人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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『──聞こえますか。聞こえますか・・・地球の方・・・私の声が、聞こえますか・・・』

はくのん「地球人じゃ無いです」

『えっ?あ、そ、そうなんですか?やだ、私てっきり・・・こ、コホン。やり直します』

「どぞ」

『聞こえますか・・・聞こえますか、地球人ではないけど地球にいる方・・・私の声が聞こえますか・・・』

「どちら様ですか」

『え、あ、はい。・・・私の名はフィリア。惑星Oー50のわっかさんから力を授かったウルトラウーマンです・・・今はその、何もない孔の中に光の粒として意識が漂流しているんですけど・・・』

「私は・・・フランシスコ・ザビエルです」

『変わったお名前なんですね・・・わわ、じゃなかった!えっと・・・ピンチなんです!今、非常にピンチな地球です!』

「なんて?」

『詳しく説明したいのですが、肉体が無いので意識をほわわんと飛ばすのがせいいっぱ・・・あぁ消えちゃう、消えちゃう・・・!その、月に、月に来ていただけますか~・・・!そこでなら、多分、なんとか、説明が・・・!』

はくのん「月」

『待ってますからね~・・・ね~・・・ね~・・・』


博麗神社

はくのん「ふぁ」

霊夢「どしたの、むにゃむにゃ言いながら寝てたけど」

「ウルトラウーマン・・・の夢」

「は?」

「現実かもしれない」

「は?」

紫「こんにちは」

「は?」

「霊夢、準備なさい」

「は?」



博麗霊夢という少女

「特訓よ」

 

「は?」

 

博霊神社に開口一番紫が現れ、霊夢に言った五分前の言葉がこれであり、そして行われる結界生成特訓。その特訓はまさに本格的な実戦形式そのものであり、賽銭箱に浮かれていた霊夢の気を叩き直すものであった。急にスパルタめいた特訓を訳も解らずやらされ、霊夢自身も困惑しているが・・・

 

「何よ急に結界精度の強化メニューとか言い出しちゃって!?今回レクリエーションじゃ無かったの!?いきなりなんなのよ本当にもー!?」

 

「今、お客人の皆さんが取り組んでいる事態・・・最終的にはあなたの力も必要になる案件よ。いえむしろ、最終的な目的達成にはあなたの力が必要不可欠になる」

 

【プルプルプルプル】

 

「因幡ウサギから預かったこの宇宙の要石・・・これを貴女に護ってもらう。それだけではなく、人を完全に外界から護る移動式の結界を張れるようになってもらいたいの。大丈夫、あなたなら出来るわ」

 

「は、話が全然見えないんだけど・・・わわっ!?」

 

「集中するのよ霊夢。彼は繊細だから驚いて貴女を時空の果てまで飛ばそうとするわ。自身を護る結界を構築なさい・・・!あなたなら可能よ。博霊の巫女はそういう存在なのだから!」

 

「期待と課題だけじゃなくて現実の話もしなさいよ!?あとさらっと何怖い事言ってる訳!?あぁもう、今の私が機嫌良くて良かったわね!王さまに感謝しときなさいよ!?」

 

そんな無茶ぶり特訓にも、なんと霊夢は対応してみせる。まず、ブルトン自体に結界を張り鎮静を計り、四次元に歪んだ空間から自身にも結界を張り『切り離す』。そうする事によって、結界の内側の存在である自分がどんな環境でも行動を可能にする。

 

「少し言っただけで完璧に術を行使できる・・・流石は楽園の守護者にして門番。あなたは天才よ、霊夢」

 

紫からしてみても期待以上の働きで、手放しの称賛を行う程の成果である。そう、彼女からしてみれば霊夢はこれくらいできる、してもらわなくては困るのである。

 

(・・・霊夢は博麗の現代の巫女。その手法は結界と夢想に特化している。彼女が有する空を飛ぶ、という能力はあらゆる事象、道理、物事から『浮く』という事。彼女なら、何も存在しない虚無という存在にも動じることなく戦うことが出来る筈・・・)

