【【【【【!!!】】】】】】】
湧き出るシャドウ・サーヴァント達。一人の当主、一匹の妖精。そして二騎の誉れ高き英雄達による電撃作戦が幕を開ける──!
~精鋭達戦闘中・・・
【ひゃっひゃっひゃっひゃっ・・・ひゃっひゃっひゃっひゃっ・・・】
洞窟の奥深く。光も射さぬ虚無の深淵がごとき暗闇に、無邪気とも言える不気味な笑い声が響き渡り続けていた。何かを笑っているような、それでいて感情の揺らぎと言うものが感じられない笑いは、言いようもない不気味さを感じさせる。
【いいぞ、私は見たいんだ。ひっくり返しても、ひっくり返しても何も無い未来を私は見たい・・・だからお前をもっともっと使いこまなくちゃいけない・・・もっと見せてくれ。あの暗い暗い穴のような黒を。何処まで行っても、何処まで行っても何にもないあの底無しの真っ暗闇を・・・ひゃっひゃっひゃっひゃっ・・・】
その少女は虚ろに笑いながら、手にしたコップ大の器を満足げに眺める。それは虚無を見つめるように虚ろであり、また、大願成就を成し遂げる信徒の様に決意や陶酔が満ちている。
【皆気づくんだ。世界の本当の姿を。この世界には綺麗も汚いも、正義も邪悪も表も裏もない。何も、何も無いという事を。・・・もっと見せてくれ、私のアイテム。あの素晴らしい、素晴らしい世界の姿を・・・】
少女は黒髪に白と赤のメッシュが混在した頭に、小さな二本の角を持っている。瞳の色は赤色。服装は矢印がいくつも連なったような装飾がなされているワンピースの改造服で、腰には上下逆さになったリボンが付いている。足元は素足にサンダル履き。右腕にのみブレスレットを付けている。そして、ひたすらに表情は虚ろでありながらも、目は何かを、何処かを見ている。あるかも解らない何処かを。彼女こそは──
『失礼、君が鬼人正邪・・・危険な思想犯で相違無いね?』
瞬間、轟音と閃光が薄暗き洞窟に満ち充ちる。不慮の乱入に顔をしかめながらも、その姿を垣間見る正邪。
【ん・・・誰だ。誰とも逢う約束なんてしていないが・・・】
『それは申し訳ない事をした。だが心配いらない、きっと君は誰とも会わずに済むようになる。牢獄かお仕置きにかかりきりになるだろうからね』
そして現れしは──白と蒼、銀色のギリシャモチーフの鎧に身を纏った絶世の美男子。水の流、雷の偉容、そして星の輝きを形にしたかのような鋭角的なマント付きフルプレートアーマーにヴォーダイム一族秘伝の礼装の杖を持つ神、或いはその劵族たるがごとき偉容を示す礼装『オロチ』を纏いし、彫像のような存在感を放つ、グランドマスターが一人。キリシュタリア・ヴォーダイム。
『初めまして。私はキリシュタリア・ヴォーダイム。君を確保、逮捕するためにやって来たといえば解って貰えるかな。虎の子のシャドウ・サーヴァント達は私の頼もしい仲間達が対処してくれている。素直にお縄につくことを提案しよう。どうかな?』
【・・・・・・】
虚ろな目が、キリシュタリアを捉えた瞬間。彼女が所有する器がきらりと輝き、其処から無数の霧と靄に包まれた不明の存在が湧き出てくる。それがなんなのか、語るまでもない。
『シャドウ・サーヴァントか。あくまで抵抗するのかな?悪手だ、君の罪が重くなってしまうよ』
【ひゃっひゃっひゃっ】
一斉に襲い掛かるシャドウ・サーヴァント達。背後で魔力の励起が起こっていることを仲間が戦闘中であることを確認し、自己対処すべく礼装を構えるが──
「キリシュタリア、ご無事ですか!──はっ!」
キリシュタリアより早く、敵を逆巻く海流が襲う。水無き場所であろうと、海神の祝福は健在と示す槍。それこそがトライデント。それこそが、彼女。イニスたる存在である。
『君が優秀であるから、私の立つ瀬がないな。直接戦闘になる危険性、問題なくクリアできそうだ』
「えぇ、ですが油断はなさらないように。・・・対象を発見。速やかに確保に移りましょう」
