人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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早苗「力を借りた皆と特訓がしたい、ですか!果て私達や鬼の皆さん、従者の皆さんと!?」

リッカ「うん!借りしたものだけど、だからこそその力を理解して、把握して、きちんと自分のものとして昇華したい!だったら持ち主と心を合わせるのが一番だなって!私は力を借りた以上、それを極める義務と責任があるから!」

文「向上心の固まりすぎませんか・・・!?借りただけでなく完璧に使いこなしたいだなんてなんという・・・!」

早苗「いいえ、リッちゃんはそういう方です!誰よりも頑張って、頑張って、その姿が誰かに希望を与えてくれる、太陽みたいな女の子・・・!」

リッカ「ほ、誉めすぎだよぉ~。私は才能溢れるタイプじゃないから、人一倍やって理解や知識、力をつけるのが染み付いてるだけ!始めから上手くできた事、全然無いしね」

にとり「それでも闇に呑まれない女の子や頑張り屋は光になるものだ!物理的じゃない、皆が護りたくなる光にな!よし解った!片っ端から連絡入れるぞ待っててな!」

文「では、お迎えはお任せください!!」

リッカ「うんっ!よろしくお願いします!」

早苗「・・・えへへ。実は、実はですよ?リッちゃんが才能に溢れた天才タイプじゃないのが嬉しいんです。あ、気を悪くしたらごめんなさい!」

リッカ「しないしない!なんでなんで?」

早苗「本当の天才や、本当の才能を持っている人・・・私は知っていますから。その人を尊敬していますし、宿敵とも思っています。でも・・・もう1つの気持ちを、リッちゃんに懐く事がないのが安心できて、嬉しくて」

リッカ「それって・・・」

早苗「・・・博麗、霊夢さん。同じ巫女として・・・あの雲の上の様な才能と、天性のセンスの塊みたいなあの人が・・・私は『怖い』と思ってしまうんです。特訓も訓練もしないぐうたらな今ですら、私はあの人に敵いません。息をする様に誰よりも先に行くあの人がちょっぴり・・・怖くなってしまうんです。あの人は、ううん・・・才能に満ちた人は最後に、何処へ行ってしまうのかって思うと・・・怖くて」

リッカ「博麗、霊夢・・・」

早苗「だから、嬉しいんです。リッちゃんが、あなたが。皆と一緒に駆け抜けてくれる暖かい人で、本当に良かったなって・・・願わくば、ずっとそんなリッちゃんでいてくださいねっ」

リッカ「うん!もちろん!私が今此処にいるのは、たくさんの人が支えてくれたからだもん!」

(・・・でも、サナちゃんがここまでいう霊夢さん・・・ここの幻想郷の霊夢さんは、どれだけ天才なんだろう・・・?)


王の弾幕、夢想の切欠

「さて、確か弾幕とやらは必中は御法度であったな?ならば良かろう、あえて雑な精度に落としてやる。歴戦の貴様ならば容易く対処できる、児戯の範疇の本気で相手をしてやるとしよう」

 

黄金の王にそう告げられた時、また余裕寂々なんだからもう・・・そんなタカを括っていた霊夢。霊夢は数多無数の異変を解決し、百戦錬磨の経験を詰んできた実力者と言って差し支えない猛者である。故にこそ──自信から来る余裕、言ってしまえば慢心・・・心の贅肉が顔を出していた。故に、霊夢はその申し出を受けてしまった。安請け合い、というものである。

 

「えぇ、私も誠心誠意避けさせていただくわ。特訓に付き合っている以上、半端な真似は──え?」

 

瞬間、彼女に渡されしはブレスレット。其処には11の魂、その代替となる術式が込められている。

 

「え、これ・・・これは?」

 

「残機だ。貴様の弾幕勝負における命となるストック・・・合計貴様は12個の命をたった今有している。我が至宝は演算、精算、計算においては無類の精度を誇る。我が傍らに至宝在る限り【何かの間違い】等起こり得ぬ。断じてな」

 

「や、あの。話が──」

 

「解らぬか?『我等は貴様を11度まで殺してよい』と言うことだ。12の命にまで責任は持たん。貴様の全てを懸けて我等に奪われぬ様に守り抜け。では行くぞ──」

 

王の宣言の瞬間──王の周囲、そして霊夢の空間一体に綺羅星がごとき波紋が波打つ。其処より現れし・・・絢爛無双の、輝き煌めく財宝達。

 

──財宝、選別開始。撃破可能回数──11。装填、完了。

 

背後に浮遊せし、王が至宝と謳う魂が全ての軌道、材質、性質、軌道、近未来の演算を含めた行程を瞬時に完了させ、眼を開く。それを合図に──

 

「上手くかわせよ?──『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』」

 

王は静かに、顎を動かした。

 

「──ッッッ!!」

 

