人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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キリシュタリア「おや?聖杯の欠片の位置の一つに、ヒナコが既に接触している・・・」

『ニトセンサー』

(流石は聡明な虞美人。誰よりも先んじて回収、確保に向かったのだね。なんて有能なのだろう・・・!)

カイニス「あん?このピコピコなってんのが聖杯か?まぁいいわどーでも。キリシュタリアー。飯作れ飯~。まずかったらしばくからなー」

キリシュタリア「ふふ、任せておくれ!」

(皆が頑張る中、君もまた自主的に・・・ありがとう、ヒナコ!君の頑張りに、晩御飯を作って応えよう・・・!)

カイニス「エプロンと帽子、似合うなお前・・・」

キリシュタリア「家庭的だろう?今は振る舞う家族がいるからね。ふふっ、キリシュタリア兄さんは絶好調さ!」

カイニス「おう、そりゃあ・・・良かったな」
『カイニス・・・えぇ、そうですね』

(リッカ君、君は決して一人じゃない。強くなって、また必ず会おう・・・!)


ぐっちゃんはダンスやってたからな!(非公開情報)

「古いって、どういう事よ。能楽ってなんか、お面つけてゆったり踊る日本の躍りでしょ?歴史あるんだから古いのは当たり前じゃない。クソガキの言葉なんてまともに取り合ってたらキリないわよ?堂々としてなさいよ」

 

「はぁ~・・・(クソデカため息)」

 

「何よ!? 何が言いたいの!? はっきり話しなさいよ不満なら!?」

 

ひょんな事から幻想郷に在住する付喪神、秦こころと出会ったぐっちゃん。彼女は能楽が特技で人里や幻想郷各地で披露し喝采を受けるほどの実力者という存在であるのだが、それが今悩みの只中にあるという。お土産を吟味し終わったぐっちゃんに抱えられ、今は銭湯にてぐっちゃんと話を行っているところなのであった。回想は大体こんな感じ。彼女は今、スッゴク悩んでおりぐっちゃんのアドバイスにもいまいち納得いっていない様子である。

 

「一応お捻りとか、大きな催しに呼ばれて参加している以上半端は許されない立場なんだよぐっちゃん(自慢)。大人だけじゃなく、子連れで見られたりもする。むしろ幻想郷ってあんま子供いないし娯楽もそんな多くないから、日頃の日々の些細なものにもお子さんは敏感になるわけなんだ。わかる?この使命の重さ」

 

「・・・まぁ、言わんとしてる事は解らなくもないわ。多分子連れで見に来るんでしょ。あんたのそのダンス」

 

「そうなんだよなぁ。ただでさえ能楽って概念無かった頃にはドン引きされてたんだけどね、それをなんとかあれんじした『しんきろう』ってヤツを私は踊っていた訳だが・・・お子さまは大抵途中で寝たりしているんだよな(かなしみ)。経験無いか?学校や寺子屋で劇や芝居を見せられると必ず寝てるヤツが出る体験。私は今それが起きている訳なんだ。これは一重に、私の実力と知識不足だ。なんとかしたいと思うんだが・・・どうなんとかするべきかさっぱり解らん。だから悩んでいたんだな・・・」

 

解らない事が解らない。それは聞くことも出来ない程の不理解の証。何処がどう間違っているのかも解らないのだから尋ね様がない。自身のアイデンティティーなので妥協もできない。そうこうしているうちに時間は来る。いずれ子供達は飽きてしまうかもしれない。飽きてしまったかもしれない。そう考えてしまい、彼女は凹み、落ち込んでしまっていたという。

 

「幻想郷において飽きられる、忘れ去られるというのは死活問題だ。妖怪は弱体化し、モノに宿る存在は消滅の危機になったりする。まぁ私が消えるかどうかはどっちでもいいしどうでもいいんだが、私の不甲斐なさで伝来の文化が廃れ、失伝なんてした日には申し訳が立たないだろう。せっかくこの忘れ去られたボンクラ達の楽園に紛れ込んだ由緒正しく数少ない立派な文化・・・なんとしても風化はさせたくない。踊ってる人の笑顔もなんだかんだで嬉しいしな!」

 

「・・・・・・ふーん」

 

その悩み・・・くだらないと一蹴するにはあまりに似ていた。同じ様に忘れ去られてしまう危機にあった旅館を知っている。それでも腐らずに頑張り続けた、数少ない友達を。

 

(こういうのも宿縁って言うのかしら。マジモンの外道や下衆は近寄ってこないのよね、カルデアって組織)

 

