キリシュタリア「リッカ君、無事だったかい?流石は我々のリーダーだ、たくましい!」
リッカ「えへへ、皆の力あってこそだよ!キリシュタリアも、何かあったの?」
キリシュタリア「あぁ、聖杯の欠片を悪用する輩と出会ったよ。もしかするとその存在が、とてつもない悪事を働こうとしているやもといった事態でもあると伝えに来たんだ」
リッカ「本当に!?イニスさんは大丈夫」
キリシュタリア「おっと、それは後で!後でね!」
「?????」
ペルセポネー【あなたヘカテーのニンフでしたわね!?何を他人に迷惑ばかりかけておりますの!?バカなのですの!?】←ヘカテー(幻想郷における三界の女神)の上司
クラウンピース「ごめんなさい~!すみませんでした~!?」
イザナミ『因幡ちゃんは何をしていたもう!?あなた鮫さんにいたずらしてそれはそれは痛ましい事になっていたでしょもー!?』←日本の元締め
てゐ「なんで大おばあちゃんがここにいるのさー!?ひぇー、ごめんなさいすみませんでしたー!?」
うどんげ「これでよし、ごめんね、うちのバカ兎が・・・」
【プルプルプルプル】
?「レイセン?皆を招いてくださる?」
「は、はい!では皆さん、私のお師匠様がお呼びです!」
早苗「あぁ、あのヒートトリガーさんですね!」
文「???」
「お師匠様!ただいま戻りました・・・!」
迷いの竹林を突破したリッカ達は無事に竹林の奥にある薬屋、永遠亭へと至る。感銘と共に帰還報告を告げるうどんげを、その者は迎え入れた。
「えぇ、よく諦めなかったわね。偉いわ、流石は私の弟子にして雑用・・・皆様も、本当にありがとうございました。私が彼女のお師匠をしております、
赤と青に綺麗に分割された衣装に身を包んだ、物腰柔らかな女性、永琳。薬屋をひっそりと営んでいる彼女ともう一人は、とある秘密を抱えた幻想郷への来客でもある。
「は、はい!私は藤丸リッカ、サナちゃんと文さんに力を借りつつ幻想郷探索を続けている者です!御会いできて嬉しいです!」
「存じているわ。この度は本当にありがとう。弟子が御世話になった御礼・・・といってはなんだけど、今起きている事態への協力は惜しみません。──では、早速始めましょうか。今、この幻想郷に起きている事態の整理を。そして、出来うる限りの対策を。今回の異変は、非常に入念な情報の共有が不可欠なのですから」
神妙な表情を以て、永琳は語る。幻想郷に迫り寄っているのは、虚無と終焉をもたらす思惑だと言う事を彼女は告げる──。
─少女作戦会議中・・・
「まず、竹林の管理者である兎、てゐが所持していた石の様な生物・・・ぶるりんと呼ばれていたあれは、宇宙において非常に重要な意味を持つ存在です。あの生物は宇宙の不条理、理不尽を受け止める為の要石、歪みを引き受ける役割を担っている生物なのです」
永琳の説明は、かの怪獣は宇宙を成立させるための不可欠な存在、あらゆる宇宙の不条理を受け止める為の要石たるものとの説明が成される。文字通り、宇宙のバランサーであるというのだ。
「その存在は決して排除すべき害ある存在ではなく、むしろ重宝、或いはあるべき場所へと戻すべきもの。宇宙に不可欠な歪み、要石たる存在を砕いてしまうと一体どうなるか・・・」
【要石であるブルトンを砕いてしまえば、文字通り宇宙の不条理に堪えきれずその場所に【孔】が空く。生物が生きる世界に空いた孔・・・其処から出てくるものは全くの無。虚無そのものの存在。空間に空いた孔が形を成し、全てを呑み込む終焉が始まる】
モニターウィンドウに現れしは、外なる宇宙に住む邪神ニャルラトホテプ。彼もまた、深淵に生きるもの。そして、深淵と虚無は極めて近しいもの。故にその全容を把握しているが故に情報を提供する。
【その孔の名は【グリーザ】。生命ある場所に赴き、全てを虚空に呑み込む超危険怪獣でね。観測される限り、星は最低三つ程度滅んでいる。私の知り合いも無そのものはどうにも出来ないと静観を決めるほどの厄介者だ。私もメダル生成には苦労したからな・・・】
虚空怪獣グリーザ。宇宙の孔とされる全てが無である存在。其処に意思や理性はなく、唯生あるものを無に還す為に行動するとされる宇宙の不条理の化身。
「それが今、この幻想郷で招き入れられようとしている。聖杯の欠片を手に入れた天邪鬼により、その準備が行われている様だ。聖杯の欠片を使い、ブルトンをこの幻想郷に招き入れた事からも間違いない。私とイニ・・・カイニスが交戦しそれは確信の後押しとなった」
「大方聖杯の欠片で粋がったガキが見ちゃいけねぇもんでも見たんだろうぜ。だから過ぎた力は破滅を喚ぶってんだ」
不機嫌そうに鼻を鳴らすカイニス。・・・リッカからすれば淑やかな女性であったイニスの突然の豪傑化に目の白黒が止められない事態である。
(何があったのキリシュタリア・・・?彼女キャラ違くない・・・?)