背筋に突き抜ける悪寒に弾かれる様に空へ飛び立つ霊夢。瞬間、霊夢のいた場所全てに無数の刀剣宝槍、斧や槍といった武具が雪崩れ殺到を行い、空間を余すことなく八つ裂きとする。黄金の宝物庫より選別、放たれた財宝弾幕が霊夢を撃墜せんと撃ち放たれたのだ。空中に投げ出されるような姿勢で、霊夢は戦慄を露にする。

 

(何、今の──躊躇いなく脚とか腕とか無力化した後首を狙ってきた!?避けたのはほぼ、反射と勘で──)

 

「まずは一つか。腕の鈍りは貴様の思う以上に深刻な様だぞ、博麗の」

 

「え──」

 

瞬間──王に与えられた霊夢の残機は、儚く霧散し消滅していた。軌道を予測しきっていた次手に仕込まれていた財宝の射出口より放たれた二次速射弾幕により、霊夢は直撃を受けたのである。そして受けた事にも気付かぬまま『ピチューン!』という音と共に霊夢は残機を散らしたのでたる。

 

──残機、残り10。次弾選別開始。

 

(な──なに今の・・・!?いえ、そんなことより今のは王様の弾幕!?一本売っただけで一生遊んで暮らせる財宝たくさんとかなんて羨ましいじゃなくて!?何今の・・・!『考えるより速く弾幕が飛んできた』・・・!)

 

避けられない弾幕ではない。逃げ道は針の穴より小さいものだが用意はされている。反応・・・いや、『正着』を自身が選び取り、無数の可能性の中か勝ち取る事が出来れば臨時の回避は可能である。

 

「死にたくなければ思案するより速く、己の直感よりも鋭く、常に一秒前の自身を上回り乗り越えよ。貴様の錆び付いた魂、我等が鍛え直してくれる」

 

「ちょ、ちょっと待って!まさかこんなの本気で」

 

「説明はしたぞ。さぁ──死に物狂いで自己の限界に挑む時だ、博麗の」

 

『ピチューン!』という破裂音が再び響き渡る。360度により展開された王の財宝が、意識を散らした悪手を取った霊夢の全身を貫いたのである。思考し、考え身体を動かすなど生ぬるいと断じる程の、ゴージャスたる弾幕。

 

──残機、残り9。弾幕射出パターン、財宝選別開始。

 

「~~~~!!」

 

それ以上の問答など挟むことすら出来なかった。コンマ数秒前にいた自身の空間が、金色の財宝により蹂躙され串刺しにされる。絶えず動き、全身に神経を研ぎ澄まし、未来予知めいた直感と洞察力、天性の勘にて考えるより速く『最適解』に飛び込むしか王の弾幕を避ける術はない。

 

『避ける為の最良』ではない。『最良が生存の為の最低限』という、質も量も共に絶対的なる黄金の弾幕。挑むものに絶望と慟哭と死を。背に続く者に勝利と愉悦と未来を。それこそが英雄王・・・否。絢爛たる叙事詩の頂点に君臨し最先端を駆け抜け続ける『御機嫌王』たるギルガメッシュとエアの本懐にして真骨頂──!

 

「そら、貴様の力はそんなものではあるまい!我等は手など抜かぬ、英雄王の全身全霊にて鍛えられし己が身の幸運に咽ぶがいい!」

 

更に追加される砲門、波紋、絢爛たる財の輝き。それらの軌道、制圧射撃の三次元の包囲網を完全に見切った上でかわし尽くさなければ一瞬で命は最後まで消え去るだろう、泰然と放たれる王の財宝

 

(──!──!!)

 

考える暇も、思考を纏める手段すらも許されない。四方八方全方位、途絶える事なき即死弾幕の群れに対し、自身を針の穴ほどに用意された安全地帯に導かなくてはならない。思考していては遅すぎる。反射ですらあまりに遅い。経験で、直感で、天性の勘で──霊夢の持つ『才能』『素養』を極限まで発揮した一手を取り続けなければ、瞬く間に命は消えていく。

 

「!!!」

 

──被弾。回避行動の転身の際に僅かな停止。残機残り八。

 

無論、それはつまり人間の潜在能力を常に解放、発揮しろと同義の状態を維持し自身のものにしろと同じ注文である、いくら霊夢と言えど、そんな状態をすぐさまモノに出来る道理は無く。

 

──被弾。反転飛翔の際に僅かな体勢の乱れ。残り残機数七。

 

あまりに対応が遅い選択であった場合は無論撃ち抜かれ、命を散らす。

 

──被弾。迎撃行動による姿勢制御の乱れ。残機残り六。

 

