人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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カドック「シャドウ・サーヴァントか・・・。キリシュタリアが言っていた、聖杯を悪用する輩の尖兵か。よし、僕らも見回りに参加しよう」

オフェリア「えぇ、欠片を回収した私達は警備をしつつ、万全の待機ね。解ったわ、欠片の探索に行ったぺぺには心配しないでと伝えておく」

アイリスフィール「あら?ぐっちゃんは何処に行ったのかしら?」

カドック「彼女は人里で土産探しに行ってるよ。『あんたらがいるなら大丈夫でしょ』ってね。・・・嬉しいよな。彼女の信頼は重いから」

デイビッド「俺は画材を買いにいこうと思う」

カドック「ぶれないのは君もだな、デイビッド・・・岸波は何処に?」

アルトリア「月です」

カドック「・・・月!?」


能楽ディスり!アンニュイと化したこころ

「リッカやキリシュタリアのヤツ、なんだかこそこそ準備をしているみたいだけど・・・まぁ、あいつらなら大丈夫でしょ。むしろあいつらがどうにもできない事なんて見てみたいわ。絶対無いわよ絶対。項羽様も仰有っていたし。『聖杯の欠片と信頼できる友を作れ』って。あいつらなら絶対大丈夫な問題よそれこそ。だから私はこうして・・・」

 

一人で団子を頬張り、項羽の為の土産グッズを構えしはグランドマスターズの一人、我等が先輩ぐっちゃんである。リッカが特訓、キリシュタリアがカイニスとイニスのハートフル、カドック達がシャドウ・サーヴァント駆除兼聖杯の欠片の見張りをやっているなか、ぐっちゃんは土産担当となっていた。文字通り、カルデアに持っていく為のお土産を人里で吟味しているのである。今は一段落し、団子屋で一人茶をしばいている寸法だ。

 

「閻魔亭と同じで、ここは神秘が色濃い秘境で助かるわ。人間どもも家畜みたいに飼い慣らされてるし、気兼ねない旅行ってやつよね、ホント」

 

人間は解明と暴露の獣性を有する存在であるとぐっちゃんは想う。海の底も山の頂点も解き明かさずにはいられない。だからこそ世から神秘は消え去った。人の物理法則は、神秘を当たり前の現象に変える。解りやすく言えば山びこ。山の神の言葉であるとされた山びこは、山が音を反射するものと科学が定義した。当たり前の理屈が当てはめられ、人は畏怖を克服した。無論それは、真祖っぽいぐっちゃんには住処が追いやられるという事なわけで。だから妖怪が堂々とできる此処は、彼女には好ましいのである。

 

「まぁ、面倒くさいのはリッカに任せて私はお土産をあげるという寸法でいくわ。どうせあいつもいるし、キリシュタリア達もいる。私はクールでカッコいい虞美人として成功した後輩を褒めてあげればいいわ。グッジョブ後輩、私の教えが生きたわね!キリシュタリア、カドックともっとロックしなさい。完璧ね・・・誰がどうみても完全無欠のスペシャルマスターだわこれ・・・」

 

マスターに喧嘩を売るような持論を展開しながら団子を頬張るぐっちゃん。どうやら自身は完璧極まるグランドマスターのリーダー的ポジションにいると思っているようである。今の幻想郷の情勢、割と興味がない自由人である。それは仲間への信頼の表れ、自分が何かしなくても大丈夫・・・そういった類いの確信なのだろう。めんどくさい訳ではない。多分、きっと。おそらく。

 

「へぇ、お茶も団子も美味しいじゃない。流石は秘境ってとこね。温泉とかはないのかしら。もちろん混浴で。項羽様のお背中を流せるような・・・」

 

そんな幻想郷夫婦旅行に全力で想いを馳せるぐっちゃん。彼女は自由に行動が許されている。肝心要で何かをさせてはいけないタイプなのだ、彼女は。だからこそ、彼女はこのまま解決までのんびりする・・・予定であったのだが。

 

「はぁ・・・・・・・・・」

 

そんな彼女が耳にしたのは、深い深いため息。聞いているだけで陰鬱な気持ちになり、日曜日午後六時か七時の気持ちにさせてくれる重い重い憂鬱の凝縮。迫りくる月曜日にうんざりしたため息である。

 

 

「・・・?」

 

ぐっちゃんが見ると、そこには例に漏れず美少女がいた。ピンク色のロングヘア、同じ色の瞳と睫毛。青いチェック柄の上着に長いバルーンスカート。胸元に桃色リボン、赤い星、黄色い丸、緑の三角、紫の×ボタンが付いている、奇抜な少女。そして何より目を引くのは顔の横についた面。それは、今は姥の面。弱々しくしなだれたおばあちゃんの面を付けた少女が、溜め息の発生源だった。

 

(何こいつ。辛気臭いわね・・・まぁそのうちどっか行くでしょ。無視無視)

 

楽園のマスターの中でも対人社交性が壊滅的なぐっちゃん、彼女をスルーする決意を固める。団子を食べ、お茶に集中する事により去るのを待つ。

 

「はぁ・・・・・・(哀)」

 

「餡蜜と団子ってなんでこんなに美味しいのかしら・・・人間も中々やるわね・・・」

 

「はぁ・・・・・・・・・(悲哀)」

 