(むしろこちらが本来のカイニスなんだろう。イニスはポセイドンに乱暴を受ける前の・・・)
「おいてめぇら!こそこそ話してんじゃねぇ!」
「「はいっ!?」」
「それではつまり、指名手配犯の天邪鬼は、その宇宙の孔を幻想郷に空けようとしているんですか?それは一体何故でしょう?」
文の問いに答えるカイニス。乱暴にはなったが、粗暴という訳ではなく律儀ではあるのだ。
「さぁな。だが、天邪鬼ってんなら願ったんじゃねぇのか?大方、裏も表も関係ねぇ世界ってヤツをよ」
「成る程!裏も表も全部吸い込んで無くしてしまえば確かに表も裏も無いですね!ってそれ、全部無くなるの前提のとんでもないお願いじゃないですか!?」
【知的生物と言うものは、解らないもの、本当になにもないというものには対応できないものだ。私達邪神とコンニチハして発狂する探索者をはじめとしたサンプルケースのようにな。聖杯といっても欠片の作用・・・真の虚無をその目で覗いてしまった可能性が極めて高い。故に今の天邪鬼は、虚無に魅了されてしまっている状態なんだろう。それが願いの遂行と相まって、とんでもない企みになっていると言う有り様なんだろうよ】
「このまま事態を放っておいてしまっては、幻想郷全てが無へと呑み込まれ、博霊大結界が破壊されたと同時に地球が終焉を迎えてしまうでしょう。──今、幻想郷はもちろん・・・この星、地球は危機的状況に追い込まれているの。だから、私はカルデア、そして幻想郷の力を合わせこの問題に対処すべきと提案するわ。・・・カルデアのグランドマスター達、力を貸しては貰えないかしら」
永琳は頭を下げた。それほどに恐ろしい相手、それほどに不条理な相手である事は、幻想郷でも指折りの叡知を持つ彼女の態度が雄弁に示している。
「リッカ君、君はどうしたいかな?私としては、答えは一つだと感じているけれどね」
「勿論。当然力を合わせます!サナちゃんの見つけた安住の地、そして紫さんと温羅が護ってきた楽園・・・絶対壊させない!」
キリシュタリア、リッカは即座に協力を受諾する。元々聖杯の欠片を求めてやって来た事態、見て見ぬふりなどする理由は何処にも無い。力強く頷く二人に、満足げに永琳は頷く。
「ありがとう・・・。この問題は、力を合わせて挑むべき大異変だと私は考えています。手段はあればあるほどいい。・・・早苗ちゃんに、天狗のあなたも協力してはもらえないかしら」
「それは勿論です!虚無なんだかハムなんだかよくわかりませんが、幻想郷は私達の生きる場所!」
「宇宙の孔、それに立ち向かう少女達・・・最高のスクープじゃありませんか!断られても御一緒させていただきますよ勿論!」
「わ、私もやります!なんだか他人事では済まなさそうですし・・・出来る限りで!はい!」
【相手が相手だ、取れる手段は多い方がいい。・・・楽園には私が伝えておくよ。勿論、今やっている余興が潰れないよう細心の注意を払ってね】
一同の心が一つになった事を感じ、安堵の息を吐く永琳。それほど迄に、虚無そのものは恐ろしいものであると彼女は知っていた。
「本当にありがとう。・・・実はこの問題は、かつて私達が住んでいた場所にも決して無関係ではないの。・・・そう、月の民にとっても」
「月の民にとっても・・・?」
「えぇ。・・・月の都はかつて、裏と表で繁栄を極めていた。だけど今は、結界を隔て月の裏側にのみ居住している。その理由はただ一つ」
「──表側を、グリーザが・・・滅ぼした・・・?」
沈痛に頷く永琳。それは、かつて月に現れた虚無が、月の半分を滅ぼしたという事実──
永琳「・・・月の都は、地球より遥かに進んだ技術を持っています。その発展は傲慢を呼び、その傲慢は宇宙の理という禁忌に触れた。かつての月の民達は宇宙を自らの思うままにせんと、人工的に宇宙の道理をコントロールする生物を作り上げた。──けれど、無限に広がる宇宙を手中に納めんとするには、月の民ですらも不足していた。作り上げた生物は程なくして砕け散り、月の表側に小さな、ほんの小さな穴が空いてしまったの。そして現れた虚無そのものに・・・月の表側は、全て吸い込まれてしまった」
リッカ「───」
永琳「月の民は大慌てで結界を作り、裏側に逃げ込みました。ほんの少し、ほんの少しの孔はやがて自主的に閉じたとも、通りかかった光の使者に閉ざされたとも聞きます。・・・解っていることは一つ。その虚無は、月の民ですらどうしようもなかった。・・・即ち、この幻想郷にグリーザが現れたら、どうする事もできない」
?「だからあなたたちが必要なの。外からの来訪、可能性を持つ皆様の力が・・・」
キリシュタリア「あなたは・・・?」
蓬莱山輝夜「こんにちは。わたしはかぐや。その月の・・・えらーい人よ」
虚無へ立ち向かう事を決めた一行の前に突きつけられた情報。それは、月の二の舞を防がんとする賢者の願い──
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