一秒以下の単位で変化する王律鍵の金型を読み取り、御機嫌王の財を一つ一つ吟味し選別するエアの射撃補正、空間把握能力により展開される全方位弾幕は、甘えた選択により最適解な行動を取った霊夢を容赦なく貫き霧散させていく。腕を組み仁王立つ王の傍らに悠然と浮く姿は、まさに王に寄り添う姫の形容に相応しい威容を示している。肉体に宿る千里眼にて王が見た正着の一手、未来の一秒先を寸分違わず再現、実現、発現しているある意味で無慈悲極まる財宝の弾幕。

 

 

──被弾。安全地帯飛行の際の出力不足。残り残機五。

 

──被弾。相殺を目論んだ事により迎撃、それの失敗。残り残機、四。

 

──被弾。最大速度によるホーミング攻撃の振り切りの失敗。残り残機、三

 

・・・無論、御機嫌王も英雄姫も出来ぬ者を出来ぬままいたぶる外道では決して無い。これほどの全身全霊、弾幕を霊夢に注いでいるのは既に見抜いているからだ。彼女の可能性を、彼女の秘められし力を。虚無に打ち勝つ為彼女がものにしなくてはいけない力の開化を、二人は待っている。

 

「くっ──う、っ──っ・・・!」

 

(才能あるものは、また才能に殺される。真なる頂点に立つ者の前に、鍛練をかまけた天才などなんの価値もない。今、それを嫌と言うほど味わっているでしょう。霊夢)

 

・・・否。ここにいる『三人』は待っている。

 

(あなたを知る者ではあなたを越えられない。あなたは本質的に、幻想郷において『無敵』であるのだから)

 

──被弾。気後れによる直撃。残り残機、二。

 

(では、何故無敵なのか?あなたの才とは何なのか?──完全なる『無』を前に、あなたが手にするべき力とは何か?)

 

──被弾。才能に依存した悪癖。残り残機、一。

 

「これで十一。いよいよ後が無くなったな、博麗の巫女」

 

(掴みなさい。切欠でいい。それさえ掴めたなら貴女は、必ずモノに出来るのだから──)

 

祈るように見守る紫。ほんの一瞬でしかなくとも、霊夢という存在の極限を突き詰める特訓は一先ずの終わりを迎えんとしていた──




霊夢(・・・手加減してもらえるとか、遊びとか、私なら大丈夫とか。思い上がりきっていたわ)

ギルガメッシュ「満身創痍には速かろう。貴様の身のこなしは実に見応えがある。我等も財の撃ち甲斐があるというものだ」

霊夢(勝てない。私じゃこの人に、この人の力には敵わない。──まずはそれを受け入れなくちゃ)

「だが──慢心も油断も今の我には無い。次で貴様が何かを掴まねば、博麗の血脈は此処で途絶える事となろう。さぁ、最後の見せ場だぞ」

霊夢(来る──私にとっての限界、私にとっての理不尽、私にとっての絶望そのもの・・・!)

──全宝門、照準。

(考えても駄目、考えなくても駄目。私に出来る事はこの人相手に何もない。なら、どうする?私はどうすればいい?)

「未曾有の危機においても尚、己が起源を掴めぬならば──最早何も言うまい。大人しく朽ち果て、次代の巫女を探すがいい!」

霊夢(──決まっているわ。えぇ、今さらも今さらよ)

──全550門、一斉発射。

「仕舞いだ!『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』──!!」

(私はただ、私で在るだけ!夢を想うままに、天や空を舞うように生きる様に──私は、私が想うままに──)

放たれる、渾身の一斉発射。それらが全て、霊夢に雪崩れ込む。

だが──

(私が想うままに、ただ──生きてみせる!)

──その時。彼女は『触れた』。己の能力の意味。本懐・・・原初の意味。起源へと。


「────・・・・・・」

霊夢は静かに、ただ凪のように目を閉じていた。何もしていない。いや、言うならば『何もしない』を『行った。』

──被弾・・・・・・無し。全段、命中していません。

外した訳ではない。全て霊夢の場所へと過たず飛来し、蹂躙した。だが、霊夢はそれら全てを、万象から『浮く』事で回避した。いや──全てから彼女は『浮いた』のだ。森羅万象、全てのものから。

ギルガメッシュ「フ。元々才気煥発の極みである才女だ。万を越える言葉よりも、我等の全霊の決戦の方が掴みやすかろうさ。それが遊びであろうとな」

霊夢「────」

霊夢は静かに、万象から浮いている。今の彼女に触れることも、害する事も叶わない。──それは奇しくも、英雄王がかつて敗れた次元遮断、或いは・・・自身のみの『対粛清防御』。十一度死した事により触れた、自身の本質にして起源。

霊夢「──これが・・・空を飛ぶという力の、本当の意味」

紫「えぇ。あなたの究極奥義・・・森羅万象、虚無からすらも浮くであろうあなたの極意。『夢想天生』よ」

自らの真理の一端に到達した霊夢へ向けて、万感の思いと共に紫はその名を贈る。己が幻想郷の巫女が何足飛びも速く完成した歓喜を、懸命に抑えながら──

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