思い出せしは紅閻魔との奮闘記。あのときは楽園に空手形を発行してそれはそれは王の怒りを買ったものだが、なんとかなって今も閻魔亭は元気に営業中である。なんだかんだで、人を見捨てないお人好しの人間達が、小悪党の下衆な悪意を真っ向から叩き潰した大捕物となったのである。そして今は自身も、そのカルデアのマスターである。凄く強くてクールで皆の纏め役のぐっちゃんである。もう放浪の虞美人ではなく、安住の地を夫と共に過ごすぐっちゃんである。

 

(・・・別に人間に力を貸すわけでも無いし、次に項羽様と遊びに来た時にただでさえ娯楽が少なくなっているのは嫌ね、普通に。それに、運営側と仲良くなっておけば色々と旨味がありそうだし・・・)

 

助けることに異論は無いが、理由なんて、あなたが困っているから助けるぐらいで十分!というほどリッカポイント稼げるタイプをしてないので、救う為の建前を探しているぐっちゃんである。影響はこんなところにも出ており、それは満ち足りた心が導く余裕、少しくらいであっても他者を気遣えるようになったぐっちゃんの精神的変化であった。

 

「・・・じゃあ、あれじゃない? 増やせばいいんじゃない? レパートリー」

 

「演目をか? それが出来たら苦労は・・・」

 

「違うわよ、そうじゃなくて。踊るダンスの種類を増やせばいいんじゃないって話。能楽だけじゃない、いろんな舞踊やダンスとか、増やしてみるのはどうかって言ってるのよ私は」

 

「・・・あぁ! 要するにもっとバリエーション増やせって話か! さてはあなた古参だな? 回りくどい言い方からしてそんな人付き合い得意じゃないな?」

 

「うっさい! 大きな御世話よ! ・・・本来、私は愛する方だけの為に学んだ故郷の舞があるわ。それ自体を見世物にするとかは絶対嫌だけど、あんたが私の技術をものにするのは別にいいんじゃないって事にしてあげるわ」

 

そう、彼女は実は躍りは心得がある。愛する者即ち項羽のみに捧げるための舞踊、ダンス。それを触りだけでも学ぶ気があるというなら別に止める気はないという彼女なりの譲歩を提案する。

 

「おぉ・・・! 即ち、教えてくれるってことだな! 外の世界の躍りや文化、その他諸々!」

 

「まぁ、知ってる限りは。その代わり、次に私が夫と遊びに来た時までにちゃんとモノにしておくこと。能楽もしっかりやって、見世物として磨きあげなさい! いいわね、鍛えるのよ! 解った!?」

 

「それはもちろん当然だ! もう寺子屋とか親子連れに飽きたとかつまんねとか言わせない! 絶対進化を遂げ、ぱーふぇくとこころになってみせる! じゃあよろしくな、えと・・・あと・・・」

 

「・・・・・・ヒナコよ。芥ヒナコ。幻想郷にいる間は、そう呼びなさい」

 

「そっか、ヒナコ! これからよろしく頼むぞ! 私達で、幻想郷一の芸能コンビスターダムへとのしあがるんだ!!」

 

「いや、私は教えたらさっさと帰るわよ普通に」

 

「えっ!? 私とダンスで頂点目指さないのか!?」

 

「誰が目指すか! いいから長い棒持ってきなさい長い棒! 早速レッスンよレッスン! 人間の寿命はたかだか100年、もたもたしてたら朝会ったガキが夜には爺だなんて事になるわよ!」

 

「うぉおぉ大変だぁー!?」

 

そんなこんなで、こころのピンチを見捨てることが出来なかったぐっちゃんは、ちょっとの寄り道を行う。

 

(これが、楽園の方針ってヤツなんでしょ。後でリッカには私を十倍敬わせてやらなきゃね)

 

なんだかんだで──楽園にきちんと自身の意志と居場所を確立したぐっちゃんは強かなのであった。そう、彼女はなんとリッカの先輩なのである──。




こころ「棒って、竹とかそんなんでいい?」

ぐっちゃん「いいわよ、長ければなんでも。本来なら槍とかが良かったんだけど・・・」

「あぁ、そうなのか。じゃあほい!」

ポーチから金色に輝くブローチを掲げると、光の中から二つの竹が現れる。即座に取り出された良質な竹の出現に、ぐっちゃんは目を見開く。

「何そのポーチ・・・!」

「実は最近拾ってな。金色のブローチを掲げると、些細な願いが叶うんだ。便利だから活用しているぞ!」

(なんか、カドック達が追ってるヤツみたいね。でも欠片って言ってるからポーチなわけないか・・・)

「じゃあ、よろしく頼むぞ!師匠!」

「半端はしないわ。ついてくるのね!私の舞に!」

絶妙にニアピンしてしまったぐっちゃんは、こころに本題そっちのけでダンスを叩き込むのでありましたとさ──。

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