 

様々な異変を解決してきた霊夢は、紫のお気に入りでもあり大切な戦力である。今回訪れるであろう虚無そのものですらも、彼女ならば物怖じせず動揺せず本来の役割を果たすことが可能であると紫は判断した。そしてその得意の性質と手段もまた、今回の事態には必要不可欠であると。

 

(虚無の孔に、万が一直接戦闘し、直接戦闘する部隊の誰かが呑み込まれてしまわないように結界で護ることも出来る筈。・・・虚無の孔自体の封印は避けられずとも、最悪の事態は防げるわ。彼女がいてくれたなら・・・)

 

最悪の事態、それは虚無に誰かが完全に取り込まれ、乗っ取られてしまう事。完全なる意味消失を防ぐための無と有の分断、それを成すことが出来るのは、結界を得意とする霊夢だけであると紫は判断、確信したのである。

 

「・・・・・・何よ。そんなにヤバい訳?王様達の集めてる欠片の事件。集めたらとんでもない化け物が出てくるから、そいつに食べられないよう皆を護る結界を張ってほしいとかそんな感じ?」

 

「!・・・相変わらず鋭いのね」

 

そして霊夢は非常に勘がいい。異変解決という後手に回らざるを得ない行動から華麗に勝利を納めてみせるのは、この天性の直感にて的確に物事の本質を見抜くからである。今回の事態の全容も把握してはいないが、彼女の言葉は自身に求められた期待の本質を理解した発言を紫にへと投げ掛けた。

 

「そりゃあ解るわよ。客人の皆の数人はわたわたしてるし、あんたも真顔で特訓する何て言い出したらなんかあると思うのが普通でしょ。勘っていうか、ちょっと頭の体操すれば解るわよこんなの。賢者さまらしくない会話の手落ちね、紫?」

 

そして、なんだかんだで紫と霊夢は付き合いが長い。彼女に対し、そうそうイニシアチブを取ることは出来ないのである。紫は観念し、問いに答える。

 

「・・・予想通りと言って構わないわ。今幻想郷に、未曾有の存在が現れようとしている。それは今いるお客人と、私達の力を合わせて取り組まなければならない問題なの。いつものあなたの事だから、面倒くさいなんて言われたらたまったものではないからついこう、いい感じに勢いで流せないかしらって・・・」

 

「なんでこう、頭のいいやつってたまに言い様の無い馬鹿を晒すのかしら・・・頼み事するならまず仔細と報酬と何をしてほしいのかと報酬と報酬を説明するのが筋でしょーが!あなたが困ってるから助ける!なんて即答するお人好しが其処らにいる訳無いでしょ普通に考えて!」

 

「・・・・・・幻想郷ではいないわね・・・確かに・・・」

 

「そこ納得するのも妙に腹立つけどそれはまぁいいわ。・・・説明しなさいよ。協力してあげるから」

 

紫、霊夢を二度見する。無理もない。あのひねくれもので暢気な霊夢が二つ返事という天変地異。明日はきっと要石が落ちるのだろうか。

 

「幻想郷だけの問題ならいつも通り嫌よ面倒くさいで終わらせるけれど、今は幻想郷に来るのを楽しみにしてくれた人達がいる。こんなろっっっっっっっくでもない場所を楽しんでくれる人達がいる」

 

「何で溜めたの(半ギレ)」

 

「事実でしょ(半ギレ)・・・だから、私はせめて、来訪してくださった方達には満足して帰ってほしいと思ってるのよ(ここで霊夢歩き出す)」

 

「霊夢・・・」

 

「(賽銭箱開けてうっとり)どうせ来てもらったなら、また来てほしいじゃない。また来たいなって思ってほしいじゃない(もう一回開けてうっとり)。だから、お客人を護る為の備えなら喜んでやってあげるわ。それが幻想郷を護るって事よ。物理的ではなく名誉、そしてネームバリューって奴をね!(チラ見)」