「あ、茶柱。今回はいいことありそうね」

 

「はぁ・・・・・・・・・・・・(アンニュイ)」

 

「いやー、お茶っていいわよねー・・・」

 

「はぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(とてもつらい)」

 

「・・・・・・あーもう!!はぁはぁうっさいのよ!なんなの!?私からマイナスイオン的なヤツを摂取しようとしてるわけ!?出るわけないでしょそんなもの!植物か私は!」

 

「うわっビックリしたぁ!なんだお前はぁ!?(驚愕)」

 

ピンク髪の少女、大袈裟極まるリアクションにて数メートル飛び上がる。すると姥の面が変わり、大飛出の面へと変わる。そして特徴的なのは、オーバーリアクションなのに表情は一切変わっていない点であるだろう。そのアンバランスさに、流石のぐっちゃんも閉口である。

 

「え、なんだじゃないわよ・・・何?露骨にため息ばっかりして。なんなの?どうしたの?」

 

とは言うものの、彼女もすっかり楽園在住のぐっちゃん。困っている人を見捨てる薄情さは浜で死んだのである。そして彼女の正体もまた、持ち前の聡明さにてさっさと導き出す。

 

「見たところ、おまえは人間ではないわね?面霊の気・・・ようするに、付喪神ってやつでしょ」

 

付喪神。長らく年月を得た物体に神威、意識が宿るもの。八百万信仰に基づく身近なものに宿る神であり、大事にしているものにそれらは宿りやすい。

 

「おぉ!詳しいな!」

 

瞬間、喜びを現す面であるのか、福の神に面が変わる。そしてぐっと口調もフレンドリーに変わり、ぐっちゃんの手をぶんぶんと握って振り回す。

 

「さては私のファンだな?ありがとう、嬉しいぞ!気弱な所を見せてごめんなー。でも私も涙するときくらいある。だって私・・・女の子だもんっ」

 

口調は弾み、そして感情も喜んでいるのも解る。しかし変化するのは周囲をふわふわしている面のみで、食い入らん程に乗り出す表情は微塵も変わっていない。そんな顔面が、ドアップで目の前である。

 

「不気味!不気味なのよあんた!?」

 

「不気味だとぅ?照れるな照れるな、推しが目の前にいると皆そうなるんだ♪どうだ、サインでも書いてやろうか!背中にか!背中にだな!」

 

ぐっちゃんの反応にも全く動じず、愉快げに振る舞う少女。しかし表情は全く変わらない。正しく能面の様な顔は、しかしじっとぐっちゃんを見ている。

 

「止めなさい!止めなさいっての!あんた何よさっきまで凹んでたんじゃないの!?」

 

「凹んでる・・・あ、そっか。私はダメだ・・・もうダメだ・・・おしまいだ・・・」

 

瞬間、倒れ込む少女。顔面から行く大胆極まるぶっ倒れぶりに、客の関心が一気に向けられる。彼女と、近くにいるぐっちゃんにもだ。なので──

 

「あぁ、もう・・・!おまえ!代金は此処に置くぞ!」

 

「へ、へい!毎度!」

 

店長にお代を投げつけ、少女を担ぎ団子屋を後にする。彼女は無表情のまま、ぐっちゃんに担がれ連行されていく。

 

「なんだお前!?(驚愕)やべぇよやべぇよ・・・私拉致されてしまうのか!?ヤバイよヤバイよ(御意見番)最近のファン過激だよ・・・田舎って怖いとこですねこれは・・・(絶望)」

 

「黙れ、元気なら歩け!あぁもう、厄介ごとな気がするわ間違いなく・・・!」

 

うららかな昼下がりが一転、謎の少女と一緒になってしまった。ぐっちゃんの出会いは果たして吉なのか?凶なのか。

 

「美味しく食べてくれ・・・(諦め)」

 

「何をよ!?」

 

少なくとも、ぐっちゃんからしてみたら面倒であることは間違いないのであった。




人里・銭湯

少女「いやぁすまないすまない。あなたを誤解していた。まさか本当に赤の他人だとは。ありがとなっ!(親近)」

ぐっちゃん「もう追及も疲れたわ・・・教えなさい。おまえは何だ?何故あんなため息ばかり吐いていたの?」

「あれ、名乗ってなかったっけ?私を知らないとかさては・・・もぐりだな?(ニヤリ)」

ぐっちゃん「はぁ!?」

「しょうがないにゃぁ(寛容)知りたきゃ教えてやんよ!聞いとけよ聞いとけよ~(ウザみ)。私は(はたの)こころ!絶賛持ち芸が人間に飽きられ始めたダンサーだ!おねしゃす!(陽気)」

ぐっちゃん「ダンサー?・・・おまえが?」

こころ「能楽ってしってるか?(のらし)私は暇さえあれば踊る変なやつなんだけど、最近子供にさぁ・・・おばさんのダンスって古臭ぇって言われてさぁ(フレンドリー)おば↑さんだと!?お姉さんだろぉ!?(豹変)もう許さねぇからなぁ!(激おこ)してやけ酒してました(ヘタレ)。おかのした?(わかりましたか?)」

「・・・・・・」

疲れるコイツ・・・。関わった事を非常に後悔したぐっちゃんであった・・・

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