イニス、キリシュタリアは確かに正邪を追い詰めた。逃げ場の無い袋小路に。追い詰められた形となる正邪は、そんな様子をただ見つめている。
【・・・・・・・・・・・・】
『もう一度言わせてもらうが・・・投降を勧めておくよ。私としても、見目麗しい少女を無闇に傷付けたくはない。規則に乗っ取り、悪事を止め罪を償うべきだ』
キリシュタリアの言葉を聞き、ゆらりと立ち上がる正邪。まるで生気を感じられないそれは、見るものに根源的な恐怖を撒き散らす程に不気味極まる。
(・・・なんでしょう、この感覚は。彼女は今そこにいて、話している。確かにそこにいる筈なのに・・・)
そう。其処に存在している筈である筈の気概、存在、気迫、生命・・・それらの全てが、目の前の少女からは【感じられない】。其処にいながら、まるで存在すらしていないかのような・・・まるでそれは、空間に穿たれた穴のような有り様。
【ひゃっひゃっひゃっ・・・私はとびきりのアイテムを手に入れた。それらは私に見せてくれたよ。正義も悪も、そして正も邪もない本当に正しき世界の姿を。知りたいか。知りたいのなら、教えてやろう】
手にせしは不気味に胎動する──聖杯。万能の願望機である聖杯、その欠片が今、彼女に何か恐ろしい作用をもたらしていること・・・一目瞭然である。
【表も裏もない世界をつくるには、どうすればいいと思う?】
「え・・・?」
【私は見た。その世界を垣間見た。その世界には何も無い。何も無いからこそ・・・全てを呑み込むような底無しの魅力があった。私はもたらしたいんだ。あの世界を此処に、何も存在しない、表も裏もない究極の、空っぽで、むなしくて、それでいて美しい──】
『・・・!──イニス!』
【──虚空の終焉を。ひゃっひゃっひゃっひゃっ。ひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ】
キリシュタリアがイニスに駆け寄ったと同時に、辺りに満ちる異様な怪音波。讃美歌のような、無茶苦茶に鳴らされた鐘のような出鱈目なメロディ。歴戦のサーヴァント、そしてグランドマスターですらも、耳を塞がずにはいられない不協和音。
「あぁあぉあぁっ・・・!?」
『ぐうっ!これは・・・!?』
【もうすぐ見せてやる。お前達に裏も表もない素晴らしい世界を見せてやる。楽しみにしているといい。そして──】
様子のおかしい正邪の姿が、存在が薄まっていく。限り無く零に、何も存在しない無へと消えていく。
その存在が、最後に残した一言は。
【──美しき終焉は、お前達が導くだろう。楽しみにしている。ひゃっひゃっひゃっひゃっ。ひゃっひゃっひゃっひゃっ・・・】
虚空より放たれる、存在しないかのようにゆらめく──寒々しき呪詛であった──
キリシュタリア『っ・・・美しき、終焉・・・?』
(先の状態、聖杯の欠片が異常な反応を示していた。言動からして恐らく彼女は、 『裏表のない世界の実現』を願ったのだろう。其処で彼女は【何か】を見た。いや、見てしまったのか。見てはいけない何かを)
チルノ「なんだ今の!?大丈夫か!?」
ブリュンヒルデ「突如、消失しました・・・これは一体・・・?」
キリシュタリア『すまない、取り逃してしまった。・・・情報を整理したい。一旦戻ろう。イニス、大丈夫かな?』
イニス「・・・あ、あぁ。クソッ、頭がクラクラしやがる・・・」
キリシュタリア『?イニス?』
「あぁ?大丈夫だってんだろ。心配性かよテメ、ェ・・・『え、えぇっ・・・?』」
「・・・反転、している・・・?」
イニスではなく、本来の『カイニス』が表側に。虚空に魅入られしものは、更なる混迷を幻想郷へともたらす──
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