 

「・・・・・・」

 

あぁ、賽銭箱をいっぱいにしてくれる上客を逃がしたくないのね・・・そんな真理に紫がぼんやりと至る中、やる気に満ちた霊夢が意気揚々と拳を鳴らす。

 

「さぁそうと決めたらかかってらっしゃい!矢でも鉄砲でもマスタースパークでも弾く結界を見せてやるわ!四千年に一度の霊夢の本気はそりゃあもうすごむぎゅっ!?」

 

【プルプルプルプル】

 

「あら・・・霊夢が金塊に埋もれたわ・・・ブルトンが想いを汲み取ってどこからか用意してくれたみたい。良かったわね、生き残れたなら貧乏脱却よ♪なんとしても生き延びましょうね」

 

「ま、待って・・・金塊に潰されて死ぬとか本望だけど、心の、心の準備をさせて頂戴・・・」

 

(・・・虚無の中にしか宇宙の針が無いというのなら、霊夢の力があれば虚無の中でもある程度行動が可能になるかもしれない。賭けではあるけれど、分の悪い賭けではないわ。頼んだわよ霊夢、皆・・・)

 

【プルプルプルプル】

 

圧殺されて死にそうになっている霊夢を余所に、幻想郷の威信をかけて犠牲者を出さないための備えを、彼女なりに行う紫であった。

 

──手にしていない聖杯の欠片は、あと二つか三つ。




霊夢「はぁ、死ぬかと思った・・・あれ!?金塊は、インゴッドは!?」

紫「私が預かっておくわ。あなた無駄遣いしそうだし」

霊夢「御年玉徴収するお母さんかあんたは!?借りパクしたら覚悟しなさいよマジで!その時があんたの退治される時よ・・・!」

紫「おほほほほ。それじゃあ次の課題よ。次は楽園の方々との共同特訓よ」

霊夢「共同?」

ロマン『やぁ、霊夢ちゃん!ゲームでお世話になってるよ!僕はロマニ・アーキマン。ソロモンやってる者さ!』

霊夢「何この・・・物語一つかけてやらかしの尻拭いに奮闘してそうなヤツ」

『大体合ってる評価ありがとう!僕とやるのは博麗大結界に、層を重ねる様に張る僕の障壁の手助けをしてもらいたいんだ。あ、異変が終わるまでの一時的な間だから安心してほしい!』

霊夢「・・・幻想郷自体を護るためって事?」

『いやぁ、君を信頼してない訳じゃないよ?でももしここが外にいる魔術協会や聖堂協会にバレたら妖怪とか異能とか絶好のサンプルだから確保するためにプロが送り込まれて全員ホルマリンとかあり得るかもしれないから念のため、ね!』

霊夢「こわっ!」

紫「そしてあなたは作戦の中核なので被弾は許されないわ。この方と弾幕訓練してもらいます」

霊夢「え、誰よ」

ギル「我等だ!!」

「王様!?」

「何、美を競う戯れというものに些か興味が湧いてな。現地の文化に触れるも旅の醍醐味、堪能がてら貴様を鍛えてやろう!スポンサーとしてな!無論遊びで出せる本気は出す。当たると凄く痛いぞ?」

──ごごごごごご(セルフオーラボイス)

「なんか後ろにいるわよ王様!?憑かれてる!?憑かれてるの!?とりあえずお札、えい」

──はう!

「やめよこれは我の勝利のスピリチュアルだ!では構えよ博麗の!貴様に投げ捨てる財宝という贅沢の極致を見せてやる!!」

霊夢「う、羨ましすぎるんですけどぉ!?」

紫『強くなるのよ、霊夢・・・』

──フォウ、キョンシー!(ぴょいん)

フォウ(かわいい、あっ──)

それぞれの準備は、進んでいく──。

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